セメス・ワインスタイン・モノフィラメント検査(SWMT)|手の感覚評価・実施手順と結果の読み方
「触れた」が分かる。
その境目を、生活の支援へ。
Semmes-Weinstein Monofilament Test
手の触圧覚を部位ごとに調べ、感覚と動作をつなぐ。

01|SWMTとは|「どれくらい弱い刺激に気づくか」
Semmes-Weinstein Monofilament Test(SWMT/SWM、セメス・ワインスタイン・モノフィラメント検査)は、太さの異なるナイロン糸を皮膚に当て、触れたことに気づく最小の刺激を調べる検査です。手のしびれや感覚低下を、部位ごとの触圧覚の閾値として記録します。
「手が動くのに物を落とす」「つまめるが指先を見続けないと不安」。こうした場面で、運動だけでは見えない感覚の側面を確かめます。ただし、物の形の識別、関節の位置覚、痛み・温度の感覚は別に評価します。SWMTの結果だけで、日常動作の自立や熱傷リスクのすべては決まりません。
代表点を数か所調べる場合と、両手全体を細かく調べる場合では異なります。一律の「標準○分」とせず、準備・説明・実測時間を記録してください。外来・訓練枠では、まず確認する部位を絞り、必要に応じて範囲を広げます。
02|準備|道具・姿勢・応答方法をそろえる
検査セット、部位を記録する用紙、前腕を支えるタオルを用意します。メーカー・型番・セットの本数を記録し、曲がり癖や破損のある糸は使いません。前腕を安定させ、検査する皮膚を見えない状態にします。まず説明と練習で、触れたら「はい」と答える約束を確認します。発話が難しい人は、非検査側の手などによる応答を決めます。
手指の腹、手掌、手背などから、症状と目的に合う部位を選びます。再評価で同じ場所を探せるよう、「示指指腹中央」のように具体的に記録します。胼胝、傷、浮腫、皮膚温、痛み、注意状態も残します。
末梢神経の評価では神経支配領域を参考に部位を選びます。一方、脳卒中後の感覚低下を、手の分布だけで末梢神経障害と判断しないことが大切です。
03|手の実施手順|軽くたわませて、反応を確かめる
以下はNorth Coast MedicalのTouch-Test手用セットの手順例です。採用する器具の説明書と照合し、施設内で手順を統一します。
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① 2.83から始める
検査点を決め、弱い刺激から確認します。本人には接触のタイミングを見せません。
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② 皮膚に垂直に接触させる
糸が軽くたわむまで押し、約1.5秒保持して離します。突く、滑らせる、強く押し込み続ける操作は避けます。
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③ 規定の回数で判定する
5本セットでは2.83・3.61は同じ部位で最大3回、1回でも感じれば陽性。4.31・4.56・6.65は1回です。反応がなければ次に強い糸へ進みます。
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④ 最小の検出番号を部位別に残す
番号・公称荷重・反応を記録します。色だけでは区別できない番号もあるため、数字を併記します。

文献や器具によって刺激回数・陽性基準が異なります。「毎回3回」「3回すべて正答」と独自に変更すると、以前の結果と比較しにくくなります。記録表に採用した方法を残しましょう。
04|結果の読み方|番号はグラムではない
2.83や4.31はフィラメントの識別に用いられる対数的な指標で、グラム数そのものではありません。強い糸で初めて気づくほど、触圧覚の閾値が高いことを示します。
| 番号 | 公称荷重の例 | 手の分類の目安 |
|---|---|---|
| 2.83 | 0.07 g | 正常範囲 |
| 3.61 | 0.4 g | 軽い触覚の低下 |
| 4.31 | 2 g | 防御感覚の低下 |
| 4.56 | 4 g | 防御感覚の喪失 |
| 6.65 | 製品表示を確認(Baselineでは300 g) | 深部圧覚のみ |
分類・荷重例はBaselineの資料に基づきます。メーカーの公称値を優先し、別製品の荷重をそのまま転記しないでください。
例えば、3.61は感じず4.31で反応した場合、5本セットでは「4.31を検出」と記録できます。ただし、その間の細かな閾値までは分かりません。2.83を感じた場合も、それより弱い刺激を調べたことにはなりません。
各部位の番号を足した「合計点」は作りません。前回と同じ部位・器具・判定基準で比較し、「示指は変化、母指は不変」のように分布で捉えます。防御感覚の分類は、生活上の皮膚保護を考える手がかりであり、熱い物に触れて安全を試すための基準ではありません。

05|信頼性と変化|「一段階改善」をどう扱うか
日本の脳卒中者36人の研究では、麻痺側の再検査信頼性は比較的良好でしたが、非麻痺側では低い値も報告されました。「非麻痺側なら必ず一定」という前提は置けません。
Sudaらの2021年の研究では、50人を対象に母指・示指のSWMTを検討し、段階分類の評価者間一致は重み付きκ=0.75・0.79でした。評価者内一致も良好でしたが、研究で使った20本セットの指標と、5本セットの分類は同じではありません。そこで示された測定誤差を「何グラム改善」「一段階なら確実」と読み替えないようにします。
研修を受けた未経験の作業療法士53人によるセンサー実験では、規定荷重や接触時間からのずれが報告されました。これは患者の改善効果を調べた研究ではありません。示唆は、数字の比較に先立ち、検者の当て方を練習・確認する必要があるという点です。
再評価では、触圧覚の変化と、物を落とす頻度・視線の依存・皮膚トラブルの変化を分けて記録します。SWMTだけから、回復の時期や復職の可否を予測することはできません。
06|臨床のストーリー|数値を生活の工夫につなぐ
「指先を見ないと、鍵が滑ってしまう」
脳卒中後のAさん。示指で4.31を検出し、つまみ動作では視線を外すと鍵がずれます。まず皮膚の状態、つまむ筋力、位置覚、注意の向け方を確認します。
練習では大きく扱いやすい物から始め、目で確認しながら接触部位と力加減を確かめます。成功しやすい姿勢と支持を整え、滑りにくい把持面や太い持ち手も試します。課題の難しさは、落下や擦れが生じない範囲で調整します。
家庭では手指を目で点検し、熱い容器を直接持たず、適切な持ち手や保護具を利用します。家族は「もっと強く握って」だけでなく、「指がどこに触れているか見よう」と具体的に支援します。
再評価で3.61を検出しても、直ちに生活が自立したとは判断しません。同じ鍵での滑り、所要時間、視覚的確認の量を再観察して、支援を調整します。

07|足底10g検査・ほかの感覚検査との違い
| 検査 | 中心となる問い |
|---|---|
| 手の段階的SWMT | どの強さの接触から気づくか。部位で違うか。 |
| 足底の10gモノフィラメント | 糖尿病足などで、防御感覚が保たれているか。 |
| 二点識別・触覚定位 | 二点を区別できるか、触れた場所を示せるか。 |
| 立体覚・位置覚 | 触って物を識別できるか、手指の位置を把握できるか。 |
10gは一般に5.07と表示されます。IWGDFの足病変予防ガイドラインでは、足底の定めた部位で実刺激と空試行を組み合わせて防御感覚を確認します。手の1.5秒保持や上記の反応回数を、そのまま足底検査のルールに置き換えません。
手の多段階評価と足底10g検査は、使う道具が似ていても目的・部位・判定が異なります。今回のPDFは手の段階的評価用です。足底検査には採用ガイドラインに対応した別の記録表を使います。
08|記録PDFと原資料
今回のPDFは、手の検査条件、部位別の検出番号・公称荷重、再評価、生活上の対応をまとめた2ページの記録用紙です。標準化された独立の「合計点尺度」ではなく、SWMTの測定を整理するために使います。
原資料を参照して説明を整理した臨床記録用紙です。実施時はお使いの器具の説明書をご確認ください。
参考文献・原資料
- North Coast Medical:Touch-Test Sensory Evaluator 使用説明書
- Fabrication Enterprises:Baseline Tactile monofilaments 使用説明書・荷重表
- 荒川達彌ほか.脳卒中患者におけるSemmes-Weinstein Monofilaments testの信頼性.2012;2(2):65–68.
- Suda M, et al. Validity and Reliability of the Semmes-Weinstein Monofilament Test and the Thumb Localizing Test in Patients With Stroke. Front Neurol. 2021;11:625917.
- Sığırtmaç İC, et al. Challenges in the application of Semmes-Weinstein monofilament testing: practitioner-related variables. 2026.
- Schaper NC, et al. Practical guidelines on the prevention and management of diabetes-related foot disease (IWGDF 2023 update). 2024.
文献確認:2026年10月31日。実施手順と荷重表はメーカー資料、信頼性は日英の原著を参照。イラスト・事例は説明用です。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)