パーキンソン病で食器・スプーンの選び方|原因と対策・自宅でできる工夫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

パーキンソン病で食器・スプーンの選び方|原因と対策・自宅でできる工夫

ADAPTIVE TABLEWARE

手が震えても、皿は逃げません。

食事のたびに、こぼす。すくえない。なかなか口まで運べない。それはパーキンソン病による食事動作の困難かもしれません。食器やスプーンを少し変えるだけで、食べやすさは驚くほど変わります。原因のしくみと、今日から自宅でできる食卓の整え方を整理します。

UPDATED2026
READ約10分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。食べにくさには、嚥下(飲み込み)の問題など他の原因が関わることもあります。気になる変化は自己判断せず、神経内科や主治医に確認してください。

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
食べにくさの原因はふるえだけではなく、いくつかの症状が重なって起こります
02
皿を固定する・皿の形を変える・道具を持ちやすくする、の3方向で工夫できます
03
重みのあるカトラリーは、ふるえによる揺れを抑える助けになることがあります
04
道具は「いつも必要」ではなく、状態に合わせて場面ごとに使い分けるものです
05
むせる・飲み込みにくいときは、食器の工夫とは別に、早めに専門的な相談を
01
Every Meal Is A Struggle

食卓が、気の重い場所になっていく。

A Patient’s Voice
「味噌汁をこぼすのが怖くて、外食に誘われても断ってしまいます」

スプーンを口まで運ぶ途中で、手が揺れてこぼれる。お皿の中の食べ物が、うまくすくえずに逃げていく。急いで食べようとするとさらにうまくいかない——。食事は毎日のことだけに、その積み重ねはとても疲れます。

でも、知ってほしいのです。これは食事動作の困難という症状で、食器と道具を変えるだけで、食べやすさは大きく変わるということを。

パーキンソン病では、食事のときに「こぼす」「すくえない」「口まで運べない」といった困りごとが出ることがあります。食べる動作は、皿を見る・すくう・持ち上げる・運ぶ・口に入れるという一連の細かい動きの連続です。その一つひとつが、いくつかの症状の影響を受けて崩れやすくなります。まずはしくみを知り、そのうえで具体的な立て直し方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
What Is Happening

食べにくさの、しくみと原因。

食事の困りごとは、ひとつの原因だけでなく、いくつかの症状が重なって起こるのが特徴です。ふるえだけに注目してしまうと、対策が偏ってしまいます。まずは代表的な原因を整理しましょう。

原因となる症状 食事で起こること
安静時のふるえ(振戦) スプーンを口へ運ぶ途中で揺れが出て、こぼれやすくなる
動作緩慢・動きの小刻み化 一口の量が減り、食事全体に時間がかかって疲れてしまう
筋肉のこわばり(固縮) 手首や肘の返しが硬くなり、すくう・回すといった動きがしにくい
姿勢の変化(前傾・円背) 皿との距離感がつかみにくく、口までの道のりが不安定になる
薬の効果の波(オン・オフ現象) 時間帯によって、食べやすさそのものが大きく変わることがある

ここに、対策のヒントが隠れています。皿が動くから、こぼれる。すくいにくい形だから、逃げる。持ちにくいから、力が入りすぎる。次の章から、この考え方を具体的な道具選びにしていきます。なお、むせる・飲み込みにくいといった症状は、ここでの「食べにくさ」とはしくみが異なります。詳しくは5章で触れます。

03
Turn The Table Into An Ally

STROKE LABの視点:食卓を「支える相棒」に変える。

食事動作の対処でいちばん手早く効くのが、食卓の側に、動きを支える工夫を足すことです。皿が逃げず、すくいやすく、持ちやすい。それだけで、手や指の負担がぐっと減ります。市販品や通販で、次の3ステップで揃えられます。

Three Steps

ステップ1:皿を固定する。滑り止めシートや吸盤付きの皿を使い、すくう動作の反動で皿自体が動かないようにします。テーブルとの間に滑り止めマットを一枚敷くだけでも変わります。

ステップ2:すくいやすい皿の形を選ぶ。縁が立ち上がった皿や、片側だけ壁のように高くなっているスクープ皿は、食べ物を集めやすく、こぼれにくくなります。

ステップ3:持ちやすく、支えになるカトラリーを選ぶ。太めのグリップや、手のひらで包み込める柄のスプーン・フォークを使うと、握る力の負担が減ります。ふるえが強い方には、重みのある(加重)タイプも選択肢です。

好きなメニューから、この3ステップの道具で試してみるのがおすすめです。大切なのは、道具に頼りきりになることではなく、道具の支えを借りながら、自分の力でうまくいく体験を積み重ねる</span”>ことです。状態は日によって、時間帯によっても変わります。道具は「いつも必要」ではなく、必要な場面で選んで使うものと考えてください。合う道具の種類は人それぞれなので、作業療法士と一緒に調整すると近道です。

04
Choosing The Right Tools

道具の選び方の、具体的コツ。

3ステップの考え方を、実際の道具選びに落とし込みます。合言葉は「固定する・集めやすくする・持ちやすくする」。すべてを一度に揃える必要はなく、困っている場面から一つずつ試してみてください。

スプーン・フォーク:ふるえが目立つ方には、重み付き(加重)タイプが揺れを抑える助けになることがあります。固縮で手首が硬い方には、あらかじめ角度がついたカーブ柄のタイプが口へ運ぶ動作の負担を減らします。指先の力が弱い方には、手のひら全体で包める太いグリップが握りやすいです。お皿:滑り止め付き・縁の高いスクープ皿・仕切りのある皿は、集める動作の負担を減らします。コップ:両手持ちの持ち手付きコップや、首を反らさずに飲めるカットアウトカップ、こぼれやすい方には蓋・ストロー付きコップも選択肢です。色・コントラスト:白い皿に白いご飯だと境目が見えにくいことがあるため、皿と食べ物の色にコントラストをつけると、すくう位置が分かりやすくなります。座る姿勢やテーブルの高さも、体幹が安定するように整えておくと、手の動きに集中しやすくなります。運動で手や体を動かしておくことも土台になるので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。

Evidence
重みを加えると、ふるえによる揺れが小さくなった研究

ふるえのために動作が不安定になる方を対象に、手首や道具に重り(damping load)を加えて動きを検証した研究では、重みを加えることで、動作中の揺れの振れ幅が小さくなったと報告されています。重み付きカトラリーが、食事動作の安定に役立つ根拠のひとつです。

限界:対象は動作性のふるえ全般を含む研究で、パーキンソン病の方だけを対象にしたものではありません。効果や適した重さには個人差があり、重すぎるとかえって疲れる場合もあります。少ない重さから試し、様子を見ながら調整してください。

出典:Aisen ML, et al. The effect of mechanical damping loads on disabling action tremor. Neurology. 1993;43(7):1346-1350
皿を固定し、集めやすくし、持ちやすくする。それだけで、食卓は変わる。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、その先の動作そのものを立て直すアプローチまで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
道具に「支えてもらう」段階から、道具なしでもうまくいく動きを増やす段階へ。

自宅での工夫が、道具の力でその場の食べやすさを補う代償的なアプローチだとすれば、専門施設で目指すのは、すくう・運ぶ・口に入れるという一連の動作そのものを立て直す回復的アプローチです。食事動作への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。

1. キューイング。皿の縁や滑り止めといった視覚・触覚の手がかりに加え、一定のリズムでの声かけなど、その人にいちばん響く合図を見極めて動作を整えます。

2. 大きく・滑らかに動く運動学習。すくう・持ち上げる・運ぶという一連の動きを、あえて大きく滑らかに繰り返し、小刻みになりがちな動作の幅を上肢全体から立て直します。

3. 手指と姿勢の土台。手首や指先のこわばりをやわらげる関節の動き、食事中に崩れやすい座位・体幹の安定を整え、食事動作が乱れにくい身体の下地をつくります。

STROKE LABが軸足を置くのは、道具の支えで正しい動きを引き出し、成功体験を積みながら、少しずつ支えを外して身につけていくという流れです。道具なしでも食べやすくなるように近づけていく、その設計を専門的に組み立てます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。

Evidence
作業療法の介入で、日常生活動作の自己評価が改善し、効果が続いた研究

パーキンソン病の方を対象にした無作為化比較試験では、作業療法の介入を受けた群で、日常生活動作(食事を含む)に対する自己評価が、介入を受けなかった群より有意に改善し、その差は追跡調査後も保たれていたと報告されています。道具の工夫だけでなく、専門的な動作へのアプローチを組み合わせる意味を示す結果です。

限界:これは日常生活動作全般を対象とした研究で、食事動作だけを主要な指標にしたものではありません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。作業療法は薬の代わりではなく、組み合わせて使うものです。

出典:Sturkenboom IH, et al. Efficacy of occupational therapy for patients with Parkinson’s disease: a randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2014;13(6):557-566
Watch & Practice
手や体を動かす体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、手や体を大きく動かす体操を配信しています。食事動作の土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。

大きく動く体操を見る

05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

専門のリハビリでは、実際の食事場面を一緒に確認し、どの動作のどの段階でつまずいているのかを見極めたうえで、道具の種類、テーブルや椅子の高さ、座る姿勢を、その人に合わせて調整します。「実際に困っている食事の場面」を練習の題材にすると、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは食事動作と生活の側から支えます。

受診の目安は、食べにくさで食事量や体重に変化が出てきた、道具の工夫だけでは対応しきれなくなってきた、といったときです。また、むせる・飲み込みにくいといった症状は、食器の使いにくさとは別のしくみ(嚥下の問題)によることがあります。この場合は食器の工夫だけで様子を見ず、早めに主治医や言語聴覚士に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. パーキンソン病だと、なぜ食器が使いにくくなるのですか?

原因はひとつではありません。安静時のふるえ、動きが小さく遅くなる動作緩慢、筋肉のこわばり(固縮)、前かがみになりやすい姿勢の変化、指先の細かい動き(巧緻運動)の低下など、いくつかの症状が重なって、こぼす・すくえない・口まで運びにくいといった食べにくさにつながります。気になる変化は自己判断せず、神経内科や主治医に確認してください。

Q. 重いスプーンやフォークは、本当にふるえに効果がありますか?

ふるえのある方では、重みのある道具を使うと、動きの振れ幅(揺れ)が抑えられて安定しやすいことが報告されています。ただし効果や適した重さには個人差があり、重すぎるとかえって疲れてしまう方もいます。まずは軽めの重り付きから試し、様子を見ながら調整するのがおすすめです。

Q. お皿はどんな形を選べばよいですか?

縁が立ち上がっている皿や、片側だけ壁のようになっているすくいやすい皿は、食べ物を集めやすく、こぼれにくいためおすすめです。滑り止めが付いている、または裏に吸盤が付いている皿だと、皿自体が動きにくくなり、すくう動作に集中しやすくなります。

Q. コップや飲み物の選び方にコツはありますか?

両手で持てる持ち手付きのコップや、縁の一部が切り込まれていて首を後ろに反らさずに飲めるカットアウトカップが便利です。飲み物をこぼしやすい方には、蓋とストローが付いたコップも選択肢になります。姿勢を安定させて、少しずつゆっくり飲むことも大切です。

Q. 食事動作の練習は、リハビリでできますか?

できます。作業療法では、実際の食事場面を確認しながら、その方に合う道具の選定と、すくう・運ぶ・口に運ぶといった一連の動作の練習を組み合わせます。作業療法の介入によって、日常生活動作の自己評価が改善し、その効果が期間をおいても保たれたという報告もあります。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。

Q. 食べ物が飲み込みにくいのも、同じ原因ですか?

食器の使いにくさ(食べ物を口まで運ぶまでの動作)と、飲み込みにくさ(嚥下の問題)は、関わる部位もしくみも異なります。むせる、飲み込みにくいといった症状がある場合は、食器の工夫だけでなく、嚥下の専門的な評価が必要です。気になる場合は早めに主治医や言語聴覚士に相談してください。
07
STROKE LAB

食事の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。困っている食事の場面を一緒に確認し、道具の種類・姿勢・動作の練習を、その人に合わせて組み立てます。実際の食事場面を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、食事動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
食卓は、闘う場所ではなく、
安心して過ごす場所であってほしい。
STROKE LAB代表 金子唯史

食事のたびにこぼしてしまうと、「情けない」「人前で食べたくない」という気持ちが積み重なっていきます。楽しいはずの食事が、緊張の時間になってしまう方に、たくさん出会ってきました。

お伝えしたいのは、皿を固定し、形を選び、道具を持ちやすくするだけで、食卓は驚くほど落ち着くことがあるということです。道具を味方につけ、動作をひとつずつ立て直していけば、食べられる場面はまだまだ広がります。

食事でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを題材に、その方に合う食べ方を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。食べにくさには、嚥下の問題など他の原因が関わることもあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年9月9日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
  • Aisen ML, et al. The effect of mechanical damping loads on disabling action tremor. Neurology. 1993;43(7):1346-1350.(重り付き道具が動作性ふるえの振れ幅を抑えたとする報告。第1エビデンスボックスの出典)
  • Sturkenboom IH, et al. Efficacy of occupational therapy for patients with Parkinson’s disease: a randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2014;13(6):557-566.(作業療法の介入で日常生活動作の自己評価が改善し、効果が持続したとする報告。第2エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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