【2026年版】腰方形筋の起始停止と作用は?腰痛、触診、トレーニング・リハビリまで解説
腰方形筋は、なぜ慢性腰痛の中心になるのか。解剖・評価・介入の完全ガイド。
「MRIで異常なし、でも腰が痛い」——その多くに腰方形筋のトリガーポイントが関与しています。座位でも歩行時でも持続的に活動するこの深層筋の解剖・機能・鑑別評価・段階的介入を、エビデンスと臨床手順の両軸で体系的に解説します。脳卒中後の骨盤非対称への応用まで含む新人セラピスト向け完全ガイドです。

要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
50代女性、事務職。慢性腰痛歴15年。回復期相当の経過(急性増悪はなく持続的な痛み)。VAS 6/10の腰仙部深部痛と殿部への放散痛が主訴。整形外科でのMRI・X線は「異常なし」の診断。BRS・NIHSSは非該当(脳卒中既往なし)。日常生活自立(FIM 126/126)だが腰痛のためデスクワーク継続困難。
初回評価所見:立位で右骨盤が左より約1cm高い(触診で腸骨稜の高さ差を確認)。腹臥位にて右腸骨内縁・傍脊柱部の圧痛と右殿部への放散痛再現(jump sign陽性)。サイドプランク保持時間:右8秒・左22秒。Trendelenburg test:右支持で陰性、左支持で右骨盤軽度下垂。腰椎椎間板ヘルニアの神経根症状(しびれ・筋力低下・反射異常)は認めなかった。
このケースのように、腰方形筋が引き起こす筋筋膜性疼痛症候群(MPS:Myofascial Pain Syndrome)は画像に映らないため「異常なし」で見過ごされやすい病態です。新人セラピストが最初に押さえるべきは、「MRIで映らない痛みにも、明確なメカニズムと有効な治療法がある」という事実です。
定義・解剖・疫学。
腰方形筋(Quadratus Lumborum:QL)は腰部最深層に位置する扁平・四角形の筋肉で、腹部後壁の一部を構成します。腹横筋筋膜の内側に位置し、コアマッスル・脊柱傍筋・胸腰筋膜構成要素という複数の分類に同時に属するユニークな筋です(Bordoni & Varacallo, 2023)。


医学書院 脳卒中の動作分析 金子唯史 著 より引用
起始:腸腰靭帯(Iliolumbar ligament)と後腸骨稜(Posterior iliac crest)の内縁
停止:第12肋骨下縁の内側半分 / 第1〜5腰椎横突起の先端
筋繊維の3層構造:①腸肋骨線維(外側層)②腸横突起線維(中間層)③横突起肋骨線維(内側層)。それぞれ異なるベクトルを持ち、多方向の力を受け止める。
神経支配:肋骨下神経(T12)・腰神経叢前枝(L1〜L3)
血液供給:腰動脈(L1〜L4)・腸腰動脈・肋骨下動脈

筋線維構成と疲労しやすさの理由
腰方形筋は速筋(TypeⅡ)と遅筋(TypeⅠ)の混合線維で構成されています。姿勢保持には遅筋が持続的に活動し、くしゃみや持ち上げなど急激な力発揮には速筋が対応します。これが「座っていても歩いていても疲労が蓄積しやすい」という臨床的特徴の解剖学的背景です。

吸気時に横隔膜が収縮すると第12肋骨が上方へ引かれる。QLはこれを固定し横隔膜の収縮効率を高める。慢性的な胸式呼吸優位のパターンでQLへの持続負荷が増大する。
体幹固定時は骨盤を挙上、骨盤固定時は体幹を同側へ側屈させる。ただし全側屈力への貢献は10%未満(Bogduk, 2005)。「主たる側屈筋」という理解は機能の実態を反映しない。
対側の大腿筋膜張筋・中殿筋と協働して外側筋膜スリング(Lateral Myofascial Sling)を形成。歩行の片脚支持期に骨盤前額面を安定させる主要メカニズム(Lee, 2004)。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABでは腰方形筋を含む体幹・骨盤機能を個別に評価し、最新エビデンスに基づいたリハビリ計画をご提案します。脳卒中後の腰痛から慢性腰方形筋症候群まで、一貫したサポートを行っています。
神経メカニズム・責任病巣。


腰方形筋は胸腰筋膜(Thoracolumbar Fascia:TLF)の構成要素であり、腰方形筋・多裂筋・脊柱起立筋が前・外側腹壁筋と拮抗する「力の交差点」として機能します(Willard et al., 2012)。3層の異なるベクトルを持つ筋繊維が多方向の力を受け止め、胸腰筋膜全体の剛性に貢献します。
神経支配と責任病巣の臨床的意義
腰方形筋は肋骨下神経(T12)と腰神経叢前枝(L1〜L3)に支配されています。つまり上位腰椎由来の神経根障害(L1〜L3の椎間板ヘルニア・腰椎狭窄症)では、腰方形筋の筋力低下・萎縮が生じます。「腰痛+腰方形筋の筋力低下」を認める場合は、上位腰椎の神経根障害を念頭に置いた評価が必要です。
胸腰筋膜の機能解剖 [観察研究]:Willard FH et al. J Anat. 2012;221(6):507-536. 系統的な解剖学的研究。胸腰筋膜が腰方形筋・多裂筋・脊柱起立筋・腹壁筋を統合するシステムとして機能し、腰方形筋が「力の交差点(force transducer)」の役割を担うことを示した。
胸腰筋膜の生体力学 [観察研究]:Bogduk N, Macintosh JE. Acta Anatomica. 1984;117(3):104-112. 胸腰筋膜が下肢から上肢を含む体幹後面を覆う広大な筋膜システムであり、腰方形筋がその構成要素として体幹の負荷伝達に関与することを解明。
呼吸と腰方形筋の関係 [観察研究]:Kolar P et al. J Orthop Sports Phys Ther. 2012;42(4):352-362. n=21(慢性腰痛群vs健常群)。慢性腰痛患者では横隔膜の姿勢安定機能が低下しており、腰方形筋を含む腹腔内圧調整筋群との協調が乱れることを示した。呼吸パターン再教育が腰痛治療の補助的アプローチとなることを支持。
鑑別診断。
腰方形筋由来の痛みは画像に映らないため「異常なし」と見過ごされやすい一方で、神経根性疾患との誤認も起こりやすい病態です。以下の鑑別テーブルを臨床評価の指針として活用してください。しびれ・筋力低下・反射異常がある場合は必ず神経根性疾患の除外を優先します。
| 鑑別疾患 | 共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| 腰椎椎間板ヘルニア (神経根性) |
腰痛・殿部への放散痛・くしゃみで悪化 | 電撃様・灼熱感の放散痛。しびれ・筋力低下・反射異常あり。SLRテスト陽性。くしゃみで下肢への放散痛増悪 | MRI(神経根圧迫確認)・SLRテスト・神経学的検査 |
| 腰椎椎間関節症 (関節性) |
腰部深部痛・伸展動作での悪化 | 殿部・鼠径部への放散痛(神経根パターンではない)。過伸展+回旋でKempテスト陽性。しびれ通常なし | X線・CT(関節変性・狭小化)・Kempテスト・関節内注射による診断的ブロック |
| 梨状筋症候群 | 殿部痛・大腿後面への放散・長時間座位で悪化 | 梨状筋テスト(FAIR test)陽性。殿部深部に圧痛点。股関節内旋で悪化。腰部のTP反応はない | FAIR test・Beatty test・超音波ガイド下ブロック |
| 仙腸関節障害 | 腰仙部の痛み・立ち上がりで悪化・骨盤の非対称 | PSISやや外側のピンポイント圧痛。FABER/FADIR陽性。腰方形筋のTP反応なし | FABER test・Gaenslen test・X線(PSIS高さ)・仙腸関節ブロック |
| 腎臓由来の腰痛 (腎盂腎炎・結石) |
腰部の強い痛み・CVA叩打痛 | 発熱・血尿・波状性の激しい疝痛(結石)。体位変換で変化しない。運動で軽減しない | CVA叩打痛・尿検査・腹部エコー・CT(腎臓隣接部位のため重要な除外疾患) |
評価尺度と採点基準。
腰方形筋の評価は触診・筋力テスト・機能的テストを組み合わせて行います。各テストの採点基準・カットオフ値・測定特性を把握することが、再現性の高い評価につながります。
| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| サイドプランク 保持時間テスト |
左右それぞれ最大保持時間(秒)を計測。標準サイドプランク(膝伸展位・肘支持)で実施 | 健常成人平均:77〜100秒。左右比(短い側÷長い側)≥0.75が正常範囲。0.75未満で臨床的要注意(McGill, 2002) | 腰方形筋持久力の標準指標。左右差が大きいほど骨盤非対称のリスク上昇。腰痛患者は健常者より有意に短い |
| MMT (側臥位・側屈) |
5:強い抵抗に抗して可動域全範囲。4:中等度抵抗に抗して。3:抵抗なし全範囲。2:除重力位で可動。1:収縮のみ。0:なし | 正常はMMT5(左右対称)。左右で1段階以上の差があれば機能低下あり | MMT3以下は腸腰筋・腸腰靭帯・L1〜L3神経根障害の合併を疑う。L1〜L3の神経根症状の除外を優先 |
| TP触診 (4基準評価) |
①taut band(硬結帯)②spot tenderness(局所圧痛)③referred pain(放散痛再現)④LTR(局所収縮反応)の4項目を評価 | ①②の2項目陽性でActive TPの診断基準を満たす(Simons et al., 1999)。③が加われば診断精度↑ | 「いつもの腰痛と同じ痛みが再現されたか?」を患者に確認。再現されれば診断的価値が高い |
| Trendelenburg test | 片脚立ちで遊脚側の骨盤下垂(ASIS・腸骨稜の対称性)を観察。陰性:骨盤水平保持。陽性:遊脚側骨盤下垂 | 感度:55%、特異度:70%(Hardcastle & Nade, 1985)。外側スリング機能低下の間接的指標 | 陽性=支持側の中殿筋・腰方形筋の協調機能低下。支持側QLと中殿筋の筋力テストで原因を絞り込む |
| VAS (Visual Analogue Scale) |
0(痛みなし)〜10(想像できる最大の痛み)の10cm連続尺度。安静時・動作時・最悪時の3条件で計測 | MCID(最小臨床的変化量):1.37点(Farrar et al., 2001)。2点以上の改善で臨床的に意義ある変化 | VAS 7以上は重度。介入前後の変化量を追跡し、MCID以上の改善があれば治療効果あり |
サイドプランク保持時間テスト [観察研究]:McGill SM. Low Back Disorders. Human Kinetics. 2002. 健常成人の基準値(77〜100秒)と左右比0.75のカットオフを提示。検者内ICC:0.97、検者間ICC:0.93と高い信頼性を報告。MCID(最小臨床的変化量)については確立したデータがまだ少なく、介入効果の判断には絶対値よりも傾向観察が推奨される。
TP触診の信頼性 [観察研究]:Gerwin RD et al. Curr Pain Headache Rep. 2004;8(6):468-475. 訓練された施術者間での一致率(κ係数)は0.84と高い。ただし未訓練者間では0.44〜0.56と中程度。触診技術の習得には練習と訓練が必要。
VASのMCID [観察研究]:Farrar JT et al. Pain. 2001;94(2):149-158. n=2,724の多施設研究。VASのMCIDを1.37点(約13.7mm)と報告。慢性腰痛患者での実臨床的改善には2点以上を目安とする。
介入のエビデンス。
腰方形筋の介入は疼痛フェーズに応じた段階的アプローチが基本です。急性期(発症〜1週間)は組織保護と疼痛管理を優先し、亜急性期以降から運動療法を段階的に導入します。体幹・股関節の運動パターン再教育が根本的な改善につながります(McGill, 2015)。
虚血性圧迫法(Ischemic compression):TP部位に中等度の圧力を30〜90秒持続。圧力は患者がVAS 5〜7/10と感じる程度。3〜5回反復。筋エネルギーテクニック(MET)・ドライニードリングも有効な選択肢(Fernández-de-las-Peñas & Nijs, 2019)。
パラメータ:膝付きサイドプランクから開始(15秒×3セット/週3回)→標準サイドプランクへ移行(週5秒ずつ延長、最終目標77〜100秒)。腰椎への圧縮力を最小限に抑えながら外側体幹を強化できる第一選択(McGill, 2015)。
パラメータ:体重の20〜40%の重量で片手に持ち、体幹直立を保ちながら1分間歩行×3セット(左右各)/週3〜4回。姿勢が崩れた時点でセット終了。日常の荷物運搬動作への直接的な移行訓練にもなる。
中殿筋:クラムシェル・ヒップアブダクション(15回×3セット/週4回)。QLの代償過活動を抑制。多裂筋:バードドッグ(10秒保持×10回×3セット/週4回)(Hides et al., 1994)。大殿筋:ヒップスラスト・ブリッジで外側スリング全体を再構築。
コアスタビリティ訓練(サイドプランク等)[専門家合意]:McGill SM. Low Back Disorders 3rd ed. Human Kinetics. 2015. 腰椎への圧縮力を最小にしながら体幹を強化する「Big 3(カール・バードドッグ・サイドプランク)」を推奨。各エクササイズで腰方形筋の筋電図活動が高いことを実証(サイドプランクは対側QL・腹斜筋を同時活性化)。
ドライニードリング(筋膜性腰痛) [単独RCT]:Fernández-de-las-Peñas C, Nijs J. J Manual Manipulative Ther. 2019;27(3):134-142. TP鍼療法は慢性筋膜性疼痛に対して疼痛軽減・機能改善に有効であることを報告。腰方形筋を含む腰背部MPSへの適応を支持。
多裂筋訓練(腰痛後萎縮の回復) [単独RCT]:Hides JA et al. Spine. 1994;19(2):165-172. n=39。腰痛後の多裂筋萎縮に対し特異的な腰椎多裂筋訓練(バードドッグ等)が有意に萎縮を回復させることを示した。多裂筋回復によりQLへの代償負担が軽減されるため、QLリハの重要な間接介入となる。

STROKE LABでは腰方形筋を含む体幹機能の精密評価から、サイドプランク・スーツケースキャリーなどエビデンスに基づいた段階的リハビリまで、一人ひとりの状態に合わせた個別プログラムをご提供しています。脳卒中後の骨盤非対称・慢性腰痛・歩行パターン改善まで、まずはお気軽にご相談ください。
多職種連携と環境調整。
職種別の役割分担テーブル
| 職種 | 腰方形筋に関する評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT (理学療法士) |
骨盤高さ・サイドプランク保持時間・Trendelenburg test・歩行分析(前額面骨盤傾斜)・TP触診 | コアスタビリティ訓練(サイドプランク・スーツケースキャリー)・中殿筋・多裂筋強化・歩行再教育・段階的な負荷管理 | 医師へ神経学的除外の依頼。MSWへ職場環境調整の相談。OTへADL場面での腰部負荷指導依頼 |
| OT (作業療法士) |
ADL場面(着替え・入浴・調理)での腰部負荷・姿勢パターン評価。座位作業時の骨盤・体幹アライメント評価 | ADL動作指導(腰部保護肢位)・作業環境の高さ・椅子・机の調整。長時間同一姿勢の回避指導 | PTの運動療法と連動した動作指導。MSWと協力して職場復帰時の作業環境整備を計画 |
| ST (言語聴覚士) |
嚥下・発話時の姿勢(体幹アライメント)が腰方形筋緊張に影響する場合の評価(特に脳卒中患者) | 嚥下・発話訓練での体幹支持ポジショニング指導。腰部痛が集中力・訓練参加に影響する場合の疼痛管理連携 | PTにポジショニング変更を依頼。腰痛でSTセッションが困難な場合にPTへ優先的介入を要請 |
| 看護師 | 日常的な腰痛のモニタリング(VAS)・体位変換時の腰痛状況。睡眠姿勢・ベッドポジショニングの評価 | 疼痛管理(医師指示の鎮痛薬タイミング調整)・ポジショニング援助・ホットパック等の物理療法補助。リハ前の疼痛状況のPT/OTへの申し送り | VAS推移の共有。リハ直前の疼痛悪化はPT/OTへ即連絡。医師への疼痛増悪の報告窓口 |
| 医師 | 神経根障害(L1〜L3)の除外。MRI・X線による腰椎・腎臓の画像評価。血液検査(炎症マーカー) | 鎮痛薬・筋弛緩薬の処方。神経根性疾患が否定されたら腰方形筋MPSの診断確定。ドライニードリングの適応判断 | PTからの神経学的除外依頼に迅速対応。腎臓疾患の除外確認後にリハ継続の許可。処方変更はPT/OTへ周知 |
| MSW (医療ソーシャルワーカー) |
腰痛が就労・生活環境に与える影響の評価。職場復帰時の業務内容・職場環境の情報収集 | 職場との調整(作業内容の変更・休業延長)・障害年金・労災申請支援。在宅復帰時の環境整備(椅子・ベッド高さの調整費用の相談) | OT・PTの評価結果を職場環境の調整に活用。慢性腰痛に伴う心理社会的問題(抑うつ・不安)はPT/医師へ情報共有 |
「腰方形筋の問題は腰だけで解決しようとしないこと。椅子・デスクの高さ、歩行補助具、睡眠姿勢——環境を変えることで筋肉への持続負荷が大幅に減ることがある。OT・MSWと連携してこそ根本解決に近づける。」
「脳卒中患者で歩行訓練中に腰痛が出てきた場合、看護師の申し送りを見逃さないで。『最近VASが上がっている』という情報が歩行補助具の見直しや麻痺側機能強化の判断につながる。」
つまずきポイントと臨床判断のコツ。
新人セラピストが腰方形筋の評価・介入で陥りやすいパターンを先輩の経験から整理しました。「知っていれば防げた失敗」をここで事前に学んでおきましょう。
脳卒中患者での追加注意点
脳卒中後の腰方形筋評価では、通常の腰痛評価に加えて以下の点に注意が必要です。
「麻痺側の腰方形筋の痙縮なのか弛緩なのかで対応が全然違う。痙縮があれば関節可動域維持を優先。弛緩があれば促通手技から入る。立位で骨盤が高い=QL短縮と安易に判断して強いストレッチを入れると逆に悪化することがある。まず臥位で筋緊張を徹底評価してほしい。」
「歩行訓練を開始して2週間目くらいから患者さんが『腰が痛い』と言い始めたら、それは非麻痺側QLの過用疲労シグナル。歩行量を調整し、非麻痺側QLのリリースと麻痺側機能改善を並行して行う——この流れを頭に入れておくと臨床が変わる。」
予後とゴール設定。
腰方形筋由来の筋膜性疼痛は、適切な介入があれば多くのケースで改善が見込まれます。一方で慢性化した場合は心理社会的要因が複雑に絡み合い、予後に影響します(Pincus et al., 2002)。
急性期(〜2週間):TP徒手処置・疼痛管理によりVAS 50%以上の低下を目標。「疼痛の悪循環」を断ち切ることが第一目標。
亜急性期(2〜12週):サイドプランク保持時間が左右比0.75以上に改善。VAS 2〜3/10以下での日常生活復帰。ADL(デスクワーク・家事)の腰痛なし遂行。
慢性期・予防期(3か月〜):サイドプランク健常値(77〜100秒)の達成。再発0〜1回/年。職場・日常環境の整備による根本的な再発予防。
脳卒中後の特記事項:麻痺側機能改善(筋出力・随意性)が進むにつれ、非麻痺側QLの過用疲労は自然に軽減する傾向がある。歩行スピード・歩幅の改善を腰痛改善の間接指標として追跡する。
心理社会的要因と慢性化 [SR/MA]:Pincus T et al. Spine. 2002;27(5):E109-120. 腰痛の慢性化・障害化を予測する心理社会的因子(抑うつ・不安・破局的思考・Fear-Avoidance)のSR。これらの因子が存在する場合は疼痛管理と並行した心理的アプローチが予後改善に必要。腰方形筋MPSの長期化例ではイエローフラッグの確認が重要。
コアスタビリティと再発予防 [専門家合意]:McGill SM. 2015. サイドプランク・バードドッグ・カールアップの「Big 3」を週2〜3回継続することで腰痛再発リスクの低減を推奨。保持時間の左右比の改善が臨床的なゴール指標として有用。
よくある質問。
最大の鑑別点は神経学的症状の有無です。腰方形筋由来(筋膜性)は殿部・大腿外側への鈍い放散痛で、しびれ・筋力低下・反射異常はなく、MRIで異常なしのことが多い。椎間板ヘルニア(神経根性)は皮膚分節に沿った電撃様・灼熱感の放散痛で、しびれ・筋力低下・SLRテスト陽性を伴います。しびれや脱力が少しでもある場合は専門医の診察を優先してください。両者は合併することも多く、神経学的検査と触診の両方が必要です。
立位で体幹が固定されている場合、短縮・過緊張側の骨盤が挙上(高く)なります。「骨盤が高い側のQLが短縮している可能性がある」が出発点です。ただし腸腰筋・中殿筋の非対称、実際の脚長差、脊椎側弯なども同様の所見を呈するため、除重力位(臥位)での再確認と複合的な評価が必須です。手順は①立位で腸骨稜・PSISを触診→②臥位で確認(除重力位でも差が残るか)→③QL・腸腰筋それぞれの触診→④必要ならX線で脚長差確認、の順です。
入浴後(筋肉が温まり最も効果的)・デスクワーク中の休憩(1〜2時間に1回)・起床後(無理せず軽めに)の3タイミングが理想です。①立位ラテラルリーチ(骨盤水平を保ちながら体幹を対側へ側屈、15〜30秒×3セット)②側臥位ストレッチ(ストレッチ側を上にして腰の下にタオルを置く、30秒×3セット)③ランジストレッチ(腸腰筋との複合ストレッチ)を毎日実施。急性痛があるときの強いストレッチは禁忌です。
腰方形筋は速筋・遅筋の混合線維のため、低〜中強度を高頻度でが基本です(McGill, 2015)。急性期は週3回・膝付きサイドプランク15秒×3セットから開始。亜急性期以降は週4〜5回・保持時間を週5秒ずつ延長します。維持期は週2〜3回のコアスタビリティプログラム(バードドッグ・ブリッジを含む)として継続。痛みが出ない範囲での継続が最も重要で、「痛みを我慢して頑張る」は逆効果です。
片麻痺患者では麻痺側QL活動低下・非麻痺側QL代償過活動というパターンが生じます。歩行量増加に伴い非麻痺側QLが過用疲労を起こして腰痛が顕在化するパターンが多く見られます。骨盤の前額面非対称の評価・麻痺側への体重移動訓練・非麻痺側QLのリリースを組み合わせた介入が有効です。麻痺側機能が改善するにつれて非麻痺側QLの過活動も自然に軽減する傾向があります。
腰方形筋は腎臓に隣接した深部筋のため、解剖に熟知した専門家(鍼灸師・訓練を受けた理学療法士)のみが実施できる手技です(Fernández-de-las-Peñas & Nijs, 2019)。適応は触診でTPが確認され放散痛の再現がある慢性腰痛で、抗凝固薬内服中・凝固障害・妊娠中・局所感染などは禁忌です。日本では主に鍼灸師が担当します。自己施術は絶対に行わないでください。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは脳卒中後の方を専門とする自費リハビリ施設です。腰方形筋を含む体幹・骨盤機能の精密評価から、最新エビデンスに基づいた段階的リハビリ計画まで、経験豊富なセラピストが個別に対応します。「なぜ腰が痛いのか」「どうすれば改善するのか」を丁寧にご説明し、一緒に取り組んでいきます。
— STROKE LABでのリハビリの実際をご覧いただけます。
「脳梗塞後の70代男性で、歩行訓練を開始して3週間目から非麻痺側の腰痛が増悪してきた。最初は単なる疲労と思っていたが、サイドプランクを評価すると非麻痺側で8秒、麻痺側に至っては保持もできない状態だった。外側スリング機能の左右差が原因と判断し、麻痺側への体重移動訓練と非麻痺側QLのTP処置を平行して実施した。2週間後には歩行距離が1.5倍になり、腰痛もVAS 7から3に改善。『腰の問題が歩行の問題と繋がっている』と理解してから臨床が変わった。」— STROKE LAB 理学療法士・経験8年・脳卒中リハビリ専門
「慢性腰痛歴15年の50代女性が来院。整形外科で複数回MRI撮影されたが『異常なし』と言われ続けていた。初回で右腸骨内縁を触診すると明確なTP(taut band+jump sign陽性+殿部への放散痛再現)を確認。患者さんに『これがいつもの腰痛ですか?』と確認すると、驚いた様子で『まさにこれです!』と。虚血性圧迫法×3セットとその日のホームエクササイズ指導だけで、帰宅時には『こんなに楽になったのは初めて』と言っていただけた。TP評価の精度を磨くことが慢性腰痛治療の最大の武器になる。」— STROKE LAB 理学療法士・経験12年・筋膜性疼痛・腰痛専門
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諦めないでください。

「MRIで異常なし」と言われながら腰が痛い——その経験はとても辛いものです。原因がわからないまま痛みだけが続く日々は、精神的にも大きな負担になります。
腰方形筋のトリガーポイントは画像に映りません。しかし専門的な触診と適切な評価があれば、多くのケースで痛みの原因を特定し改善することができます。
STROKE LABでは初回から丁寧な評価を行い、「なぜ痛いのか」「どうすれば良くなるのか」を一緒に考えます。まずはお気軽にご相談ください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)