パーキンソン病でエスカレーターはこわい|原因と対策・自宅でできる工夫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

パーキンソン病でエスカレーターはこわい|原因と対策・自宅でできる工夫

MOVING FLOOR, STILL MIND

動く床は、敵ではありません。合図が要るだけです。

エスカレーターの前で、足が出なくなる。乗った後も、降りるタイミングが分からず怖い。それは気持ちの問題ではなく、パーキンソン病特有のすくみ足・視空間認知・二重課題・不安の悪循環が重なって起こる、説明できる現象です。原因を分けて理解し、今日からできる工夫を整理します。

UPDATED2026
READ約10分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』の著者が執筆しています。転倒歴のある方、めまいを伴う方は、自己判断で練習を始めず、必ず専門家にご相談ください。

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
エスカレーターの怖さは、ひとつの原因ではなく複数が重なって起こります
02
階段は平気でもエスカレーターだけ怖いのは、動く床への対応が理由です
03
視線の置き方とリズムを変えるだけで、乗り降りしやすくなることがあります
04
不安が強まるほど足が出にくくなる悪循環があり、避けすぎも逆効果です
05
転倒歴がある、めまいがあるときは、自己判断せず専門家に相談を
01
The Moment You Freeze

「足が、出なかった。」

A Patient’s Voice
「乗ろうとした瞬間に、足が地面に張りついたようになって」

駅のエスカレーターで、後ろに人が並んでいるのに一歩が出ない。無理に踏み出して転びそうになった経験から、それ以来ずっと遠回りしてでもエレベーターを探すようになった——。そんな声を、診療の現場でよく聞きます。

でも、知ってほしいのです。これは気持ちの弱さではなく、パーキンソン病の複数の症状が重なって起こる、説明できる現象だということを。

パーキンソン病では、エスカレーターや自動ドア、狭い通路の出入り口など、「動くもの」や「タイミングを合わせる場面」で歩きにくさが強まることがあります。原因はひとつではなく、いくつかの症状が同時に関わっています。まずはそのしくみを分けて理解し、そのうえで具体的な工夫をみていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
Five Overlapping Causes

重なり合う、5つの原因。

「エスカレーターが怖い」の裏側には、歩行・視覚・注意・バランス・こころの5つの要素が関わっています。人によってどれが強く出るかは異なり、それが対処法にも違いを生みます。

原因 どういうことか
すくみ足 一歩目のきっかけがつかめず、足が地面から離れなくなる
視空間認知の変化 ステップの奥行きや速さを目で正確につかみにくくなる
二重課題の難しさ 動くものを見ながら足を運ぶ同時処理が負担になりやすい
姿勢反射障害 体が傾いたときの立て直しが遅れ、転びやすさへの不安につながる
不安の悪循環 過去の怖い経験が予期不安を生み、不安自体がすくみ足を強める

階段が平気なのにエスカレーターだけ怖い、という方が多いのはこのためです。階段は止まっていて自分のペースで踏み出せますが、エスカレーターは床のほうが動き、こちらのタイミングを待ってくれません。この「合わせる」作業が、視空間認知と二重課題の両方に負担をかけるのです。そして一度怖い思いをすると、その記憶が次の不安を呼び、すくみ足をさらに出やすくします。

03
Turn A Moving Floor Into A Still One

STROKE LABの視点:動く床を、止まった床に変える。

対策の軸は、「床の動きを追う」のをやめて、「自分の合図で動く」に切り替えることです。動くものに合わせようとするほど、視空間認知と二重課題の負担が増えます。反対に、自分の中に一定のリズムと決まった視線の置き方を持っておけば、床の動きに振り回されにくくなります。次の3つを組み合わせます。

Three Cues

1. 視線は足元ではなく、少し先の固定点に置く。動くステップを目で追うと情報処理が追いつかなくなります。手すりの先端や、乗り口の黄色い線など、動かない目印を見るようにします。

2. 「いち、に」の声かけで一歩目を自分から出す。床のリズムを待つのではなく、自分の中で数を数え、そのタイミングで一歩目を踏み出します。声に出す、心の中で唱える、どちらでも構いません。

3. 先に手すりをつかんでから、足を出す。手が先に支えを得ていると、姿勢反射障害への不安が和らぎ、足の一歩目が出やすくなります。手→足の順番を、体で覚えておきます。

この3つは、いきなりエスカレーターで試すものではありません。まずは自宅の安全な場所で、この「視線・リズム・手すり」の感覚を練習してから、実際の場面に少しずつ持ち込んでいきます。合う目印やリズムの取り方は人によって違うため、作業療法士と一緒に調整すると近道です。

04
Step-By-Step Practice

自宅でできる、段階練習。

いきなり本番のエスカレーターで練習するのは危険です。まずは安全な環境で「一歩目を自分の合図で出す」感覚をつかみ、段階的に慣らしていくのが基本です。

家の敷居や玄関の段差の前に立ち、「いち、に」で一歩目を出す練習を繰り返します。次に、家族に歩くスピードで手を横に動かしてもらい、それを目で追いながらではなく、決まったリズムで一歩を出す練習に進みます。慣れてきたら、まずはエレベーターや動く歩道のように速度が緩やかな場所から試し、そのあとでエスカレーターに挑戦するという順番がおすすめです。体を大きく動かす運動を普段から続けておくと、とっさの一歩も出やすくなるので、体操・自主トレ大全もあわせてご活用ください。

Evidence
自宅でのキュー練習が歩行のすくみを改善した研究

パーキンソン病の方を対象に、視覚・聴覚・体性感覚のキューを使った自宅での歩行トレーニングを3週間行った無作為化比較試験(RESCUE試験)では、歩行速度や歩幅などの移動能力に関わる指標が、キュー練習を行った群で有意に改善したと報告されています。

限界:この研究は歩行全般を対象としたもので、エスカレーターに特化した検証ではありません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。転倒リスクの高い方は、自己判断で練習を始めず専門家の指導のもとで行ってください。

出典:Nieuwboer A, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140
床のリズムを待たない。自分のリズムで、一歩目を出す。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、その先の不安と歩行を同時に扱うアプローチまで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
歩行だけでなく、不安の悪循環にも同時にアプローチする。

エスカレーターの怖さは、歩行の症状と、それに伴う不安が絡み合って強まっていきます。そのため専門施設では、歩行動作の練習と、不安への向き合い方を切り離さずに扱うことを大切にしています。

1. 個別のキュー設計。視覚・聴覚・体性感覚のどのキューがその人に合うかを見極め、実際の生活場面(駅、商業施設など)を想定して練習します。

2. 二重課題への段階的な慣らし。視覚情報と足の動きを同時に扱う練習を、難易度を少しずつ上げながら安全に重ねていきます。

3. 成功体験の積み重ね。「できた」という経験を安全な環境で積むことで、予期不安そのものを和らげていきます。避けるのではなく、少しずつ慣れることを目指します。

薬の調整は主治医の役割です。私たちは歩行動作と生活の側から、その人に合った工夫を一緒に組み立てます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。

Evidence
不安とすくみ足の関連を示した研究

パーキンソン病患者を対象とした研究では、不安の強さがすくみ足の重症度と関連し、特に注意の切り替えが必要な場面でその関連が強くなることが報告されています。エスカレーターのように視覚情報と足の動きを同時に扱う場面は、まさにこの「注意の切り替え」が求められる状況にあたります。

限界:これは関連を示した観察研究であり、不安を軽減すればすくみ足が必ず改善するという因果関係を証明したものではありません。個人差が大きく、専門的な評価が前提です。

出典:Ehgoetz Martens KA, et al. Anxiety is associated with freezing of gait and attentional set-shifting in Parkinson’s disease: A new perspective for early intervention. Gait Posture. 2016;49:141-145
Watch & Practice
一歩目を出す力を、体操で養う。

脳リハ.comのYouTubeでは、歩行の土台となる体操を配信しています。無理のない範囲で、日々の習慣にしてみてください。

歩行の体操を見る

05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

専門のリハビリでは、実際に困っている場所や状況を詳しく聞き取り、その人にとってどの原因が強く関わっているかを見極めたうえで、視線・リズム・練習の段階を組み立てます。同じ「エスカレーターが怖い」でも、原因の重みは人によって違うため、画一的な対処では合わないことがあります。

受診の目安は、実際に転んだ・転びそうになったことがある、めまいやふらつきを伴う、すくみ足がエスカレーター以外の場面にも広がってきた、といったときです。歩きにくさの原因はパーキンソン病の症状だけとは限りません。自己判断で練習を進めず、神経内科で原因を確かめてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. エスカレーターの前で足が止まってしまうのは、パーキンソン病のせいですか?

動くステップを前にして足が出なくなるのは、パーキンソン病でみられるすくみ足のことがあります。すくみ足は、足元の動きに合わせて次の一歩を決める場面で特に出やすい症状です。ただし歩きにくさには他の原因もあるため、気になるときは自己判断せず、神経内科で確認してください。

Q. なぜエスカレーターだけが特に怖いのですか?階段は平気なのに

階段は自分のペースで足を運べますが、エスカレーターは床のほうが動いていて、こちらのタイミングに合わせてくれません。動くものを見ながら一歩のタイミングを合わせる作業は、視覚の情報処理と足の動きを同時に行う二重課題にあたり、パーキンソン病では特に負担が大きくなりやすい場面です。これが、階段は平気でもエスカレーターだけ怖いと感じる一因です。

Q. 自宅でできる練習はありますか?

あります。段差や敷居を使って、一定のリズムで一歩目を出す練習や、動く目印を目で追いながら足を踏み出す練習が代表的です。いきなりエスカレーターで練習せず、まずは安全な自宅環境でタイミングを合わせる感覚をつかむのがおすすめです。転倒歴がある方は、無理をせず専門家と一緒に進めてください。

Q. エスカレーターを避け続けても大丈夫ですか?

一時的に避けることは悪いことではありませんが、避け続けると不安がさらに強まり、体を動かす機会も減ってしまうことがあります。不安が強まるほどすくみ足も出やすくなるという悪循環が知られています。安全な範囲で少しずつ慣らしていく工夫と、必要であれば専門家のサポートを組み合わせることをおすすめします。

Q. 薬でエスカレーターの怖さは改善しますか?

薬の効いている時間帯(オン)では、すくみ足が軽くなることがあります。一方で、視覚的なタイミング合わせの難しさや不安による悪循環は、薬だけでは十分に改善しないこともあります。薬の調整は主治医の領域です。そのうえで、歩行動作の工夫やリハビリを組み合わせることで、より安定しやすくなります。

Q. リハビリでは何をしてくれるのですか?

専門のリハビリでは、実際に困っている場面(エスカレーター、駅、狭い通路など)を確認し、その人に合う視覚・聴覚のキューの使い方、視線の置き方、リズムの取り方を一緒に調整します。安全な環境で段階的に慣らしながら、生活の中で使える形に落とし込んでいきます。
07
STROKE LAB

歩行の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。エスカレーターや駅、狭い通路など、実際に困っている場面を一緒に確認し、その人に合う視覚・聴覚のキューと、段階的な練習を組み立てます。歩行の練習と、不安への向き合い方を切り離さずに扱うのが私たちの考え方です。薬の調整は主治医を尊重し、動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
怖いのは、あなたのせいではありません。
合図を一緒に見つけましょう。
STROKE LAB代表 金子唯史

エスカレーターの前で足が止まってしまうたびに、「自分は情けない」と感じてしまう方に、たくさん出会ってきました。でもそれは、意志の問題ではありません。

床の動きを追うのをやめて、自分の合図で一歩を出す。それだけで、乗り降りできる場面はまだまだ広がります。原因を分けて理解し、その人に合った工夫を積み重ねていく。それが私たちの役目です。

エスカレーターや駅での歩行にお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを題材に、その方に合う工夫を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。歩きにくさには他の原因もあります。転倒歴のある方、気になる症状がある方は、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年9月11日)。

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