作業療法士 P-E-Oモデルの評価例:自費リハビリ起業するまでのキャリアデザイン!
PEOモデルとは?
PEOモデル(Person-Environment-Occupation Model)を活用して、作業療法士が起業する具体的な例を挙げます。このモデルは、人(Person)、環境(Environment)、作業(Occupation)の相互作用を重視しており、起業においてもこのフレームワークを活用することで効果的な事業計画が立てられます。
図引用:https://peomodel.com/
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個人(Person)
個人の能力、スキル、価値観、目標など、身体的、精神的、感情的な側面を包括的に評価します。これには、個人の特性や状態がどのように作業遂行に影響を与えるかも考慮されます。
- 身体的側面: 筋力、柔軟性、持久力、バランスなどの身体的な能力。これらの能力は、日常生活や作業活動を遂行する際に必要不可欠です。
- 精神的側面: 注意力、記憶力、問題解決能力、判断力などの認知機能。これらは、複雑なタスクを遂行するために必要な能力です。
- 感情的側面: ストレス耐性、モチベーション、自己効力感などの感情的な特性。これらは、リハビリや日常生活での挑戦に対する態度や取り組み方に影響を与えます。
- 価値観と目標: 個人が大切にする価値観や達成したい目標。これらは、リハビリテーションの動機づけや、目標設定の基盤となります。
環境(Environment)
個人が活動を行う物理的、社会的、文化的な環境を評価します。環境は、物理的な場所や資源、人々との関係、社会的サポート、文化的な価値観や規範などを含みます。
- 物理的環境: 自宅や職場のバリアフリーの状況、使用する道具や設備の配置、周囲の安全性など。
- 社会的環境: 家族、友人、同僚、地域コミュニティなどとの関係性や支援体制。これには、感情的支援や実際の援助が含まれます。
- 文化的環境: 文化的な価値観、習慣、社会的規範など。これらは、個人の行動や決定に影響を与える重要な要素です。
作業(Occupation)
個人が日常生活で行う活動や役割を指します。作業は、自己管理、仕事、レジャー、社会参加など、多様な活動を含みます。
- 自己管理: 衣服の着脱、食事の準備、入浴、トイレ動作などの基本的な日常生活動作(ADL)。
- 仕事: 現役の仕事や退職後の趣味活動、ボランティアなど。これには、作業の内容や頻度、必要なスキルなどが含まれます。
- レジャー: 趣味や娯楽、休暇など。これには、個人の楽しみやリラクゼーションのための活動が含まれます。
- 社会参加: 地域活動や社会的な役割、ボランティア活動など。これには、社会的つながりを保つための活動が含まれます。
相互作用と作業遂行(Occupational Performance)
相互作用:
個人、環境、作業の3つの要素は相互に影響し合い、その組み合わせが作業遂行を決定します。各要素のバランスや適応が作業遂行に直接的な影響を与えます。
- 個人: 個人の身体的、精神的、感情的な特性が作業遂行にどのように影響するかを評価します。
- 環境: 環境の物理的、社会的、文化的な側面が作業遂行にどのように影響するかを評価します。
- 作業: 作業の種類や特性が作業遂行にどのように影響するかを評価します。
作業遂行:
作業遂行は、個人が環境の中で特定の作業を効果的に行う能力を示します。PEOモデルでは、これらの要素が最適に調和することで最高の作業遂行が達成されると考えます。
- バランス: 個人、環境、作業の各要素がバランス良く調和しているか。
- 適応: 各要素が変化に適応し、最適な状態で作業遂行が行えるか。
進行中の発展(Ongoing Development)
モデルの右側に示されている矢印は、「進行中の発展(Ongoing Development)」を表しています。これは、個人の成長や環境の変化、作業の進化が絶え間なく続くことを意味し、これらの変化に応じて作業療法も動的に適応し続ける必要があることを示しています。
- 成長: 個人の身体的、精神的、感情的な成長やスキルの向上。
- 変化: 環境の物理的、社会的、文化的な変化。
- 進化: 作業の種類や方法の進化。
この進行中の発展を考慮し、作業療法士は個々のニーズに応じた柔軟なリハビリテーションプランを提供し続けます。これにより、個人が最適な作業遂行を達成し、生活の質を向上させることが可能となります。
リハビリテーションでの実施例
背景
患者【丸山さん】は、脳卒中後のリハビリテーションを受けている50代の男性です。金子先生は彼の主治療作業療法士であり、PEOモデル(Person-Environment-Occupation Model)を活用して、丸山さんのリハビリプランを作成しています。
初回評価
個人(Person)
丸山さんの身体的・精神的状態を詳細に評価します。
- 身体的状態: 右半身に麻痺が残り、細かい動作や力を必要とする作業が制限されています。特に、右手の指先の器用さと右脚のバランス能力に課題があります。
- 精神的状態: リハビリへの意欲は非常に高く、目標達成に向けた強いモチベーションを持っています。しかし、日常生活での困難さや、復職に対する不安が残っています。心理的なサポートやカウンセリングが必要です。
環境(Environment)
丸山さんが生活する環境を多角的に評価します。
- 物理的環境: 自宅はバリアフリー化されており、移動や日常生活動作に支障がないようリハビリ用具も整っています。具体的には、階段には手すりが設置されており、浴室には滑り止めマットが敷かれています。また、調理用具や洗濯機などの日常生活用具も使いやすい位置に配置されています。
- 社会的環境: 家族のサポートが非常に充実しており、特に妻と娘が積極的に介護や家事を分担しています。友人との交流も頻繁で、定期的に訪問し合うことで社会的なつながりを維持しています。
- 文化的環境: 地域コミュニティの活動にも積極的に参加しており、地元の集会やイベントに顔を出しています。特に、月一回の地域清掃活動や、地域の伝統行事には欠かさず参加しています。
作業(Occupation)
丸山さんが日常生活で行う活動を具体的に評価します。
- 自己管理: 衣服の着脱や食事の準備、入浴などの日常生活動作を自立して行うことが目標です。現時点では、衣服の着脱に介助が必要で、特にボタンを留める作業に困難を感じています。食事の準備も一部介助が必要です。
- 仕事: 退職後の趣味活動としてのガーデニングを楽しんでいます。庭の手入れや植物の世話をすることで、身体を動かしながら精神的なリフレッシュも図っています。右手の麻痺のため、細かい作業には制限がありますが、徐々に改善を目指しています。
- レジャー: 散歩や地域活動への参加を通じて、身体機能の維持と社会参加を図っています。毎朝30分の散歩を日課としており、地域の散歩グループにも参加しています。季節ごとの地域イベントにも積極的に参加し、社会的なつながりを深めています。
- 社会参加: ボランティア活動にも積極的で、地元の小学校での読み聞かせや、地域の福祉施設での支援活動を行っています。これらの活動を通じて、社会貢献の喜びを感じるとともに、自己効力感を高めています。
このように、丸山さんのリハビリテーションは、個人、環境、作業の各要素を詳細に評価し、それらがどのように相互作用しているかを理解することで、最適なリハビリプランを立案することを目指します。
リハビリプランの作成
金子先生は、丸山さんの評価結果を基に、個人、環境、作業の相互作用を考慮した総合的なリハビリプランを作成します。このプランは、丸山さんの生活の質を最大限に向上させることを目指しています。
個人の能力向上
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運動機能訓練:
- 右半身の筋力強化: 右手と右脚の筋力トレーニングを行います。具体的には、軽いダンベルを使用した腕の運動や、バランスボードを用いた脚のトレーニングを行います。リハビリの進捗に合わせて、徐々に負荷を増やしていきます。
- 可動域の拡大: 関節の柔軟性を高めるためのストレッチや、関節可動域運動(ROM運動)を毎日行います。特に、肩関節と股関節の可動域を広げることを重点的に取り組みます。
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認知機能訓練:
- 記憶力の向上: 短期記憶と長期記憶を強化するためのゲームやパズルを活用します。例えば、単語カードを使った記憶トレーニングや、日記を書くことで記憶力を鍛えます。
- 注意力の向上: 注意力を高めるためのタスクを設定します。例えば、集中力を養うためのコンピュータゲームや、複雑な作業を分割して行う訓練を実施します。
環境の最適化
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家庭内での動線の改善:
- バリアフリー化の見直し: 既存のバリアフリー対策を再評価し、必要に応じて改善を行います。例えば、ドアの幅を広げる、段差をなくすなどの改修を行います。
- リハビリ用具の配置変更: 丸山さんが日常的に使用するリハビリ用具を、より使いやすい位置に配置します。例えば、キッチンに置く道具を手の届きやすい位置に移動します。
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社会的サポートの強化:
- 家族への教育: 家族に対して、丸山さんのリハビリを効果的にサポートする方法を教育します。例えば、介助の仕方や励ましの方法について具体的に指導します。
- 地域サポートグループへの参加促進: 地域のサポートグループに参加することで、社会的なつながりを強化し、精神的な支えを得ることができます。金子先生は、適切なグループを紹介し、参加を促します。
作業の適応
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自己管理活動の支援:
- 衣服の着脱補助具の使用方法: 丸山さんが自立して衣服を着脱できるように、補助具の使い方を指導します。例えば、ボタンエイドや靴べらの使い方を練習します。
- 日常生活のサポート: 食事の準備や入浴の際に使用する補助具を紹介し、その使用方法を指導します。
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趣味活動の支援:
- ガーデニング用の補助具導入: ガーデニングを楽しむために、特別な道具や補助具を導入します。例えば、長柄の道具や軽量のじょうろを使用することで、負担を軽減します。
- 作業の適応: 丸山さんが楽しみながらガーデニングを続けられるように、適切な作業計画を立てます。例えば、軽作業の日と重作業の日を交互に設定します。
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社会参加の支援:
- 地域活動への参加: 地域のイベントや活動に積極的に参加するためのサポートを提供します。具体的には、交通手段の手配や活動スケジュールの調整を行います。
- ボランティア活動のサポート: 丸山さんが継続的にボランティア活動を行えるように、必要な準備や支援を提供します。例えば、読み聞かせのための本の選定や、活動後の振り返りを行います。
このように、金子先生のリハビリプランは、丸山さんの個別ニーズに応じた総合的なアプローチを取り入れ、個人、環境、作業の各要素を最適化することで、丸山さんの生活の質を向上させることを目指しています。
リハビリの進行と評価
金子先生と丸山さんは、定期的にリハビリの進行状況を評価し、プランの見直しを行います。
使用する評価バッテリー
- Barthel Index: 日常生活動作の自立度を評価します。丸山さんの評価スコアはリハビリ開始時には40点でしたが、3ヶ月後には65点に改善しました。
- Fugl-Meyer Assessment (FMA): 上肢と下肢の運動機能を評価します。丸山さんの上肢スコアはリハビリ開始時には25点でしたが、3ヶ月後には40点に向上しました。
- Montreal Cognitive Assessment (MoCA): 認知機能を評価します。丸山さんのスコアはリハビリ開始時には18点でしたが、3ヶ月後には23点に上昇しました。
進行中の発展(Ongoing Development)
リハビリの過程で、丸山さんの成長や環境の変化に応じて、金子先生はリハビリプランを動的に適応させ続けます。例えば、新しい趣味や社会活動が見つかれば、それに合わせたリハビリを導入することになります。
このように、金子先生と丸山さんのリハビリテーションは、PEOモデルを活用することで、丸山さんの生活の質を向上させることを目指します。
自費リハビリ立ち上げへのPEOモデル応用
作業療法士金子が自費リハビリ施設を立ち上げるプロセスを、PEOモデル(Person-Environment-Occupation Model)を駆使して展開します。
ステップ1: 準備段階
1.1. 自己評価(Person)
- 専門知識とスキルの評価:
- 金子は自身の専門知識とスキルを評価し、どのようなリハビリテーションサービスを提供できるかを明確にします。例えば、脳卒中後のリハビリや高齢者の生活機能向上を専門としています。
- 金子のキャリア目標は「地域社会の高齢者の生活の質を向上させること」です。この目標を基に、どのようなリハビリサービスを提供するかを検討します。
1.2. 市場調査(Environment)
- ニーズ調査:
- 金子は地域の人口統計を調査し、リハビリを必要とする高齢者や脳卒中後の患者の数を把握します。
- 競合他社のリハビリ施設を分析し、彼らの強みと弱みを特定します。
- 地域の医療機関や介護施設と連携し、実際にどのようなリハビリサービスが求められているかを把握します。
ステップ2: ビジネスプランの策定
2.1. コンセプト設計(Occupation)
- サービスの定義:
- 金子は提供するリハビリテーションサービスの種類を決定します。例えば、個別リハビリ、グループセッション、訪問リハビリなど。
- ターゲットユーザーを特定します。例えば、脳卒中後の患者、高齢者、スポーツ障害のリハビリが必要な人々など。
2.2. ビジネスモデルの決定(Occupation)
- 収益モデルの構築:
- サービスの価格設定を行い、保険適用の範囲やサブスクリプションモデルなど、収益の仕組みを決定します。
- 初期費用と運営費用を見積もり、必要な資金調達方法を検討します。例えば、銀行からのローン、投資家からの資金調達、自己資金など。
ステップ3: 施設の設計と開設準備
3.1. 施設の設計(Environment)
- 物理的環境の整備:
- リハビリテーション施設の設計とレイアウトを計画します。例えば、運動療法室、作業療法室、カウンセリングルームなど。
- 必要なリハビリ機器や器具のリストを作成し、購入します。例えば、歩行訓練装置、エルゴメーター、バランスボードなど。
3.2. 法規制の確認と許可取得(Environment)
- 法的手続き:
- リハビリテーション施設の開設に必要な許可や認証を取得します。例えば、医療機関としての認可、保険適用の認証など。
- 患者のプライバシー保護と施設の安全対策を確保します。例えば、個人情報保護方針の策定、施設内の安全対策の実施。
ステップ4: 人材採用とトレーニング
4.1. 人材採用(Person)
- スタッフの採用:
- 必要なスタッフを採用します。例えば、作業療法士、理学療法士、看護師、受付スタッフなど。
- 採用したスタッフに対する初期トレーニングを実施し、サービスの品質を確保します。例えば、リハビリテーション手法の研修、患者対応のトレーニングなど。
ステップ5: マーケティングとローンチ
5.1. マーケティング戦略の策定(Occupation)
- プロモーション計画:
- 施設の開設を地域に広く知らせるためのマーケティング計画を策定します。例えば、地域の医療機関や介護施設との連携、SNSキャンペーン、チラシの配布など。
- 施設のブランドイメージを確立し、信頼性と魅力を高めます。例えば、ロゴのデザイン、ウェブサイトの作成、顧客の声の収集と公開。
5.2. ローンチイベントの開催(Environment)
- 開設イベント:
- 施設の開設を記念して、地域住民や医療関係者を招待するオープンハウスイベントを開催します。
- 地元メディアに開設イベントを取り上げてもらい、広報活動を行います。
ステップ6: 継続的な運営と改善
6.1. サービスの評価と改善(Occupation)
- フィードバックの収集:
- 利用者からのフィードバックを定期的に収集し、サービスの改善点を特定します。
- フィードバックを基にサービスを継続的に改善し、利用者満足度を高めます。
6.2. 事業の拡大と多角化(Environment)
- 新サービスの導入:
- 施設の成功を基に、新しいリハビリテーションサービスを導入し、事業を拡大します。例えば、オンラインリハビリ、遠隔診療、グループセッションの増設など。
- 地域の医療機関や介護施設との連携を強化し、総合的なリハビリテーションネットワークを構築します。
具体例: 高齢者向け自費リハビリテーション施設「Active Life Rehabilitation Center」の開設
評価(Person & Environment)
- 高齢者のリハビリニーズを地域調査を通じて特定。
- 競合施設の分析を行い、独自のサービス提供の機会を発見。
計画(Occupation)
- 高齢者向けの個別リハビリプログラムとグループエクササイズセッションを提供する施設を設計。
- サブスクリプションモデルを採用し、月額料金でリハビリサービスを提供。
設計と開設準備(Environment & Person)
- バリアフリー設計の施設を選定し、必要なリハビリ機器を購入。
- 法的手続きと許可取得を完了し、安全対策を実施。
人材採用とトレーニング(Person)
- 経験豊富な作業療法士、理学療法士、看護師を採用し、専門的なトレーニングを実施。
マーケティングとローンチ(Environment & Occupation)
- 地域の医療機関や介護施設との提携を確立し、開設イベントを開催。
- SNSや地元メディアを活用した広報活動を展開。
継続的な運営と改善(Occupation & Environment)
- 利用者のフィードバックを基にサービスを改善し、定期的なアップデートを実施。
- 新しいリハビリサービスやオンラインリハビリの導入を検討し、事業を拡大。
このように、作業療法士金子はPEOモデルを活用して、自費リハビリ施設を効果的に計画、設計、開設、運営することができます。
退院後のリハビリは STROKE LABへ
当施設は脳神経疾患や整形外科疾患に対するスペシャリストが皆様のお悩みを解決します。詳しくはHPメニューをご参照ください。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)