【2026年版】TIS(トランクインペアメントスケール)完全解説|採点基準・評価方法・カットオフ値を網羅
TISは、いつ測り、どう介入につなげるのか。
上肢・下肢の麻痺に目が向きがちですが、座位バランス・移乗・歩行・上肢操作すべての土台は体幹です。TIS(Trunk Impairment Scale)は、その体幹機能を静的バランス・動的バランス・協調性の3側面から評価する国際標準ツールです。
— TISの実施方法・採点のポイントを動画で確認できます
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。

左片麻痺(右利き)。既往歴は高血圧・2型糖尿病。MoCA(認知機能スクリーニング検査)24点で軽度障害疑い、半側空間無視の所見はなし。主訴は「立とうとするとふらふらする」「左手でものが取れない」「歩くときに体が揺れる感じがある」でした。
初回評価:FIM(機能的自立度評価法)運動項目76点で要介助・BBS(Berg Balance Scale)30点で転倒リスク高い・10m歩行速度0.42m/s・足関節MAS(Modified Ashworth Scale、痙縮の重症度評価)2点。この「歩けるのにふらつく」訴えの裏にある問題を、新人セラピスト時代の私は上肢・下肢だけで探そうとして遠回りをしました。
上肢麻痺・下肢麻痺は評価表に沿って見る癖がついていても、「体幹」は評価項目として後回しにされがちです。しかし田村さんのように、歩行や上肢操作の主訴の背景に体幹機能障害が隠れているケースは非常に多く、Cheung et al.(2021, Singapore Med J)の577例の後方視的研究では96.4%の入院患者に何らかの体幹機能障害が確認されています[観察研究]。この記事では、体幹機能を静的バランス・動的バランス・協調性の3側面から定量化する国際標準ツールTIS(Trunk Impairment Scale)を、開発背景から採点基準・エビデンス・介入への繋げ方まで、先輩から後輩への引き継ぎのつもりで整理します。
評価表・採点基準・カットオフ値・臨床活用法をA4資料としてお使いいただけます。

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TISとは:定義と疫学。
TIS(Trunk Impairment Scale:トランクインペアメントスケール)は、ベルギーKU Leuven(旧称Katholieke Universiteit Leuven)のVerheyden G, Nieuwboer A, Mertin J, Preger R, Kiekens C, De Weerdt Wらが2004年にClinical Rehabilitation誌(18(3):326-334)で正式発表した体幹機能評価スケールです[単独RCTではなく尺度開発研究/観察研究]。座位での①静的バランス(0〜7点)②動的バランス(0〜10点)③協調性(0〜6点)の3サブスケール・合計23点満点(高スコア=良好)で評価します。
体幹は運動連鎖(キネティックチェーン)の中心であり、上肢・下肢の運動の安定した基盤です。体幹機能障害は①座位不安定による転倒リスク増大②立位・歩行の不安定③上肢リーチ動作の障害④移乗・更衣などのADL制限⑤嚥下・発声への影響、と幅広い機能に連鎖的に波及します。体幹の回復軌跡は上肢・下肢と類似しており、発症後3ヶ月以内に回復の大部分が生じることが示されています(Verheyden et al., 2008, Neurorehabil Neural Repair)[観察研究]。
TIS 3サブスケールの位置づけ
| サブスケール | 測定する能力/配点 | 低スコアが示す臨床的問題 |
|---|---|---|
| ①静的座位バランス | 支持なし座位保持能力/0〜7点 | 起坐不能・前傾/側傾姿勢・移乗困難 |
| ②動的座位バランス | 能動的重心移動能力/0〜10点 | 側方リーチ困難・移乗の非対称・上肢操作制限 |
| ③協調性 | 上下体幹の分離回旋能力/0〜6点 | 歩行時体幹回旋なし・上肢スイング障害 |
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABでは、TISをはじめとする多角的評価から体幹機能の問題点を特定し、根拠あるプログラムをご提案します。ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いした上でリハビリ計画を立てます。
神経メカニズムと体幹制御の基盤。
体幹の姿勢制御には脳幹(前庭核・網様体)・小脳(虫部・傍虫部)・大脳皮質(補足運動野・体性感覚野)が協働します。脳卒中後はこれらの統合的な制御が乱れ、体幹の先行随伴性姿勢調節(APAs:動作の前に無意識に働く姿勢の準備反応)が障害されます。TISはこの複合的な体幹制御能力を非侵襲的・短時間で評価する臨床ツールです[専門家合意]。
サブスケール別の神経生理学的背景
静的座位バランスは前庭系・体性感覚系の統合と脊柱起立筋の持続収縮に依存し、動的座位バランスは大脳皮質体幹領域・補足運動野・脊髄固有系の協調に、協調性は大脳基底核・小脳・腹斜筋群の協調的収縮に依存します。責任病巣は多くの場合びまん性で、単一の脳画像所見だけで体幹障害の程度を予測することは困難であり、臨床所見(TISなど)による直接評価が不可欠です[専門家合意]。
構成概念妥当性[単独RCTではなく検証研究/観察研究]:Verheyden et al.(2004)の原著ではTISとBarthel Index(r=0.86)・Trunk Control Test(r=0.83)との有意な正の相関。Verheyden et al.(2006, Clin Rehabil 20(5):451-458)ではBerg Balance Scale(r=0.89)との相関が報告され、体幹機能が立位バランスの基盤であることを定量的に裏付けています。
鑑別診断:体幹障害の原因を見極める。
「体幹が不安定」という所見は、脳卒中後の運動麻痺以外にも複数の病態で生じます。TISの点数だけを見て一律の介入を組むのではなく、背景にある問題を鑑別することが臨床判断の質を左右します[専門家合意]。
| 鑑別疾患・病態 | 共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| プッシャー症候群 | 座位・立位の非対称姿勢、転倒リスク増大 | 非麻痺側上下肢で能動的に押し、姿勢を修正されると抵抗する。SPV(身体的垂直認知:自分の体がまっすぐかを感じる脳の機能)の異常が背景 | SCP(Scale for Contraversive Pushing) |
| 感覚性運動失調 | 座位動揺、閉眼で著明に増悪 | 視覚代償で改善する、深部感覚障害が主体で筋力・協調運動自体は保たれることが多い | 深部感覚検査、Romberg試験 |
| 小脳性体幹失調 | 動的動作での不安定性、協調性低下 | 開眼・閉眼で動揺量に差が乏しい、測定障害・企図振戦など小脳徴候を伴う | SARA(小脳性運動失調評価尺度) |
| パーキンソン病の姿勢反射障害 | 体幹の動的な立ち直り反応の低下 | 固縮・すくみ足を伴う、TISでは協調性項目が固縮の影響を強く受ける(Sato et al., 2024)[観察研究] | MDS-UPDRS、Pull Test |
評価尺度と採点基準の完全ガイド。

【全項目共通の開始肢位】座位、両大腿は水平、足部は支持面に平らに接地、膝関節は90°屈曲、背もたれによる支持なし、手および前腕は大腿の上に置く。対象者は各項目につき3回試行し、最も良い成績を得点とします。評価者は試行の間にフィードバックを与えてよく、指示は口頭でも非言語的(実演)でも構いません(Verheyden et al., 2004)[尺度開発研究]。実施順序は静的→動的→協調性で固定してください。
サブスケール①静的座位バランス(3項目・0〜7点)
3項目・合計最大7点で構成されます(Verheyden et al., 2004)[尺度開発研究]。項目1で0点の場合、TIS合計点は0点となります。
| 項目 | 課題内容 | 得点基準 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 開始肢位を10秒間保持する | 転倒する、または上肢による支持を必要とする=0点/10秒間、肢位を保持する=2点 | 0点の場合、TIS合計点は0点 |
| 2 | 療法士が最も強い脚を最も弱い脚の上に組み、10秒間肢位を保持する | 転倒する、または上肢による支持を必要とする=0点/10秒間、肢位を保持する=2点 | – |
| 3 | 患者が最も強い脚を最も弱い脚の上に組む | 転倒する=0点/上肢による支持を必要とする=1点/体幹を10cmを超えて移動させる、または上肢で補助する=2点/体幹または上肢による代償なしに動作する=3点 | – |
/7点。項目1・2は0点/2点の2択(中間点なし)、項目3のみ0〜3点の4段階という非対称な配点構造に注意してください。
サブスケール②動的座位バランス(10項目・0〜10点)
10項目・合計最大10点で構成されます(Verheyden et al., 2004)[尺度開発研究]。各項目0点/1点の2択です。
| 項目 | 課題内容 | 得点基準 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 右肘で座面に触れ、開始肢位へ戻る(課題達成の有無) | 座面に到達しない、転倒する、または上肢を使用する=0点/介助なしに座面へ触れる=1点 | 0点の場合、項目2+3も0点 |
| 2 | 項目1を繰り返す(体幹運動を評価) | 適切な体幹運動がない=0点/適切な体幹運動がある(右側の短縮、左側の伸長)=1点 | 0点の場合、項目3も0点 |
| 3 | 項目1を繰り返す(代償戦略を使用したか否か) | 代償を使用する(上肢、股関節、膝、足部)=0点/代償戦略を使用しない=1点 | – |
| 4 | 左肘で座面に触れ、開始肢位へ戻る(課題達成の有無) | 座面に到達しない、転倒する、または上肢を使用する=0点/介助なしに座面へ触れる=1点 | 0点の場合、項目5+6も0点 |
| 5 | 項目4を繰り返す(体幹運動を評価) | 適切な体幹運動がない=0点/適切な体幹運動がある(左側の短縮、右側の伸長)=1点 | 0点の場合、項目6も0点 |
| 6 | 項目4を繰り返す(代償戦略を使用したか否か) | 代償を使用する(上肢、股関節、膝、足部)=0点/代償戦略を使用しない=1点 | – |
| 7 | 座面から骨盤右側を持ち上げ、開始肢位へ戻る(体幹運動を評価) | 適切な体幹運動がない=0点/適切な体幹運動がある(右側の短縮、左側の伸長)=1点 | 0点の場合、項目8も0点 |
| 8 | 項目7を繰り返す(代償戦略を使用したか否か) | 代償を使用する(上肢、股関節、膝、足部)=0点/代償戦略を使用しない=1点 | – |
| 9 | 座面から骨盤左側を持ち上げ、開始肢位へ戻る(体幹運動を評価) | 適切な体幹運動がない=0点/適切な体幹運動がある(左側の短縮、右側の伸長)=1点 | 0点の場合、項目10も0点 |
| 10 | 項目9を繰り返す(代償戦略を使用したか否か) | 代償を使用する(上肢、股関節、膝、足部)=0点/代償戦略を使用しない=1点 | – |
/10点。項目1〜3(右肘)・4〜6(左肘)が体幹側方屈曲、項目7〜8(骨盤右側挙上)・9〜10(骨盤左側挙上)が骨盤挙上課題です。各グループの1つ目が0点なら、そのグループの残り項目も自動的に0点となります。
サブスケール③協調性(4項目・0〜6点)
4項目・合計最大6点で構成されます(Verheyden et al., 2004)[尺度開発研究]。
| 項目 | 課題内容 | 得点基準 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 肩甲帯を6回回旋する(各肩を前方へ3回ずつ動かす) | 右側を3回動かさない=0点/非対称な回旋=1点/対称的な回旋=2点 | 0点の場合、項目2も0点 |
| 2 | 項目1を繰り返し、6秒以内に実施する | 非対称な回旋=0点/対称的な回旋=1点 | – |
| 3 | 骨盤帯を6回回旋する(各膝を前方へ3回ずつ動かす) | 右側を3回動かさない=0点/非対称な回旋=1点/対称的な回旋=2点 | 0点の場合、項目4も0点 |
| 4 | 項目3を繰り返し、6秒以内に実施する | 非対称な回旋=0点/対称的な回旋=1点 | – |
/6点。項目1・3は0〜2点の3段階、項目2・4(反復課題)は0〜1点の2択という配点の違いに注意してください。
⚠️ TISの方向性:MASとは逆。「高スコア=良好」を必ず意識する
MASは0点=正常・4点=最重度という「高スコアが問題あり」のスケールですが、TISは全く逆で23点満点が正常・0点が最重度障害です。経時評価でスコアが「上がる」ことが「改善」を意味します。記録・グラフ作成時の誤記に注意してください。
合計スコアの解釈(0〜23点)
測定特性:信頼性・妥当性・MCID
信頼性[観察研究/尺度開発研究]:Verheyden et al.(2004, Clin Rehabil 18(3):326-334, n=28)でテスト再テストICC 0.96・評価者間ICC 0.99。サブスケールレベルでもICC 0.85〜0.99の範囲。
MCID[複数観察研究、値に幅あり]:Monticone et al.(2019, Disabil Rehabil 41(1):66-73)のイタリア語版検証で亜急性〜慢性期脳卒中では約3.5点。Ishiwatari et al.(2023, Adv Rehabil Sci Pract)の急性期脳卒中を対象とした研究ではMIC 2.5点(95%CI:0.5〜4.0)。研究設定により2.5〜8.5点の幅があるため、単一の数値を絶対基準とせず対象患者層を確認して用いてください。
カットオフ値[専門家合意]:入院時TIS≦16点は要介助レベルのADLと強く相関、TIS≧20点は自立歩行の可能性が高いとされます(各種文献のまとめ)。
TISの評価用紙(採点基準・記録シート・カットオフ値早見表を含む)はこちらからPDFでダウンロードできます。臨床現場でそのまま印刷して使える形式です。
TIS・TCT・BBS・SIASの比較
| 比較項目 | TIS | TCT | BBS |
|---|---|---|---|
| 評価の焦点 | 体幹機能特化(静的・動的・協調性) | 体幹運動制御(寝返り・起き上がり) | 立位バランス・移動動作全般 |
| スコア範囲 | 0〜23点(高=良) | 0〜100点(高=良) | 0〜56点(高=良) |
| 実施姿勢 | 座位のみ | 臥位〜座位 | 座位・立位・移動 |
| 急性期適用 | 可(床効果になりにくい設計) | 可 | 立位不要な急性期には不向き |
| 信頼性 | ICC 0.96〜0.99 | weighted kappa 0.74〜0.83 | ICC 0.98〜0.99 |
Verheyden & Kersten(2010, Disabil Rehabil 32(25):2127-2137)はRasch分析により静的サブスケールの天井効果を明らかにし、これを除外したTIS 2.0(0〜16点・動的+協調性のみ)を発表しました[単独RCTではなく尺度改訂研究]。回復期後半〜慢性期で機能良好な患者には天井効果を避けられるTIS 2.0が、急性期〜回復期早期には従来のTISが適しています。近年ではVan Criekinge et al.(2024, Neurorehabil Neural Repair 38(1):41-51)による国際コンセンサス(Stroke Recovery and Rehabilitation Roundtable第3回)でも、体幹・バランス評価の標準化における位置づけが整理されています[専門家合意]。
介入のエビデンス:スコア別戦略。
TISのスコア帯によって、優先すべき介入内容と期待できる変化は異なります。Cheung et al.(2021)のデータでは入院時平均TIS 14.3点の患者群が退院時17.2点へ有意に改善(+2.8点、p<0.001)し、入院時満点(23点)患者の90.5%が良好な退院歩行状態を達成しています[観察研究]。
背もたれ付き座位耐久性向上、仰臥位〜長座位〜座位の段階的姿勢変換訓練、体幹筋への促通(PNF・タッピング・表面電気刺激)、非麻痺側体幹への負荷で麻痺側体幹の活性化を促す手技を組み合わせます。転倒リスクが極めて高いため全動作に転倒予防措置が必須です[専門家合意]。
座位での対称的重心移動訓練(鏡・フィードバック活用)、側方・前方リーチ訓練(距離・速度を段階的拡大)、骨盤の分離した側方傾斜訓練、非麻痺側・麻痺側への交互荷重訓練、バランスボール座位での動的安定性訓練を実施します[専門家合意]。

STROKE LABでは評価から介入まで一貫して対応し、TISのスコアが示す課題に応じた個別プログラムをご提案しています。体幹機能が回復の壁になっている方はぜひご相談ください。
体幹回旋の分節化訓練(上部・下部体幹の分離)、歩行中の体幹回旋を意識したウォーキング訓練、体幹と上肢の協調的スイング訓練、不安定面を用いたコアスタビリティ訓練、TUGと組み合わせた統合的移動訓練を行います。この域値前後が臨床的に最も重要な分岐点です[観察研究]。
二重課題(体幹課題+認知課題)でのバランス維持、速度・負荷を変化させた体幹回旋訓練、生活復帰を見据えた応用的体幹コントロール、体幹防御反応の訓練を行います。TIS 20点以上は歩行自立の可能性が高く、セルフモニタリング・自主トレへの移行期です[専門家合意]。
[単独RCT]:Karthikbabu et al.(2011, Clin Rehabil 25(8):709-719)の急性期脳卒中患者30名を対象とした盲検化パイロットRCTでは、不安定面(フィジオボール)での体幹課題特化訓練群が安定面(プリント台)訓練群よりTIS・BBSで有意に優れた成績を示しました。介入は1回30分・週5回・2週間のプロトコルです。
[単独RCT]:Saeys et al.(2012, Neurorehabil Neural Repair 26(3):231-238)は早期脳卒中患的の体幹訓練RCTでTISスコアの有意な改善を報告し、体幹特化訓練が座位バランス・移動能力の改善に寄与することを示しています。
多職種連携と環境調整。
体幹機能障害は単一職種では解決しない
体幹機能は歩行・ADL・嚥下・呼吸まで広く影響するため、PT単独の評価・介入で完結させず、多職種で情報を共有することが望まれます[専門家合意]。
| 職種 | 評価項目 | 主な介入内容 | 連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | TIS・BBS・10m歩行速度 | 体幹訓練、歩行時の体幹回旋誘導 | TISスコアをOT・STへ共有し課題を統一 |
| OT | 座位でのリーチ動作・ADL動作分析 | 体幹安定性を利用した上肢リーチ訓練、更衣・整容動作の練習 | PTの動的バランス訓練成果をADL場面で汎化 |
| ST | 呼吸・発声・嚥下機能 | 体幹安定を前提とした呼吸訓練・発声練習 | 体幹低下による姿勢性の嚥下リスクをPTへ共有 |
| 看護師 | 日常生活での座位耐久性・転倒リスク | 病棟での座位時間管理、転倒予防の環境調整 | リハ室での到達度を病棟生活に反映 |
| 医師 | 痙縮の程度(MAS)・全身状態 | 痙縮への薬物療法の適応判断 | 体幹訓練の進捗を踏まえた治療方針の調整 |
| MSW | 退院後の生活環境・介護体制 | TISスコアに応じた住環境調整の助言 | 退院時TISを踏まえた在宅サービス調整 |
「TISのスコアと観察所見を、カンファレンスで数値と一緒に共有するようにしています。『体幹が弱い』という感覚的な表現より、『動的座位バランス5/10点、麻痺側への側屈が特に弱い』と伝える方が、他職種にも介入の焦点が伝わります。」
「体幹機能が向上すると、STの訓練場面でも発声の安定度が上がることをよく経験します。体幹だけの評価で終わらせず、他職種の困りごとと繋げて考える習慣をつけてください。」
つまずきポイントと臨床判断のコツ。
TISは採点基準が明快な分、逆に「わかったつもり」で誤運用しやすいスケールでもあります。新人時代につまずきやすい3点を整理します。
「TISで体幹は良いのに歩行が悪い患者を見たら、下肢の痙縮や筋力低下など別の要因を疑ってください。逆にTISが低いのに歩けている患者は、代償で何とか自立しているだけのことが多く、長距離歩行や二重課題で破綻するリスクがあります。」
予後とゴール設定。
Cheung et al.(2021)の多変量ロジスティック回帰分析では、TIS入院時スコアが退院時FIM運動項目スコアの最も重要な独立予測因子であり、年齢・MoCA・FMA(Fugl-Meyer Assessment)とともに有意でした[観察研究]。最新のIshiwatari et al.(2025, Cureus)による80例のコホート研究でも、回復期脳卒中患者の退院時ADL予測モデルにおいてTISが最も高い予測精度を示しています[観察研究]。ゴール設定の際は、現在のTISスコアからMCID(約2.5〜3.5点)を上回る改善を短期目標に、次のスコア帯への到達を中期目標に設定すると具体的で共有しやすくなります。
静的座位バランスの基盤整備(Week1〜2)、動的バランス・協調性訓練(Week1〜4並行)、足関節痙縮への医師連携を実施した結果、TIS合計は11点→17点(+6点)とMCIDを大きく上回る改善を示しました。BBSも30点→38点、10m歩行速度も0.42m/s→0.61m/sへ改善しています。
サブスケール別では静的3→5点(患側脚交叉時の代償減少)、動的5→8点(麻痺側側屈が代償なしで可能に)、協調性3→4点(上部体幹回旋の非対称が改善)という内訳でした。
よくある質問。
急性期〜回復期早期で立位が困難な患者にはTISを優先します。BBSは立位・移動の項目が多く、立位保持が困難な段階では床効果が生じて感度が下がります。TISは全項目が座位で完結するため発症直後から使えます。回復期後半以降はTISとBBSを並行して使うと情報量が最も多くなります。
動的サブスケールでは、上肢・股関節・膝関節・足部のいずれかを使った代償が見られれば0点、代償なしに動作できれば1点です。静的サブスケールの項目3では、体幹が10cmを超えて移動する、または上肢で補助した場合は2点、代償なしに動作できれば3点となります。判定に迷う場合はビデオ記録によるチーム内キャリブレーションを定期的に行うことを勧めます。
動作学習の影響はゼロではありませんが、開始肢位の厳密な統一、一貫した口頭指示、同一評価者による評価、可能であれば前回スコアを知らない状態での評価によって影響を最小化できます。BBSや歩行速度など他の指標との変化の一致を確認することも有用です。
多発性硬化症ではVerheydenらが信頼性と妥当性を報告しています。パーキンソン病でも使用例がありますが、固縮やすくみ足が動的・協調性項目に影響するため、他の評価と組み合わせた解釈が必要です。いずれの疾患でも原著の対象は脳卒中であることを踏まえ、慎重に適用してください。
低スコアのサブスケールを特定し、そこに対応する訓練を組み立てます。静的バランスが低ければ座位保持の安定化と骨盤対称アライメント訓練、動的バランスが低ければ側方リーチと重心移動訓練、協調性が低ければ上部・下部体幹の分離回旋訓練を優先します。
TIS 2.0は静的サブスケールの天井効果を理由に除外し、動的と協調性の合計0〜16点で構成されます。急性期〜回復期で座位保持自体が課題になる患者にはオリジナル版、静的バランスがすでに安定し天井効果が疑われる回復期後半以降の患者にはTIS 2.0が適しています。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは脳卒中専門の自費リハビリ施設として、TISをはじめとする多角的な評価から、お一人おひとりに合わせたプログラムを設計しています。体幹機能の課題を特定した上で、歩行・上肢機能・生活動作の改善までを一貫してサポートします。

— STROKE LABでのリハビリの様子。
「担当した60代の利用者様は『歩けているから体幹は問題ない』と考えていましたが、TISを取ると動的バランスが5/10点と低く、代償で歩いていることがわかりました。麻痺側への側屈訓練を4週間続けたところ、歩行時のふらつきの訴えが明確に減り、ご本人も『まっすぐ立てている感覚がある』と話してくれました。数値と主観的な変化が一致した瞬間、評価の意味を実感しました。」— 理学療法士・臨床経験8年・脳卒中リハビリ専門
「協調性サブスケールが低い利用者様の歩行を見ると、上肢のスイングがほとんど出ていないことに気づきました。上部・下部体幹の分離回旋訓練を取り入れたところ、数週間で歩行時の腕振りが自然に戻り、歩行速度も改善しました。体幹の小さなサブスケールの変化が、歩容全体を変えることを日々実感しています。」— 作業療法士・臨床経験6年・回復期リハビリ専門
諦めないでください。

「歩くとふらつく」「手が思うように動かない」という訴えの背景に、体幹機能の問題が隠れていることは少なくありません。TISのような客観的な評価は、その問題を言葉にする手助けになります。
STROKE LABでは、評価から介入まで一貫して対応し、体幹機能が回復の壁になっている方への専門的なプログラムをご提供しています。
一人で悩まず、まずは無料相談で今の状態を一緒に確認しましょう。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)