パーキンソン病で転んだあと自分で起き上がる方法|原因と対策・自宅でできる工夫
焦らず、順番通りに。転んでも、自分で起き上がれます。
パーキンソン病では、すくみ足やバランスの立て直しにくさから、転んでしまうことがあります。転倒そのものより、「起き上がれない」ことへの不安を抱えている方は少なくありません。原因を知り、正しい順番を体に覚えさせておけば、床からひとりで立ち上がることができます。

「また転んでしまった」その不安に。
転倒そのものだけでなく、そのあと自分でどう起き上がればよいのか分からず、その場で動けなくなってしまう——。この経験をすると、「また転ぶかもしれない」「起き上がれないかもしれない」という不安から、外出や家事を控えてしまい、かえって動く機会が減ってしまうことがあります。
でも、知ってほしいのです。起き上がりには決まった順番があり、それを体に覚えさせておけば、多くの場合ひとりで立ち上がれるということを。
パーキンソン病の転倒は、単に「バランスが悪い」ということだけでは説明できません。すくみ足、姿勢を立て直す反応の遅れ、血圧の変化など、いくつもの要因がその日の体調や場面によって組み合わさって起こります。まずは原因を整理し、そのうえで具体的な起き上がり方を見ていきましょう。転倒予防を含むリハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
転倒の原因を、考える。
パーキンソン病の転倒には、複数の原因が重なって起こるという特徴があります。ひとつに絞り込もうとせず、当てはまるものがないか、いくつも見比べてみてください。
| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| すくみ足 | 歩き出し・方向転換・狭い場所で急に足が止まり、つまずきやすくなる |
| 姿勢反射障害 | バランスを崩した時、とっさに体を立て直す反応が遅れる |
| 突進歩行 | 前のめりの姿勢になり、歩幅が小刻みに速くなって止まれなくなる |
| 起立性低血圧 | 急に立ち上がった時に血圧が下がり、ふらつきや失神が起こる |
| 二重課題の影響 | 歩きながら話す、考えごとをするなど、同時に何かをすると足元がおろそかになる |
| 体の傾き | 前傾や側方への傾きにより、重心の位置がずれてバランスを崩しやすくなる |
| 薬の効果の波 | 薬の効果が切れる時間帯(ウェアリングオフ)に、急に動きにくくなる |
| 環境要因 | 段差、暗い場所、コード類、滑りやすい床など、住まいの中に潜むリスク |
こうした原因は、単独ではなく重なって出ることがほとんどです。「いつ、どこで、何をしていた時に転んだか」を家族と一緒にメモしておくと、自分に多いパターンが見えてきます。パターンが分かれば、次の章の起き上がり方や、環境の工夫を、より的確に選べるようになります。
視覚・聴覚・体性感覚の手がかり(キュー)を使った在宅での歩行練習を検証した多施設共同のランダム化比較試験(RESCUE試験)では、キューを使った練習によって歩行速度や歩幅など、歩行に関連する指標が改善したと報告されています。すくみ足を伴う方への練習の考え方として、広く参照されています。
限界:この研究は歩行そのものを対象にしたもので、転倒回数や起き上がり動作を直接調べたものではありません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。

STROKE LABの視点:起き上がりを「4つの姿勢」に分ける。
転んだ後、一気に立とうとすると、かえって力が入らず動けなくなってしまいます。起き上がりを4つの姿勢に分けて、一つずつ確実に通過するのが、無理なく立ち上がるコツです。
姿勢1:まず止まって、確認する。痛みや出血、動かせない部分がないかを確かめます。頭を打った可能性や強い痛みがあれば、無理に動かず助けを呼びます。ケガがなければ次に進みます。
姿勢2:横向きになる。あお向けやうつ伏せなら、膝を曲げて体をひねり、横向きに転がるようにします。腕で床を軽く押すと、体を返しやすくなります。
姿勢3:四つ這いになる。横向きから、手とひざを床につき、四つ這いの姿勢を作ります。ここで一度呼吸を整え、めまいがないか確認します。
姿勢4:片膝立ちから、安定した家具で立つ。片方の足を前に出して膝を立て(片膝立ち)、近くの安定した椅子やベッド、頑丈な家具に手をかけて、ゆっくり体を起こします。ぐらつく台や、キャスター付きの家具は避けます。
この4つの姿勢は、体操やヨガのポーズにも近く、床に座る機会に軽く練習しておくと体が覚えます。最後の立ち上がりでは、急に立たず、片膝立ちで一呼吸おいてから体を起こすと、起立性低血圧によるふらつきを抑えやすくなります。合う手順や家具の高さは人によって違うので、作業療法士と一緒に確認すると安心です。

練習方法と、環境の工夫。
起き上がりの手順は、実際に転んだその場で初めてやるのではなく、安全な環境で事前に練習しておくことが大切です。柔らかいマットの上で、安定した椅子やベッドのそばに立ち、4つの姿勢を繰り返し確認しておきましょう。「いち、に、さん」と声に出しながら進めると、動作のリズムがつかみやすくなります。
住まいの環境も、転倒と起き上がりのしやすさに大きく関わります。廊下やトイレへの動線に手すりを設置する、滑りにくいマットを敷く、コード類を床に這わせない、といった工夫に加えて、立ち上がりに使える頑丈な家具を、よくいる場所の近くに配置しておくと安心です。転倒時に助けを呼べる電話や、緊急通報のボタンを手の届く場所に置いておくことも、実際の場面で役立ちます。体を動かす習慣は起き上がりの土台にもなるので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。

バランスや筋力、起居動作を含む在宅運動プログラムを、パーキンソン病の方を対象に検証したランダム化比較試験(PDLIFE試験)では、プログラムを行った群で、転倒に関連するバランス能力の指標が対照群より改善したと報告されています。日常的に体を動かす練習の積み重ねが、土台として役立つことを示す結果です。
限界:効果には個人差があり、疾患の進行度や運動の内容によって結果は変わります。運動プログラムは薬の代わりではなく、組み合わせて使うものです。自己流で始めず、専門家の評価を受けたうえで進めることが望まれます。
起き上がりの土台になるのは、日々の体操です。症状や病期に合わせた体操の選び方を、動画つきでまとめています。無理のない範囲で、習慣にしてみてください。
自宅での練習が転んだ後にどう対応するかへの備えだとすれば、専門施設で目指すのはそもそも転びにくい体をつくる回復的アプローチです。原因が複数重なるパーキンソン病の転倒には、大きく3つの方向から働きかけます。
1. キューイングと二重課題への対応。視覚・聴覚・リズムの手がかりを使ってすくみ足を減らし、歩きながら考える場面でも足元が崩れにくいよう段階的に練習します。
2. 姿勢反射とバランスの立て直し。体を押されたり傾いたりした時に、とっさに立て直す反応を引き出す練習を繰り返し、崩れた姿勢からの回復力を高めます。
3. 下肢の筋力と起居動作の土台づくり。立ち上がりやしゃがみ込みを支える下肢の力、床からの起居動作そのものを、繰り返しの運動学習で強化します。
STROKE LABが軸足を置くのは、転倒の原因をひとつに決めつけず、その方に多いパターンを見極めたうえで、複数の角度から練習を組み立てるという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、転倒の状況(いつ、どこで、何をしていたか)を一緒に振り返り、すくみ足、姿勢反射、血圧の変化、環境要因のうち、どれが強く関わっているかを評価します。そのうえで、自宅の家具配置や生活動線に合わせた起き上がりの練習を組み立てます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは動作と生活環境の側から支えます。
受診の目安は、転倒の回数が増えてきた、ケガを伴う転倒があった、立ち上がる時のふらつきが強い、意識が遠のく感じがある、といった場合です。転倒は薬の調整のタイミングとも関わることがあります。自己判断せず、神経内科・主治医に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
よくある質問。
Q. パーキンソン病で転びやすくなるのはなぜですか?
Q. 転んだ直後、すぐに動いてもいいですか?

Q. 一人で起き上がるコツはありますか?
Q. 起き上がるときにふらついて怖いです。どうすればよいですか?
Q. 家族はどのように手伝えばよいですか?

Q. 起き上がりの練習は自宅でできますか?
転倒・起き上がりの相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。転倒の状況やご自宅の環境を一緒に確認し、原因の見極めから、起き上がりの練習、住まいの工夫まで、その方に合わせて組み立てます。実際に困っている場面を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、動作と環境の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
起居動作や姿勢反射を含む運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
その自信を、取り戻す。

転倒そのものより、「起き上がれないかもしれない」という不安のほうが、外出や家事を控えさせてしまうことがあります。そのために生活が縮こまってしまうのを、たくさん見てきました。
お伝えしたいのは、起き上がりには順番があり、それを体に覚えさせておけば、多くの場合ひとりで対応できるということです。原因を知り、手順を練習しておけば、「また転ぶかもしれない」という不安は、少しずつ小さくできます。
転倒や起き上がりでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。ご自宅の環境と動作の両方から、その方に合う方法を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。転倒やケガが疑われる場合は、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月22日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Nieuwboer A, Kwakkel G, Rochester L, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140.(キューを使った在宅練習で歩行関連指標が改善したと報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
- Ashburn A, Fazakarley L, Ballinger C, Pickering R, McLellan LD, Fitton C. A randomised controlled trial of a home based exercise programme to reduce the risk of falling among people with Parkinson’s disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(7):678-684.(在宅運動プログラムで転倒関連のバランス指標が改善したと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)