vol.30:バランス機能と感覚統合の関係性とは? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学,バランス
タイトル
脳卒中患者のバランス障害における運動感覚統合の障害前/後の実験研究 Rehabilitation of sensorimotor integration deficits in balance impairment of patients with stroke hemiparesis: a before/after pilot study?PubMedへ Smania N et al:Neurol Sci. 2008 Oct;29(5):313-9
内 容
概 要
●脳卒中患者におけるバランス障害は求心性情報の統合障害としばしば関連する(体性感覚・視覚・前庭覚)
●この研究の目的は,脳卒中患者においてバランス練習を行い多くの感覚入力の操作ができ,姿勢を安定させられるか,もしくは歩行能力が改善するかどうかを評価すること
方 法
●被験者は7名の慢性片麻痺者
●患者のパフォーマンスは感覚機構バランステストと10m歩行テストを用いて,実験前後ですぐに評価し,4週間治療を行った(1日1時間を20回の立位バランスエクササイズをおこなう)
結 果
●治療前,全ての患者は下肢からの体性感覚情報の統合の困難さによるバランスの問題と過度の視覚情報を頼って立位バランスをコントロールしている
●治療後,バランスと歩行スピードは著しく増加し,改善は1週間で取り戻した
Fig.1:患者の治療前後における10m歩行テストのパフォーマンス
考 察
●これらの研究結果は体性感覚統合障害のリハビリテーションは脳卒中患者のバランスを改善する事を示唆している
明日への臨床アイデア
●先行研究から述べられている通り,バランスは筋力や関節だけでなく,感覚統合の側面から分析していく必要がある.特に脳卒中患者の場合はリハ室環境や床の感覚,靴下の有無などでも大きくバランスに影響してくる.従って治療効果を評価する際は多面的側面から観察する必要があると考えられる.以下は多感覚統合のキャッチーな図を提示してある.臨床の際はこれらの側面を意識しながら介入していきたいと考える.
●感覚の統合に関しては,知覚し認知する過程が必要であるため,患者様によってはセルフエクササイズや経過の中で自然とバランス機能が改善されてくるケースもある.しかし,認知低下や重度の感覚障害のある対象においては,自己のみでは統合を図れない場合も多々認められる.経過の中で良くなる方に指導等をすることももちろん重要だが,セラピストの手助けを必要とする対象に対して,セラピストが確実に個別性に応じた運動学的・神経学的分析,それに基づくアプローチができるか否か,が重要になってくると感じた.
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)