パーキンソン病で痛くて運動する気になれない|原因と対策・自宅でできる工夫
痛いのに、動けと言われても。
パーキンソン病では、体のあちこちが痛んで運動どころではない、という方が少なくありません。痛みにはいくつもの種類があり、原因によって対処の仕方も変わります。「動かないから治る」のではなく、「動かないほど痛みが増える」ことも多いのが実情です。原因の見分け方と、今日から無理なくできる工夫を整理します。

「動いたほうがいいのは、わかっている。」
朝、体を起こすだけで肩や腰がこわばって痛む。腕を上げようとすると肩に電気が走るように痛い。足がつるような感覚があって、歩くのも怖い。「運動しましょう」と言われるたびに、心のどこかで「痛いのに、どうやって」と思ってしまう——。そう感じている方は、決して少なくありません。
大切なのは、痛みを我慢して無理に動くことではありません。痛みの正体を知り、痛みが少ない動き方を見つけることです。
パーキンソン病では、運動症状(動きにくさ・こわばり・ふるえ)だけでなく、痛みを訴える方がとても多いことがわかっています。実は、パーキンソン病の方の半数以上が、経過のどこかで何らかの痛みを経験するといわれています。しかも痛みの原因はひとつではなく、いくつかのタイプに分けられます。まずは自分の痛みがどのタイプに近いかを知ることから始めましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
痛みの、5つのタイプと原因。
「痛み」とひとくくりにされがちですが、パーキンソン病でみられる痛みは、起こり方も対処もそれぞれ違います。自分の痛みがどのタイプに近いかを知ると、なんとなく我慢するしかなかった痛みに、具体的な手の打ちようが見えてきます。代表的な5つのタイプを整理します。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| ① 筋肉・関節の痛み | こわばりや姿勢の変化から、肩・腰・首・股関節などに起こる。もっとも多いタイプ。五十肩のような肩の痛みもここに含まれる |
| ② ジストニア性の痛み | 足の指が丸まる、足がつるように力が入り続けるなど、異常な力の入り方に伴う痛み。朝方や薬の効果が薄れた時間帯に出やすい |
| ③ 神経の痛み | しびれる、電気が走る、ピリピリするといった痛み。姿勢の変化で神経が圧迫されて起こることもある |
| ④ 中枢性の痛み | はっきりした原因が見当たらないのに、体の奥のほうがじんわり痛む、重だるいといった感覚。病気そのものが痛みの感じ方に影響すると考えられている |
| ⑤ オフ関連の痛み | 薬の効果が薄れる時間帯(オフ)に強まる痛み。上記①〜④のどれとも重なりうる、時間帯に注目したタイプ |
加えて、姿勢の変化(前かがみの姿勢、体が横に傾く、腰が曲がるなど)が続くと、特定の筋肉や関節に負担が集中し、②③④のどのタイプの痛みも強まりやすくなります。「痛いところ」だけでなく「なぜそこに負担が集中しているか」まで見ることが、対処の第一歩になります。

動かないほど、痛くなる。
「痛いから動かない」は、自然な反応です。ただ、そのまま体を動かさない時間が長くなると、筋肉や関節はさらに硬くなり、血のめぐりも悪くなって、かえって痛みが強まってしまうことがあります。これが、痛みと運動不足の悪循環です。

痛む → 動かさなくなる → 筋肉・関節がさらに硬くなる → より痛みやすくなる → さらに動かさなくなる。
この輪の、どこか一箇所を小さく崩すだけで、流れは変わり始めます。多くの場合、いちばん崩しやすいのは「動かさなくなる」の部分です。大きく動く必要はありません。痛みの少ない範囲で、ほんの少し動かすことから始められます。
ここで誤解してほしくないのは、「痛みを我慢して動く」ことを勧めているわけではない、という点です。目指すのは、痛みが強くなる手前で止まる、心地よい範囲を見つけること。痛みの少ない時間帯・姿勢・動かし方を選べば、多くの方は思っているより広い範囲で体を動かせます。次の章で、タイプ別に具体的な工夫を見ていきましょう。
タイプ別、自宅でできる工夫。
先ほどの5つのタイプに沿って、自宅で試しやすい工夫をまとめます。どれか一つが正解というより、自分の痛みに近いタイプの工夫から、無理のない範囲で試してみるのがおすすめです。

お風呂や蒸しタオルで先に温めてから、ゆっくりストレッチする。肩なら、腕を大きく上げようとせず、体を前に倒して腕の重みだけで振り子のように揺らす「振り子運動」が負担が少なく始めやすい方法です。長く同じ姿勢(読書やテレビ)を続けず、30分に一度は姿勢を変えることも効果的です。
朝方に足がつるような痛みが出やすい方は、起床後すぐ、布団の中で足首をゆっくり回す・つま先を反らすといった軽い運動から始めると和らぐことがあります。急に強く伸ばすと逆効果になりやすいため、ゆっくり戻すことを意識してください。頻繁に強く出る場合は、主治医に薬の調整を相談する余地もあります。
姿勢の崩れが神経の圧迫につながっていることがあるため、座る・立つときに背すじを軽く伸ばす意識を持つと和らぐ場合があります。しびれや電気が走るような痛みが強いときは、自己流で強く揉んだりせず、専門家に相談してください。
原因のはっきりしない重だるさには、音楽をかけながらの軽い体操や、気分転換になる外出など、痛みそのものへの意識を分散させる工夫が助けになることがあります。痛みへの不安が強いほど痛みを強く感じやすいこともわかっており、気持ちの面へのケアも大切です。
運動の時間を、薬がよく効いている時間帯(オン)に合わせるのがもっとも効果的です。1日の中で体が動かしやすい時間帯を記録しておくと、運動のタイミングを決めやすくなります。オフの時間の痛みが強く生活に支障が出る場合は、服薬の調整が必要なこともあるため、必ず主治医に相談してください。
共通して言えるのは、「一度に頑張る」より「少しずつ、こまめに」のほうが続けやすく、痛みも出にくいということです。1日1回20分より、5分を数回に分けるほうが体への負担が少ない方もいます。運動メニューの具体例は体操・自主トレ大全で紹介しています。
脳リハ.comのYouTubeでは、痛みの少ない範囲でできる体操を配信しています。まずは動きを見て、自分の体と相談しながら試してみてください。
専門リハで、できること。
自宅の工夫だけで痛みが十分に和らがないとき、専門リハでは一つの方法に頼らず、いくつかの角度から同時に働きかけるのが特徴です。人によって痛みのタイプも背景も違うため、アプローチも一つではありません。
1. 徒手的なアプローチ。硬くなった筋肉や関節を、手で丁寧にゆるめます。痛みの少ない範囲を見極めながら行うため、自己流のストレッチより安全に可動域を広げられます。
2. 姿勢と体幹の再教育。前かがみの姿勢や体の傾きが痛みの土台になっている場合、姿勢そのものを立て直すことで、特定の部位への負担そのものを減らします。
3. オンの時間に合わせた運動処方。その方の服薬リズムを踏まえ、もっとも動きやすい時間帯・強度・頻度を一緒に設計します。
4. 痛みへの向き合い方のケア。「動くとまた痛むのでは」という不安が、体をこわばらせ、痛みをさらに強く感じさせることがあります。小さな成功体験を積み重ね、「動いても大丈夫」という感覚を一緒に取り戻していきます。
薬の調整、特にオン・オフのコントロールは主治医の領域です。私たちは体の動かし方と生活の側から、痛みで止まっていた運動を再び動かせる状態に近づけることを目指します。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。
パーキンソン病の運動症状に対する運動療法の効果を検討した研究の中には、継続的な運動によって筋肉のこわばりや姿勢が改善し、あわせて痛みの訴えが軽減したとする報告があります。運動が痛みの唯一の解決策ではありませんが、動かさないことで硬さが強まる悪循環を断つ手段として位置づけられています。
限界:痛みそのものを主要な指標とした大規模研究は多くなく、効果には個人差があります。強い痛みがある場合は、まず原因の確認と医師への相談が優先されます。運動療法は薬の調整の代わりにはなりません。
受診の目安は、痛みが急に強くなった、これまでと違う場所や質の痛みが出てきた、日常生活に支障が出るほど痛む、といったときです。痛みの原因はパーキンソン病以外に隠れていることもあります。自己判断せず、神経内科や整形外科で確認してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
よくある質問。
Q. パーキンソン病で体が痛くなるのは、どうしてですか?
Q. 痛くて運動する気になれません。それでも動いたほうがいいのですか?

Q. 薬の効き目が切れる時間帯に痛みが強くなる気がします

Q. 肩が痛くて腕が上がりません。これもパーキンソン病と関係がありますか?

Q. 自宅でできる痛みへの対策はありますか?
Q. 痛みの原因を自分で判断してもよいですか?
痛みのご相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。痛みのタイプと生活の場面を一緒に確認し、徒手的なケア・姿勢の立て直し・運動のタイミングまで、その方に合わせて組み立てます。薬の調整は主治医を尊重し、体の動かし方と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
痛みの少ない動き方が、きっとあります。

「運動が大事なのはわかっている。でも痛くて、それどころじゃない」——そう話す方に、これまで何度も出会ってきました。根性で我慢して動く必要はありません。痛みには理由があり、理由がわかれば、痛みの少ない動き方が必ず見つかります。
動かないほど、体は硬くなり、痛みは増えていきます。だからこそ、痛みの少ない範囲で、少しずつ動き続けることが大切です。その「少しずつ」の見つけ方を、一緒に探していきましょう。
痛みで運動を諦めかけているなら、どうぞ一度ご相談ください。あなたの痛みのタイプに合わせて、無理のない一歩を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。痛みの原因はひとつではありません。強い痛み・長く続く痛み・急な変化は、必ず神経内科・整形外科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年7月13日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Ford B. Pain in Parkinson’s disease. Mov Disord. 2010;25 Suppl 1:S98-S103.(パーキンソン病の痛みの分類・タイプに関する代表的な文献。第2章の分類の参考)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
※本記事中の文献情報はAIが下書き作成に関与しています。引用の正確性については一次情報での再確認をお願いします。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)