骨盤ベルトで筋活動が減る理由とは?効果・巻き方・臨床での使い分け – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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骨盤ベルトで筋活動が減る理由とは?効果・巻き方・臨床での使い分け

Pelvic Belt and Muscle Activity

骨盤ベルトを巻くと、筋活動はなぜ減るのか。

骨盤ベルトは「筋を助ける道具」と思われがちです。ところが、健常成人20名の研究では違いました。ブリッジ位で筋電図(筋の電気活動を記録する検査)を測ると、体幹・大腿の4筋すべてで筋活動が有意に減少しました。この結果を「いつ・誰に・どう巻くか」の臨床判断へつなげる、先輩からの引き継ぎノートです。

UPDATED2026
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FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB

Global Burden
6.19億人
2020年の世界の腰痛人口の推定値。2050年には8.43億人に達する見込みです(GBD 2021, Lancet Rheumatol 2023)。
Participants
20
健常成人(21.60±1.08歳)を対象に、ブリッジ位で筋電図を測定した研究です(Cha et al., 2016)。
Muscles
4/4
ES・OI・RF・BFのすべてで、ベルト装着時に筋活動が有意に減少しました(Cha et al., 2016)。
Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
論文の結果は「増加」ではなく「減少」です。健常20名のブリッジ位で、ES・OI・RF・BFの筋活動がベルト装着で有意に下がりました。
02
筋活動の低下は、良いとも悪いとも言えません。目的次第です。疼痛を避けて動きたい場面では味方になります。
03
装着位置は目的で変えます。原著は上前腸骨棘(ASIS)の下で、腰仙部の安定化を狙う位置です。
04
効果は、ベルトなし・ありの比較で確かめます。動作時NRSとASLRを両条件で測ります。
05
ベルトは「卒業」前提の道具です。運動時中心で使い、体幹トレーニングと組み合わせて装着場面を減らします。
01
Clinical Encounter

その骨盤ベルト、何のために巻いていますか。

Case Vignette(教育用の架空症例)
生活期の脳卒中後に、腰と骨盤の後ろが痛む65歳男性

65歳男性。右脳梗塞による左片麻痺で、発症から14か月の生活期です。BRS(ブルンストロームステージ:麻痺の回復段階)は左下肢IV、FIM運動項目は78点。主訴は「歩き出しと立ち上がりで、腰と骨盤の後ろが痛い」で、NRSは安静時2、動作時5です。

初回評価では、左の仙腸関節付近に圧痛がありました。ASLR(能動的下肢伸展挙上テスト)は左3点・右1点。ブリッジでは麻痺側の骨盤が下がり、脊柱起立筋の緊張が目立ちました。ベルトを装着するとASLRは左1点に軽減しました。

骨盤ベルトやコルセットは、回復期でも生活期でも日常的に目にする装具です。ところが「なぜ巻くのか」を、筋の働きから説明できる人は多くありません。

この記事は、Cha et al.(2016)の論文を軸に、先輩から後輩へ引き継ぐつもりで整理しました。次の3つに答えられることがゴールです。

① ベルトは筋活動を、増やすのか、減らすのか。
② どんな痛みに、どこへ、どう巻くのか。
③ どう効果を確かめ、いつ卒業するのか。

先に断っておきます。この論文の対象は健常成人20名で、脳卒中患者ではありません。だから臨床では、結果をそのまま当てはめず、ベルトなし・ありの比較で個別に確認することが前提です。

02
Definition and Epidemiology

定義と疫学:骨盤ベルトの守備範囲。

PCB(骨盤圧迫ベルト:骨盤帯を外から締めて安定させるベルト)は、腰仙部の痛みに対して使われてきた装具です。腰痛は、世界で最も身近な運動器の問題のひとつです。

[観察研究] GBD 2021の解析(Lancet Rheumatol, 2023)です。2020年の腰痛人口は約6.19億人でした。2050年には約8.43億人と推定されています。

Definition
骨盤ベルトの目的は「骨盤帯の安定化」

PCBは、外から圧をかけて骨盤帯を安定させる道具です。協調・安定化の練習を可能にするとされます(Cha et al., 2016)。痛みのある動作でも運動を続けやすくする「橋渡し役」と捉えてください。

なぜ締めると安定するのか:3つの視点 [専門家合意]

Snijders et al.(1993, Clin Biomech)は、仙腸関節の安定を「形」と「力」で説明しました。ベルトは、その「力」を外から補う道具と整理できます。

01
形態的閉鎖(form closure)骨の形・靭帯

仙骨と寛骨の関節面の形、靭帯の張力による安定です。仙骨が骨盤にくさび状にはまり込む構造が土台になります。

02
力的閉鎖(force closure)筋・筋膜

筋・筋膜が生む圧迫力で、仙腸関節を締める仕組みです。動作中の安定は、この力の調整に支えられています。

03
外部圧迫(ベルト)仮説

ベルトは力的閉鎖を外から補うイメージです。筋が担う圧迫力の一部を肩代わりし、筋活動が下がる可能性があります。これは仮説です。

次の整理は、圧迫する高さの違いです。元記事の講義パートで扱った内容を、専門家合意として整理し直しました。

Pelvis Level
骨盤レベルの圧迫
— 仙腸関節を中心に骨盤帯周囲を圧迫
骨盤の動揺を抑え、歩行や立ち上がりの安定に寄与する
仙腸関節の過度な動きを制限し、痛みの軽減が期待される
臀筋・大腿筋の活動が効率化されるとされる
Lumbar Level
腰椎レベルの圧迫
— L3からL5付近を圧迫(負担が大きい部位)
腰椎の安定性を高め、動作中の不安定性を減らす
多裂筋・脊柱起立筋の負荷を軽減するとされる
腰痛の緩和が期待されるが、効果の根拠は限定的

[SR/MA] Cochraneレビューでも、腰部サポーターの効果は一貫していません。出典はvan Duijvenbode et al.(2008)です。だから臨床では、「巻けば効く」と決めず、目的と部位を先に決めます。

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STROKE LABは、脳神経疾患や整形外科疾患を専門とするスタッフが、動作を丁寧に分析します。痛みや動きにくさの原因を一緒に探し、退院後も続けられる方法をご提案します。まずは無料相談で、今のお悩みをお聞かせください。

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03
Mechanism

作用機序:筋活動の「減少」をどう読むか。

先に結論です。骨盤ベルトを装着すると、ブリッジ位で測った4つの筋の活動は、いずれも有意に減少しました。

「骨盤ベルトは体幹筋の活動を高める」という説明を見かけますが、この論文の実測は逆です。

Key Point
筋活動の減少は「仕事の肩代わり」と読む

同じ課題を、より小さな筋活動でこなせた、という事実です。外からの圧迫が、筋の担う安定化の一部を補った可能性があります。ただし著者の結論は「可能性がある」にとどまります。

研究で使用した骨盤ベルト(The Com-Pressor)の種類と圧縮部位の設定

研究デザインを整理する [観察研究]

被験者は健常成人20名です。測定は表面筋電図(sEMG:皮膚の上から筋の電気活動を記録する検査)で行いました。対象の筋は4つです。脊柱起立筋(ES)・内腹斜筋(OI)・大腿直筋(RF)・大腿二頭筋(BF)です。課題はブリッジ位(仰向けで膝を立て、殿部を持ち上げた姿勢)です。

ベルトは上前腸骨棘(ASIS:骨盤前方の出っ張り)の下に置き、圧をかけてブリッジ位を安定させました。ベルトなしの条件と比較しています。

EVIDENCE
Cha et al.(2016):骨盤ベルトがブリッジ位の筋活動に与える影響

対象・方法[観察研究]:被験者内で、ベルトなし・ありのブリッジ位を比較した実験研究です。対象は健常成人20名です。年齢は21.60±1.08歳、身長は171.20±6.23 cm、体重は71.23±8.64 kgでした。sEMGでES・OI・RF・BFを測定しました。ベルトはThe Com-Pressor(OPTP, Minneapolis, USA)です。ASIS下に装着しました。

結果:ベルトなしと比べ、ベルト装着中はES・OI・RF・BFのすべてで筋活動が有意に減少しました。

著者の結論:外から圧縮するベルトは、骨盤帯の安定性を改善する可能性があります。腰仙部と大腿部の神経-筋の運動制御も、変えうると述べています。

限界[専門家合意]:対象は若年の健常者で、課題はブリッジのみです。疼痛への効果、長期使用の影響、脳卒中患者への適用は検証されていません。

だから臨床では、課題を2つに分けます。筋を働かせたい課題と、疼痛を避けて動きたい課題です。前者ではベルトなしの練習を必ず入れ、後者ではベルトを味方にします。

04
Differential Diagnosis

鑑別診断:巻いてよい痛みかを見きわめる。

巻く前に、痛みの原因が「巻いてよいもの」かを確かめます。仙腸関節痛は、単独の徒手検査では精度が限られます。

[観察研究] Laslett et al.(Man Ther, 2005)の研究です。疼痛誘発テストを、単独と組み合わせの両方で検討しました。対象は、distraction・thigh thrust・compressionなどのテストです。3つ以上が陽性になると、仙腸関節痛の可能性が高まります。サンプル数は原著をご確認ください。

鑑別疾患 共通点 鑑別ポイント 参考検査
仙腸関節痛 腰殿部痛、動作時痛、立ち上がりで増悪 痛む部位が片側の後上腸骨棘付近に限局しやすい。複数の疼痛誘発テストで再現される 疼痛誘発テストの組み合わせ、ASLR
腰椎椎間関節・椎間板性の腰痛 腰痛、動作時痛 伸展・回旋で増悪すれば椎間関節、前屈や座位で増悪すれば椎間板を疑う Kemp test、運動方向別の症状変化の確認
腰部脊柱管狭窄症・神経根症状 腰殿部痛、歩行での増悪 下肢痛やしびれを伴う。歩行で悪化し、前屈や座位で軽減する(間欠跛行) SLR、神経学的検査(筋力・反射・感覚)、MRI(医師)
股関節疾患(股関節OAなど) 殿部痛、歩行時痛 鼠径部痛を伴う。股関節の内旋制限がみられる 股関節ROM、FADIR・FABER、画像(医師)
レッドフラッグ(骨折・感染・腫瘍・馬尾症候群) 腰痛 安静時痛・夜間痛、発熱、体重減少、排尿排便障害、サドル領域のしびれがある 医師へ即時報告、血液・画像検査
巻く前に、巻いてよい痛みかを疑うこと。レッドフラッグがあれば、装具の前に医師へ報告します。
05
Assessment and Scoring

評価尺度と採点基準:効果を数字で確かめる。

ベルトの評価は「楽になった気がする」ではなく、前後比較で行います。基本は、ベルトなし・ありの2条件で、同じ課題を同じ順で測ることです。

Condition A
ベルトなし(基準条件)
— 先に測る
安静時・動作時のNRSを記録する
ASLRを左右で実施し、各0から5点で採点する
ブリッジ(または問題動作)で、疼痛と骨盤の動揺を観察する
Condition B
ベルトあり(比較条件)
— 位置と圧を調整してから測る
ASIS下など、狙う部位に位置を合わせる
同じ課題を同じ順で再測定する
差分を記録し、疼痛の軽減と動作の安定を判断する
項目 採点基準 カットオフ値 解釈
ASLR(左右各0から5点) 0:困難なし / 1:わずかに困難 / 2:やや困難 / 3:かなり困難 / 4:非常に困難 / 5:挙上不能 確立されたカットオフはなし。0点が正常 左右差と、ベルトなし・ありの変化で読む。ベルトで低下すれば、荷重伝達を補っている可能性がある
NRS(疼痛、0から10) 0:痛みなし から 10:想像できる最悪の痛み(11段階) MICの目安は、ベースラインから30%の改善(絶対値の例は2点) 動作時NRSを、ベルトなし・あり両条件で記録する
ODI(10セクション、各0から5点) 疼痛強度・身の回りの世話・持ち上げ・歩行・座位・立位・睡眠・性生活・社会生活・移動。合計点÷50×100で%に換算 0から20%:軽度
21から40%:中等度
41から60%:重度
61から80%:強い障害
81から100%:寝たきり、または症状の誇張
MICの例は10ポイント
生活の困難さの全体像を捉える。経過を追う指標として使う
表面筋電図(sEMG) 最大随意収縮に対する割合(%MVC)、または条件間の相対比 カットオフはなし(Cha et al.は条件間比較のみ) 絶対値ではなく、同一被験者の条件間の変化で読む。電極位置や機器で値が変わる
SCORING CRITERIA
測定特性:信頼性・妥当性・MCID(臨床的最小変化量)

ASLR[観察研究]:Mens et al.(Spine, 2001)の研究です。妊娠後の後方骨盤痛の女性で、信頼性と妥当性を検討しました。カットオフ値は確立されていないため、左右差とベルトなし・ありの差で解釈します。サンプル数は原著をご確認ください。

NRS・ODIのMCID[専門家合意]:Ostelo et al.(Spine, 2008)の国際合意です。疼痛(0から10)とODIは、ベースラインから30%の改善が目安とされました。これが臨床的に意味のある最小変化です。絶対値の例は、NRSで2点、ODIで10ポイントです。

ODIの区分[専門家合意]:Fairbank & Pynsent(Spine, 2000)が整理しました。

だから臨床では、初回評価でNRSとASLRを必ず両条件で記録します。次回以降は、同じ手順で比べるだけです。

06
Evidence for Intervention

介入のエビデンス:巻く・動く・卒業する。

介入は3層で考えます。ベルト自体の効果、装具単独の限界、そして運動療法の裏づけです。エビデンスは、ベルトよりも運動の側に厚く積まれています。

01
適応を判定するベルトなし・あり比較

ベルトなしでNRSとASLRを測り、次にベルトありで再測定します。変化がなければ、巻き続ける理由は弱くなります。

02
位置と圧を決める位置・圧

原著はASIS下に装着し、圧をかけました。腰仙部の安定化を補いたいなら、ASIS下が目安です。ASIS上では仙腸関節を真っすぐ押さえにくいと推察されます[専門家合意]。圧は「痛みが減る最小限」から始めます。過度な締めつけは血行を悪くします。

03
巻いた状態で動く運動併用

疼痛が出にくい状態で、ブリッジなどの体幹・骨盤の安定化運動を行います。疼痛のない動作を体験することが、感覚入力や筋の循環の改善につながる、と考えられています[専門家合意]。目安は、5秒保持×10回×2セット、週3から5回です。

04
巻かずに動く(漸減)卒業

疼痛が安定したら、装着場面を減らします。運動中のみ、次に難しい動作のみ、という順です。目安は2から4週ごとに1段階です[専門家合意]。静的な運動から動的な運動へ、バリエーションを広げます。

EVIDENCE
介入エビデンスと運動パラメータ

ベルトの効果[観察研究]:Mens et al.(Clin Biomech, 2006)の研究です。妊娠関連の骨盤帯痛の女性で、ベルトの力学的効果を検討しました。装着でASLRの困難感が軽減すると報告されています。対象が異なるため、他の集団への適用は慎重に判断してください。サンプル数は原著をご確認ください。

腰部装具[SR/MA]:van Duijvenbode et al.(Cochrane, 2008)のレビューです。腰痛に対する腰部サポーターを統合しました。予防では無介入や運動より優れるとは言えず、治療でも効果は一貫していません。

運動療法[SR/MA]:Hayden et al.(Cochrane, 2021)のレビューです。慢性腰痛への運動療法を249試験で統合しました。運動は、疼痛と機能を改善すると結論づけています。

ガイドライン[専門家合意]:George et al.(JOSPT, 2021)の腰痛CPGです。運動療法や患者教育を中心に据えた介入を示しています。

パラメータ[専門家合意]:ブリッジは5秒保持×10回×2セット、週3から5回。ベルトの装着は運動中の20から30分を基本とし、常時装着は避けます。装着場面は2から4週ごとに1段階減らします。これらは臨床上の目安で、論文で検証された数値ではありません。

だから臨床では、ベルトを「単独の治療」とは扱いません。運動を続けるための補助として位置づけ、最初から卒業の道筋を描きます。

STROKE LAB代表 金子唯史
Message from CEO
装具に頼る前に、動きの原因を一緒に考えませんか。

腰や骨盤の痛みには、装具が役立つ場面もあれば、動作そのものを見直すべき場面もあります。私たちは、その見きわめから丁寧にお手伝いします。退院後の不安や、これからの過ごし方も、まずはお聞かせください。

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07
Interprofessional Care

多職種連携と環境調整:巻かせっぱなしにしない。

ベルトは、装着する人・見守る人・処方する人がそれぞれ違います。情報が途切れると、「巻いたまま」になりやすくなります。

装着で確認したい3つの視点 [専門家合意]

装着の仕方:骨盤ベルトやコルセットは、適切な位置と強さで装着します。過度に締めると血行が悪くなり、筋の働きが落ちる恐れがあります。装着方法は、必ず専門職が確認します。
使用時間:長時間の使用による筋萎縮や依存は、臨床では懸念されています。ただし強い研究根拠はなく、運動時を中心に管理するのが現実的です。
環境調整:座面の高さやクッション、足底の接地を先に整えます。それでも残る痛みに、ベルトを検討します。
Mentor’s Voice

「石川さん、ベルトは「巻けば安心」の道具ではありません。位置と強さを確認して、巻いた後の痛みも必ず測り直しましょう。」

「使う時間も、あなたが決めるべき評価項目です。運動のときに使って、普段の生活では少しずつ外していく設計にしましょう。」

[専門家合意] George et al.(JOSPT, 2021)のCPGでも、患者教育と運動が中心です。ベルトの使い方も、患者さんへ説明して初めて機能します。

職種 この疾患・症状における評価項目 主な介入内容 他職種との連携ポイント
PT 動作時NRS、ASLR、ブリッジや歩行での骨盤動揺 ベルトなし・あり評価、位置と圧の調整、体幹・骨盤の安定化運動 装着方針を看護師・OTへ共有し、漸減計画を医師と確認する
OT 座位姿勢、更衣・トイレ動作での痛みと着脱の可否、ODI 座面・クッションなどの環境調整、着脱動作の練習 環境調整の結果をPTへ返し、ベルトが必要な場面を絞る
ST 食事中の姿勢、腹部の圧迫感、呼吸・嚥下への影響(むせなど) 食事姿勢の調整、装着圧が強すぎないかの確認 食事場面の観察結果を、看護師・PTへ伝える
看護師 圧迫部位の皮膚(発赤・褥瘡)、感覚障害、夜間の装着状況 着脱の介助、皮膚保護、装着時間の見守り 皮膚トラブルは、すぐにPT・医師へ報告する
医師 診断(レッドフラッグの除外・画像)、適応の判定 装具の処方・指示、鎮痛薬など医学的管理 疑い所見を医師へ報告し、使用期間の方針を共有する
MSW 費用の負担状況、購入・使用状況、退院後の生活環境 治療用装具の費用制度(療養費など)の案内、退院後の相談先の調整 制度上の必要書類を、医師・PTと調整する
08
Pitfalls and Clinical Reasoning

つまずきポイントと臨床判断のコツ。

論文を読んでも、現場で迷う場面は必ず出てきます。ここでは、新人がつまずきやすい3点を先に共有します。

Pitfalls — よくある失敗パターン
新人臨床家が陥りやすい3つのつまずきポイント
!
「筋活動が減った=良い」と決めつける:論文が示したのは、4筋の活動が減ったという事実だけです。目的が「疼痛を避けて動く」のか「筋を働かせる」のかを先に決めます。筋を働かせたい課題では、ベルトなしの練習を必ず入れます。
!
位置と圧を確認せずに巻く:ASISの上と下では、狙う部位が変わります。巻いた後に、疼痛とASLRを必ず再評価してください。過度な締めつけは、血行を悪くします。
!
健常者20名の結果を、そのまま患者に当てはめる:対象は若年の健常者で、課題はブリッジのみです。脳卒中や慢性痛での効果は別問題です。ベルトなし・ありの評価で、個別に確かめます。

臨床判断のコツ:3つの問い

迷ったら、次の3つの問いに戻ります。① 目的は何か。② ベルトなし・ありで変わるか。③ 卒業の道筋はあるか。

[SR/MA] 腰部サポーターの効果は一貫していません(van Duijvenbode et al., 2008)。長期使用による筋萎縮や依存の懸念は専門家の意見であり、この点を直接検証した根拠は限られます。だから「巻きっぱなし」を避ける設計が安全側の判断です。

Mentor’s Voice

「巻いて楽になった、で終わらせないでください。どの動作で、どのくらい楽になったかを数字で残すと、外す日を決められます。」

ベルトは目的ではなく、運動を続けるための橋渡しです。
09
Prognosis and Goal Setting

予後とゴール設定:卒業までを設計する。

ゴールは、ベルトなしで動ける状態です。腰痛は再発しやすいため、装具に頼らない運動習慣が、長期の要になります。

Goal Setting
巻き始めた日に、外す日の計画を立てる

短期(2から4週):動作時NRSが30%以上低下、またはODIが10ポイント前後低下。基準はOstelo et al.(2008)のMIC目安です。中期(1から3か月):装着場面を運動時のみへ限定。長期:ベルトなしで問題動作を再現でき、自主トレを継続できる状態。

[専門家合意] Ostelo et al.(Spine, 2008)の国際合意が、変化量の判断基準です。運動の裏づけは、Hayden et al.(Cochrane, 2021)が示す[SR/MA]に基づきます。数値は目安ですので、個別の生活目標と合わせて調整してください。

ベルトは、外す日から逆算して処方します。
10
FAQ

よくある質問。

Q. 骨盤ベルトを巻くと、筋活動は増えますか、減りますか。
A.

健常成人20名のブリッジ位を調べたCha et al.(2016)の研究です。骨盤ベルトの装着で、脊柱起立筋・内腹斜筋・大腿直筋・大腿二頭筋の筋活動が有意に減少しました。増加を示した研究ではありません。ただし対象は若年の健常者で、疼痛や長期効果は検証されていません。

Q. 骨盤ベルトは、どの位置に巻けばよいですか。
A.

原著では上前腸骨棘(ASIS)の下に装着し、圧をかけてブリッジ位を保持しました。腰仙部の安定化を狙うなら、ASIS下が目安です。ASIS上では仙腸関節を真っすぐ押さえにくいと推察されますが、これは専門家の見解です。狙う部位と患者さんの反応を見て調整してください。

Q. 骨盤ベルトやコルセットを長く使うと、筋力は落ちますか。
A.

長時間の使用で筋萎縮や依存が起こる可能性は、臨床で懸念されています。ただし本論文はこの点を検証しておらず、強い根拠はありません。Cochraneレビュー(van Duijvenbode 2008)でも、腰部サポーターの効果は一貫していません。運動時を中心に使い、体幹トレーニングと併用しながら装着場面を減らしてください。

Q. 骨盤ベルトとコルセットは、何が違いますか。
A.

一般に骨盤ベルトは仙腸関節を含む骨盤帯を、コルセットはL3からL5など腰椎レベルを支える目的で使われます。圧迫する部位が異なるため、狙う部位で使い分けます。この使い分けは専門家の見解です。

Q. 骨盤ベルトの効果は、臨床でどう確認しますか。
A.

ベルトなし・ありの2条件で、同じ課題を同じ順で測ります。動作時NRS(0から10)とASLR(左右各0から5点)を記録して比較します。NRSは30%以上の改善がMIC(臨床的最小変化量)の目安です。変化がなければ、巻き続ける理由は弱くなります。

Q. 脳卒中後の患者さんに、骨盤ベルトを使ってもよいですか。
A.

脳卒中患者を対象に、骨盤ベルトの筋活動への効果を調べた根拠は、この論文にはありません。使う場合は医師の指示のもと、ベルトなし・ありの評価で個別に効果を確認してください。感覚障害がある方は、圧迫部位の皮膚を看護師と一緒に確認します。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

退院後のリハビリは、STROKE LABへご相談ください。当施設は、脳神経疾患や整形外科疾患に対するスペシャリストが、皆さまのお悩みを解決します。

STROKE LABの施設紹介バナー

Our Strength
STROKE LABの強み
— 動作を分析し、原因から考える
脳神経疾患・整形外科疾患のスペシャリストが対応します
一人ひとりの動作を丁寧に分析し、痛みや動きにくさの原因を探ります
退院後も続けられる自主トレをご提案します
What We Do
取り組める内容
— 退院後の困りごとに対応
麻痺や歩行、立ち上がりなどの動作の練習
体幹や骨盤まわりの安定性、腰や骨盤の痛みのご相談
装具やベルトの使い方に関するご相談

Voice from Mentors

「生活期の患者さんが、歩き出すたびに腰の後ろを痛がり、コルセットを常用していました。外してもらい、ベルトなし・ありで痛みと下肢の挙上を比べました。楽になる動作だけを選び、運動時のみ使う設計にしています。3週で常用をやめられ、「巻いて動く練習をする」ことが大切だと学びました。」— 理学療法士・経験10年・脳卒中/整形外科領域

「車いす座位で骨盤が後ろへ倒れ、食事中に腰痛を訴える方がいました。ベルトの前に、座面とクッション、足底の接地を調整しました。看護師には圧迫部位の皮膚確認を依頼しています。座位が整い、ベルトなしで食事を過ごせました。環境調整が先だという学びでした。」— 作業療法士・経験7年・生活期リハビリ

Message from CEO
退院後の痛みや動きにくさに悩むあなたも、
諦めないでください。
STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

退院した後に、痛みや動きにくさが続いて、不安になる方は少なくありません。装具を使うべきか、運動を続けるべきか、迷うこともあると思います。

大切なのは、今の体の状態と動きを、丁寧に見ることです。痛みの原因を一緒に探し、続けられる方法を一緒に選んでいきましょう。

まずは無料相談で、今のお悩みをお聞かせください。あなたの状況に合わせて、次の一歩をご提案します。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

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References

参考文献。

01 Cha HG, et al. The effects of a pelvic belt on trunk and lower extremity muscles in the bridge position. 2016. PubMed Central PMC5276746. PMCで開く
02 GBD 2021 Low Back Pain Collaborators. Global, regional, and national burden of low back pain, 1990-2020, its attributable risk factors, and projections to 2050: a systematic analysis of the Global Burden of Disease Study 2021. Lancet Rheumatol. 2023;5(6):e316-e329.
03 Snijders CJ, Vleeming A, Stoeckart R. Transfer of lumbosacral load to iliac bones and legs. Part 1: Biomechanics of self-bracing of the sacroiliac joints and its significance for treatment and exercise. Clin Biomech. 1993;8(6):285-294.
04 Laslett M, Aprill CN, McDonald B, Young SB. Diagnosis of sacroiliac joint pain: validity of individual provocation tests and composites of tests. Man Ther. 2005;10(3):207-218.
05 Mens JMA, Vleeming A, Snijders CJ, Koes BW, Stam HJ. Reliability and validity of the active straight leg raise test in posterior pelvic pain since pregnancy. Spine. 2001;26(10):1167-1171.
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08 Hayden JA, Ellis J, Ogilvie R, Malmivaara A, van Tulder MW. Exercise therapy for chronic low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2021;9:CD009790.
09 George SZ, Fritz JM, Silfies SP, et al. Interventions for the management of acute and chronic low back pain: revision 2021. J Orthop Sports Phys Ther. 2021;51(11):CPG1-CPG60.
10 Ostelo RWJG, Deyo RA, Stratford P, et al. Interpreting change scores for pain and functional status in low back pain: towards international consensus regarding minimal important change. Spine. 2008;33(1):90-94.
11 Fairbank JCT, Pynsent PB. The Oswestry Disability Index. Spine. 2000;25(22):2940-2952.
12 金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.

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