慶應版KWCSTの実施・結果の読み方|ウィスコンシンカードの評価方法
KWCST
慶應版ウィスコンシンカード分類検査
やり方を変える力を、反応の流れから。
カードの色・形・数を手がかりに分類し、正誤を受けて調整する検査です。「見つける・保つ・切り替える」のどこで止まったかを、予定変更や作業の支援につなげます。

所要時間と、臨床での進め方
初めて担当するときの流れ
正規教示→各反応に正誤→次の反応を記録。検者が独自に色・形・数を教えない。第2段階の教示は規定通りに実施。生活では収納変更後に旧位置へ戻る等の具体場面を確認する。
KWCSTは何をしてもらう検査か
慶應版ウィスコンシンカード分類検査(KWCST)は、4枚の刺激カードへ反応カードを分類し、検査者からの正誤の情報を利用する課題です。色・形・数という3つの分類次元があり、反応カードは48枚。教示が2段階用意されています。[1]
最初に正しい分類を見つけること、合っていた方法を保つこと、通用しなくなったら変更することを追います。カードを何枚正しく置いたかだけでなく、誤りの後にどんな選択をしたかが重要です。
カードの意味を、図で理解する

一つの反応カードが複数の特徴で別々の刺激カードに対応するため、本人が何を基準に置いたかを推測して記録します。検査前にこの図で分類規則を練習すると、規則を発見する条件が変わります。記事の説明と実際の受検場面を分けます。
実施の流れ|正誤の後の一手を観察する
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分類を妨げる条件を確認
色・形・数の識別、視野・無視、聴力、教示理解、カードを置く動作を確認。覚醒、疲労、過去の受検・練習経験を記録します。
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第1段階を規定どおり実施
カードの順序・配置・教示をそろえ、反応位置と正誤、迷い、本人の発言を記録します。表情や指さしで正解を暗示せず、規定のフィードバックを返します。
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達成とカテゴリー変更を管理
慶應版は6回の連続正反応を満たした時点でカテゴリーを変更します。検査者は連続反応と切り替え時点を正確に追います。順序や例外処理はマニュアルに従います。
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第2段階の結果を分けて残す
定められた追加情報のもとで実施します。独自にヒントを増やすのではなく、同じ規則で第1・第2段階の成績を比較します。
実施概要は公式製品・採点支援の案内に基づきます。[1][2]

CA・PEN・DMS・IVRを、行動に翻訳する
| 指標 | 何を表すか | 結果から見ること |
|---|---|---|
| CA:達成カテゴリー数 | 規定を満たした分類カテゴリーの数。 | 少ないとき、発見・維持・切り替えのどこで止まったか。 |
| PEN:ネルソン型保続性の誤り | 誤った分類を反復する反応を、Nelson型の規則で数える。 | 誤りを受けて別の方針を試したか。総誤答数とは別。 |
| DMS:セット維持困難 | 成立しつつある分類の構えを維持しにくい反応。 | 途中で方針を失う条件、注意・保持の影響。 |
| IVR:言語による行為の制御障害 | 言葉で示す分類と行為の関係。 | 説明と実際の選択が一致するか。 |
これは指標の意味の説明です。PENを「前の正解ルールに固執した全ての誤り」と機械的に数えると、他の保続指標と混同します。境界例や複数特徴が一致するカードは慶應版の採点規則で判定します。[1][2]
CAの低さやPENの多さは、年齢・段階・使用版に合う基準と照合します。全員に共通の一点で前頭葉障害を診断せず、プロフィールと経過を読みます。DMSが少なくても、そもそも分類が成立する機会が少なかった場合には「維持は良好」と言い切れません。
点数から生活の何を見通せるか
| 観察した経過 | 生活で確かめる予測 | 支援の候補 |
|---|---|---|
| 誤りの後も同じ分類を続ける | 変更に気づいても、以前の方法へ戻る可能性。 | 一度止まる→変更点を確認→別の方法を一つ試す。 |
| 正しい分類が途中で崩れる | 割り込みで進行位置や方針を失う可能性。 | 途中位置の表示、割り込みを減らす。 |
| 第2段階で改善 | 情報を明示すると行動しやすい可能性。 | 短い手順と変更箇所の表示。 |
| 説明と実際の選択が違う | 言えるだけでは実行を保証しない。 | 実際の一手を見て確認する。 |
これらは生活場面で試す仮説です。KWCSTは病巣の位置、復職可否、一人暮らしの可否を単独で決める検査ではありません。行動を変えた経験が、別の日・別の活動でも使えるかを確認します。
脳卒中のWCST研究が示す範囲
Chiuらの研究では、WCST成績と生活機能との関連が検討されていますが、検査が生活全体を説明するわけではありません。この研究は慶應版の判定値を検証したものではないため、数値の流用ではなく実場面を追加する根拠として読みます。[3]
介入例|予定変更と、中断後の再開
収納場所が変わっても、前の場所を探し続ける
- 確認
- 「場所が変わった」という情報を理解しているか、目印を認識できるかを確認します。
- 試す支援
- 一度手を止め、「場所が変わっています。目印を確認しましょう」と一つずつ伝える。新しい場所を本人が見つけて取り出します。
- 促しを減らす
- 最初は口頭+目印、次は目印だけ、最後に自分で変更に気づいて確認できるかを見る。
- 再評価
- 以前の場所へ戻る回数、修正までの時間、翌日の再現性。
書類の仕分けで、話しかけられると方針が消える
- 観察
- 安全な模擬作業で、割り込みの前後の誤りと再開位置を記録。
- 試す支援
- 作業の規則を一行で表示し、中断前に途中位置へカードを置く。再開時は規則と位置を確認してから一枚処理。
- 再評価
- 中断後の最初の数枚の誤り、促し、本人が確認行動を使うか。
他の評価と再評価
| 評価 | KWCSTとの組み合わせ |
|---|---|
| BADS | 自分で計画し、時間を配分して複数の課題を進める場面。 |
| DEX | 生活での失敗・援助・本人と他者の見立て。 |
| CAT-R・記憶評価 | 方針を保持する土台となる注意・記憶。 |
| 実際の業務・家事 | 規則の変更、割り込み、完了確認をその人の活動で観察。 |
加齢の影響を考慮する
加戸らはKeio版を用い、発達・加齢による成績の違いを検討しています。同じCAでも、比較すべき年齢群と段階を明示して読みます。[4]
再評価では版・段階・間隔・受検経験を記録します。カードの正解を繰り返し練習するより、本人の生活で「変更に気づく→確認する→修正する」を練習し、必要な促しと修正時間を追います。
参考文献・実施資料

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)