レビー小体型認知症とパーキンソン病の関係|重なりと違い
病名は変わっても、根っこは同じです。
「パーキンソン病」と聞いていたのに、ある日「レビー小体型認知症」と言われた。別の病気になってしまったのかと、不安になったご家族は少なくありません。実はこの二つ、レビー小体病という同じ仲間の病気で、見分け方は症状が出た「順番」だけです。重なりと違いを、整理してお伝えします。

「診断名が、変わった」と聞いて。
数年前に手の震えと歩きにくさで診断され、パーキンソン病として通院してきた。最近になって、幻視や物忘れが目立つようになり、診察で「レビー小体型認知症」という言葉を告げられた。まったく違う病気になってしまったのか、これまでの経過は何だったのか——そう感じるご家族は少なくありません。
でも、知ってほしいのです。この二つは、レビー小体病という同じ病気の仲間で、見分け方は症状が出た順番だけだということを。
パーキンソン病とレビー小体型認知症は、臨床の現場でも境界があいまいと言われるほど、重なりの多い病気です。まずは、その重なりのもとになっている「共通の根っこ」から見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
レビー小体病という、共通の根っこ。
どちらの病気も、脳の神経細胞の中にレビー小体という異常なたんぱく質のかたまりができることで起こります。この共通点から、パーキンソン病とレビー小体型認知症は、まとめて「レビー小体病」と呼ばれる同じ仲間の病気とされています。
違いを生んでいるのは、この異常なたんぱく質が脳のどこから広がり始めるかという点です。体の動きにかかわる部分から先に広がると、震えや動きにくさといった運動症状が先に目立ちます。記憶や判断にかかわる部分に早くから広がると、もの忘れや幻視といった認知機能の症状が早く目立ちます。同じ病気の広がり方の違いが、二つの診断名を生んでいるのです。
| 項目 | パーキンソン病(PD/PDD) | レビー小体型認知症(DLB) |
|---|---|---|
| 病気の根っこ | レビー小体病(共通) | レビー小体病(共通) |
| 最初に目立つ症状 | 震え・動作緩慢・こわばりなどの運動症状 | 認知機能の変動・幻視・注意力の波 |
| 認知機能の変化が出る時期 | 運動症状から1年以上たってから | 運動症状と同時か、それより先 |
| よくみられる特徴 | 運動症状が中心に長く続くことが多い | 具体的で detailedな幻視、日による調子の波が目立ちやすい |
重なりが多いからこそ、境目は「どちらか」で切り分けるものというより、一つの連続した広がりの、どのあたりに今いるかというイメージに近いものです。次の章で、実際の見分け方の目安を見ていきましょう。

STROKE LABの視点:見分け方は「順番」だけ。
国際的な診断の目安として使われているのが、「1年ルール」と呼ばれる考え方です。運動症状と認知機能の変化が、どちらが先に、どれくらいの間をおいて出てきたかで、呼び方を分けます。
運動症状が先で、1年以上たってから認知機能の変化が出た場合。パーキンソン病として経過し、その後に認知症を伴うようになったとみなされ、パーキンソン病由来の認知症と呼ばれます。
認知機能の変化が運動症状と同時か、それより先に出た場合。レビー小体型認知症と呼ばれます。運動症状はあっても、なくても診断されることがあります。
ここで大切にしてほしいのは、1年という区切りは、研究や診断を整理するための目安であって、症状の重さや今後の見通しを決めるものではないということです。1年ルールという枠組み自体、専門家の間でも便宜的なものと位置づけられています。診断名がどちらであっても、根っこは同じレビー小体病であり、今その方に出ている症状に合わせて向き合うことに変わりはありません。
レビー小体型認知症の国際的な診断基準を定めたコンソーシアムの報告では、認知機能の低下が、運動症状(パーキンソニズム)の発症と同時か、その1年以内に始まった場合にレビー小体型認知症と診断するという基準が示されています。
限界:この1年という区切りは、専門家の間でも「便宜的なもの」と位置づけられており、絶対的な生物学的な境界線ではありません。実際の診断は、症状の経過に加えて画像検査なども含めて総合的に判断されます。診断の確定は必ず専門医が行います。

共通して、みられる症状。
レビー小体病という同じ根っこを持つため、どちらの診断でも共通してみられる症状があります。診断名にとらわれず、今出ている症状として捉えることが大切です。
震え・動作緩慢・こわばりといった運動症状は、レビー小体型認知症でもみられることがあります。便秘や立ちくらみ(起立性低血圧)、発汗の異常といった自律神経の症状、においを感じにくくなる嗅覚の低下も、どちらの病気でもよく報告されます。認知機能の面では、注意力や理解のしやすさが日や時間帯によって波のように変わる「認知機能の変動」、実際にはいないものが見える「幻視」が、特にレビー小体型認知症で目立ちますが、パーキンソン病の経過の中で出てくることもあります。
中でも注目されているのが、レム睡眠行動障害です。眠っている間、夢の内容に合わせて大きな声を出したり、手足を激しく動かしたりする症状で、他の症状より何年も、時には十年以上前から出ることが知られています。診断名が決まるずっと前から、体はすでにサインを出していることがあるのです。

レム睡眠行動障害のある人を長期間追跡した多施設共同研究では、12年間の経過で約73パーセントの人が、パーキンソン病・レビー小体型認知症・多系統萎縮症のいずれかを発症したと報告されています。年あたりの発症率はおよそ6パーセントで、発症までの期間は人によって幅がありました。
限界:レム睡眠行動障害があっても発症しない人もおり、必ずしも将来の発症を意味するものではありません。この研究は将来の発症リスクを示すものであり、現在すでに診断を受けている方の重症度や進行速度を示すものではありません。気になる睡眠中の症状は、専門医に相談してください。
日々の関わり方と、リハビリ。
運動症状に対する基本的なリハビリの考え方は、診断名にかかわらず共通しています。歩き方や姿勢、大きく動くことを意識した運動は、どちらの診断でも土台になります。運動の具体的な内容は体操・自主トレ大全にまとめています。
一方、認知機能の変動や幻視が目立つ場合には、いくつかの工夫が加わります。体調のよい時間帯を見つけて、その時間に活動や練習を合わせること。幻視については、否定せずに気持ちを受け止めつつ、部屋の明るさを保つ、影ができやすいものを片づけるなど、環境を整えることが助けになります。転倒への備えとして、住まいの中の段差や照明も見直しておくと安心です。
専門施設では、診断名ではなく、その方に今出ている症状の組み合わせに合わせてリハビリを組み立てることができます。大きく3つの方向から考えます。
1. 運動症状への働きかけ。大きく動く運動学習や歩行・バランスの練習など、パーキンソン病のリハビリで培われてきた考え方を土台にします。
2. 認知機能の変動への配慮。調子のよい時間帯を見極めて練習を組み、疲れやすさや注意の続きにくさに合わせてセッションの長さや進め方を調整します。
3. ご家族への情報共有。幻視や認知機能の波にどう向き合うか、日々の困りごとをご家族と一緒に整理し、無理のない関わり方を探ります。
薬の調整や、レビー小体型認知症で特に注意が必要とされる薬剤の選択は、主治医の領域です。私たちは、その判断を尊重しながら、運動と生活の側から支えます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。

脳リハ.comのYouTubeでは、運動症状の土台づくりにつながる体操を配信しています。無理のない範囲で、日々の習慣にしてみてください。
受診の、目安。
次のような変化に気づいたときは、自己判断せず神経内科に相談してください。もの忘れや判断力の変化に加えて、実際にはいないものが見える、日によって受け答えの様子が大きく変わるといった様子があるとき。眠っている間に大きな声を出したり、手足を激しく動かしたりする様子があるとき。すでにパーキンソン病と診断されている方で、これまでと違う認知機能の変化を感じたとき。
診断名がどちらになるかは、専門医による経過の確認と検査を経て決まります。この記事の内容だけで診断を判断せず、気になる変化はそのまま医師に伝えてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. パーキンソン病とレビー小体型認知症は、同じ病気ですか?
Q. どちらの診断になるかは、何で決まるのですか?
Q. パーキンソン病の人は、いずれ認知症になるのですか?
Q. 共通してみられる症状には、どのようなものがありますか?
Q. 家族として、診断名の違いにどう向き合えばよいですか?
Q. リハビリのアプローチは、診断名によって変わりますか?
ご相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。診断名にとらわれず、今出ている運動症状と認知機能の症状の両方を見ながら、その方に合ったリハビリを組み立てます。ご家族への情報共有にも力を入れ、日々の関わり方を一緒に考えます。薬の調整は主治医を尊重し、運動と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
一緒に整理させてください。

「診断名が変わった」というだけで、これまで積み重ねてきたものが崩れてしまったように感じるご家族に、たくさんお会いしてきました。でも実際には、根っこは変わっていません。
大切なのは、病名にとらわれすぎず、今その方に何が起きていて、何を支えれば楽になるかを、一つずつ丁寧に見ていくことだと考えています。
診断名に戸惑っているとき、どうぞ一度ご相談ください。今困っている場面を、一緒に整理するところから始めましょう。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断の確定は必ず神経内科・専門医にご相談ください(最終確認日:2026年8月12日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- McKeith IG, Boeve BF, Dickson DW, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology. 2017;89(1):88-100.(1年ルールを含む国際コンセンサス診断基準。第1動線・エビデンスボックスの出典)
- Postuma RB, et al. Risk and predictors of dementia and parkinsonism in idiopathic REM sleep behaviour disorder: a multicentre study. Brain. 2019;142(3):744-759.(レム睡眠行動障害からレビー小体病への移行率を示した多施設共同研究。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)