パーキンソン病で何から運動を始めればいいか|原因と対策・自宅でできる工夫
何から始めればいいか、迷ったら。
パーキンソン病と診断されて、運動を勧められたものの、何から手をつければいいかわからない。そんな声をよく聞きます。動きにくさの原因は一つではなく、体を動かす目的も人によって違います。原因を整理し、今日から自宅で始められる第一歩をご紹介します。

何を、どこから始める?
診断を受けた直後、あるいはしばらく経ってからでも、「運動が大事」とだけ聞かされて、具体的に何をすればいいのかわからないまま時間だけが過ぎてしまう。そんなご家族の声を、私たちは何度も聞いてきました。動画やパンフレットを見ても、症状も体力も人それぞれで、自分に合うものがどれかわからない、という戸惑いです。
大切なのは、「何が原因で動きにくいのか」を知ったうえで、優先順位をつけて始めることです。順番を間違えなければ、運動は決して怖いものではありません。
パーキンソン病における運動は、症状の進行そのものを止める薬ではありませんが、体力・バランス・生活のしやすさを保つための、もう一つの重要な柱です。ただし「とりあえず歩く」「とりあえず体操する」だけでは、かえって疲れてしまったり、転倒の不安が先に立ってしまったりすることもあります。まずは、動きにくさの背景にある原因を整理するところから始めましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
動きにくさの原因を、整理する。
「動きにくい」とひとことで言っても、その背景にある原因はいくつも重なっています。体の動き自体の症状(運動症状)と、体力や気分に関わる症状(非運動症状)の両方が、運動のしにくさに影響します。どこに当てはまるかを知ることが、運動選びの第一歩です。

| 原因のタイプ | 運動にどう影響するか |
|---|---|
| 筋固縮・無動 | 体がこわばり、動き出しに時間がかかる。ストレッチや大きく動く練習が助けになる |
| 姿勢反射障害 | バランスを崩したときに立て直しにくく、転倒への不安につながりやすい |
| すくみ足 | 歩き出しや方向転換で足が止まりやすい。目印やリズムなどの工夫が効きやすい |
| 起立性低血圧 | 立ち上がり時にふらつきやめまいが出やすく、急な起立を避ける工夫が必要 |
| 疲労感・意欲低下 | やる気が出にくく、続けること自体が難しく感じられることがある |
| 認知機能・注意の低下 | 二つのことを同時に行う場面(会話しながら歩く等)で動きが乱れやすい |
ここで大切なのは、「気合が足りないから動けない」のではないということです。疲れやすさや意欲の低下も、症状の一部として起こりえます。原因を知ることで、無理な目標を自分に課さずに済み、続けやすい運動を選べるようになります。
STROKE LABの視点:始める順番の考え方。
運動の種類はたくさんありますが、何をやるかより先に、どの順番で積み上げるかが大切です。私たちは次の4段階で組み立てることをお勧めしています。

ステージ1:姿勢を整える。座った状態で胸を開く、背すじを伸ばすストレッチから始めます。固縮でこわばった体をゆるめ、次の動きの土台をつくります。
ステージ2:大きく動く練習をする。腕を大きく振る、足を大きく踏み出すなど、いつもより一回り大きな動きを意識して繰り返します。動きが小さくなりがちな症状に、直接働きかけます。
ステージ3:バランスと立ち直りを練習する。椅子からの立ち上がりや、軽い重心移動を安全な環境で行い、崩れた姿勢を立て直す感覚を養います。
ステージ4:持久力を少しずつ伸ばす。ここまでの土台ができてから、ウォーキングや自転車こぎなど、時間をかけて行う有酸素運動に取り組みます。
いきなりステージ4のウォーキングから始めてしまうと、姿勢やバランスの土台がないまま歩くことになり、疲れやすさや転倒の不安が先に立ってしまうことがあります。順番を守ることが、遠回りのようで実は一番の近道です。
パーキンソン病に対するさまざまな運動介入の効果をまとめた系統的レビューでは、歩行速度やバランス、日常生活動作の指標において、運動を行った群で改善が報告されているとされています。運動の種類は一様ではなく、その人の状態に合わせて選ぶことの重要性も指摘されています。
限界:レビューに含まれる研究は運動の種類・期間・対象者の症状の程度がさまざまで、単純にどの運動が一番良いとは言い切れません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。運動は薬による治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
自宅での運動が、一般的な順番に沿った土台づくりだとすれば、専門施設で目指すのは、その方の症状・体力・生活場面に合わせて強度や課題を調整する個別アプローチです。特に次のような場合は、専門的な評価が力を発揮します。
1. 大きく動く運動学習の強度設定。動きの幅を広げる練習は、やりすぎても足りなくても効果が出にくいため、その人に合った強さと回数を見極めます。
2. 二重課題への対応。会話をしながら歩く、荷物を持ちながら方向転換するなど、生活で実際に起こる場面を想定した練習を段階的に取り入れます。
3. 転倒リスクの評価。すくみ足や姿勢反射障害の程度を確認し、安全に負荷を上げられる範囲を見極めたうえで運動を組み立てます。
STROKE LABが軸足を置くのは、大きく動く運動を中心に据えながら、その人の生活場面に合わせて課題を組み立てていくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。
動きの「大きさ」に焦点をあてた集中的な運動療法(LSVT BIG)を検証した無作為化比較試験では、別の運動プログラムや自宅練習より運動症状の指標が大きく改善し、その効果が16週間後にも維持されていたと報告されています。決められた強度と回数で大きな動きを繰り返し学習することが、鍵になると考えられています。
限界:集中的な訓練には決められた頻度や条件があり、専門的な評価と指導が前提です。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。運動療法は薬の代わりではなく、組み合わせて使うものです。より専門的な内容は、医療者向けのLSVT BIG解説もご覧ください。
脳リハ.comのYouTubeでは、姿勢づくりから大きく動く体操まで配信しています。今日のステージに合わせて、無理のない範囲で試してみてください。
自宅でできる工夫。
専門施設に通えない日も、自宅の環境を少し整えるだけで運動が続けやすくなります。「安全な場所を作る」「時間帯を選ぶ」「目印を使う」の3つを意識してみてください。
安全な場所を作る。運動をする場所には、つかまれる手すりや椅子を近くに置き、床の物や滑りやすいマットは片付けておきます。転倒への不安が減ると、体は動かしやすくなります。
時間帯を選ぶ。薬の効果がしっかり出ている時間帯(オン時間)は、バランスや持久力を高める運動に向いています。効果が薄れる時間帯(オフ時間)は、座ってできるストレッチなど、負担の少ないメニューに切り替えましょう。服薬時間と運動時間の組み合わせは、主治医と相談しながら決めると安心です。
目印を使う。すくみ足がある方は、床にテープでラインを引き、そのラインをまたぐように歩く練習が助けになります。メトロノームや音楽のリズムに合わせて足を出す方法も、動き出しのきっかけになります。運動全体の種類や進め方は体操・自主トレ大全にまとめていますので、あわせてご覧ください。

専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、原因を評価したうえで、その人に合う運動の種類・強度・頻度を一緒に組み立てます。特に転倒の不安が強い方、すくみ足がある方、運動をしても効果を感じにくい方は、自己流で進める前に一度評価を受けることをおすすめします。薬の調整は主治医の役割で、私たちは体の動きと生活の側から支えます。
受診・相談の目安は、転倒が増えてきた、立ちくらみが強くなった、運動をする気力そのものが続かない、といったときです。これらは症状の変化のサインであることがあり、自己判断せず神経内科・主治医に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. パーキンソン病と診断されました。運動は何から始めればいいですか?
Q. 薬が効いている時間と切れている時間で、運動のやり方を変える必要がありますか?

Q. 運動をすると症状の進行を遅らせられますか?
Q. すくみ足があって歩くのが怖いです。運動しても大丈夫ですか?
Q. 疲れやすくてやる気が出ないときは、運動を休んだほうがいいですか?
Q. 自宅での運動と、専門施設でのリハビリは何が違いますか?
運動の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。今の症状・体力・生活場面を丁寧に評価したうえで、どの段階から始めるべきかを一緒に考えます。転倒への不安が強い方、すくみ足でお困りの方、運動の効果を感じにくい方も、まずはご相談ください。薬の調整は主治医を尊重し、体の動きと生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
一つ前の段階に戻ればいい。

「運動しましょう」という言葉だけが独り歩きして、かえって何もできなくなってしまう。そんな方に、たくさん出会ってきました。原因を知らないまま始めると、うまくいかないことを自分のせいだと思い込んでしまうこともあります。
お伝えしたいのは、難しく感じたら、一つ前の段階に戻ればいいということです。姿勢が整わなければ姿勢から、疲れが強い日は座ってできることから。順番を守れば、運動は誰にとっても続けられるものになります。
何から始めればいいか迷ったら、どうぞ一度ご相談ください。今の状態を一緒に確認し、あなたに合う一歩を見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。症状の出方や適切な運動量は一人ひとり異なります。運動を始める前に、必ず主治医・専門家にご相談ください(最終確認日:2026年9月13日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Goodwin VA, et al. The effectiveness of exercise interventions for people with Parkinson’s disease: a systematic review and meta-analysis. Mov Disord. 2008;23(5):631-640.
- Ebersbach G, et al. Comparing exercise in Parkinson’s disease—the Berlin LSVT BIG study. Mov Disord. 2010;25(12):1902-1908.
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
※上記文献情報は生成AIの学習データに基づき記載しており、ウェブ検索による最新確認は行っておりません。公開前に一次資料での照合をお願いいたします。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)