パーキンソン病で一人だと運動が続かない|原因と対策・自宅でできる工夫
続かないのは、意志の弱さではありません。
「一人だと、どうしても運動が続かない」——そう感じるとき、責められるべきは本人の性格ではないことがほとんどです。パーキンソン病そのものが、動き出す気持ちを起こりにくくすることがあります。しくみを知り、意志力に頼らず続けられる工夫を一緒に整理します。

「今日もやらなかった」を、責めないで。
通所リハビリでは動けるのに、家に帰ると体操をする気になれない。やろうと思っても、テレビを消して立ち上がるまでの一歩が、ひどく重く感じる。家族からは「またサボって」と言われ、自分でも情けなくなる——。そんな声を、私たちは臨床の現場で数多く聞いてきました。
でも、知ってほしいのです。「やる気が出ない」の背景には、パーキンソン病そのものによる複数の理由が隠れていることが多いということを。
パーキンソン病のリハビリでは、運動を続けることそのものが治療の土台になります。けれど、専門家の前ではできても、一人になると続かない——これは決して珍しいことではありません。まずは「なぜ続かないのか」を、症状の面から一つずつ整理していきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
なぜ、一人だと続かないのか。
「続かない」の裏側には、一つではなく、いくつもの原因が同時に重なっていることがほとんどです。代表的なものを整理します。
| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| アパシー(意欲の低下) | 「やろう」という気持ち自体が起こりにくくなる。ドーパミンの不足に関わる症状 |
| 動作緩慢・すくみ足 | 「立ち上がって始める」最初の一歩そのものが、特に重く感じられる |
| 薬の効き目の波(オンオフ) | 薬が効いている時間とそうでない時間で、動かしやすさが大きく変わる |
| 疲労 | 運動をしていなくても、一日を通じて疲れやすいという非運動症状がある |
| 転倒への不安 | 見ている人がいない中で転ぶ怖さが、一人での運動を遠ざける |
| 実行機能の低下 | 「何を・いつ・どの順番で」を自分で組み立てて始めるのが苦手になる |
特に見落とされやすいのがアパシーです。うつ病のような悲しさを伴わないまま、ただ「気持ちが動かない」状態になるため、外からは「怠けている」ように見えてしまいます。ご本人も、なぜやる気が出ないのか自分でうまく説明できず、自分を責めてしまいがちです。まずは、続かない背景に症状があることを、ご本人もご家族も知っておくことが、立て直しの第一歩になります。

STROKE LABの視点:「はじめの一歩」を仕組みにする。
アパシーや動作緩慢がある中で「気合を入れて始めよう」と意志力に頼るのは、うまくいきません。意志力ではなく、環境と手順のほうを工夫するのが現実的です。次の3ステップで、はじめの一歩を仕組み化しましょう。
ステップ1:「決める」のではなく「くっつける」。「毎日体操する」という新しい決意ではなく、すでにある習慣(朝食の後・薬を飲んだ直後など)の直後に体操を差し込みます。既存の習慣が、始めるきっかけ(トリガー)になります。
ステップ2:動かしやすい時間帯を選ぶ。薬が効いている「オン」の時間帯は、体が動かしやすくなっています。一日の中で比較的調子のよい時間に、運動の予定を合わせます。
ステップ3:「やった」を見える形で残す。カレンダーに丸をつける、簡単なチェックシートに印をつけるなど、結果を目に見える形にします。小さな達成感が、次の一歩を後押しします。
この3ステップの狙いは、「今日はやる気があるか」を毎回自分に問わずに済むようにすることです。決めるべきことを事前に減らしておけば、実行機能への負担も小さくなります。うまくいく形は人によって違うので、作業療法士と一緒に、自分の生活リズムに合わせて調整するのが近道です。

続けるための、工夫と道具。
仕組みに加えて、具体的な道具や工夫を足すと、さらに続けやすくなります。合言葉は「一人だけど、一人ではない」状態をつくることです。
リズムのはっきりした音楽やメトロノームの音は、動き出しを助ける外部からの合図になります。パーキンソン病では、こうした外的なリズムに合わせて動くと、動作が滑らかになりやすいことが知られています。また、家族とのビデオ通話をつなぎながら体操する、オンラインの運動グループに参加するなど、画面越しでも「誰かが見ている」感覚があるだけで、始めるハードルが下がる方は少なくありません。長い時間を一度にこなそうとせず、5分・10分の短い運動を、一日に何度かに分けるのも、疲労や意欲の波に合わせやすい方法です。具体的な体操メニューは体操・自主トレ大全をご覧ください。

運動習慣の少ないパーキンソン病の方を対象にした無作為化比較試験(ParkFit試験)では、個別のコーチングと目標設定を組み合わせた支援を受けた群は、通常のケアのみの群より日常生活の中での身体活動量が有意に増えたと報告されています。運動メニューそのものより、続けるための伴走や仕組みづくりが効果を左右することを示す結果です。
限界:介入には理学療法士によるコーチングという専門的な関わりが含まれており、自己流の工夫だけで同じ効果が得られるとは限りません。効果には個人差があり、症状の進行度によっても変わります。
自宅での工夫が、続けるための一般的なヒントだとすれば、専門施設で行うのは、その人が続かない理由を評価したうえでの個別設計です。アプローチは大きく3つの方向から組み立てます。
1. 続かない理由の評価。アパシー・疲労・転倒不安・実行機能のどれが強く影響しているかを見極め、優先して対処すべき点を明確にします。
2. 生活動線への組み込み。実際の生活の中で、いつ・どこで・どの動作にくっつけるのが現実的かを、家庭の環境ごと一緒に設計します。
3. ご家族への関わり方の共有。責めずに支える声かけの仕方や、見守り方を、ご家族にも具体的にお伝えします。
STROKE LABが軸足を置くのは、「もっと頑張って」ではなく「続けやすい形に環境を変える」という考え方です。効果には個人差があり、症状の進行に伴って調整が必要になります。薬の調整は主治医の役割です。
パーキンソン病の方の運動行動に関わる要因を調べた研究では、運動能力そのものよりも、自己効力感(自分にもできそうという感覚)や、運動への期待感が、運動を続けられるかどうかと強く関連していたと報告されています。できるかどうかを決めるのは体力だけではなく、心理的な要因も大きいことを示す結果です。
限界:横断的な調査研究であり、自己効力感を高める介入によって実際に継続率が上がるかは別途の検証が必要です。効果や関連の強さには個人差があります。
脳リハ.comのYouTubeでは、リズムに合わせて体を動かす体操を配信しています。画面をつけて、テンポに合わせて動くだけでも、始めるきっかけになります。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、続かない理由を一緒に確認したうえで、その人の生活リズム・薬の効き方・住環境に合わせて、運動を組み込む場所とタイミングを具体的に設計します。ご家族への関わり方の相談も、あわせて行います。薬の調整は主治医の役割で、私たちは生活動線と習慣化の側から支えます。
受診の目安は、意欲の低下が強く長く続く、悲しさや興味の喪失を伴う、転倒への不安が強くて外出や運動そのものを避けるようになった、といった状態です。アパシーとうつ病は見分けが難しいことがあり、専門的な評価が助けになります。自己判断で抱え込まず、神経内科・主治医に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 運動が続かないのは、本人の意志が弱いからですか?
Q. アパシーとうつ病は同じものですか?

Q. 薬が効いている時間に運動したほうがよいのですか?
Q. 一人でも運動を続けやすくする工夫はありますか?
Q. 家族はどのように声をかければよいですか?

Q. 運動が続かない状態が長く続く場合、受診したほうがよいですか?
続け方の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。「なぜ続かないのか」をご本人・ご家族と一緒に確認し、生活リズムや住環境に合わせた続け方を設計します。責める・励ますだけではなく、続けやすい仕組みそのものを一緒につくる関わりを大切にしています。薬の調整は主治医を尊重し、保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
仕組みを一緒につくりましょう。

「一人だと続かない」というご相談を受けるたび、ご本人が自分を責めていることに胸が痛みます。多くの場合、それは性格の問題ではなく、パーキンソン病という病気が引き起こしている症状の一部です。
お伝えしたいのは、やる気を探すより、やらなくても始まる仕組みをつくるほうが、ずっと現実的だということです。習慣にくっつける、時間帯を選ぶ、記録を見える化する。小さな工夫の積み重ねが、続ける力になります。
続け方でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。ご本人とご家族、それぞれの状況に合わせて、無理のない形を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。意欲の低下や気分の落ち込みが強い場合は、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年9月13日)。なお、下記の論文情報はAIによる下書き作成時点の記憶に基づくものであり、書誌情報を含めて誤りを含む可能性があります。公開前に必ず一次資料でご確認ください。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- van Nimwegen M, Speelman AD, Overeem S, et al. Promotion of physical activity and fitness in sedentary patients with Parkinson’s disease: randomised controlled trial. BMJ. 2013;346:f576.(要一次資料確認:コーチングによる支援で身体活動量が増加したとする研究。第4節エビデンスボックス①の出典)
- Ellis T, Cavanaugh JT, Earhart GM, et al. Factors associated with exercise behavior in people with Parkinson disease. Phys Ther. 2011;91(12):1838-1848.(要一次資料確認:自己効力感が運動継続と関連するとする研究。第4節エビデンスボックス②の出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)