パーキンソン病の振戦(ふるえ)|安静時振戦の特徴と生活の工夫
その手の震えは、動かすと止まりますか?
じっとしていると震えるのに、物を取ると止まる——それがパーキンソン病の安静時振戦の特徴です。震えは完全に消せないこともありますが、この「動かすと止まる」性質を、生活の中で味方につけることができます。特徴の見分け方と、今日からできる工夫を整理します。

手が震える、そのつらさ。
字が書きにくい。箸やコップが使いにくい。人と会うと、見られている気がして余計に震える——。手の震えは目につきやすく、人前でつらい思いをしやすい症状です。「年のせい」と言われて、一人で気にしてしまう方も少なくありません。
でも、知ってほしいのです。震えには特徴があり、その特徴を知れば、できる工夫があるということを。
パーキンソン病の代表的な症状のひとつが、手足の震え(振戦)です。ただし、すべての方に出るわけではなく、震えが目立たない方もいます。震えが主な症状の場合は、進行が比較的ゆるやかな傾向があるとも言われます。まずは、自分の震えがどんなタイプかを知ることが、対処の出発点になります。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
じっとで出る、動かすと止まる。
パーキンソン病の震えは安静時振戦と呼ばれ、力を抜いてじっとしているときに出やすく、物を取る・字を書くなど動作を始めると減ったり止まったりします。多くは片方の手から始まり、進行とともに反対側へ広がることがあります。膝に手を置いているときや、歩いているときの手に気づく方が多いです。眠っている間は出ません。
よく似た別の病気に本態性振戦があります。見分けの目安は、震えが出るタイミングです。次の表で整理します。ただし見分けは専門的な判断が必要で、両方が併存することもあります。あくまで目安として見てください。
| パーキンソン病(安静時振戦) | 本態性振戦(動作時・姿勢時) |
|---|---|
| じっとしているときに出る | コップを持つ・字を書くなど動作や姿勢で出る |
| 動作を始めると減る・止まりやすい | じっとしているときは出にくい |
| 片方の手から始まることが多い。震え以外の症状も伴う | 左右差が小さめ。震えが主な症状のことが多い |

STROKE LABの視点:「止まる」を味方につける。
安静時振戦の「動かすと止まる」という性質は、実は生活の中で味方にできます。手を止めて構えるより、動作に入ってしまうほうが震えにくい。この考え方を、困りやすい3つの場面に当てはめてみましょう。
字を書くとき。太めで少し重さのあるペンにし、紙を手で押さえて、ひと筆ずつ動かします。書き始めてしまえば震えは減りやすくなります。
食事のとき。重めの食器やグリップの太いスプーンを使い、肘をテーブルにつけて支えます。器を持ち上げず、口を器に近づけるとこぼしにくくなります。
人前に出るとき。手を膝の上でじっと構えず、そっと動かしたり、軽く何かを持ったりします。「止めよう」と力むより、動作に入るほうが楽なことがあります。
これらは震えを消す方法ではなく、震えと付き合いながら生活を進めるための工夫です。合う道具や動作は人によって違うので、作業療法士と一緒に、自分に合うやり方を見つけていくのが近道です。

緊張の悪循環を、断つ。
震えは、緊張・ストレス・疲れで強くなります。やっかいなのは、人前で震えが気になると緊張し、緊張でさらに震える、という悪循環が起きやすいことです。この輪のどこかに、小さな入口を作って断ちましょう。
たとえば、大事な場面の前に段取りや練習をしておくと、当日の緊張が下がります。震えが気になったら、まず息をゆっくり吐く腹式呼吸でひと呼吸おく。好きな音楽をかけると、震えが少し和らぐという報告もあります。そして何より、震えても大丈夫、と自分を責めないことが、緊張の輪をゆるめます。運動を習慣にすると、体の緊張がほぐれ、気分も安定しやすくなります。運動の始め方は体操・自主トレ大全を参考にしてください。
パーキンソン病の震えに対する運動の効果を、複数の研究をまとめて分析した報告では、運動は、安価で体への負担が少なく取り入れやすい方法として、震えを減らす助けになりうるとまとめられています。
限界:対象となった研究が少なく方法にばらつきがあるため、効果には個人差があります。運動は薬や専門的な治療の代わりではなく、あくまで組み合わせて使うものです。

自宅での工夫が、太めのペンや動作を利用してその場で震えの影響を減らす代償だとすれば、専門施設で目指すのは、震えの影響を受けにくい体と動作の土台をつくり、増悪の条件を一つずつ減らしていくことです。振戦への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 場面と姿勢の評価にもとづくキューイング。どの姿勢・課題・緊張のときに震えが強まるか、動作を始めると止まるか、姿勢を保つと再び出てくるか(再出現性の振戦)までを評価し、動作の始め方・注意の向け方・二重課題の減らし方を、その人の生活場面に合わせて設計します。
2. 近位の安定づくり。体幹・肩甲帯・前腕といった体の中心に近い部分の支持を整えると、遠位(手先)の震えが到達動作・書字・食事に及ぼす影響を小さくできます。手先だけを見ず、支える土台から組み立てるのが運動制御の視点です。
3. 全身運動によるコンディショニング。有酸素運動や筋力運動で運動症状全体を底上げし、震えを強める緊張や疲労を減らします。体力と気分が整うほど、震えとの付き合いは楽になります。
STROKE LABが軸足を置くのは、震えを無理に消すことではなく、評価で増悪の条件を見極め、支える土台と動作の質を高めながら、震えがあっても生活が進む状態に近づけていくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬やDBSの調整は主治医の役割です。
パーキンソン病の方に、負荷を少しずつ増やす筋力運動(漸増抵抗運動)を続けてもらった2年間の無作為化比較試験では、別の運動プログラムと比べて薬が切れているときの運動症状の指標が改善し、その差が24か月後にも保たれていたと報告されています。その場の対処だけに頼らず、続ける運動で全体を底上げする考え方です。
限界:これは運動症状全体を対象とした研究で、震え単独を主要な指標にしたものではありません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。決められた負荷・頻度のもとで専門的な指導を受けて行うことが前提で、運動療法は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。振戦のしくみや評価をより詳しく知りたい医療者の方は、医療者向けの振戦解説もご覧ください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、その人の震えのタイプや生活の困りごとを一緒に整理し、道具の選び方や動作の工夫、緊張をゆるめる方法を提案します。震えそのものを消すのが目的ではなく、震えがあっても生活が進むようにするのがねらいです。薬の調整は主治医の役割で、私たちは生活と運動の側から支えます。手の震えの原因と見分けは、動画でもご覧いただけます。
手の震えの原因と見分けを解説(脳リハ.com)。効果には個人差があります。
受診の目安は、震えで生活に支障が出てきた、震え以外に動きにくさやこわばりも出てきた、震えが気になって不安が強い、といったときです。震えだけでパーキンソン病と決まるわけではなく、原因はさまざまです。自己判断せず、神経内科で原因を確かめてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
よくある質問。
Q. じっとしていると震えるのに、物を取ると止まるのはなぜですか?
Q. 本態性振戦とパーキンソン病の震えは、どう違うのですか?
Q. 人前だと余計に手が震えます。緊張のせいですか?
Q. 震えは運動やリハビリで良くなりますか?
Q. 薬を飲めば震えは完全に止まりますか?
Q. 手が震えるのは、みんなパーキンソン病なのですか?
震えの相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。震えのタイプや生活の困りごとを整理し、道具の選び方・動作の工夫・緊張をゆるめる方法を、その人に合わせて一緒に見つけます。薬の調整は主治医を尊重し、生活と運動の側から支えます。震えがあっても、やりたいことを続けられるように。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
工夫を一緒に見つけます。

手の震えは目につきやすく、人前でつらい思いをしやすい症状です。「止めよう」と力むほど、緊張して余計に震えてしまう——そんな悪循環に、たくさんの方が悩んでこられました。
お伝えしたいのは、震えを消すことより、震えがあっても生活が進むことを目標にしてよい、ということです。動かすと止まる性質を味方につければ、できることは意外とたくさんあります。
震えでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。道具や動作の工夫を、その方の生活に合わせて一緒に見つけていきます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。震えの原因はさまざまです。気になる震えは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年7月6日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Farashi S, et al. Effect of Exercise on Parkinson’s Disease Tremor: A Meta-analysis Study. Tremor Other Hyperkinet Mov (N Y). 2021;11:15.(運動が振戦を減らす助けになりうると報告。第1エビデンスボックスの出典)
- Corcos DM, et al. A two-year randomized controlled trial of progressive resistance exercise for Parkinson’s disease. Mov Disord. 2013;28(9):1230-1240.(漸増抵抗運動が薬オフ時の運動症状を改善し、24か月後も効果が維持されたと報告。第2エビデンスボックス・専門施設アプローチの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)