パーキンソン病で車いすを使い始める目安|原因と対策・自宅でできる工夫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

パーキンソン病で車いすを使い始める目安|原因と対策・自宅でできる工夫

WHEN TO USE A WHEELCHAIR

車いすは、引退ではなく配置転換です。

「車いすを検討しましょう」と言われた日、多くの方が「もう歩けなくなるのか」とショックを受けます。でも実際には、場面によって車いすと歩行を使い分け、歩く力そのものは自宅で守り続けている方がたくさんいます。導入の目安と、原因、自宅でできる工夫を整理します。

UPDATED2026
READ約11分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。歩行の困難さには複数の原因が重なっていることが多く、対策も人によって異なります。気になる変化は自己判断せず、神経内科・主治医で確認してください。

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
歩きにくさの背景には、運動症状だけでなく複数の原因が重なっていることが多いです
02
転倒の増加・歩行距離の急な低下・生活範囲の縮小が導入検討の目安になります
03
「歩行か車いすか」の二択ではなく、場面によって使い分けるのが現実的です
04
すくみ足には、床の目印やリズムなどの合図(キュー)が助けになることがあります
05
導入のタイミングと安全性は、自己判断せず主治医・理学療法士と一緒に決めましょう
01
A Difficult Suggestion

「車いすを、検討しましょう」

A Family’s Voice
「まだ自分で歩けるのに、車いすなんて」

診察で車いすの話が出た瞬間、頭が真っ白になった、という方は少なくありません。転倒が増えてケガが心配な一方で、「歩く力を諦めることになるのでは」という不安や、「情けない」という気持ちがせめぎ合います。ご家族も、勧めるべきか見守るべきか迷うことがあります。

でも、知ってほしいのです。車いすは歩く力を手放す道具ではなく、危ない場面を安全にし、行ける場所を増やすための選択肢だということを。

パーキンソン病の歩行の困りごとは、進行の程度だけでなく、その日の薬の効き方や体調によっても変わります。だからこそ「歩けるか、歩けないか」の一択ではなく、場面ごとに安全な移動手段を選ぶという考え方が役に立ちます。まずは、歩きにくさの背景にある原因を整理してみましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
Why Walking Gets Harder

歩きにくくなる、いくつもの原因。

パーキンソン病で歩行が難しくなる理由は、ひとつではありません。運動症状・薬の効き方・自律神経・体力・心理面が絡み合って、その日ごとに歩きやすさが変わります。原因によって対策も変わるため、まずは何が影響しているかを知ることが大切です。

原因 どういうことか
すくみ足 足が床に貼りついたように出ない。歩き始め・曲がり角・戸口で起こりやすい
姿勢反射障害 バランスを崩したときに立て直しにくく、転倒につながりやすい
加速歩行 前のめりになり、歩幅が小さいまま歩みが速くなって止まれなくなる
ウェアリングオフ 薬の効果が切れる時間帯に、急に動きにくくなることがある
起立性低血圧 立ち上がったときに血圧が下がり、ふらつきや失神で転倒することがある
疲労・体力低下 外出が続くと疲れやすく、後半に歩行が崩れやすくなる
二重課題困難・不安 考え事や会話をしながら歩くと転びやすくなる。転倒への恐怖が動きを固くすることもある

ここで大切なのは、「歩けない」のではなく「どの場面で・どの原因が強く出ているか」で対策が変わるという視点です。すくみ足が主な原因なら合図の工夫が効きますし、疲労が主な原因なら長距離だけ車いすを使う、という組み合わせが現実的です。次の章で、導入を検討する具体的な目安を見ていきます。

03
Signs To Watch

導入を検討する、目安。

「この状態になったら車いす」という明確な線引きはありません。ただし、次のような変化が重なってきたときは、主治医や理学療法士に相談するタイミングといえます。

Checklist

転倒が増えた、またはヒヤリとする場面が増えた。特にケガを伴う転倒があった場合は、早めの相談が安心です。

歩ける距離が、以前より急に短くなった。数週間〜数か月の単位で、明らかに歩行距離が落ちている。

すくみ足で動けなくなる場面が増えた。特に人混みや慣れない場所で、立ち往生する時間が長くなっている。

外出時の疲労が強く、生活範囲が狭くなっている。疲れを理由に、外出そのものを避けるようになった。

見守るご家族の負担が大きくなっている。付き添いが常に必要で、ご家族の心身の負担も無視できない状態になっている。

これらはどれかひとつで決めるものではなく、生活の中でどこに困りごとが集中しているかを見るための手がかりです。また、車いすの導入は「歩くのをやめる」ことと同じではありません。長い距離や疲れる外出だけ車いすに任せ、自宅内や短い距離は歩行を続けるという、ハイブリッドな運用を選ぶ方も多くいます。

04
Keep Walking Safely At Home

STROKE LABの視点:歩く力は、自宅で守る。

車いすを取り入れても、自宅で安全に歩ける環境を整えておけば、歩く力そのものを保ちやすくなります。すくみ足や転倒への対策として、今日から自宅でできる工夫を3つの視点で整理します。

Three Focus Points

1. 目印を置く(視覚のキュー)。すくみ足が出やすい戸口や曲がり角の床に、テープで線を貼っておくと、またぐ動作のきっかけになり足が出やすくなります。

2. リズムをとる(聴覚のキュー)。「いち、に」と声に出す、一定のテンポの音楽に合わせる、といった方法で歩幅とリズムが整いやすくなります。急な方向転換の前に、一度立ち止まってから向きを変えるのも効果的です。

3. 環境を整える。敷物や電源コードなどのつまずきの原因を取り除き、通路の幅を広くとります。夜間はセンサーライトなどで足元を明るくしておくと安心です。

また、立ちくらみが原因のひとつであれば、立ち上がる前に一呼吸おく、水分をこまめにとる、といった対策も有効な場合があります。原因によって対策の優先順位は変わるため、どの工夫から始めるとよいかは、理学療法士と一緒に確認すると近道です。体を動かす習慣づくりには体操・自主トレ大全もあわせてご活用ください。

Evidence
キューを使った歩行トレーニングで、生活での歩行能力が改善した研究

視覚・聴覚・体性感覚の合図(キュー)を使った在宅での歩行トレーニングを検証した大規模な無作為化比較試験(RESCUE試験)では、キューを使った練習を行った群で、歩行速度やすくみ足に関連する生活上の困りごとが改善したと報告されています。

限界:効果には個人差があり、進行の程度や併存する症状によって変動します。キューイングは薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。本記事の引用はAIが要約したものであり、正確な内容は一次文献でご確認ください。

出典:Nieuwboer A, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140
歩けなくなったら車いす、ではありません。安全な場面と道具を、先に選んでおくのです。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、その先の個別評価にもとづく歩行トレーニングまで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
「その人にとって何が主な原因か」を見極めることから始めます。

歩きにくさの原因は人によって組み合わせが異なるため、専門施設ではまず歩行・バランス・すくみ足・血圧の変動などを個別に評価し、その方に合った優先順位を立てます。働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。

1. キューイングの個別調整。視覚・聴覚・体性感覚のどのキューがいちばん効くかを見極め、実際の生活動線で練習します。

2. バランス・姿勢反射の訓練。崩れたバランスを立て直す力を、安全な環境で段階的に鍛えます。

3. 生活場面での使い分け設計。どの場面を歩行で、どの場面を車いすで行うか、疲労や薬の効き方も踏まえて一緒に組み立てます。

STROKE LABが大切にしているのは、車いすを「負け」にしないことです。安全な移動手段を確保したうえで、歩く力を維持する練習を並行して行う。この両輪の設計が、生活の範囲を狭めないための鍵になります。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。

Evidence
個別化された転倒予防プログラムに関する研究

転倒歴のあるパーキンソン病患者を対象とした在宅運動プログラムの無作為化比較試験(PDSAFE試験)では、対象者全体での転倒率に明確な差は見られなかった一方、病期が中等度までの層では転倒が減る傾向が示されたと報告されています。この結果は、画一的なプログラムではなく、病期や個々の原因に応じた個別化の重要性を示すものと考えられています。

限界:全体としての効果は限定的であり、誰にでも同じ効果が期待できるわけではありません。転倒予防は運動プログラムだけでなく、環境調整や薬の管理とあわせて考える必要があります。本記事の引用はAIが要約したものであり、正確な内容は一次文献でご確認ください。

出典:Ashburn A, et al. Effectiveness of a home-based exercise programme to reduce falls in people with Parkinson’s disease (PDSAFE): multicentre randomised controlled trial. BMJ. 2019;364:l1004

Watch & Practice
バランスと歩行の体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、バランスや歩行に関わる体操を配信しています。歩く力の土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。

バランス・歩行体操を見る

05
Choosing A Wheelchair

車いすの、選び方と受診の目安。

車いすには、自分でこぐ自走式と、ご家族などが押す介助式があります。どの場面で、誰が操作するかによって向き不向きが変わります。また、パーキンソン病では体が前かがみになりやすいため、座面の硬さ・背もたれの角度・フットレストの高さを、実際の姿勢に合わせて調整することが重要です。合わない車いすは、かえって姿勢を崩す原因にもなります。

選ぶ際は、福祉用具の専門相談員やケアマネジャー、理学療法士に相談し、実際に座って試すことをおすすめします。介護保険を使ったレンタルという選択肢もあるため、まずは主治医やケアマネジャーに使える制度を確認してみてください。

受診・相談の目安は、転倒でケガをした、歩行の変化が急に大きくなった、ウェアリングオフの時間帯の動きにくさが強くなった、といったときです。歩行の変化の原因は複数考えられるため、自己判断せず神経内科で確認してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. 車いすを勧められました。もう歩けなくなるということですか?

そうとは限りません。車いすは歩く力を諦めるための道具ではなく、転倒しやすい場面や疲れやすい長距離の外出などで安全に動くための選択肢のひとつです。自宅では歩く練習を続けながら、外出時だけ車いすを使うというように、場面で使い分けている方も多くいます。不安な場合は主治医や理学療法士に相談してください。

Q. 車いすを検討する目安はありますか?

転倒が増えた、歩ける距離が急に短くなった、すくみ足で動けなくなる場面が増えた、外出時の疲労で生活範囲が狭くなっている、といった変化が目安になります。ひとつでも当てはまれば車いすが必要という単純な話ではなく、生活の中でどこに困りごとが集中しているかを、主治医や理学療法士と一緒に確認することが大切です。

Q. 歩きにくさの原因はひとつではないのですか?

はい、複数の原因が重なっていることが多いです。動作緩慢やすくみ足、姿勢反射障害といった運動症状に加えて、薬の効果が切れる時間帯の動きにくさ、立ちくらみを起こす血圧の変動、疲労、転倒への恐怖感なども歩行に影響します。原因によって対策も変わるため、自己判断せず、まず神経内科で状態を確認することをおすすめします。

Q. 車いすを使い始めても、歩く練習は続けたほうがよいですか?

多くの場合、続けることが勧められます。長距離の移動や疲れやすい外出は車いすに任せ、自宅内や短い距離は安全な環境を整えたうえで歩く、というように使い分けると、歩く力を保ちやすくなります。どこまで歩行を続けてよいかは、転倒リスクや体力によって個人差が大きいため、理学療法士と相談しながら決めるのが安心です。

Q. 自宅でできる転倒対策はありますか?

あります。すくみ足が出やすい曲がり角や戸口に目印のテープを貼る、床の敷物や段差を減らす、リズムをとりながら歩く、急に振り返らない、といった工夫が助けになります。すくみ足には、目印や合図(キュー)を使うと足が出やすくなるという報告もあります。あわせて、立ち上がりや方向転換をゆっくり行うことも転倒予防につながります。

Q. 車いすはどう選べばよいですか?

自分でこげる自走式か、介助してもらう介助式か、使う場面によって選び方が変わります。パーキンソン病では姿勢が前かがみになりやすいため、座面や背もたれ、フットレストの高さを体に合わせて調整することが大切です。福祉用具の専門相談員や理学療法士に、実際に座って試したうえで選ぶことをおすすめします。
07
STROKE LAB

歩行・移動の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。歩行・バランス・すくみ足・転倒歴を個別に評価し、生活場面に合わせた歩行練習と、安全な移動手段の使い分けを一緒に組み立てます。薬の調整は主治医を尊重し、動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
車いすは、行ける場所を
増やすための道具です。
STROKE LAB代表 金子唯史

車いすを勧められた日のことを、ご本人もご家族も長く覚えています。「もう終わりだ」という言葉を、これまで何度も聞いてきました。でも実際に関わってきた多くの方が、車いすを取り入れたあとも、自宅では歩く練習を続け、行動範囲をむしろ広げています。

お伝えしたいのは、車いすは歩く力の終わりではなく、安全な選択肢がひとつ増えるということです。原因を丁寧に見極めれば、まだできる工夫はたくさん残っています。

導入のタイミングや、歩行と車いすの使い分けでお悩みなら、どうぞ一度ご相談ください。生活の場面をひとつずつ確認しながら、その方に合う形を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。歩行の困難さには複数の原因が重なっていることが多く、対策は人によって異なります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年7月10日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
  • Nieuwboer A, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140.(在宅でのキューイング歩行トレーニングが、歩行速度やすくみ足関連の生活上の困りごとを改善したと報告。第4章エビデンスボックスの出典)
  • Ashburn A, et al. Effectiveness of a home-based exercise programme to reduce falls in people with Parkinson’s disease (PDSAFE): multicentre randomised controlled trial. BMJ. 2019;364:l1004.(個別化された転倒予防プログラムの効果と限界を示した報告。第4章エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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