パーキンソン病は遺伝するのか|家族が気になる疑問に答える
パーキンソン病は遺伝するのか。
ご本人が診断を受けたとき、あるいはご家族が発症されたとき、多くの方が「自分や子どもにも遺伝するのだろうか」と不安を抱きます。結論からいえば、パーキンソン病の多くは、単純に遺伝するわけではありません。しくみを正しく知り、必要以上に不安を抱えずに済むよう、家族が気になる疑問に一つずつ答えていきます。

「私の子どもも、いつか」という不安。
ご本人が診断を受けたとき、まっさきに自分の体のことより、子どもや孫の将来を心配される方は少なくありません。「自分のせいで、子どもにも同じ病気が出るのではないか」——口には出さなくても、そう感じているご家族にたくさん出会ってきました。
でも、知ってほしいのです。パーキンソン病の多くは、単純な遺伝の病気ではありませんということを。
パーキンソン病は、脳の中でドパミンという神経伝達物質をつくる神経細胞が減っていくことで起こる病気です。その原因には、遺伝的な要因と、加齢や環境的な要因の両方が関わっていると考えられています。まずはそのしくみを、正確に整理していきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
遺伝のしくみと、家族性の割合。
パーキンソン病は、大きく分けて孤発性(多くの患者さんに該当)と、家族性(一部の患者さんに該当)の2つに分けられます。混同すると必要以上に不安が大きくなるため、それぞれの特徴を整理しておきましょう。
| タイプ | どういうことか |
|---|---|
| 孤発性(大多数) | はっきりした家族歴がなく、加齢や複数の要因が重なって発症すると考えられる形 |
| 家族性(一部) | 血縁者に複数の患者さんがいる形。特定の原因遺伝子がみつかることがある |
| 単一遺伝子が原因(さらに一部) | SNCA・LRRK2・PRKN・PINK1などの遺伝子変化が特定できる、さらに限られた形 |
| リスク遺伝子(GBAなど) | 持っていると発症しやすさがやや上がるが、必ず発症するとは限らない遺伝子 |
つまり、「遺伝子が関わる」ことと「必ず遺伝する」ことは、同じではありません。原因となる遺伝子の変化を持っていても、生涯発症しない方もいます。ここが、多くのご家族が誤解しやすいポイントです。

パーキンソン病の遺伝学に関するレビューでは、単一の遺伝子変化(単一遺伝子性)が原因と考えられるのは、患者さん全体のうちおおよそ5〜10パーセント程度にとどまり、残りの多くは孤発性であると整理されています。GBA遺伝子の変化のように、発症のしやすさに関わるが必ずしも発症を決定づけないリスク遺伝子も知られています。
限界:割合は研究や対象集団によって幅があり、人種や地域によっても異なります。ご自身やご家族に当てはまるかどうかは、この数字だけで判断できません。
STROKE LABの視点:家族のリスクをどう考えるか。
「家族に患者さんがいると、発症リスクは何倍になるのか」という数字だけが独り歩きすると、必要以上に不安になってしまいます。相対的なリスクと、絶対的なリスクを分けて考えることが大切です。次の3つの視点で整理してみましょう。
1. 「何倍」よりも「実際に何パーセントか」を見る。相対リスクが2倍・3倍と聞くと大きく感じますが、もとの発症率自体が高くない病気なので、実際に発症する確率(絶対リスク)は、上がってもなお低い水準にとどまります。
2. 発症年齢と血縁の近さを考える。発症年齢が若いほど、また血縁が近い(親・きょうだい・子ども)ほど、遺伝的な要因が関わっている可能性はやや高くなる傾向があります。逆に高齢発症で家族に患者さんがいない場合は、その傾向は弱まります。
3. 遺伝は「片方の要因」でしかない。パーキンソン病は、遺伝的な要因だけでなく、加齢や環境的な要因が組み合わさって発症すると考えられています。遺伝子を持っているからといって、それだけで発症が決まるわけではありません。
数字の解釈は、ご家族おひとりおひとりの状況(発症年齢、血縁関係、他に患者さんがいるかどうか)によって変わります。一般論だけで判断せず、気になる場合は神経内科や遺伝カウンセリングの専門家と一緒に、ご自身の状況にあてはめて考えることをおすすめします。
地域住民を対象とした研究では、パーキンソン病患者さんの第一度近親者(親・きょうだい・子ども)は、対照群の近親者に比べて発症する可能性がおよそ2.3倍高かったと報告されています。一方で、75歳までの累積発症率でみると、患者さんの近親者で2パーセント、対照群の近親者で1パーセントと、実際に発症する確率そのものは、両群ともなお低い水準にとどまっていました。
限界:この研究は特定の地域住民を対象にしたものです。相対リスクの倍率は研究によって幅があり、人種や集団によっても異なります。個人の将来のリスクを正確に予測するものではありません。

遺伝子検査という、選択肢。
「検査を受ければ、はっきりするのでは」と考える方もいらっしゃいます。遺伝子検査は、次のような場合に検討されることが多い一方で、すべての患者さんに必要というわけではありません。
検討されやすい状況としては、発症年齢が若い(おおむね50歳より前)、血縁者に複数の患者さんがいる、特定の民族的背景を持つ、といった場合が挙げられます。ただし、たとえ原因となる遺伝子の変化が見つかったとしても、いつ・どの程度の症状で発症するかまでは、正確には予測できません。この「わかること」と「わからないこと」の両方を理解したうえで検査を受けるかどうかを決めることが大切です。
検査結果は、ご本人だけでなく、ご家族の気持ちや将来設計にも影響しうるものです。そのため、検査の前後に遺伝カウンセリングを受けられる医療機関に相談することが推奨されています。検査を受けない、という選択も、もちろん尊重されるべき選択肢のひとつです。

遺伝のことを考えすぎて気持ちが沈むときは、無理のない範囲で体を動かす時間を持つことも助けになります。脳リハ.comのYouTubeでは、ご家族と一緒にできる体操を配信しています。
今日からできること、相談先。
遺伝が確立した予防法はまだありませんが、規則正しい生活、適度な運動、体を動かす習慣は、一般的な健康維持として役立つと考えられています。ご家族が過度に生活を制限したり、心配のあまり本人やお子さんに気を遣わせすぎたりする必要はありません。運動の具体的な進め方は体操・自主トレ大全も参考にしてください。
将来、手のこわばりや動きにくさ、字が小さくなるといった気になる変化がお子さんやご自身に出てきたときは、自己判断せず早めに神経内科へ相談する、という心づもりを持っておくと安心です。早く見つけて備えることは、遺伝を心配し続けることとは違います。不安な気持ちは一人で抱え込まず、医療者や、同じ立場のご家族が集う患者会などに相談することも助けになります。

よくある質問。
Q. パーキンソン病は、必ず子どもに遺伝しますか?
Q. 家族に患者がいると、自分もなりやすいですか?
Q. 遺伝子検査は受けたほうがよいですか?
Q. 若くして発症した場合、遺伝の可能性は高いですか?
Q. 親がパーキンソン病でも、子どもは何に気をつければよいですか?
Q. 遺伝が心配なとき、誰に相談すればよいですか?
ご家族の不安は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。遺伝や検査の判断そのものは主治医・遺伝カウンセリングの領域ですが、私たちはご本人の今ある症状と生活の質を、運動と動作の側から支えることを専門にしています。ご家族が抱える不安なお気持ちにも、できる限り寄り添ってご相談をお受けしています。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
今日の動きを見てほしいのです。

診断を受けたご本人よりも先に、お子さんやご家族が「自分にも遺伝するのではないか」と涙を見せる場面に、何度も立ち会ってきました。それだけ、この病気には家族全体を巻き込む重さがあるのだと感じます。
お伝えしたいのは、遺伝子の可能性を心配し続けるより、今ここにある症状と、今日からできることに目を向けたほうが、ご本人にもご家族にも力になるということです。不安なままにせず、正しい情報のもとで前を向いていただきたいと思います。
遺伝や検査のことは主治医と、日々の生活と動きのことは私たちと。どうぞ役割を分けて、安心して頼ってください。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。遺伝や発症リスクの個別の判断は、必ず神経内科・遺伝カウンセリングの専門家にご相談ください(最終確認日:2026年8月10日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- MedlinePlus Genetics: Parkinson’s disease
- Marder K, et al. Risk of Parkinson’s disease among first-degree relatives: a community-based study. Neurology. 1996;47(1):155-160.(第一度近親者の相対リスクと75歳までの累積発症率を報告。第3章エビデンスボックスの出典)
- Monogenic Parkinson’s Disease: Genotype, Phenotype, Pathophysiology, and Genetic Testing. J Parkinsons Dis(PMC8950888)(単一遺伝子性パーキンソン病の割合と主要な原因遺伝子を整理。第2章エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)