【2026年版】前頭眼野とサッカードのリハビリテーション:脳卒中後の眼球運動回復アプローチ – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2026年版】前頭眼野とサッカードのリハビリテーション:脳卒中後の眼球運動回復アプローチ

Clinical Neuroscience — Frontal Eye Field & Oculomotor Rehabilitation

前頭眼野(FEF)は、なぜ眼球運動と空間注意を支配するのか。

ブロードマン8野に位置する前頭眼野は、随意的なサッカード(急速眼球運動)と空間的注意の制御を担う。脳卒中リハビリで眼球運動の評価・訓練が最も見落とされがちな課題である理由を、神経科学とエビデンスから読み解く。

UPDATED2025
READ約12分
FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB

— 前頭眼野の解剖・機能・眼球運動トレーニングの全体像を動画で解説します。

BRODMANN AREA
8
前頭前野・中前頭回前部に位置。中大脳動脈(MCA)前頭前枝が主な血液供給源。
NEGLECT PREVALENCE
40〜50%
右半球脳卒中患者に半側空間無視が生じ、FEF回路の障害が深く関与する。
TRAINING PERIOD
4〜6
段階的なサッカード・視覚走査訓練の継続で、空間探索・読書能力が改善する。

Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
FEFはブロードマン8野(前頭前野・中前頭回前部)に位置し、MCA前頭前枝が支配する。解剖学的位置には個人差・左右差がある点に注意。
02
主な機能は「随意サッカード(急速眼球運動)の始動・制御」「平滑追跡眼球運動」「空間的注意の誘導」の3つ。純粋な反射性サッカードへの関与は小さい。
03
臨床評価の5チェック:①視線移動の開始 ②不要運動の抑制(固視安定性)③頭眼協調 ④読書(行の追跡) ⑤空間的注意(無視の有無)。
04
介入は「サッカード訓練(10〜15分/回・週3〜5回)→ 視覚走査 → 読書練習 → ADL応用」の順で段階的に進める。
05
最大の落とし穴は「ADL・機能訓練中に眼球運動をまったく確認しないこと」。学校教育で習わないため多くの新人が見落とす。

01
Clinical Encounter

臨床現場でこう出会う。

Case Vignette
石川さん(60代・右MCA梗塞後):
「掃除中に何度もぶつかる」その背景は?

発症から3週間が経過した石川さん。「部屋を掃除機で掃除する」ことが目標だが、壁や家具に何度もぶつかる。担当OTの田中先生は初回評価でまず眼球運動を確認した。サッカードを促すと視線移動の開始に明らかな遅延があり、固視の安定性にも乱れが見られた。

「足の力はある。でも視線が先に動いていない。」田中先生はそう気づき、FEF(前頭眼野)損傷を責任病巣として仮説を立て、介入計画を組み直した。

脳卒中後のリハビリで、石川さんのような患者に出会うことがあります。歩行や上肢機能の問題は目に見えやすい一方で、眼球運動の障害は「なんとなくぎこちない」程度にしか見えないことが多いです。しかし眼球運動は、ADLのほぼすべてに関わっています。その司令塔のひとつが、今回取り上げる前頭眼野(FEF)です。

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STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。眼球運動・高次脳機能・身体機能の専門的評価と、生活目標に沿った個別プログラムを提供しています。まずは無料相談からご相談ください。

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02
Definition & Anatomy

前頭眼野の定義と解剖。

前頭眼野(FEF: Frontal Eye Field)は、前頭前野のブロードマン8野に位置します。具体的には、前頭葉の中前頭回の前部で、運動前野(ブロードマン6野)の吻側(手前側)かつ外側にあります。この領域は、随意的な眼球運動—特にサッカード(急速眼球運動)—の制御において中心的な役割を担います。

前頭眼野(FEF)の位置:ブロードマン8野・中前頭回前部

▲ 前頭眼野(FEF)の解剖学的位置。ブロードマン8野・中前頭回前部。

血液供給:MCAが主役、個人差に注意。

FEFへの血液供給は、主に中大脳動脈(MCA)の前頭前枝が担います。中前頭回の前部に位置するため、MCAの閉塞でFEFが梗塞範囲に含まれることがあります。ただし個人差があり、前大脳動脈(ACA)の分布が外側に広がる場合、ACAもFEF領域の一部に血液を供給することがあります。

前頭眼野(FEF)の血液供給:MCAと前頭前枝

▲ FEFの血液供給:MCA前頭前枝が主要供給源。個人差・解剖学的多様性に注意。

MRI Reading Point
MRIでFEFを確認するための3ステップ。

① 中心溝を探す:FEFは中心溝の吻側(手前側)の前頭葉に位置します。まず中心溝を確認します。

② 中前頭回を特定する:上前頭溝と下前頭溝の間が中前頭回です。FEFはその前部に位置します。

③ 個人差・非対称性を考慮する:左右半球間でFEFの位置に非対称性がみられる場合があります。「同じ場所にあるはず」という先入観を捨てることが重要です。

MRIでの前頭眼野(FEF)の確認ポイント

▲ MRIでのFEF確認ポイント:中前頭回前部・個人差・左右非対称性。

03
Neural Network & Function

神経ネットワークと機能の全体像。

FEFは単独で機能するのではなく、複数の脳領域と密接なネットワークを形成しています。Pougetら(2015, Nat Neurosci)は「大脳皮質全体が随意的眼球運動の総合的制御に関与する」と報告しており、FEFはその中心的なハブとして機能します。

FEFを構成する5つの神経接続。

01
脳幹への直接投射実行経路

FEFは傍正中橋網様体(PPRF)や中脳などの脳幹領域に直接投射します。これらの領域には眼球運動を司る運動ニューロンが含まれており、FEFからの信号が眼球運動の実行に直接関与します。

02
上丘(Superior Colliculus)との接合頭部・眼球の方向制御

FEFは中脳の上丘に直接投射を送ります。上丘は頭部と眼球の向きを決める重要な役割を果たし、サッカードの媒介に寄与します。反射性サッカードは主に上丘が処理します。

03
視覚野との相互接続視覚情報の統合

FEFは視覚皮質のさまざまな領域と相互接続しています。この接続により視覚情報と運動指令の統合が可能となり、空間的注意の集中や視野内の対象識別をサポートします。

04
頭頂眼野(PEF)との連携空間的注意

頭頂眼野(PEF)は頭頂間溝周辺に位置し、空間情報の統合と注意誘導に関与します。FEFとPEFの相互作用が半側空間無視に深く関係します。

05
他の前頭前野との相互作用意思決定・計画

補足眼野(SEF)や背外側前頭前野(dlPFC)とも相互作用し、眼球運動の計画・意思決定・不要な反射の抑制(アンチサッカード)に関与します。

前頭眼野(FEF)の神経ネットワーク:脳幹・上丘・視覚野・頭頂眼野との接続

▲ FEFの神経ネットワーク:脳幹・上丘・視覚野・PEF・SEF・dlPFCとの相互接続。

FEFが制御するサッカードの4種類。

Schall(2002)は前頭眼野がサッカードの選択と制御に中心的な役割を担うと報告しています。「船長の例え」でサッカードの種類を整理しましょう。

前頭眼野(FEF)が制御するサッカードの種類:視覚誘導・予測・記憶誘導・アンチサッカード

▲ FEFが制御するサッカードの4種類(Schall JD, 2002を参考に作成)。

Saccade Types
船長の比喩でわかるサッカードの4種類。

①視覚誘導性サッカード:既に見えているものに視線を向ける。船長が灯台を見て即座に船を向けるようなもの。

②予測性サッカード:現れると予測される場所に視線を向ける。地図から次の目的地を予測し船を向ける動作。

③記憶誘導性サッカード:以前あった、今は見えない場所に視線を向ける。以前のランドマークを記憶して船を操縦するもの。

④アンチサッカード:突然の閃光を見たとき、あえて逆方向に視線を動かす。dlPFCとの協働で反射を抑制する高次の運動。

注:純粋な反射性サッカードは主に上丘と脳幹が処理し、FEFの関与は小さいとされます(Pouget et al., 2015)。

EVIDENCE — Level: 総説/高い推奨強度
Pouget P, et al. 大脳皮質は随意的眼球運動の総合的制御を担う。Nature Neuroscience. 2015

主要結論:Natureに掲載された本研究は、大脳皮質全体(FEFを含む)が随意的眼球運動の総合的制御に関与していることを示した。FEFは「随意」「予測」「記憶誘導」サッカードの中核を担い、反射性眼球運動への関与は相対的に小さい。

臨床的含意:「FEFが損傷されると随意サッカードが障害され、反射性サッカードは比較的保たれる」ことを踏まえ、評価では随意的な視線移動を意図的に確認することが重要。

04
Differential Diagnosis

鑑別:FEFと類似脳領域の役割の違い。

FEFと眼球運動に関わる他の脳領域を混同すると、介入の的が絞れません。各領域の機能の違いを整理しておきましょう。

脳領域 位置(ブロードマン野) 主な役割 臨床上の特記事項
前頭眼野(FEF) 8野・中前頭回前部 随意サッカード始動・制御、平滑追跡、空間的注意 MCA支配。損傷で随意サッカード障害・無視
補足眼野(SEF) 6野・補足運動野付近 記憶誘導サッカード、眼球運動の連続的系列 不要な反射性サッカードの抑制に関与
背外側前頭前野(dlPFC) 9野・46野 反射性サッカードの抑制、アンチサッカード、意思決定 損傷でアンチサッカード困難・衝動性↑
頭頂眼野(PEF) 頭頂間溝周辺 空間情報の統合、外部誘導の注意誘導 FEFと相互接続。両者損傷で無視が増悪
上丘(SC) 中脳 反射性・視覚誘導サッカードの媒介 FEF損傷後の代償経路となりうる
FEFは「随意的に視線を動かす意図」を実行に変換する司令塔。反射的な眼球運動は上丘が担うと理解しておくと、評価の仮説が立てやすくなる。

05
Clinical Assessment

臨床評価の5ポイント。

FEFの機能評価は高価な機器がなくても実施できます。ベッドサイドや訓練室で即実践できる5つの観察ポイントを紹介します。

Assessment Checklist
FEF機能を確認する5つの観察項目。
① 眼球運動を随意的に開始できるか?

新しい人物や物体が視野に入ったとき、素早く視線を移せるかを確認。開始に遅延や困難があればFEF機能障害を疑います。評価方法:「あの時計を見てください」など随意的な指示で視線移動を促します。

② 不要な眼球運動を抑制できるか?(固視の安定性)

アイコンタクトを維持できるか、眼球が不随意にふらついていないかを確認。アンチサッカードの評価(閃光と逆方向に視線を向ける課題)も有用です。

③ 目と頭の協調運動はできるか?

話しかけてくる人の方を向けるか、動く物体をスムーズに追えるかを確認。頭と目が協調して動いているかに注目します。

④ 読書は可能か?(サッカードの連続使用)

読書にはサッカードの連続使用が必要です。頻繁に場所を見失う・行を読み飛ばす・頭を過度に動かすなどがあればFEF障害を疑います(Rayner, 1978)。

⑤ 視野全体に空間的注意が向けられるか?

視野の片側(損傷と反対側)への無視がないかを確認。半側空間無視が疑われる場合、FEF障害の関与を念頭に置いた評価を追加します。

前頭眼野(FEF)障害と半側空間無視の関係:空間的注意の評価

▲ FEF障害と半側空間無視の関係。視野片側への注意が偏る場合、FEFと頭頂眼野の両者を評価する。

06
Evidence-Based Intervention

エビデンスに基づく段階的介入。

FEFを意識した介入は、「基礎的な眼球運動訓練」から「ADL応用」まで段階的に組み立てます。各フェーズのパラメータを明記します。

01
Phase 1:サッカードトレーニング10〜15分/回・週3〜5回

壁に2〜3個のターゲット(異なる高さ・距離に配置)を設置し、指定された順番で素早く視線を移動させます。最初は2点間で開始し、慣れたらターゲット数を増やす・ランダム指示にするなど難易度を調整します。

強度調整:ターゲット間距離・数・指示速度を段階的に増加。動くターゲットを目で追うゲーム(コンピューター画面上の動く物体の追跡)も有効です。

サッカードトレーニング:2点間の視線移動・ターゲット追跡

▲ サッカードトレーニング:ターゲット間の素早い視線移動練習。

02
Phase 2:視覚走査トレーニング15〜20分/回・週3〜5回

ページに散らばった図形や文字を順番に探す課題・部屋の中の異なる物体を順番に視認する活動を実施します(Moore & Fallah, PNAS 2001)。視野全体への注意の広がりを促します。

強度調整:物体数の増加→背景の複雑化→音のある環境への変化で段階的に難易度を上げます。

視覚走査トレーニング:図形・文字探し・部屋の物体視認

▲ 視覚走査トレーニング:空間全体に注意を向ける練習。

03
Phase 3:読書練習10〜15分/回・週3〜5回

大きな文字(14pt以上)の本や雑誌から開始し、文字サイズを徐々に縮小します。読書はサッカードの連続使用が必要であり、機能回復を促す課題として有効です(Rayner K., Psychol Bull. 1978)。

段階:大文字→中文字→通常サイズ。行間の広い教材→標準的な教材の順で進めます。

読書練習:サッカードの連続使用を促す訓練

▲ 読書練習:大きな文字から段階的に縮小。サッカードの連続使用を練習。

04
Phase 4:ADL応用トレーニング動的課題・生活文脈

掃除中の視線移動:掃除機をかけながら、部屋の隅々に視線を送り、ホコリの有無を確認する練習。視線の移動と身体動作の協調を意識します。

棚への物の返却:物を取るときの手の動きを目で追い、棚に置く瞬間まで視線を保つ訓練。視覚と動作の統合を強化します。

歩行中の視覚課題:屋内歩行中に壁の色紙を順番に探すなど、動的環境での視覚的注意の持続練習。外出・歩行安全性の向上につながります。

ADL応用トレーニング:掃除・棚への返却など日常生活での眼球運動練習

▲ ADL応用トレーニング:日常生活の文脈で視覚と動作の統合を練習。

EVIDENCE — Level: 原著論文 / 弱く推奨
Moore T, Fallah M. 眼球運動と空間的注意の制御。PNAS. 2001;98(3):1273-6

研究概要:眼球運動の計画と視覚空間的注意の方向性の関係を探究。眼球運動の計画と注意制御が重複する脳メカニズムを共有するという仮説を支持。

臨床的含意:サッカードトレーニングは眼球運動の改善のみならず、空間的注意の改善にも寄与する可能性がある。半側空間無視の補助的介入として検討できる。

STROKE LAB代表 金子唯史
Message from CEO
「目が動かない」には、必ず理由があります。専門家と一緒に解決しましょう。

眼球運動の問題は見過ごされがちですが、ADLの質に直結します。STROKE LABでは神経科学をベースにした個別評価と、生活目標に沿った実践的なプログラムを提供しています。まず無料相談でご状況をお聞かせください。

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07
Interprofessional Collaboration

多職種連携と環境調整。

眼球運動の問題は複数の職種が連携して対応することで、より効果的な支援ができます。各職種の役割を整理しておきましょう。

多職種の役割分担一覧。

職種 FEF障害への主な関与 具体的な介入例
PT(理学療法士) 歩行・移動安全性の確保 歩行中の視覚課題・方向転換時の視線誘導・環境障害物の把握
OT(作業療法士) ADL評価・眼球運動訓練の主担当 サッカード・視覚走査・読書・家事動作での視線評価と訓練
ST(言語聴覚士) 読書・コミュニケーション評価 読書訓練・高次脳機能(注意・記憶)との統合評価
看護師 日常的な眼球運動の観察・情報収集 食事・整容中の視線の異常(ふらつき・一方への偏り)を記録しリハ科に情報提供
医師 責任病巣の確認・診断 MRI所見の共有・眼科的合併症の除外・薬物療法の管理
MSW(医療ソーシャルワーカー) 退院後の生活環境整備 家屋改修(視覚的目印の設置)・自費リハビリ継続支援・地域サービスとの連携

環境調整のポイント。

Clinical Insight — Environmental Setup

「眼球運動が不安定な患者さんの部屋は、視覚的なランドマーク(色の付いたシールや目印)を設置しておくと、自分がどこを向いているかを確認しやすくなります。」

「食事トレーにカラーマーカーをつけ、視線移動の練習ターゲットとして使う方法もあります。ADLと訓練を一体化できます。」

「読書困難があれば、大きな文字の新聞や書籍から始めて下さい。達成感が積み重なることで、患者さんの意欲も維持できます。」

08
Pitfalls & Clinical Reasoning

Pitfallsと臨床判断のコツ。

FEFに関わる臨床では、いくつかの「落とし穴」に気をつける必要があります。新人セラピストが特に陥りやすい3つの罠を紹介します。

Pitfalls — Don’t make these mistakes
新人臨床家が陥りやすい3つの罠
!
ADL・機能訓練で眼球運動を全く確認しない:多くの療法士は学校教育で眼球運動の評価・訓練を積極的に習わないため、ADLや機能訓練で患者の目の動きを確認しないことが多いです。これが最大の失敗です。対策:評価の冒頭に「サッカード・追跡・固視」の3点を必ず確認する習慣をつけましょう。
!
サッカードと平滑追跡眼球運動を混同して訓練する:サッカードは急速な跳躍運動、平滑追跡は動く標的を追う運動で、神経基盤が異なります(サッカード=FEF主体、追跡=小脳・側頭頂葉後部との協働)。混同すると訓練目的が不明確になります。対策:「今やっているのはサッカード訓練か、追跡訓練か」を常に意識して介入を設計しましょう。
!
半側空間無視の評価でFEFの関与を見落とす:半側空間無視では視野・感覚の問題のみに注目しがちですが、FEF損傷による眼球運動の始動障害が根本にある場合があります。感覚や視野だけを評価しても真の原因を掴み損ねます。対策:無視症状があれば必ずFEFに関連する随意的な眼球運動の評価(視線移動の開始遅延・固視安定性)を追加しましょう。
眼球運動を見落とすセラピストの落とし穴:ADLでの眼球運動確認の重要性

▲ 最大の落とし穴:ADL・機能訓練中に「眼球運動を全く確認しない」こと。

臨床判断の分岐点:どこで疑い、どう確認するか。

Mentor’s Voice

「患者さんが何度も物にぶつかるとき、まず足元より先に、目を見てください。視線が先に動いているかどうかが鍵です。」

「読書や新聞が急に読めなくなったと訴える患者さんは、FEFを疑ってみてください。行の読み飛ばしや場所の迷子が頻繁なら、サッカードの確認が先です。」

「ADL中に視線を確認する習慣」こそが、新人セラピストと熟練セラピストの最大の差のひとつだ。

09
Prognosis & Goal Setting

予後とゴール設定。

FEF損傷後の眼球運動障害は、脳の可塑性によって回復が期待できます。上丘などの皮質下経路が代償経路として機能することで、随意的なサッカード機能がある程度回復するケースがあります。

Prognosis Guide
回復の時期とゴール設定の目安。

急性期(発症〜4週):自発的回復が最も生じやすい時期。眼球運動の評価を早期に実施し、問題を可視化することが重要。強度の高い早期介入は自発的回復を後押しします。

回復期(4週〜3ヵ月):段階的な訓練プログラム(Phase 1〜4)を本格的に実施します。ADLゴールに沿った課題指向型の訓練が効果的です。

慢性期(3ヵ月以降):代償戦略の活用(視覚的ランドマークの利用・頭部回旋の活用など)と、維持・強化のための継続的な訓練が中心になります。

Goal Setting Example
石川さんのゴール設定例(3ヵ月後)。

短期目標(4週以内):2点間のサッカードを随意的に実施できる(ターゲット間20cm・反応時間1秒以内)。

中期目標(8週以内):部屋の視覚走査を行いながら、5〜6畳の空間を安全に移動できる。

長期目標(12週以内):自室での掃除機がけを、ぶつかりなく安全に遂行できる(石川さんの生活目標)。

ゴール設定は「眼球運動の改善」ではなく、「〇〇ができるようになる」という生活文脈の目標で設定することが重要だ。

10
Frequently Asked Questions

よくある質問。

Q. 前頭眼野(FEF)とはどの脳領域で、主にどのような機能を担いますか?
A.

FEFはブロードマン8野、前頭前野の中前頭回前部に位置します。随意的なサッカード(急速眼球運動)の開始・制御と、空間的注意の誘導が主な機能です。血液供給は主に中大脳動脈(MCA)前頭前枝が担います。

脳卒中でMCAが閉塞すると、FEFが梗塞範囲に含まれる場合があります。個人差があるため、MRI画像で中前頭回前部の梗塞をみたら必ず眼球運動を評価しましょう。

Q. FEFが損傷されると、どのような臨床症状が現れますか?
A.

視線移動の開始困難・遅延、読書中の行の読み飛ばし・場所の喪失、頭眼協調運動の低下、半側空間無視などが現れます。

重要なのは「反射性サッカードは比較的保たれる」という点です。光刺激への反射的な目の動きが正常でも、「随意的に視線を動かす」「記憶に基づいて視線を向ける」ことが困難な場合、FEFの機能障害を疑います。

Q. 臨床でFEFの機能を評価するには、何を観察すればよいですか?
A.

①眼球運動を随意的に開始できるか、②不要な眼球運動を抑制できるか(固視の安定性)、③目と頭の協調運動ができるか、④読書が可能か(行の追跡)、⑤視野全体に空間的注意が向けられるかの5点を確認します。

特別な機器は不要です。「あの時計を見てください」という随意的指示への反応や、読書課題中の眼球の動きをベッドサイドで簡単に評価できます。

Q. サッカードトレーニングはどのように実施しますか?
A.

壁に2〜3個のターゲット(異なる高さ・距離に配置)を設置し、指定された順番で素早く視線を移動させます。1セッション10〜15分、週3〜5回、4〜6週間継続が目安です。

慣れてきたらターゲット数を増やす・ランダムな指示にする・動くターゲットを追加するなどで難易度を段階的に調整します。コンピューター画面上の動く物体の追跡課題も有効です。

Q. 半側空間無視とFEFはどのような関係がありますか?
A.

右半球脳卒中患者の40〜50%に半側空間無視が生じます。FEF損傷は空間的注意の偏りと眼球運動の始動障害を同時に引き起こすため、無視症状の一因となります。

FEFと頭頂眼野(PEF)は密接に相互接続しており、両者の損傷が無視症状を増悪させます(Corbetta & Shulman, Annu Rev Neurosci. 2011)。無視症状があれば、FEF関連の眼球運動評価を必ず追加してください。

Q. FEF障害のある患者のADLリハビリで、特に注意すべき点は何ですか?
A.

掃除・調理・歩行などの動的課題では「視線が先に動いているか」「視線と身体動作が連動しているか」を必ず確認します。眼球運動の問題を改善せずにADLのみを繰り返しても効果は限定的です。

サッカード・視覚走査の基礎訓練を先行させ、段階的にADL課題へ移行することが重要です。また認知機能(記憶・注意)との複合課題(物の位置を覚えながらの視線移動など)も、回復後期に有効です。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。脳卒中後の眼球運動障害・高次脳機能障害・身体機能回復に向け、神経科学に基づいた個別プログラムを提供しています。退院後も「あきらめたくない」というご本人・ご家族の思いを、専門スタッフが全力でサポートします。

Our Strength
STROKE LABの強み
— 脳神経系に特化した専門施設
脳神経科学・高次脳機能の専門家が担当
1回60分以上の丁寧な個別評価と介入
生活目標に沿ったゴール設定と訓練計画
最新エビデンスに基づくリハビリテーション
What We Can Do
取り組める内容
— 眼球運動・高次脳機能・身体機能
眼球運動評価・サッカード訓練・視覚走査
半側空間無視・高次脳機能のリハビリ
ADL動作分析・掃除・調理・歩行への応用
退院後の継続的なリハビリテーション支援

— STROKE LABでのリハビリテーションの実際の様子です。

Voice from Mentors

「評価室でベッドサイドに立ったとき、まず患者さんの目を見てください。どこを向いているか、ちゃんと追ってくれるか。そこで多くのことが分かります。眼球運動を見ることで、ADLの困難さの原因が明確になります。」— PT・臨床経験12年・脳神経系専門

「眼球運動の問題は、本人も気づいていないことが多い。読書が難しい、掃除でぶつかる、そういったADLの困りごとの背景には、必ずFEFを疑ってほしい。評価の視点が増えるだけで、臨床の質が格段に上がります。」— OT・臨床経験8年・高次脳機能専門

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Message from CEO
眼球運動の問題も、適切な介入で変わります。
諦めないでください。

STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

「目が動かない」「読めなくなった」「掃除でぶつかる」という訴えの背景に、前頭眼野(FEF)の障害が隠れていることがあります。見えにくい問題だからこそ、専門的な評価と支援が必要です。

STROKE LABでは神経科学をベースに、「なぜこの問題が起きているのか」を徹底的に評価し、生活目標に沿った個別プログラムを組み立てています。

諦めてしまう前に、一度ご相談ください。ご本人・ご家族の想いを全力でサポートします。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

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References

参考文献。

01 Pouget P, et al. The cortex is in overall control of ‘voluntary’ eye movement. Nat Neurosci. 2015;18(6):816-8.
02 Schall JD. The neural selection and control of saccades by the frontal eye field. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2002;357(1424):1073-82.
03 Moore T, Fallah M. Control of eye movements and spatial attention. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001;98(3):1273-6.
04 Rayner K. Eye movements in reading and information processing. Psychol Bull. 1978;85(3):618-60.
05 Pierrot-Deseilligny C, et al. The role of the lateral prefrontal cortex in inhibition of horizontal saccades. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1991;54(9):751-6.
06 Anderson TJ, et al. Cortical control of saccades and fixation in man. A PET study. Brain. 1994;117(Pt 5):1073-84.
07 Kerkhoff G. Spatial hemineglect in humans. Prog Neurobiol. 2001;63(1):1-27.
08 Corbetta M, Shulman GL. Spatial neglect and attention networks. Annu Rev Neurosci. 2011;34:569-99.
09 金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.
10 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院. 2024.

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