滑り止めマットの正しい使い方|パーキンソン病の転倒・すくみ足を防ぐ工夫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

滑り止めマットの正しい使い方|パーキンソン病の転倒・すくみ足を防ぐ工夫

NON-SLIP MAT

境目は敵、縞は味方です。

滑らないようにと敷いた滑り止めマットで、かえって足がすくんだりつまずいたりする。それはパーキンソン病でみられる、すくみ足という症状が関わっているかもしれません。マットの「ふち」は転倒の引き金にも、選び方次第で歩行の合図にもなります。しくみと、今日から自宅でできる敷き方の見直し方を整理します。

UPDATED2026
READ約9分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。転倒の原因には他の要因もあります。転倒やつまずきが増えてきたときは、自己判断せず神経内科で確認してください。

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
パーキンソン病では、マットの「ふち」や「段差」でつまずきやすくなります
02
すくみ足・姿勢反射障害など、複数の原因が重なって起きることがあります
03
模様や色の急な切り替わりが、すくみ足の引き金になることがあります
04
段差ゼロで固定し、境目を目立たせすぎない配色を選ぶのが基本です
05
転倒が増えてきたときは、自己判断せず神経内科・かかりつけ医に相談を
01
The Mat Became A Trap

「敷いたのに、転びそうになった」。

A Family’s Voice
「浴室に滑り止めマットを敷いたのに、そのふちで足が止まってしまって」

転倒が心配で、玄関や浴室、廊下に滑り止めマットを敷いた。ところが、そのマットのふちにさしかかると、なぜか足が止まる。あるいは、マットの上でつまずきそうになる。「良かれと思って敷いたのに、かえって危なくなった気がする」というご家族の声を、私たちはよく耳にします。

実はこれ、マットそのものが悪いわけではありません。パーキンソン病では、床の変化そのものが足を止めるきっかけになることがあるのです。しくみを知れば、敷き方はいくらでも見直せます。

滑り止めマットは、転倒予防の代表的な工夫のひとつです。しかしパーキンソン病では、マットを敷く場所や敷き方によって、かえってつまずきやすくなることがあります。まずはそのしくみを整理し、そのうえで具体的な見直し方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
Multiple Causes At Play

なぜ、マットでつまずくのか。

マットでのつまずきや転倒は、ひとつの原因だけで起きているとは限りません。パーキンソン病では、いくつかの症状が重なって、床の変化を危険なものに変えてしまいます。代表的なものを整理しておきましょう。

原因 マットとの関わり方
すくみ足 戸口やマットのふちなど、床が変わる境目で、足が一瞬止まってしまう
姿勢反射障害 マットのずれや厚みでバランスを崩したとき、とっさに立て直しにくい
視覚・空間認知の変化 模様や色の急な切り替わりを、脳が実際の段差のように処理してしまうことがある
起立性低血圧 立ち上がった直後にふらつき、浴室などマットの上でバランスを崩しやすい
二重課題(ながら動作) 物を持つ・話しながら歩くなど、注意が分かれると境目への反応が遅れる
薬の効果の波(オフ状態) 薬の効きが弱い時間帯は、すくみ足や姿勢反射障害が強く出やすい

こう並べてみると、マットでのつまずきは「注意力の問題」でも「マットが悪い」わけでもなく、いくつもの原因が重なって起きているとわかります。だからこそ、原因を一つに決めつけず、敷き方そのものを見直すことが対策になります。次の章から、具体的な手順にしていきましょう。

03
Turn The Floor Into A Cue

STROKE LABの視点:床を「キュー付き」に変える。

対策の軸になるのは、境目をなくす工夫と、境目を歩行の合図に変える工夫を、場所によって使い分けるという考え方です。自宅にあるマットや床材で、次の3ステップから見直せます。

Three Steps

ステップ1:段差ゼロで固定する。マットの四辺を面ファスナーや滑り止めシートでしっかり固定し、ふちが浮いたりめくれたりしないものを選びます。厚みは薄いほど、境目の段差は小さくなります。

ステップ2:境目のコントラストを整える。床とマットの色が、真っ黒と真っ白のように急に切り替わらないよう、ほどよい明度差の落ち着いた色を選びます。複雑な柄や光沢のある素材は、境目を実際以上に目立たせてしまうため避けます。

ステップ3:すくみやすい場所には、縞模様を歩行の合図にする。廊下の曲がり角やトイレの前など、足が止まりやすい場所には、あえて進行方向に対して横向きの縞模様のマットやテープを敷き、またぐ目印として使います。これは視覚キューと呼ばれる方法で、次の一歩を踏み出す助けになります。

つまり、玄関や廊下のような「通り抜ける場所」は段差ゼロを優先し、すくみ足が特に出やすい特定の一点だけ、縞模様を合図として活用する、という使い分けです。どこにどの工夫を置くかは、実際につまずきやすい場所によって変わるため、作業療法士と一緒に自宅を確認しながら調整すると近道です。

04
Room By Room

場所別・選び方と敷き方。

同じ「滑り止めマット」でも、置く場所によって注意点は変わります。生活動線に沿って、要点を整理します。

玄関・上がり框。もともとの段差が大きい場所は、マットで埋めようとせず、手すりと明るい照明を優先します。段差にマットを重ねると、逆にふちが増えて危険になることがあります。

浴室・脱衣所。吸盤付きで厚み3mm前後の薄いマットを選び、濡れても乾きやすい素材にします。起立性低血圧が重なりやすい場所でもあるため、立ち上がりはゆっくりを心がけます。

トイレ。立ち座りの動線の真上にマットの境目が来ないよう配置します。便座の前後で床材が変わる場合は、色の切り替わりが急にならないよう調整します。

廊下。部分的なマットより、床材そのものを揃えるほうが、境目が減って安全なことがあります。どうしてもマットが必要な場合は、細長いランナータイプより、通路全体を覆う一枚敷きが境目を減らせます。

靴下・スリッパとの相性。滑りやすい靴下やスリッパの上に、滑り止めマットの摩擦だけで対処しようとせず、足元そのものの滑りにくさも合わせて見直すと安定します。夜間は照明が不十分だと境目が見えず危険が増すため、足元灯の設置も有効です。運動で体幹やバランスの土台を整えておくことも役立つので、体操・自主トレ大全もあわせてご覧ください。

Evidence
自宅での視覚・聴覚キューの練習で、歩行が改善したという報告

パーキンソン病の方を対象に、自宅で視覚(床の線など)・聴覚・体性感覚の合図を使う練習を行った研究では、合図を使った練習を続けたグループで、歩行に関わる生活の広がりや、すくみ足に伴う移動のしにくさが改善したと報告されています。

限界:効果には個人差があり、進行に伴って変動します。合図の効果は、練習を積み重ねるほど安定しやすいとされ、一時的に敷くだけでは十分でないこともあります。書字や運動の練習と同様、薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。

出典:Nieuwboer A, Kwakkel G, Rochester L, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140
段差はなくす。すくみやすい一点だけ、縞を合図にする。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、その先の個別のキュー設計と歩行練習まで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
マットを「敷く」段階から、環境と体の両方を整える段階へ。

自宅での工夫が環境を整える代償的アプローチだとすれば、専門施設で目指すのは、環境が変わっても足が止まりにくい体に近づける回復的アプローチです。すくみ足への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。

1. 個別のキューイング設計。視覚(線)だけでなく、聴覚(一定のリズム)や体性感覚の合図も試し、その人にいちばん反応がよいキューを見極めます。

2. 大きく踏み出す歩行練習。あえて歩幅を大きくとる練習を繰り返し、脳が縮めてしまう一歩の幅を、歩行全体から立て直します。

3. 姿勢とバランスの土台。とっさに立て直せる体幹の反応や、方向転換のときの重心移動を整え、境目で崩れにくい身体の下地をつくります。

STROKE LABが軸足を置くのは、その人の自宅を実際に想定しながら、どの場所で、どんな合図が効くのかを一緒に見極め、環境の工夫と体の練習を同時に組み立てるという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。

Evidence
床の線に見立てた視覚キューで、すくみ足の頻度が減ったという報告

足元に線状の視覚キューを投影する方法を検証した研究では、すくみ足のエピソードが減り、歩く速さが上がったと報告されています。境目そのものではなく、あえて足を置く目印を用意することで、一歩を踏み出しやすくするという考え方です。

限界:これは対照群を置かない小規模な研究で、効果の大きさには個人差があります。すべての方に同じように効くわけではなく、キューの向きや間隔が合わないとかえって混乱を招くこともあります。導入は専門家の評価のもとで行うのが安全です。

出典:Donovan S, Lim C, Diaz N, et al. Laserlight cues for gait freezing in Parkinson’s disease: an open-label study. Parkinsonism Relat Disord. 2011;17(4):240-245
Watch & Practice
バランスと歩行の体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、バランスや大きく踏み出す歩行の体操を配信しています。環境の工夫とあわせて、無理のない範囲で習慣にしてみてください。

バランスの体操を見る

05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

専門のリハビリでは、実際にご自宅を確認しながら、どの場所で・どんなときに足が止まりやすいかを一緒に把握し、マットの選び方や配置、色のコントラスト、キューの種類を、その人に合わせて調整します。「実際につまずいた場面」を確認の題材にすると、対策がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは環境と動作の側から支えます。

受診の目安は、転倒やつまずきが増えてきた、すくみ足が強くなってきた、立ち上がった直後のふらつきが目立つ、といったときです。マットでのつまずきの原因は一つとは限りません。自己判断せず、神経内科で原因を確かめてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. 滑り止めマットを敷いたら、逆によろけるようになりました。なぜですか?

パーキンソン病では、床の材質や高さが変わる「境目」で、足が止まってしまうすくみ足という症状が出ることがあります。滑り止めマットのふちも、この境目にあたります。滑らないようにと敷いたマットのふちで、かえって足が止まったりつまずいたりするのは、珍しいことではありません。マット自体が悪いのではなく、境目の作り方に工夫の余地があります。

Q. マットの模様や色は、何でもよいのですか?

模様や色の切り替わりが急すぎると、脳が実際の段差のように処理してしまい、すくみ足のきっかけになることがあります。反対に、床とマットの色が近すぎて境目が見えないと、今度は踏み外しの原因になります。強いコントラストの複雑な柄や光沢のある素材は避け、ほどよい明度差の落ち着いた色を選ぶのが基本です。

Q. 自宅でできる敷き方の工夫はありますか?

あります。まず、マットの四辺を面ファスナーや滑り止めシートでしっかり固定し、段差ゼロに近づけます。次に、床とマットの色をほどよいコントラストにします。さらに、すくみ足が出やすい場所には、進行方向に対して横向きの縞模様を、歩行の合図として活用する方法もあります。玄関の上がり框など、大きな段差そのものはマットで埋めず、手すりや照明で対応するのが安全です。

Q. マットの模様で、すくみ足は本当に減らせますか?

視覚的な合図(線や模様)を使う練習で、すくみ足が起こる頻度や歩行が改善したという報告があります。ただし効果には個人差があり、進行に伴って変動することもあります。合図の効果は、練習を続けるほど安定しやすいとも言われています。運動やキューの工夫は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。

Q. 滑り止めマット以外にも、転倒対策はありますか?

あります。夜間の照明を確保する、立ち上がる前に一呼吸おいてから動き出す、ながら動作(物を持ちながら歩くなど)を避ける、といった工夫も転倒対策になります。姿勢反射障害や起立性低血圧など、マット以外の原因が関わっていることもあるため、転倒が増えてきたときは、環境調整とあわせて医療者に相談することをおすすめします。

Q. マットでのつまずきは、パーキンソン病の症状のせいですか?他の原因もありますか?

すくみ足や姿勢反射障害が関わっていることはありますが、視力の変化、足のむくみや感覚の低下、薬の効き方の波、床の照明など、他の原因が重なっていることも少なくありません。原因は一つとは限らないため、自己判断せず、気になる転倒やつまずきが増えたときは神経内科・かかりつけ医に相談してください。
07
STROKE LAB

転倒・環境の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。実際につまずいた場面を一緒に確認し、マットの選び方・配置・色のコントラスト・キューの使い方を、その人に合わせて組み立てます。ご自宅の間取りを想定した提案ができるので、対策がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、環境と動作の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
マットのふちを1本、
見直すだけで変わります。
STROKE LAB代表 金子唯史

「転倒が心配で滑り止めマットを敷いたのに、かえって危なくなった気がする」——そう不安そうに話すご家族に、私たちはたくさん出会ってきました。良かれと思ってした工夫が、うまくいかないと、次にどうすればよいか分からなくなってしまいます。

お伝えしたいのは、マットのふちを1本見直すだけで、歩きやすさは驚くほど変わることがあるということです。段差はなくし、すくみやすい一点だけ合図に変える。ちょっとした敷き方の工夫で、安心して歩ける場面はまだまだ広がります。

転倒や環境づくりでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。つまずいた場面そのものを題材に、ご自宅に合う工夫を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。転倒の原因には他の要因もあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年9月9日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
  • Nieuwboer A, Kwakkel G, Rochester L, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140.(自宅での視覚・聴覚・体性感覚キュー練習が歩行に関わる移動能力を改善したと報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
  • Donovan S, Lim C, Diaz N, et al. Laserlight cues for gait freezing in Parkinson’s disease: an open-label study. Parkinsonism Relat Disord. 2011;17(4):240-245.(足元の線状の視覚キューがすくみ足のエピソードを減らし歩行速度を改善したと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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