改訂水飲みテスト(MWST)|冷水3mLの実施手順・1〜5点の判定と臨床での使い方 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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高次脳機能障害

改訂水飲みテスト(MWST)|冷水3mLの実施手順・1〜5点の判定と臨床での使い方

STROKE LAB / SWALLOWING SCREENING

改訂水飲みテスト
Modified Water Swallowing Test / MWST

3mLの後に、
何が起きたかを見る。

飲み込み・呼吸・声の変化から、次の評価と支援へ。

冷水3mL1〜5点で評価最低点を採用
針のないシリンジを用い、少量の冷水を口腔底へ入れる検査場面
針のないシリンジを用い、少量の冷水を口腔底へ入れる検査場面(説明用オリジナルイラスト)

01|MWSTでわかること:少量の水を飲み込んだ後の反応

改訂水飲みテスト(Modified Water Swallowing Test:MWST)は、冷水3mLを口腔底に入れて飲み込んでもらい、嚥下の有無、呼吸、むせ、湿性嗄声、追加嚥下を確認するスクリーニングです。点数は1〜5点で、高い方がその試行での反応が良好であることを示します。[1], [2]

単に「水が口からなくなったか」を見る検査ではありません。飲み込めても呼吸が乱れれば2点、呼吸が落ち着いていてもむせや湿った声があれば3点というように、嚥下後まで観察します。

まず押さえる3点
①冷水は3mL。舌の上ではなく、舌の下の口腔底へ。
②追加の空嚥下2回と、水を使うテストの再試行は別。
③最終評点には実施した試行の最低点を採用する。[1], [2], [7]

以下は医療・介護職が手順を学び、臨床で結果を共有するための解説です。実施の適否や対応は、担当する医療職と施設の手順に沿って判断します。家族が自己判断で水を流し込むための手引きではありません。

02|準備と所要時間:最初に「実施できる状態か」を見る

針のないシリンジで冷水の量を確認し、観察と記録の準備をする
針のないシリンジで冷水の量を確認し、観察と記録の準備をする(説明用オリジナルイラスト)

準備するものは、冷水、3mLを計量できる針のないシリンジ、タイマー、記録用紙、必要な感染対策用品です。口腔内を清潔にしてから行います。説明・準備・最大3試行・記録を含めて3〜5分程度を確保する運用例としますが、これは公式に定められた所要時間ではありません。状態の確認や休息に必要な時間を優先します。[1]

開始前の確認 確認する理由・対応
覚醒・指示理解 説明に応じて飲み込めるか。眠気や理解困難が強いときは、水を入れて反応を試すことから始めない。
呼吸・全身状態 呼吸苦、強い疲労、急な状態変化がないか。実施前から不安定なら、医学的対応を優先する。
姿勢と支持 体幹・頭頸部を安定させる。座位やリクライニング角度、支持具を記録する。誰にでも顎引きを強制しない。
口腔・分泌物・声 口腔清掃、唾液の貯留、実施前の声質を確認する。元々の嗄声と新たな湿った声を区別する材料になる。
中止時の対応 担当者、連絡先、施設で定めた緊急対応・必要な吸引体制等を確認する。

測定できなかった場合も情報になります。「未実施:覚醒不十分」「判定不能:水を口外へ出した」など、点数と理由を分けて残します。

03|新人向けの実施手順:説明から最終評点まで

順番 実施内容 観察・記録の要点
1 説明 「少量の水を口に入れます。合図で飲み込んでください」と、理解に合わせて短く説明する。 必要に応じて、開始前に空嚥下の指示が伝わるか確認する。
2 計量 冷水3mLを計量する。 コップからの一口を3mLの代わりにしない。
3 口腔底へ 針のないシリンジ等で、舌の下の口腔底へ水を入れる。 舌背や咽頭へ向けて噴射しない。先端を奥へ入れない。
4 嚥下の確認 嚥下を指示し、喉頭の動き等で嚥下を確認する。 水が見えなくなったことだけで、嚥下ありと決めない。
5 呼吸・むせ・声 嚥下後の呼吸、咳・むせ、声質を確認する。短い発声を促す方法も用いる。 むせがなくても、呼吸切迫や湿った声を見逃さない。
6 追加の空嚥下 良好な嚥下後、必要な追加嚥下を指示し、30秒以内に2回できるか確認する。 この2回のために新たな水を入れるわけではない。
7 試行の評点 1〜5点をつけ、観察所見を残す。 呼吸が不安定なら採点より対応を優先する。
8 条件を満たせば再試行 4点以上で状態が安定していれば、冷水3mLのテストを最大でさらに2回行う。 初回を含め最大3試行。最も低い点を採用する。

冷水量、注入部位、反復嚥下、試行の繰り返しは学会資料等に基づき、説明例や記録の順番は臨床導入のために整理しています。[1], [2], [7]

30秒の意味:追加の嚥下が2回できるかをみる時間です。RSSTのように「30秒間の総嚥下回数」だけを最終結果とする検査ではありません。

04|1〜5点の判定:呼吸・むせ・声を順に確かめる

嚥下後の呼吸と短い発声を観察し、実施前の声と比較する
嚥下後の呼吸と短い発声を観察し、実施前の声と比較する(説明用オリジナルイラスト)
評点 所見の整理 判断の要点
1点 嚥下が確認できず、むせ、呼吸切迫の一方または両方を認める。 実施不能・口外への排出とは区別して記録する。
2点 嚥下は確認できるが、呼吸切迫がある。 むせが乏しくても良好とは扱わない。
3点 嚥下があり、呼吸は良好だが、むせ、湿性嗄声の一方または両方がある。 むせがなくても湿性嗄声があれば3点の所見に該当する。
4点 嚥下があり、呼吸良好でむせがない。3点に該当する湿性嗄声も認めない。 追加嚥下2回の条件を満たさなければ5点にしない。
5点 4点の条件を満たし、さらに30秒以内に2回の反復嚥下が可能。 水の嚥下1回だけで5点とはしない。

学会2019年版の評価基準を、重なりやすい箇所の読み方とともに整理しました。4点の原文は「嚥下あり、呼吸良好、むせなし」ですが、湿性嗄声があれば3点の基準に該当します。[1]

運用上は3点以下を問題ありとして追加評価につなげます。4〜5点でも、食事でむせる、肺炎を繰り返す、湿った声が続く、体重が減っているといった情報があれば評価を続けます。低得点は誤嚥の確定診断、高得点は食事全体の安全証明、という読み方にはしません。[2], [4]

05|繰り返しのルール:追加嚥下と追加試行を混同しない

用語 何を追加するか 目的
追加嚥下 新しい水を入れず、空嚥下を2回指示する。 30秒以内に2回可能かをみて、4点と5点を区別する。
追加試行 1試行が4点以上で安定していれば、再び冷水3mLのテストを行う。 反復しても良好な反応が保てるか。追加は最大2試行。

3点以下になった時点で、良い点を取り直すための追加試行は行いません。4点以上で進めても、途中で状態が悪化した場合は中止し、実施できた試行の所見と中止理由を残します。[1], [7]

採点例(架空)
5 → 4 → 5点:最終評点は4点。
5 → 3点:最終評点は3点。そこで追加試行を止め、状態確認と相談へ。
初回3点:最終評点は3点。残り2回を必ず行う必要はない。
初回5点の後、疲労で終了:「1試行のみ5点、以後中止・理由」と残し、3試行確認済みの5点と区別する。

平均点や最高点は採用しません。5・4・5点を「平均4.7点」とすると、どの場面で問題が出たかという検査の意味が失われます。

06|判定不能・とろみ水・中止:条件を変えたら別に残す

場面 記録と対応
水を口から出した/指示に応じない 「判定不能」と具体的な理由を残す。検査の成立と嚥下機能を分ける。
発声できず声質を確認できない 「声質評価不可」と記録。他の所見も残し、通常と同じ確かさで陰性としない。
とろみ水を使用した とろみの段階、製品・調製条件等を残す。冷水3mLの標準条件とは区別する。
体位・介助方法を変更した 変更前後を分ける。条件変更後の値だけで元の結果を消さない。
咳・呼吸苦・状態悪化が出た 水の追加を止め、状態を確認。必要な処置・連絡を施設の手順に沿って行う。

学会資料は、とろみ水で基準を参考に評価する場合、使用したとろみの程度を明記するよう求めています。とろみ水で良好だった結果から、同じ人が薄い水も安全に飲めると推定することはできません。[1]

3mLは少量ですが、誤嚥の危険をゼロにする量ではありません。強い呼吸困難や意識状態の変化などがあれば、テストの完遂より緊急対応を優先します。

07|研究の数字をどう読むか:単独検査と組み合わせを分ける

研究・資料 対象と比較 数値と解釈
学会eラーニング MWSTのカットオフ3点について紹介。 感度70%、特異度88%と記載。
学会2019年版 摂食嚥下障害者、VFでの誤嚥。「カットオフ値4点」と記載。 感度100%、特異度71%と記載。前行と閾値の表記・集計条件が異なるため、混ぜない。
Osawaら 2013 嚥下障害が疑われた脳卒中患者111名。VF中に水量別のテストを比較。 3mLのMWSTで感度55.3%、特異度80.8%。陰性でも誤嚥を除外できない。
Toharaら 2003 嚥下障害者63名。VFSSで29名に誤嚥。 水テスト+フードテストの合計で感度90%、特異度56%。MWST単独の値ではない。

各資料の記載を対象・閾値・組み合わせごとに示しています。カットオフという言葉だけでは、境界値を含める側が伝わりにくいため、日常の記録では「3点以下」「4点以上」と条件を明記します。本記事は学会資料間の精度の差を、単なる誤植と判断して一方へ統一していません。[1], [2], [3], [4]

感度55.3%は、その研究でVF上の誤嚥がある人をどれだけ検査が拾えたかという値です。「3点の人が55.3%の確率で肺炎になる」という予測ではありません。不顕性誤嚥を含め、観察だけでは見逃し得るため、必要なVF/VEにつなげます。[4]

08|近年のエビデンス:早期評価の価値と読み違えない点

Otakaら(2024)は、誤嚥性肺炎の入院患者188名を対象に、早期評価・リハビリ・経口摂取を促すプロトコル導入前後を後ろ向きに比較しました。退院時に全量経口摂取へ戻らない、または院内死亡という複合転帰は、単純比較で25.0%対18.8%(p=0.30)。調整後は介入との関連が認められました(オッズ比0.22、95%信頼区間0.08〜0.61)。[5]

これはMWSTを含む一連の評価・支援体制の研究です。「MWSTを行うだけで死亡が減る」「5点なら即日食事開始できる」とは結論できません。開始前のリスク確認、多職種の判断、早期支援までを組み合わせるという点が臨床に役立ちます。[5]

2025年掲載のBrageらのeTWST研究も確認しましたが、こちらは150mLを用いるTimed Water Swallow Testを拡張した別の検査です。MWSTと名前が似ていても、水量・手順・指標が異なるため、その診断精度を3mLのMWSTへ流用しません。[6]

09|臨床ストーリー:点数から次の行動まで

各試行の所見を本人・家族と共有し、必要な評価と生活支援を決める
各試行の所見を本人・家族と共有し、必要な評価と生活支援を決める(説明用オリジナルイラスト)

架空例A:むせがないのに3点。脳卒中後のAさんは水を飲み込み、呼吸も安定しています。しかし直後の声が湿っていました。検者は「むせなしだから4点」とせず3点とし、水の追加試行を終了。実施前の声、湿性嗄声の出現、姿勢、他の症状をST・医師へ共有し、分泌物管理や嚥下機能の追加評価を相談します。

架空例B:5・4・5点だった。Bさんは3試行ともむせず、呼吸良好。2試行目のみ追加空嚥下が30秒以内に1回でした。最終評点は4点。疲労や説明理解、口腔の状態も記録し、食事場面では一口量、ペース、食事後半の変化を観察します。

架空例C:5点だが食事は進まない。CさんはMWSTが良好でも、食事時間が長く、口腔残留があり、体重が減っています。水3mLでは見えない咀嚼、送り込み、持久性、栄養の問題を評価し、食事の観察、口腔評価、必要なVF/VEと栄養支援へつなげます。

課題が確認されたら 具体的な支援例 効果の確かめ方
座位が崩れる 骨盤・体幹・足部の支持と机・椅子の高さを調整。 姿勢の保持、食事時間、呼吸・むせの変化を確認。
一口が大きい/急ぐ 評価に応じた食具、一口量、介助ペースを設定。 食べ方が保てるか、症状と摂取量を追う。
口腔の汚れ・乾燥 口腔ケアや保湿、歯・義歯の相談を行う。 口腔所見と不快感、食事のしやすさを確認。
嚥下機能の障害が疑われる 原因と病態を評価し、必要な食形態・訓練を個別設定。 MWSTだけでなく、嚥下評価と生活目標を追う。

これらは結果から考える対応例です。MWSTの点数だけで、とろみの濃さや特定の筋力訓練を一律に処方するものではありません。

10|RSST・30mL水飲みテスト・VF/VEとの使い分け

検査 特徴 混同しない点
RSST 30秒間に唾液を繰り返し飲み込む。 回数の検査。MWSTの1〜5点と換算しない。
MWST 冷水3mLと追加嚥下の反応をみる。 通常3点以下を問題ありとして追加評価へ。高い評点ほどその条件では良好。
30mL水飲みテスト コップの水を普段どおり飲み、時間やむせ等をみる。 水量・手順・プロフィールが異なる。MWSTの評点と同じ向きで読まない。
フードテスト 食品を用い、口腔内の残留等も確認する。 水だけでは捉えにくい食塊処理の情報が得られる。
VF/VE 食塊、残留、気道侵入等を専門的に確認する。 必要性と実施条件を判断し、支援方法を検討する。

MWSTが良好でも、全員が次に30mLへ進むわけではありません。目的、全身状態、病歴、観察所見に応じて次の評価を選びます。[1], [3], [4]

予後への読み替えはしない:3点から5点に上がったことは、その条件下で反応が良くなったという情報です。肺炎の確率、退院時の食形態、経口摂取再開までの日数を、点数だけから算出することはできません。

11|記録用PDF:各試行・最低点・その後の対応を残す

A4・2ページ。冷水3mLによる実施手順、1〜5点の判定、追加試行の条件、各試行と最低点の記録欄を掲載しています。2ページ目には食事場面の観察、相談・支援、再評価を記録できます。

改訂水飲みテスト 評価・記録シート(PDF)

出典をもとに、記録しやすい形式に整理しています。実施・採点の詳細は原版をご確認ください。追加の臨床記録は得点に含めません。

記録例(架空):「座位、冷水3mL、実施前の声質は清。第1試行:嚥下あり、呼吸良好、むせなし、嚥下後に湿性嗄声あり。3点。追加試行なし。ST・医師へ共有し、食事条件と追加評価を相談」。

12|参考文献・確認範囲

  1. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 医療検討委員会.摂食嚥下障害の評価2019.pp.25–26.PDF本文確認。
  2. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会.eラーニング:25. 摂食嚥下障害の評価(スクリーニングテスト).公開教材を確認。
  3. Tohara H, Saitoh E, Mays KA, et al. Three tests for predicting aspiration without videofluorography. Dysphagia. 2003;18(2):126–134. PubMed抄録確認。
  4. Osawa A, Maeshima S, Tanahashi N. Water-swallowing test: screening for aspiration in stroke patients. Cerebrovasc Dis. 2013;35(3):276–281. PubMed抄録確認。
  5. Otaka Y, Harada Y, Shiroto K, et al. Early swallowing rehabilitation and promotion of total oral intake in patients with aspiration pneumonia: A retrospective study. PLoS One. 2024;19(1):e0296828. 公開本文確認。
  6. Brage L, Nylén F, Hägglund P, Holmlund T. eTWST: An Extension to the Timed Water Swallow Test for Increased Dysphagia Screening Accuracy. Dysphagia. 2025;40:801–810. 2024年オンライン公開。公開本文確認。
  7. 日本歯科医師会.歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル.第III部・オーラルフレイルの評価:MWST.公開資料の手順・評点を照合。

確認日:2026年10月28日。日本語の学会資料・原著関連資料とPubMed等の英語論文を検索しました。2019年学会資料の該当本文、2003・2013年論文の公開抄録、2024・2025年の関連研究を照合。掲載年だけで検査の優劣を判断せず、水量・閾値・対象・評価する転帰を区別しました。声かけ、所要時間の運用例、架空症例、支援例は本記事独自の臨床導入案です。

STROKE LAB|口腔・嚥下評価シリーズ
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