パーキンソン病で趣味の会を続けたい|原因と対策・自宅でできる工夫
やめるのではなく、やり方を変える。
好きだった趣味の会に、以前のようには通えなくなってきた。手先が思うように動かず、ついていけない気がする——。パーキンソン病では、趣味そのものが嫌いになったわけではなく、続け方が合わなくなっているだけのことがよくあります。原因を分けて考え、今日から自宅でできる備え方を整理します。

気づけば、足が遠のいていた。
長年通っていた趣味の会。以前は当たり前にできていた細かい作業が、思うようにいかなくなってきた。周りのペースについていけない気がして、休む理由を探すようになってしまった——。長く続けてきたものだからこそ、うまくいかない自分を見せたくない、という気持ちを抱える方は少なくありません。
でも、知ってほしいのです。趣味そのものが嫌いになったのではなく、以前と同じやり方が合わなくなっているだけだということを。
パーキンソン病では、指先の細かい動きがゆっくりになる、力の加減が難しくなる、疲れやすくなるといった変化が起こることがあります。これらが積み重なって、大好きだったはずの趣味の会から、少しずつ足が遠のいてしまうことがあります。まずはその原因を整理し、そのうえで今日からできる備え方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
続けにくくなる、原因。
趣味を続けにくくなる背景には、ひとつの原因ではなく、いくつかの要因が重なっていることがほとんどです。原因ごとに対策は違うため、自分がどれに当てはまるかを整理することが、続けるための近道になります。
| 原因の分類 | 具体的にどう感じるか |
|---|---|
| 手指の動作 | 細かい作業に時間がかかる、力の加減が難しく震えが作業に出る |
| ペースへの不安 | グループの進み方についていけない、迷惑をかけている気がする |
| 体力・変動 | 長時間座っていると疲れる、薬のオン・オフで予定が立てにくい |
| 心理・非運動症状 | アパシー(意欲の起こりにくさ)、以前の自分と比べてしまうつらさ |
とくに見落とされやすいのが、「以前できたことができない」という比較が、意欲そのものを奪ってしまうケースです。動作の変化そのものより、その変化をどう受け止めるかが、続けられるかどうかを左右することもあります。原因が見えると、次に何をすればよいかが見えてきます。

STROKE LABの視点:3つの「置き換え」で続ける。
趣味を「以前と同じやり方で続ける」ことにこだわると、負担ばかりが大きくなります。道具・役割・参加時間の3つを、今の自分に合う形に置き換えることで、同じ趣味を違う形で続けられることが少なくありません。
置き換え1:道具を替える。太めのグリップの筆や針、滑り止めのついた作業台など、少ない力でも扱いやすい道具に替えると、作業そのものがぐっと楽になります。
置き換え2:役割を替える。細かい作業が難しいときは、準備や片付け、進行のサポートなど、今の自分にできる役割を担当させてもらう相談をしてみてください。会に関わり続けること自体に価値があります。
置き換え3:参加時間を替える。最初から全時間に無理に参加せず、前半だけ、体調のよい日だけ、といった部分参加から始めるのも一つの方法です。「行ける範囲で行く」を、会の世話役と共有しておくと気が楽になります。
3つすべてを一度に変える必要はありません。まずは1つ、次の会で試してみてください。大切なのは、「以前と同じにできるか」ではなく「今の自分がどう関わり続けられるか」に目を向けることです。合う置き換え方は人それぞれなので、作業療法士と一緒に調整すると近道です。

趣味別の工夫と、伝え方。
置き換えの考え方は、趣味の種類によって具体的な形が変わります。書道や手芸なら太めの道具と大きめの目印、園芸なら立ったまま作業できる台の高さの調整、麻雀やカードゲームなら牌や札を持ちやすい傾斜台といったように、それぞれに合う工夫があります。
薬が効きやすい時間帯に会の予定を合わせることも、当日の負担を大きく減らします。服薬記録をつけておくと、動きやすい時間帯が見えやすくなります。運動で手や体を動かしておくと、趣味の動作自体も安定しやすくなるので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。会の仲間には、動作がゆっくりになること、休みながら参加することがあるが気持ちは変わらないことを、短く伝えておくと、気持ちが楽になります。
パーキンソン病の方を対象に、手芸・園芸・楽器演奏といった手指を使う余暇活動と生活の質の関係を調べた調査では、こうした活動を続けている人ほど、生活の質の指標がより保たれている傾向が報告されています。
限界:これは観察研究であり、活動を続けたことが直接の原因とは言い切れません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。趣味の継続は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて取り入れるものです。
自宅での工夫が、道具や役割を置き換えて負担を減らす代償的な対応だとすれば、専門施設で目指すのは、手指や姿勢の動きそのものを底上げする回復的アプローチです。趣味の継続への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 手指の巧緻性。細かい動作を繰り返し練習し、道具に頼るだけでなく、動作そのものの正確さを取り戻していきます。
2. 姿勢・持久力の土台。長時間の作業を支える座位の安定や体力を整え、疲れにくい体の使い方を身につけます。
3. 動作学習としての反復。実際の趣味の動作そのものを課題として取り入れ、成功体験を積みながら、会でも通用する動きに近づけていきます。
STROKE LABが軸足を置くのは、趣味そのものを練習の題材にし、生活の場でも通用する動作に育てていくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。
パーキンソン病の方を対象に、実際の生活動作に近い課題を反復して練習する作業療法プログラムを検証した研究では、通常のケアのみの群と比べて、手を使った日常的な作業能力の指標が有意に改善したと報告されています。実際の活動そのものを練習に取り入れる考え方を支持するデータです。
限界:対象となった作業は日常生活動作が中心で、趣味活動そのものを対象にした研究ではありません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。作業療法は薬の代わりではなく、組み合わせて使うものです。

脳リハ.comのYouTubeでは、手指の巧緻性や姿勢を整える体操を配信しています。趣味を続けるための土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、その人が実際に続けたい趣味の場面を一緒に確認し、道具、姿勢、動作の手順を、その人に合わせて調整します。「続けたい趣味」を練習の題材にすると、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは身体面と生活の側から支えます。
受診の目安は、趣味への関心そのものが数週間以上続いて湧かない、以前は楽しめていたことに興味が持てなくなった、気分の落ち込みが強い、といったときです。意欲の低下は、本人の性格や気持ちの問題だけとは限りません。自己判断せず、神経内科で相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 手先を使う趣味が、以前のように上手にできなくなりました。もうやめたほうがよいのでしょうか?
Q. グループのペースについていけず、迷惑をかけている気がして行きづらいです。

Q. 長時間の活動だと途中で疲れてしまい、最後までいられません。
Q. 手が震えて、細かい作業や書く作業に自信が持てません。
Q. 趣味の会に行く意欲そのものが湧きません。これも病気と関係がありますか?
Q. 趣味を続けること自体に、リハビリとしての意味はありますか?
趣味の継続は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。続けたい趣味の場面を一緒に確認し、手指の動作・姿勢・体力の面から、その人に合わせて組み立てます。書道、手芸、園芸、麻雀など、実際の活動を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、身体面と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
形を変えて続けられます。

長年続けてきた趣味だからこそ、うまくいかない自分を見せたくない——その気持ちに、たくさん向き合ってきました。「本当は続けたいのに」という言葉を、何度も聞いてきました。
お伝えしたいのは、道具や役割、参加の仕方を少し変えるだけで、同じ趣味を違う形で続けられるということです。以前と同じでなくていい。今の自分の形で、一緒に続け方を探していきましょう。
趣味の会でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。続けたい活動そのものを題材に、その方に合う関わり方を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。趣味を続けにくくなる背景には複数の原因が絡みます。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月31日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Cheng ST, et al. Leisure activities and quality of life in Parkinson’s disease. Parkinsonism Relat Disord. 2015;21(5):492-497.(手指を使う余暇活動を続けている人ほど生活の質が保たれる傾向を報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
- Sturkenboom IH, et al. Efficacy of occupational therapy for patients with Parkinson’s disease: a randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2014;13(6):557-566.(課題志向型の作業療法が手を使った日常的な作業能力を改善させたと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)