パーキンソン病で会議での発言がしづらい|原因と対策・自宅でできる工夫
静かなのは、やる気がないからではありません。
会議で発言しようとすると、声が届かない、割り込めない、言葉が続かない。それはパーキンソン病でみられる、発声や会話のしくみの変化かもしれません。一対一なら話せるのに、会議になると急に話しにくくなるのには理由があります。しくみと、今日から試せる自宅の工夫を整理します。

「聞こえない」と、言われた。
以前は自分から発言できていたのに、会議になると声が小さくなり、何度も聞き返される。話そうとするタイミングをつかもうとしているうちに、話題はもう次に進んでいる——。特に大人数の場や、オンライン会議、雑談が飛び交う場面で、この変化を強く感じる方は少なくありません。
でも、知ってほしいのです。これは声の力や意欲の問題ではなく、パーキンソン病でみられる発声・発話のしくみの変化であり、事前の準備と場の整え方で、ぐっと話しやすくなるということを。
パーキンソン病では、声を出す・言葉を発するという動作そのものが、少しずつ小さく・遅くなることがあります。加えて、会議には「聞く・考える・声を出す」を同時にこなす負荷が重なります。まずはしくみを知り、そのうえで具体的な立て直し方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
会議で話しにくくなる、しくみ。
会議での話しにくさは、ひとつの原因ではなく、いくつかの変化が重なって起こることがほとんどです。震えとは別のしくみで起こる点が大切で、混同すると対処を間違えてしまいます。代表的な特徴を整理しておきましょう。
| 特徴 | どういうことか |
|---|---|
| 声が小さくなる | 声帯や呼吸を支える筋肉の動きが小さくなり、本人が思うより声が届いていない |
| 話し出しが遅れる | 言葉を発するタイミングで動きが止まりやすく、割り込むきっかけをつかみにくい |
| 表情や抑揚が乏しくなる | 声の高低や表情の変化が少なくなり、聞き手には「関心がない」と誤解されやすい |
| 同時処理が難しくなる | 聞く・考える・声を出すを同時に行う場面で、症状がより強く出やすい |
ここに、立て直しのヒントが隠れています。声が届きにくいなら、声を届ける準備をすればよい。同時処理が苦手なら、あらかじめ考える負担を減らしておけばよい。次の章から、この考え方を具体的な手順にしていきます。

STROKE LABの視点:会議を「準備付き」に変える。
会議での話しにくさへの対処でいちばん手早く効くのが、その場ですべてを行おうとせず、あらかじめ準備をしておくことです。準備があると、その場で抱え込む負担が減り、声も言葉も出やすくなります。自宅で会議の前に、次の3ステップを試してみてください。
ステップ1:声の準備をする。会議の少し前に、「あー」と大きな声を長く伸ばして出す、数字を大きな声で数える、といった発声練習をしておきます。声帯と呼吸の準備運動になります。
ステップ2:内容の準備をする。話したいことを、あらかじめ短い言葉でメモしておきます。その場で考えながら声を出す、という同時処理の負担を減らせます。
ステップ3:環境の準備をする。発言しやすい席に座る、進行役に「少し待ってほしい」と伝えておく、オンラインならチャット機能も併用する。周囲の理解も、立派な準備のひとつです。
大切なのは、事前の準備によって、その場で「聞く・考える・話す」を同時に抱え込まなくて済むようにすること。準備に慣れてきたら、少しずつメモを減らし、即興での発言にも近づけていきます。合う準備の仕方は人それぞれなので、言語聴覚士や作業療法士と一緒に調整すると近道です。

話し方と、環境のコツ。
準備を整えたら、話し方と場の環境でさらに伝わりやすくなります。合言葉は「ゆっくり、はっきり、大きく」。話す前に一呼吸置くことが何より大切です。

話すときは、いつもより大きく息を吸ってから話し始める、一文を短く区切る、語尾まで力を抜かずに話す、といった工夫が助けになります。声を出す前に一呼吸置くことで、話し出しの遅れをやわらげられることもあります。環境面では、雑音の少ない場所を選ぶ、相手との距離を近くする、聞き返されても慌てず繰り返す、といった工夫も効果的です。オンライン会議では、マイクに近い位置に座る、映像をオンにして表情も一緒に伝える、発言する前にチャットで合図を送る、といった方法も試せます。声を支える体幹や呼吸を整えておくと話しやすさも安定するので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。

パーキンソン病の方を、集中的な発声訓練を行う群と、呼吸訓練のみを行う群に無作為に分けて比較した研究では、発声訓練を受けた群は声の大きさの改善が、2年後の追跡調査でも維持されていたと報告されています。
限界:33名を対象とした研究で、対象人数は多くありません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。この研究の訓練は、専門家の指導のもとで行う集中的なプログラムであり、発声練習は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
自宅での工夫が、事前準備によってその場の負担を減らす代償だとすれば、専門施設で目指すのは、準備が少なくても声と言葉が出せる状態に近づける回復的アプローチです。会議での話しにくさへの働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 集中的な発声トレーニング。声の大きさに焦点をあてた専門的なプログラムを、決められた頻度と負荷で繰り返し、脳が縮めてしまう発声の幅を立て直します。
2. 同時処理の練習。聞く・考える・話すを同時に行う、会議特有の負荷に近い状況をあえて作り、少しずつ慣れていく練習を行います。
3. 姿勢と呼吸の土台。声を支える体幹の安定や呼吸機能を整え、会議のような長時間・緊張する場面でも声が崩れにくい身体の下地をつくります。
STROKE LABが軸足を置くのは、専門的な発声・会話の練習で成功体験を積みながら、少しずつ準備の量を減らして身につけていくという流れです。準備がなくても話せるように近づけていく、その設計を専門的に組み立てます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。
パーキンソン病の方45名を対象にした研究では、決められた文章を読む場面より、自由に会話をする場面のほうが聞き取りにくさが大きく、その場でとっさに言葉を組み立てる負荷の大きさが影響していると考察されています。あわせて、聞き手は話し手の感情も読み取りにくく感じ、それは話し手の認知機能の状態と関連していたとも報告されており、会議のような即興的な場面が特に難しくなりやすいこと、また表情や抑揚の乏しさが誤解を招きやすいことを裏づけています。
限界:関連を示した横断研究であり、原因と結果を直接示すものではありません。認知症の診断がある方は対象に含まれておらず、すべての方にあてはまるとは限りません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。
脳リハ.comのYouTubeでは、姿勢や呼吸を整える体操を配信しています。声の土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、その人が実際に困っている場面(職場の会議、家族との相談ごと、電話での応対など)を一緒に確認し、声の出し方、話す速さ、準備の仕方を、その人に合わせて調整します。「実際に困っている場面」を練習の題材にすると、生活にそのまま活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは発声・会話動作と生活の側から支えます。
受診の目安は、声や会話の変化で生活や仕事に支障が出てきた、話しにくさに加えて動きにくさやこわばりが出てきた、飲み込みにくさも気になり始めた、といったときです。声が小さくなる原因はパーキンソン病だけとは限りません。自己判断せず、神経内科で原因を確かめてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 会議になると急に声が小さくなるのは、パーキンソン病のせいですか?
Q. 一対一では話せるのに、大人数だと話せないのはなぜですか?

Q. 自宅でできる発声・会話の練習はありますか?

Q. 無表情に見えると言われます。やる気がないわけではないのに、どうすればいいですか?
Q. オンライン会議ではどんな工夫ができますか?
Q. 発声の練習で本当に良くなりますか?
会話・発声の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。困っている発言・会話の場面を一緒に確認し、声の出し方・準備の仕方・環境の整え方を、その人に合わせて組み立てます。職場の会議や家族との相談ごとなど、実際の場面を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、発声・会話動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
ひとりで抱えなくて大丈夫です。

会議で発言できなくなると、「やる気がないと思われているのでは」「もう自分の意見は求められていないのでは」と、気持ちが沈んでいくことがあります。声が届かないつらさに、たくさん出会ってきました。
お伝えしたいのは、その場ですべてをこなそうとせず、事前に少し準備するだけで、驚くほど話しやすくなることがあるということです。声の準備、内容の準備、環境の準備。ちょっとした工夫で、話せる場面はまだまだ広がります。
会話や発声でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを題材に、その方に合う話し方を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。話しにくさには他の原因もあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年9月3日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Ramig LO, Sapir S, Countryman S, et al. Intensive voice treatment (LSVT) for patients with Parkinson’s disease: a 2 year follow up. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2001;71(4):493-498.(集中的な発声訓練群が、呼吸訓練群と比べて声の大きさの改善を2年後も維持していたと報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
- Barnish MS, Horton SMC, Butterfint ZR, Clark AB, Atkinson RA, Deane KHO. Speech and communication in Parkinson’s disease: a cross-sectional exploratory study in the UK. BMJ Open. 2017.(自由な会話は決まった文を読む場面より聞き取りにくく、聞き手は感情の読み取りも難しく感じ、それが話し手の認知機能の状態と関連していたと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)