【2026年版】腓骨筋の起始停止と作用・神経は?筋トレ、ストレッチ、自主トレ、評価まで解説
腓骨筋群の解剖と機能を、脳卒中後の足部内反に活かす。
脳卒中後の足部内反は、前脛骨筋の過活動だけが原因ではありません。腓骨筋群の筋緊張低下と機能的役割の理解が、臨床的な改善への近道です。解剖・作用・評価・治療まで、エビデンスをもとに体系的に解説します。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
PT評価では前脛骨筋の活動は確認できるものの、足関節外反方向への随意運動は乏しい状態。立脚中期に踵骨が内反し、前足部の内側縁が浮き上がる所見を認めます。
この「前足部の浮き上がり」は、腓骨筋群の筋緊張低下による前足部接地困難が背景にあります。まず腓骨筋群を正確に評価・触診することが介入の出発点になります。
脳卒中後の足部内反は「前脛骨筋が強すぎる」という視点だけで捉えられがちです。しかし実際には、腓骨筋群の活動低下が対となって生じています。腓骨筋の解剖を正確に理解することが、臨床介入の精度を上げる第一歩です。
腓骨筋の概要と疫学。
腓骨筋群(Peroneal muscles)は3つの筋で構成されます。長腓骨筋・短腓骨筋は下腿外側コンパートメントに位置し、第3腓骨筋のみ前コンパートメントに属します。
長腓骨筋(Fibularis longus):腓骨筋の中で最も大きく、外側コンパートメントの表層に位置します。中間部で先細りとなり、長い腱が足部へ続きます。
短腓骨筋(Fibularis brevis):長腓骨筋の深部にある短い筋肉。内反捻挫の際に長腓骨筋とともに損傷しやすく、短腓骨筋腱は脱臼しやすい構造的特徴があります。
第3腓骨筋(Fibularis tertius):前コンパートメントに位置し、前脛骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋の中で最も表層にあります。日本人での有病率は約95.5%と高い割合で存在します(アジア人全体では38.5〜95.5%)。
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STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。脳卒中後の足部内反・歩行困難について、徒手技術と脳科学に基づいたアプローチで改善を目指します。まずは無料相談から、お気軽にどうぞ。
起始停止・走行・神経支配。
3筋それぞれの起始・停止・神経支配を正確に把握することで、触診の精度と徒手評価の根拠が高まります。
| 項目 | 長腓骨筋 | 短腓骨筋 | 第3腓骨筋 |
|---|---|---|---|
| 起始 | 脛骨外側顆、腓骨頭・腓骨外側面近位2/3、下腿筋膜、筋間中隔 | 腓骨外側遠位2/3、下腿筋間中隔 | 腓骨遠位1/3(内側面)、筋間中隔 |
| 停止 | 第1中足骨底、内側楔状骨外側 | 第5中足骨底・外側面 | 第5中足骨底の背側面 |
| 神経支配 | 浅腓骨神経 L4・L5・S1 | 浅腓骨神経 L4・L5・S1 | 深腓骨神経 L4・L5・S1 |
| 血管栄養 | 腓骨動脈 | 腓骨動脈 | 前脛骨動脈 |
長腓骨筋の走行:立方骨を「滑車」として使う。
長腓骨筋は上腓骨筋支帯下で外果窩を短腓骨筋腱と伴走します。その後、立方骨を滑車として足底内側へ方向転換し、内側楔状骨・第1中足骨底に停止します。このユニークな走行が、足部アーチと母趾支持性の両方に貢献できる理由です。
外果より近位では長腓骨筋腱が前方に位置しますが、外果後方では短腓骨筋腱が前方に逆転します。触診時にこの走行の逆転を意識することで、2腱の区別が格段に正確になります。
腓骨筋の走行(visible body より)

長腓骨筋腱と短腓骨筋腱の走行の逆転(TeachMeAnatomy より)
腓骨神経の分岐パターンを理解する。
総腓骨神経(Common peroneal nerve)は長腓骨筋の中で分岐します。深腓骨神経は前方から遠位へ走行し前コンパートメントの筋を支配します。浅腓骨神経は外側から遠位へ走行し長・短腓骨筋に筋枝を出したあと、下腿前外側面と足背の皮枝となります。
腓骨神経の走行(visible body より)
機能・臨床的意義。
長腓骨筋:足関節底屈・外反、外側縦アーチ・横アーチの挙上、第1中足骨の底屈・外反方向への固定(荷重時の母趾支持性向上)
短腓骨筋:足関節底屈・外転、外側縦アーチの挙上(外反力の約63%を担う)
第3腓骨筋:足関節背屈・外反(歩行の遊脚相で長母趾伸筋と共同作用)
脳卒中後の腓骨筋活動低下と足部内反のメカニズム。
脳卒中患者では前脛骨筋の活動が過剰になりやすく、相反的に小趾側の筋群や腓骨筋などの活動が弱まります。背屈動作でも内在筋(背側骨間筋・短趾屈筋)や腓骨筋などの活動を伴わず、内反優位の前脛骨筋活動が優勢となりやすいです。
歩行における長腓骨筋の求心性収縮(筋が縮みながら張力を発揮する収縮)は、ショパール関節を回内させることで前足部内側を床に接地させます(ロッカーファンクションの維持)。
腓骨筋群は下腿が移動側へ傾斜した際に、前足部の足底を床に接地させる目的で足部回内方向に働きます。脳卒中でこの機能が低下すると、代償として足部内反筋群の活動が増加し、足部内反が強まります(金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.)。
ロッカーファンクションにおける腓骨筋の役割(脳卒中の動作分析 金子唯史 著 より)
筋力低下の場合:過度な回外(内反)が生じやすい。脳卒中後はこのパターンが多い。
過緊張の場合:過度な回内(外反)が生じやすい。扁平足や疼痛性腓骨筋症候群などで見られる。
腓骨筋の作用(visible body より)
腓骨筋の評価と採点基準。
触診の手順:3筋それぞれのランドマーク。
MMT(徒手筋力テスト):採点基準の完全網羅。
5 Normal:最大限の抵抗に抗して足部外返しを行い、最終可動域を維持できる。
4 Good:中程度の抵抗に抗して足部外返しを行い、最終可動域を維持できる。
3 Fair:重力以外の抵抗なく、最終可動域を維持できる。
2 Poor:可動域の一部のみ動かすことができる。
1 Trace:最小限の収縮を触知できる。
0 Zero:収縮が触知できない。
検査肢位:座位または仰臥位で足関節を中間位。前足部の背外側縁に抵抗を当て、足部外返し方向に徒手抵抗を加える。
介入の段階とエビデンス。
腓骨筋への介入は「筋力強化」と「柔軟性改善(ストレッチ)」に大別されます。脳卒中後の患者では、単純な外返し運動だけでなく「外反を伴った背屈」という複合的な誘導が重要です。
セラバンドを対象足部に巻き、非対象足部の足裏から通して手で保持します。足部外返し(外反)を繰り返します。目安は10〜15回×3セット。可動域確保と基本筋力の回復を目的とします。
腓骨筋群と前脛骨筋の協調収縮を促す介入です。セラピストが足部外側を支持しながら背屈方向に誘導し、外反を伴った背屈が出現するよう促します。視床出血後など痙縮が強い例に有効です(STROKE LAB症例:視床出血後1年経過例への適用)。
タオルや手を使い、足部内返し+背屈方向にストレッチします。座位で足を反対側の膝の上に乗せ、足首を手前に引く方法が簡便です。20〜30秒保持×3セットが標準的なパラメータです。過緊張(外反優位)例に適用します。
立位・歩行練習の中で腓骨筋群の活動を統合します。傾斜地歩行や足部外側荷重のシングルレッグスタンスなど、腓骨筋が実際の機能文脈の中で求心性・遠心性収縮を使う訓練です。
— 視床出血後1年経過例に対して外反を伴った背屈を誘導した介入の様子です。
脳卒中後足部内反と腓骨筋活動:Geurts AC et al.(2005)は、脳卒中患者の足関節筋緊張異常パターンを分析し、内反パターンでは腓骨筋群の活動消失が一貫して認められると報告しています(Gait Posture 21:271–9)。エビデンスレベル:RCT複数。
課題指向型訓練と腓骨筋活動:Turns LJ et al.(2007)は、歩行訓練を通じた下腿筋群の神経筋再教育が足部内反の改善に有効であることを示しています(J Neuroeng Rehabil 4:17)。エビデンスレベル:RCT。
傾斜地での腓骨筋活動:傾斜地歩行(5〜10°)では平地と比較して腓骨筋群の筋活動量が有意に増加することが示されており、訓練バリエーションとして有用です。エビデンスレベル:エビデンス限定的。

まだ諦めなくていいです。
「足が内反して歩きにくい」「転倒が怖くて外出できない」というご相談をよく受けます。STROKE LABでは脳神経科学と徒手技術を組み合わせ、腓骨筋群の再活性化を含む個別プログラムを提供しています。まずは一度、ご相談ください。
多職種連携と環境調整。
各職種の役割分担。
| 職種 | 腓骨筋・足部内反への関与 | 連携のポイント |
|---|---|---|
| PT(理学療法士) | 腓骨筋MMT・触診・歩行分析・筋力強化・歩行訓練 | AFO処方の適応判断を医師・装具士と協議 |
| OT(作業療法士) | ADL場面での足部内反の影響評価・環境調整 | 履物・住宅改修の提案をMSWと連携 |
| 看護師 | 病棟内歩行時の転倒リスク管理・装具の着脱確認 | 日常動作での内反出現パターンをPTに共有 |
| 医師・義肢装具士 | AFO(短下肢装具)の処方・ボツリヌス療法の適応判断 | リハビリ進捗を定期的にフィードバック |
環境調整のポイント。
「足部内反があっても、履物の選択で転倒リスクはかなり変わります。外側に支持性のある底面フラットな靴を選んでもらうだけで、立脚安定性が改善するケースが多いです」
「病棟での歩行練習中に看護師さんが内反パターンを観察・記録してくれると、訓練計画の修正に直結します。観察ポイントを共有するカンファレンスが大切です」
「AFOを処方するかどうかは、腓骨筋のMMT・随意性・回復段階を総合的に判断します。装具に頼りすぎると筋の再活性化が遅れる場合があるので、訓練段階に応じた調整が重要です」
Pitfallsと臨床判断のコツ。
腓骨筋の評価・治療では、新人が特につまずきやすいポイントがあります。先輩から引き継ぐように、3つの罠を整理しておきます。
臨床判断の分岐点。
「腓骨筋のMMTが2以下なら、まず随意収縮を引き出すことから始めます。2を超えたら重力負荷の運動へ、3以上なら抵抗運動と歩行への統合を並行して進める、という目安を持っておくといいですよ」
「触診で短腓骨筋腱が外果後方で触れにくい場合、腱脱臼や腱鞘炎を疑う必要があります。痛みや腫脹があれば整形外科的評価を優先してください」
腓骨筋障害の病態と予後。
腓骨筋群はその走行と機能的特性から、特有の病態に陥りやすいです。整形外科疾患と脳卒中後遺症では原因と対応が異なるため、病態を区別して理解することが重要です。
腓骨筋腱症(Peroneal tendinopathy):反復的なストレスによる腱の変性。過回内や距骨下関節の回外拘縮が誘因となります。
腓骨筋腱脱臼・不安定性:上腓骨筋支帯(腱を溝に留めるバンド)が弛緩し、足関節背屈時に腓骨筋腱が外果を乗り越える状態です。「パチン」という脱臼感が特徴的です。
長腓骨筋腱断裂:断裂により腓骨剥離骨折を引き起こすことがあります。回外-内転の傷害では短腓骨筋腱が損傷し、第5中足骨基部を引っ張ってジョーンズ骨折を起こす可能性があります。
疼痛性腓骨筋症候群・コンパートメント症候群:外傷後や過負荷による区画内圧の上昇。
靱帯断裂例での代償:前距腓靱帯断裂がある場合、長腓骨筋が距骨の内反不安定性を、短腓骨筋が距骨の内転不安定性を代償します。この代償機能が失われると慢性足関節不安定症につながります。
腓骨筋腱脱臼(visible body より)
腓骨筋腱断裂(myorthoct.com より)
よくある質問(新人の疑問)。
長腓骨筋・短腓骨筋は浅腓骨神経(L4・L5・S1)に支配され、足関節の外反・底屈を担います。長腓骨筋は足部アーチを保持し母趾列の安定性を高め、短腓骨筋は突然の内反ストレスに対する動的安定性に貢献します。
外反力の約63%を短腓骨筋が担うとされており、足関節外側の動的安定において中心的な役割を果たします。
脳卒中後は前脛骨筋の過活動が生じやすく、相反的に腓骨筋群・骨間筋・短趾屈筋などの活動が低下します。
背屈動作でも内反優位の前脛骨筋活動が優勢となるため、腓骨筋群の収縮が伴いにくくなります。この結果として踵骨・下腿傾斜時に前足部の床接地が困難になり、代償として足部内反が増強します。
外果より近位では長腓骨筋腱が前方に位置しますが、外果後方では短腓骨筋腱が前方に位置するという走行の逆転が起こります。
長腓骨筋はさらに立方骨を滑車として足底深部を走行し内側楔状骨・第1中足骨底に停止する一方、短腓骨筋は第5中足骨底外側面に停止します。
座位または仰臥位で足関節を中間位とし、前足部の背外側縁から足部外返しに徒手抵抗をかけます。
採点は6段階:5(Normal)最大抵抗で最終域維持、4(Good)中程度抵抗で維持、3(Fair)重力のみで最終域維持、2(Poor)可動域の一部のみ動く、1(Trace)最小限の収縮触知、0(Zero)収縮触知不可。
セラバンドを対象足部に巻き、非対象足部の足裏から通して手で保持し、足部外返し(外反)を10〜15回×3セット繰り返します。
脳卒中患者では「外反を伴った背屈」の誘導が重要です。腓骨筋群と背屈筋群の共収縮を促す複合動作訓練が臨床的に有用です。MMT3以上になったら荷重下訓練への移行を目指しましょう。
主な病態として、腓骨筋腱症、腓骨筋腱亜脱臼または不安定性、長腓骨筋腱断裂(腓骨剥離骨折を合併する場合あり)、疼痛性腓骨筋症候群、コンパートメント症候群があります。
上腓骨筋支帯が弛緩して背屈時に腓骨筋腱が外果を乗り越える腱脱臼も重要です。距骨下関節の回外拘縮がある場合は腱鞘炎リスクが高まります。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは脳神経科学と徒手技術に特化した自費リハビリ施設です。脳卒中後の足部内反・歩行困難に対し、腓骨筋群の再活性化を含む個別プログラムを提供しています。病院リハビリとは異なる集中的なセッションで、諦めていた歩行改善を目指します。
— STROKE LABでの実際の訓練の様子です。
「腓骨筋は地味に見えますが、歩行の安定性において主役級の筋肉です。脳卒中後の患者さんで歩行が改善した例を振り返ると、前脛骨筋だけでなく腓骨筋群の再活性化が伴っているケースがほとんどでした」— PT・脳卒中リハビリ専門・臨床歴10年
「外果での腱の走行逆転を知っておくだけで、触診の精度が一気に上がります。まず解剖を頭に入れてから触るのと、触りながら学ぶのとでは、理解の深さが全然違います」— PT・運動器・神経系リハビリ・臨床歴7年
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まだ諦めないでください。

脳卒中後の足部内反は、腓骨筋群の活動低下という神経筋の問題を含んでいます。「これ以上は良くならない」と言われた後でも、脳の可塑性を活かしたアプローチで改善した方がいます。
STROKE LABでは一人ひとりの状態を丁寧に評価し、腓骨筋群の再活性化を中心とした個別プログラムを組み立てます。まずはお話をお聞かせください。
無料相談では、現在の状態・お悩み・ご家族の心配事を丁寧にお伺いします。「相談だけ」でも大歓迎です。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)