パーキンソン病と診断されたら|初期にやるべき運動と生活設計
診断された今日、全部を抱えなくて大丈夫。
パーキンソン病と診断され、頭が真っ白になっているかもしれません。でも、今日すべてを決める必要はありません。今日すること・今週すること・後でよいことに分ければ、動き出せます。初期にやるべき運動と生活の設計を、順序立てて整理します。

診断された日の、あなたへ。
診断名を告げられた瞬間、頭が真っ白になった。将来のこと、仕事のこと、家族のこと——次々に不安が押し寄せて、何から考えればいいのか分からない。そんな方が、たくさんいらっしゃいます。
でも、知ってほしいのです。今日、すべてを決める必要はないということを。順序に分ければ、必ず動き出せます。
パーキンソン病は、ゆっくり進む病気です。だからこそ、診断直後にあわてて全部をやろうとするより、大切なことから順に取り組むほうが、うまくいきます。まず知ってほしいのは、治療の目的は症状をゼロにすることではなく、やりたいことを続けられる生活を、長く保つことだということです。病気の全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。この記事では、診断直後の入口として、何から手をつけるかを順序立てて整理します。
最初の30日の、見取り図。
診断直後は情報が多すぎて、かえって動けなくなりがちです。そこで、やることを「時間軸」で分けるのがおすすめです。今日すること、今週から始めること、少し落ち着いてからでよいこと。この3つに整理すれば、目の前の一歩が見えてきます。

この見取り図の中で、土台になるのは「薬を続けること」と「体を動かす習慣」の2つです。次の章から、それぞれを具体的に見ていきます。
今日すること、後でよいこと。
具体的に、何を今して、何を後回しにしてよいのか。迷ったときの目安を表にしました。あくまで一般的な目安なので、詳しくは主治医と相談しながら進めてください。
| 今日・今週にすること | 落ち着いてからでよいこと |
|---|---|
| 処方された薬を、決められた通りに続ける | 難病や医療費助成などの制度の申請 |
| 無理のない範囲で、体を動かす習慣を始める | 仕事の働き方や、運転を続けるかの見直し |
| 生活リズムを整え、睡眠と食事を規則正しく | 遠い将来の進行への備え(今は考え込みすぎない) |
| 信頼できる情報源を1つ決める(不安な検索を減らす) | 専門リハや、自分に合う運動プログラムの検討 |
ポイントは、不安なままあれこれ検索し続けないことです。情報源を1つに絞ると、心が落ち着きます。そして、後回しにしてよいことは、堂々と後回しにして大丈夫です。
なぜ、初期の運動が大切か。
診断直後に、ぜひ知っておいてほしいことがあります。それは、初期からの運動が、その後の経過に良い影響を与えうるということです。薬と並んで、運動はこの病気と付き合ううえで大きな柱になります。動けるうちから体を動かす習慣をつくることが、先々の自分を助けます。
軽症(ホーン・ヤール2以下)のパーキンソン病130名を対象に、自宅での有酸素運動(自転車こぎ)と、非有酸素の運動を6か月比べた研究では、有酸素運動を行ったグループのほうが、運動症状の進みが穏やかだったと報告されています。初期からの運動に意味があることを示す結果です。
限界:軽症の方が対象で、長期的な効果はさらなる研究が必要です。効果には個人差があり、運動は薬や専門的な治療の代わりではありません。始め方は主治医と相談してください。
進行を遅らせる運動についてさらに詳しくは、あわせてリハビリ完全ガイドもご覧ください。大切なのは、完璧な運動を探すことより、今日から、無理なく続けられるものを始めることです。
運動の、始め方。
「運動が大切」と言われても、何をどれだけやればいいか迷いますよね。難しく考える必要はありません。続けられることを、無理なくが基本です。次の3つを目安にしてください。
全身を、大きく使う。散歩、体操、ストレッチなど、体全体を動かすものがおすすめです。少し息が上がるくらいの有酸素運動も、余裕があれば取り入れます。
楽しめることを、選ぶ。ダンス、太極拳、好きな家事やガーデニングも立派な運動です。楽しいと続きます。続くことが、何よりの効果につながります。
毎日、少しずつ。短い時間でも毎日続けるほうが、たまに長くやるより効果的です。生活の中に組み込んで、習慣にしましょう。
症状や病期に合わせた具体的な体操は、体操・自主トレ大全にまとめています。転びやすさが気になる方は、早めに転倒予防にも目を通しておくと安心です。始め方に迷うときは、主治医や療法士に相談すると、自分に合うやり方が見つかります。

脳リハ.comのYouTubeでは、自宅で無理なくできる体操を配信しています。診断直後の「まず動いてみる」の一歩に、活用してみてください。
食事・睡眠・生活リズム。
運動と並ぶもう一つの土台が、生活リズムです。規則正しく食べて、しっかり眠り、日中は活動する。この当たり前が、体と心を安定させます。難しい制限より、まずは規則正しさを大切にしてください。
食事は、バランスよく、水分を十分にとることが基本です。パーキンソン病では便秘になりやすいので、食物繊維と水分を意識しましょう。薬によっては、食事のたんぱく質が薬の効きに影響することがあるので、飲むタイミングを主治医や薬剤師に確認しておくと安心です。睡眠は、朝は決まった時間に起きて光を浴び、日中に活動すると、夜眠りやすくなります。極端なことをする必要はありません。整えることから始めましょう。

仕事・運転・制度のこと。
初期には、仕事や運転を続けられる方が多くいます。診断されたからといって、すぐにやめる必要はありません。ただし症状や薬の効き方は個人差があり、時間とともに変わります。無理のない働き方の工夫や、運転を続けるかの判断は、症状に合わせて主治医と相談しながら、定期的に見直していきましょう。
制度の面では、パーキンソン病は指定難病で、医療費の助成などの制度があります。ただし申請には診断書などの準備が必要で、対象になる条件もあります。まずは主治医に、自分が対象になるか、いつ申請するとよいかを相談してください。市区町村の窓口や地域包括支援センターも、心強い相談先になります。急いで全部やる必要はありません。落ち着いてから、順に進めれば大丈夫です。

やってはいけないこと。
| 避けたいこと | 理由 | 代わりに |
|---|---|---|
| 自己判断で薬をやめる・減らす | 急な中断は症状を大きく乱すことがある | 気になることは必ず主治医に相談する |
| 不安なまま夜通し検索し続ける | 不確かな情報で不安が増し、心が休まらない | 信頼できる情報源を1つに絞る |
| 動くのが怖くて安静にしすぎる | 動かないと体力や動きが落ちやすい | 無理のない範囲で体を動かす習慣を持つ |
| 効果を誇張する高額な民間療法に飛びつく | 根拠が乏しく、費用や健康の負担になることがある | 迷ったら主治医に確認してから判断する |
専門リハで、できること。
専門のリハビリでは、診断直後のこの時期に、その人の体力や生活に合った運動と生活の設計を一緒に組み立てます。何から始めるか、どれくらい動くか、どう続けるか——一人で悩まず、専門家と決めていけます。脳リハ.comの動画では、身体機能を守るために意識したい要点を解説しています。診断直後の入口として、まず見ておくと安心です。
身体機能を守るための考え方を解説(脳リハ.com)。効果には個人差があります。
自宅で運動を始めることが、今日の一歩を踏み出す土台だとすれば、専門施設で目指すのは、その人に最も効く運動を、安全に、続けられる形で設計することです。診断直後だからこそ、次の3つが専門施設で組み立てられます。
1. 強度と量の設計。初期には、ある程度しっかりした強度の運動が経過に関わると考えられています。今の体力で無理なく届く強度と量を、評価にもとづいて見極めます。
2. 安全な負荷の見極め。強度を上げるほど、転倒や疲労のリスクにも配慮が要ります。ふらつきや血圧の反応を見ながら、安全に追い込める範囲を管理します。
3. 続けられる仕組み。効果を生むのは、続いた運動だけです。生活に組み込める形にし、一人では続きにくい部分を伴走で支えます。
STROKE LABが軸足を置くのは、自己流で始めて挫折したり転んだりする前に、初期のうちに正しい運動の型と量を身につけてもらうことです。診断直後のこの時期の設計が、数年先の動きやすさにつながります。効果には個人差があり、薬の調整は主治医の役割です。
薬をまだ始めていない、診断まもないパーキンソン病の方を対象にした試験では、高めの強度でトレッドミル運動を行ったグループで、半年後の運動症状の悪化が抑えられていたと報告されています。強度の設定が結果に関わることを示す結果で、専門施設で強度を管理する意味を裏づけます。
限界:安全に行うには体力の評価と管理が前提で、強度は誰にでも一律に上げてよいものではありません。効果には個人差があり、運動は薬や専門的な治療の代わりではありません。強度の設定は必ず専門家と決めてください。
よくある質問。
Q. 診断されたばかりです。まず何から始めればよいですか?
Q. 初期から運動したほうがよいのですか?
Q. パーキンソン病は治りますか?進行は止められますか?
Q. 難病の申請や制度は、すぐにしたほうがよいですか?
Q. 食事で気をつけることはありますか?
Q. 仕事や運転は続けられますか?
診断直後の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。診断されたばかりのこの時期に、何から始めるか、どんな運動を続けるかを、その人の体力と生活に合わせて一緒に設計します。薬の判断は主治医を尊重し、運動と生活の側から、これからの毎日を支えます。一人で抱え込まず、まずはご相談ください。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
付き合い方を決める始まりです。

診断された直後は、頭が真っ白になり、将来への不安でいっぱいになります。何から手をつければいいのか分からず、立ちすくんでしまう方を、たくさん見てきました。
お伝えしたいのは、今日、すべてを決めなくていいということ。そして、初期からできることは、思っているよりたくさんあるということです。大切なことから一つずつ。順序に分ければ、必ず前に進めます。
これからの毎日をどう組み立てるか、一緒に考えます。どうぞ一度、ご相談ください。運動と生活の側から、無理のない一歩をお手伝いします。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。治療方針や制度の判断は、必ず主治医・専門窓口にご相談ください(最終確認日:2026年7月6日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- van der Kolk NM, et al. Effectiveness of home-based and remotely supervised aerobic exercise in Parkinson’s disease: a double-blind, randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2019;18(11):998-1008.(軽症の段階で有酸素運動が運動症状の進みを穏やかにしたと報告。sec4エビデンスボックスの出典)
- Schenkman M, et al. Effect of High-Intensity Treadmill Exercise on Motor Symptoms in Patients With De Novo Parkinson Disease (SPARX): A Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2018;75(2):219-226.(診断まもない未治療の患者で、高強度運動が半年後の運動症状の悪化を抑えたと報告。sec9第2動線エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)