パーキンソン病の初期症状|見逃されやすいサイン
体は、動きより先に、静かなサインを出しています。
「震えていないから、まだ大丈夫」——そう思っていませんか。パーキンソン病は、震えや動きにくさが目立つ前に、においや眠り、便通、表情といった一見関係のなさそうな変化が先に現れることがあります。見逃されやすい8つのサインと、気づいたときに取るべき行動を整理します。

「年のせい」だと、思っていた。
歩くときに片方の腕だけ振れていない。声が小さく、聞き返すことが増えた。夜中に大声で寝言を言い、手足をバタつかせる。においに鈍くなって、料理の味付けが変わった。便秘が何年も続いている——。それぞれは些細に見えて、振り返ると何年も前から続いていた、というご家族の声をよく聞きます。
大切なのは、震えや動きにくさだけを「サイン」だと思い込まないことです。体は、もっと早くから、静かにサインを出していることがあります。
パーキンソン病というと、手の震えを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、震え以外の変化が先に現れ、しばらく経ってから「そういえば」と振り返って気づかれることが少なくありません。ここでは、なぜそうしたことが起こるのか、そのしくみから見ていきます。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
初期症状の、しくみ。
パーキンソン病は、脳の中でドパミンという物質をつくる神経細胞が少しずつ減っていく病気です。震えや動きにくさといった運動症状は、この変化がある程度進んでから現れます。一方で、嗅覚や自律神経、睡眠に関わる部分は、運動をつかさどる部分より先に変化が始まると考えられており、これが運動症状に先立つ非運動症状として現れることがあります。もう一つの特徴が、症状の現れ方です。
| 特徴 | どういうことか |
|---|---|
| 非運動症状が先行する | 嗅覚低下・便秘・睡眠の異常・抑うつなどが、運動症状より何年も前に現れることがある |
| 片側から始まりやすい | 左右どちらか一方の腕や手から、動きの変化が始まることが多い |
| ゆっくり進む | 急に現れるのではなく、数か月〜数年かけて少しずつ目立ってくる |
| 他の原因と区別しにくい | 加齢・ストレス・他の病気でも似た変化が起こるため、単独では判断できない |
つまり、震えや動きにくさが目立つのを待つ必要はないということです。次の章では、日常で気づける具体的な8つのサインを紹介します。

STROKE LABの視点:見逃されやすい8つのサイン。
1つだけで決まるものではありません。いくつかが重なっていないか、家族の目で振り返ってみることが、気づきの第一歩になります。

1. においが分かりにくい。料理の匂いや香水に気づきにくくなる。味付けが濃くなったと感じることもあります。
2. 便秘が続く。以前と比べて排便の回数が減り、それが何年も続いている状態です。
3. 眠っているときに大声を出す・手足を動かす。夢の内容そのままに、大声で寝言を言ったり、手足をバタつかせたりする(レム睡眠行動障害)。
4. 気分の落ち込み・不安が続く。はっきりした理由がないのに、意欲がわかない状態が続くことがあります。
5. 片側の腕の振りが小さい。歩いているとき、片方の腕だけあまり振れていない、と家族が先に気づくことが多いサインです。
6. 声が小さく、単調になった。電話で聞き返されることが増えた、抑揚が減ったと感じたら注意してみましょう。
7. 表情が乏しくなった(仮面様顔貌)。笑っていても表情の動きが少なく、無表情に見られやすくなります。
8. 字が小さくなった(小字症)。書いているうちに文字がだんだん小さく詰まっていく変化です。くわしくは小字症の記事で、自宅でできる書字の工夫を紹介しています。
パーキンソン病の病理変化を段階的に分析した研究では、嗅覚や自律神経に関わる部分に変化が生じた後、運動をつかさどる部分(黒質)に変化が及ぶという進行の順序が示されています。これが、嗅覚の低下などの非運動症状が運動症状より先に現れうる理由の一つと考えられています。
限界:これは病理解剖にもとづく段階分類であり、すべての方が同じ順序・速さで進行するとは限りません。非運動症状があるからといって、必ずパーキンソン病を発症するわけではありません。
気づいたら、次にすること。
いくつかのサインに心当たりがあっても、慌てる必要はありません。落ち着いて、記録し、相談する。この3ステップが、次に進む一番の近道です。
ステップ1:気になる変化をメモに残す。いつから、どんな場面で気づいたか。家族が見て気づいたことも書き加えると、後で振り返りやすくなります。
ステップ2:神経内科(脳神経内科)に相談する。かかりつけ医がいる場合は、まず相談し紹介状をもらう方法もあります。メモを持参すると診察がスムーズです。
ステップ3:診断を待つ間も、体を動かす習慣を大切にする。結果がどうであれ、歩く・体を動かす習慣は、体にとって無駄になりません。

早めに相談することは、不安を煽るためではなく、選択肢を広げるためです。症状が軽いうちから運動習慣を持つことは、その後の生活のしやすさにつながる可能性があります。具体的な体操は体操・自主トレ大全で紹介しています。
レム睡眠行動障害のある方を長期間追跡した多施設共同研究では、追跡期間中に相当数の方が、後にパーキンソン病を含む神経の病気を発症したと報告されています。睡眠中の変化が、運動症状に先立つサインの一つとして位置づけられている理由です。
限界:これは特定の睡眠障害がある方を対象にした研究で、レム睡眠行動障害がある方すべてが発症するわけではありません。診断には専門的な評価が必要です。
専門リハとの、関わり方。
診断は医療の領域ですが、歩行時の腕の振り、表情の動き、姿勢のバランスといった動作を、専門的な視点で観察・評価することはリハビリの役割です。ご本人・ご家族が「なんとなくおかしい」と感じている変化を、動作分析という形で言語化するお手伝いができます。
診断がまだの段階では、無理に病名を先取りするのではなく、今の体の使い方を確認し、運動習慣の土台をつくることに重点を置きます。診断がついた後は、その土台の上に、症状に合わせたリハビリを組み立てていきます。
薬の調整や診断は主治医の役割です。私たちは、動作と生活の側から、気づきから治療までの間を支えます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

脳リハ.comのYouTubeでは、症状が軽いうちから始められる体操を配信しています。診断の有無にかかわらず、無理のない範囲で習慣にしてみてください。
よくある質問。
Q. 初期症状だけで、パーキンソン病と診断できますか?
Q. においが分かりにくいのは、年のせいではないのですか?
Q. 家族が「様子がおかしい」と気づいた場合、何科に行けばいいですか?

Q. 早期に気づくと、何かメリットはありますか?
Q. 片側だけの症状でも心配すべきですか?

Q. 家族に既往がありますが、症状がなければ心配しなくていいですか?
気になる変化は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。診断の前後を問わず、歩行・姿勢・表情などの動作を専門的な視点で確認し、今の体に合った運動習慣づくりをお手伝いします。診断や薬の調整は主治医を尊重し、私たちは動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
一度、確かめてください。

「本人はいたって元気そうだったので、まさかと思いました」——ご家族からそう聞くことが、少なくありません。震えのようなわかりやすいサインがないと、体の変化はどうしても後回しにされがちです。
でも、体は、動きより先に、静かなサインを出していることがあります。腕の振り、表情、声。ご家族だからこそ気づける変化があります。
気になる変化があれば、どうぞ一度、私たちにご相談ください。診断がついていなくても、今の体の状態を一緒に確認するところから、お手伝いできます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。本記事は診断を目的としたものではありません。気になる変化は、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月10日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Braak H, et al. Staging of brain pathology related to sporadic Parkinson’s disease. Neurobiol Aging. 2003;24(2):197-211.(病理変化が嗅覚・自律神経系から運動系へと段階的に進行することを示した病理学的研究。第3動線・エビデンスボックスの出典)
- Postuma RB, et al. Risk factors for neurodegeneration in idiopathic rapid eye movement sleep behavior disorder: a multicentre study. Ann Neurol. 2015;77(5):830-839.(レム睡眠行動障害のある方を長期追跡し、後の神経変性疾患発症との関連を示した多施設研究。第4動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)