パーキンソン病の介護保険|申請の流れと使えるサービス
介護保険は、40歳から使える制度です。
パーキンソン病と診断されると、「介護保険は65歳からでは」と思い込み、申請のタイミングを逃してしまう方が少なくありません。実はパーキンソン病は40歳から対象になる特定疾病です。申請の流れと、使えるサービスを順番に整理します。

何から始めればいいのか、分からない。
診断された直後は、病気そのものを受け止めるだけで精一杯で、公的な支援制度まで頭が回らない、という声をよく聞きます。「介護保険」と聞くと、どうしても高齢者向けの制度というイメージが先に立ち、自分たちには関係ないと思ってしまう方も多いのです。
でも、知ってほしいのです。パーキンソン病は、40歳から介護保険の対象になる病気だということを。早めに知っておくだけで、使える選択肢は大きく変わります。
介護保険は、手続きが複雑そうに見えて、実は流れさえ分かればそれほど難しいものではありません。まずは制度の全体像から、順番に整理していきましょう。パーキンソン病のリハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめていますので、あわせてご覧ください。
介護保険とは?パーキンソン病でも対象になる?
介護保険は、40歳以上のすべての国民が加入する公的な保険制度です。介護が必要と認定されると、費用の一部の自己負担でさまざまな介護サービスを利用できます。加入者は年齢によって2つのグループに分かれ、対象になる条件が少し異なります。
| 区分 | 対象になる条件 |
|---|---|
| 第1号被保険者 (65歳以上) |
原因を問わず、要介護・要支援の認定を受ければ利用できる |
| 第2号被保険者 (40〜64歳) |
加齢に伴う「特定疾病」16種類のいずれかが原因の場合に限り利用できる |
ここで重要なのが、パーキンソン病はこの16の特定疾病のひとつに含まれているという点です。制度上は「パーキンソン病関連疾患(パーキンソン病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)」としてまとめられており、40歳から64歳の方でも、この診断がついていれば申請の対象になります。65歳以上の方は、パーキンソン病に限らずどんな原因であっても、要介護・要支援の認定を受ければ利用できます。
なお、40歳から64歳の方で、要介護状態の原因が交通事故など特定疾病以外による場合は、介護保険の対象にはなりません。その場合は、障害福祉サービス(障害者総合支援法)など、別の制度を検討することになります。どちらの制度が使えるか迷う場合も、まずはお住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談すれば、案内してもらえます。

申請から利用までの、流れ。
申請の手順は、全国どの市区町村でもほぼ共通しています。大きく分けると6つのステップです。ひとつずつ見ていきましょう。
ステップ1:市区町村の窓口に申請する。お住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センターで申請書を提出します。本人だけでなく、家族や、依頼すればケアマネジャーが代行することもできます。40〜64歳の方は、特定疾病を確認できる医師の診断が必要になります。
ステップ2:認定調査を受ける。調査員が自宅などを訪問し、日常生活の様子について、決められた項目に沿って聞き取りや観察を行います。歩行やまばたき、着替え、飲み込みなど、パーキンソン病に関わる項目も含まれます。
ステップ3:主治医意見書が作成される。市区町村から主治医に依頼が届き、病状や治療の状況について意見書が作成されます。日頃から主治医に生活の困りごとを伝えておくと、意見書にも反映されやすくなります。
ステップ4:一次判定・二次判定が行われる。認定調査の結果はコンピューターによる一次判定にかけられ、そのうえで主治医意見書とあわせて、介護認定審査会という専門家の会議で二次判定が行われます。
ステップ5:認定結果が通知される。申請から原則30日以内を目安に、要支援1〜2、要介護1〜5、または非該当のいずれかの結果が通知されます。結果に応じて、利用できるサービスの量(支給限度額)が決まります。
ステップ6:ケアプランを作成し、サービスを始める。要介護と認定された方は居宅介護支援事業所のケアマネジャー、要支援と認定された方は地域包括支援センターに相談し、生活に合わせたケアプランを一緒に作ります。プランに沿ってサービスの利用を開始します。
申請自体に費用はかかりません。認定結果が出るまでの間も、暫定的にケアプランを立ててサービスを使い始められる場合があるので、急ぎの事情があるときは窓口やケアマネジャーに相談してみてください。また、認定には有効期間があり、期間が切れる前に更新の手続きが必要です。市区町村から更新のお知らせが届くので、見落とさないようにしましょう。

使える、サービス一覧。
認定を受けると、生活の場面に応じてさまざまなサービスを組み合わせて使えます。代表的なものを、目的別に整理しました。
| サービス | こんな場面で役立つ |
|---|---|
| 訪問リハビリテーション | 自宅に療法士が来て、動作練習や自主トレーニングの指導を受けたいとき |
| 通所リハビリテーション(デイケア) | 施設に通い、専門職のもとでまとまった時間の運動やリハビリを続けたいとき |
| 訪問介護(ホームヘルプ) | 入浴や排せつ、調理・掃除など、日常の介助や家事支援がほしいとき |
| 通所介護(デイサービス) | 日中を施設で過ごし、入浴や食事、他者との交流を持ちたいとき |
| 福祉用具貸与・購入 | 歩行器や手すり、ベッドなど、転倒予防や自立した動きを助ける道具がほしいとき |
| 住宅改修費の支給 | 段差の解消や手すりの設置など、自宅を安全に改修したいとき |
| 短期入所生活介護(ショートステイ) | 介護する家族が休息をとりたいときや、冠婚葬祭・体調不良で一時的に頼りたいとき |
| 訪問看護 | 服薬管理や体調観察など、看護師による医療的なケアがほしいとき |
要支援1・2の方は「予防給付」として、要介護1〜5の方は「介護給付」として、それぞれ内容の異なるサービスメニューが用意されています。どのサービスをどれくらい使うかは、要介護度ごとの支給限度額の範囲内で、ケアプランに沿って決めていきます。運動やリハビリの詳しい内容は体操・自主トレ大全もあわせてご覧ください。

STROKE LABの視点:パーキンソン病ならではの注意点。
パーキンソン病の申請で、他の病気とは少し違う注意が必要なのが症状の波(オン・オフ現象)です。薬の効いている時間帯(オン)は驚くほど動けるのに、効果が切れる時間帯(オフ)は同じ人とは思えないほど動きにくくなる。この落差が、認定調査の結果に影響することがあります。
1. 調子の良い時間帯だけを見せない。調査員の訪問時にたまたま調子が良いと、普段の大変さが正しく伝わらないことがあります。オフの時間帯の様子も、言葉で具体的に伝えましょう。
2. 普段の様子を記録しておく。1日の中でどの時間帯にどれくらい動きにくくなるか、転倒しそうになった場面はあったか、簡単なメモを続けておくと、調査員にも主治医にも伝えやすくなります。
3. 家族の視点も伝える。本人は「できている」と感じていても、実際には家族が見守りや介助をしている場面は少なくありません。家族が感じている大変さも、遠慮せずに伝えて構いません。
また、進行の度合いによっては、介護保険とあわせて難病医療費助成制度(医療費の負担軽減)の対象になることもあります。こちらは介護保険とは別の制度で、窓口も異なります。両方の制度を漏れなく使えているか、主治医やケアマネジャー、市区町村の窓口に一度確認してみるとよいでしょう。認定結果に納得がいかない場合は、都道府県の介護保険審査会に不服申し立てをする方法や、状態が変わった際に有効期間中でも区分変更を申請する方法もあります。
専門リハとの、上手な組み合わせ方。
介護保険の訪問・通所リハビリは、頻度や時間、支給限度額に制約があります。生活の土台は介護保険で支えながら、症状に応じて自費リハビリを組み合わせることで、より柔軟にリハビリの頻度や内容を調整できます。
STROKE LABでは、パーキンソン病特有の症状の波を踏まえ、その日の状態に合わせた動作練習や、転倒予防のための姿勢・歩行の練習に重点を置いています。ケアマネジャーやかかりつけの医療機関とも連携しながら、介護保険サービスと役割が重ならないように組み立てます。
「介護保険のリハビリだけでは物足りない」「もっと集中的に取り組みたい」と感じたときは、自費リハビリという選択肢も検討してみてください。費用や施設選びのポイントは自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
脳リハ.comのYouTubeでは、自宅で無理なく続けられる体操を配信しています。介護保険のサービスと合わせて、日々の習慣にしてみてください。
よくある質問。
Q. パーキンソン病でも介護保険は使えますか?
Q. 40歳から64歳でも申請できますか?
Q. 申請から使えるようになるまで、どれくらいかかりますか?

Q. 認定調査の日、たまたま調子が良いとどうなりますか?

Q. 介護保険でリハビリは受けられますか?
Q. 要介護認定の結果に納得できないときはどうすればよいですか?
制度とリハビリの相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。介護保険の制度そのものについては、市区町村やケアマネジャーが専門の窓口になりますが、私たちはリハビリの立場から「今の生活で何が困っているか」を一緒に整理し、介護保険サービスとの役割分担や、専門的なリハビリの組み合わせ方についてご相談いただけます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
リハビリの第一歩です。

診断を受けたばかりの方やご家族から、「介護保険は年を取ってからのもの」と思っていた、というお話をよく伺います。制度を知らないまま時間が過ぎ、使えたはずの支援に気づかず苦労されている方を、これまで何人も見てきました。
お伝えしたいのは、制度を早く知ることも、リハビリと同じくらい生活を守る力になるということです。介護保険という土台を整え、そのうえで専門的なリハビリを重ねていく。両方をそろえることで、できることは確実に広がります。
申請の進め方や、専門リハとの組み合わせ方でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。今の生活の困りごとから、一緒に整理させていただきます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、厚生労働省・各自治体の公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。制度の詳細や運用は市区町村により異なることがあります。申請にあたっては、必ずお住まいの市区町村の窓口でご確認ください(最終確認日:2026年8月12日)。
- 厚生労働省:介護保険制度について
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)