パーキンソン病で仕事を続けるための制度|傷病手当・障害年金
辞める前に、使える制度があります。
パーキンソン病と診断されたとき、多くの方がまず心配するのは「この仕事を続けられるだろうか」ということです。傷病手当金・障害年金・両立支援制度は、退職を決める前に検討できる選択肢です。それぞれの制度がどんな場面で役に立つのか、順番に整理します。

「続けられるだろうか」と、思った。
パーキンソン病という言葉よりも先に、収入や住宅ローン、家族の生活のことが浮かんだ。そんな方は少なくありません。動きにくさが増していく病気だと知り、「いつか働けなくなる」という不安だけが先に膨らんでしまうこともあります。
でも、知ってほしいのです。仕事を続けるための制度は、辞めることを前提にした制度ではないということを。
日本には、治療のために一時的に休む人を支える傷病手当金、働きながらでも申請できる障害年金、治療と仕事の両立そのものを支える制度など、段階に応じて使える仕組みがいくつもあります。まずはそれぞれの制度がどんな場面のためにあるのかを知ることから始めましょう。運動面のリハビリについてはリハビリ完全ガイドもあわせてご覧ください。
傷病手当金の、しくみ。
傷病手当金は、会社の健康保険に入っている人が、業務外の病気で働けなくなったときに、休んでいる間の生活を支える制度です。パーキンソン病の治療や体調の調整のために一時的に休職する場合に使えます。
| 項目 | 内容の目安 |
|---|---|
| 対象になる人 | 会社の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に加入している被保険者本人 |
| 主な条件 | 業務外の病気で療養中であり、連続3日間を含み4日以上仕事を休み、給与の支払いがない、または少ないこと |
| 支給額の目安 | 直近12か月の標準報酬月額の平均÷30日×3分の2が1日あたりの目安額 |
| 支給期間 | 支給開始日から通算して1年6か月(同じ病気であれば復職期間をはさんでも通算可能) |
たとえば、直近12か月の標準報酬月額の平均が26万円だった場合、1日あたりの支給額はおよそ5,780円が目安になります。実際の金額や年度ごとの改定内容は、加入している健康保険組合または協会けんぽの窓口で確認してください。申請には、事業主の証明と主治医の意見書が必要です。会社を通さず本人が直接申請することも可能です。

STROKE LABの視点:制度は「点」でなく「線」で使う。
制度は、どれか一つを選んで終わりではありません。病気とのつきあい方が変わるタイミングごとに、使う制度も変わっていくという視点を持つと、見通しが立てやすくなります。時系列で3つの場面に分けて整理します。
場面1:治療に専念するために休む|傷病手当金。薬の調整や体調の見直しで一時的に休職が必要なとき、生活を支える土台になります。復職を前提に、期限を意識しながら使う制度です。
場面2:働きながら症状と向き合う|障害厚生年金。症状が進み、仕事に制限が出てきても、退職しなければ申請できないわけではありません。3級であれば、就労を続けながら受給できる可能性があります。
場面3:働き方そのものを見直す|両立支援制度。業務内容や勤務時間の調整、障害者雇用への切り替えなど、辞めずに働き方を変える選択肢を、産業医やハローワークと一緒に探る段階です。
この3つは、必ずしも順番通りに進むわけではありません。診断された時点で場面3の相談から始める方もいますし、場面1と場面2が重なる時期もあります。大切なのは、今の自分がどの場面に近いかを知り、そこに合う窓口へ早めにつながることです。次の章では、場面2の中心となる障害年金を詳しく見ていきます。

障害年金の、しくみ。
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に一定の制限が出た人を支える公的年金です。パーキンソン病でも、症状の程度によって受給している方は多くいます。どの年金が対象になるかは、初診日にどの制度に加入していたかで決まります。

| 項目 | 内容の目安 |
|---|---|
| 障害基礎年金 | 初診日に国民年金加入中だった人が対象。1級・2級のみで、3級はない |
| 障害厚生年金 | 初診日に厚生年金加入中(会社員など)だった人が対象。1級から3級まであり、3級は働きながらでも認定される可能性がある |
| 初診日・保険料要件 | パーキンソン病の症状で初めて医師の診察を受けた日が基準。その時点までの保険料納付状況も審査される |
| 障害認定日 | 原則、初診日から1年6か月を経過した日。この時点の障害の程度で等級が判定される |
等級の判断は、日常生活や仕事にどれだけの制限があるかを、医師の診断書や本人が記入する申立書から総合的に見て行われます。「働けている」という事実だけで不支給になるわけではありません。障害厚生年金の3級は「労働に著しい制限を受ける、または労働に制限を加えることを必要とする程度」という基準で、仕事を続けながら受給している方の事例も報告されています。年金額は、基礎年金は定額、厚生年金は過去の報酬に応じて変わり、1級は2級のおよそ1.25倍とされています。具体的な金額は年度によって改定されるため、日本年金機構の窓口で最新の内容を確認してください。
同じ病気を理由に障害厚生年金を受けられるようになると、傷病手当金は原則として支給が停止されます。ただし、障害厚生年金を日額に換算した額よりも傷病手当金の日額のほうが多い場合は、その差額が支給される調整のしくみがあります。

限界:調整方法は個々の加入状況で変わり、健康保険組合によって取り扱いが異なる場合もあります。休職と障害年金の申請時期が近い場合は、必ず事前に健康保険組合・年金事務所の双方に確認してください。
パーキンソン病と診断されると、ホーン・ヤールの重症度分類が3度以上で、生活機能障害度が2度以上の場合、通院・薬にかかる医療費の自己負担が軽減される難病医療費助成の対象になります。
この基準に満たない、比較的症状が軽い方でも、直近12か月で医療費が一定額を超える月が複数回ある「軽症高額該当」という特例で対象になることがあります。申請には難病指定医の診断書が必要で、窓口はお住まいの保健所です。
仕事を続けながら治療費の負担が気になる方は、障害年金の申請とあわせて、この制度の対象になるかどうかも確認しておくとよいでしょう。詳しい費用感は自費リハビリの費用・施設の選び方もあわせてご参照ください。

制度がどれだけ整っても、日々の動きにくさが軽くなるわけではありません。脳リハ.comのYouTubeでは、無理なく続けられる体操を配信しています。仕事を続ける体力づくりの一つとして、ぜひ活用してください。
相談窓口と、両立支援。
制度は内容ごとに窓口が分かれています。一人で全部を調べようとせず、まず身近な窓口に「何が使えるか」を聞くところから始めて大丈夫です。
| 相談したいこと | 主な窓口 |
|---|---|
| 傷病手当金の申請 | 会社の人事・総務、加入している健康保険組合、協会けんぽ |
| 障害年金の申請 | お近くの年金事務所、障害年金を専門とする社会保険労務士 |
| 難病医療費助成 | お住まいの保健所・保健センター |
| 働き方・両立の相談 | 会社の産業医、両立支援コーディネーター、ハローワークの専門窓口 |
| どこに聞けばよいかわからないとき | 主治医、病院の医療ソーシャルワーカー(相談室) |
とくに両立支援コーディネーターは、治療の状況を会社に伝える資料づくりや、主治医・産業医・会社の三者の橋渡しを専門的に行う存在です。地域の産業保健総合支援センターなどに配置されていることが多く、初めての相談先として心強い窓口になります。ハローワークには、難病のある方の就職や職場定着を支援する専門の相談員が配置されている場合もあります。

よくある質問。
Q. 傷病手当金と障害年金は同時にもらえますか?
Q. 働きながらでも障害年金は申請できますか?
Q. パーキンソン病と診断されたら、すぐ会社に伝えるべきですか?
Q. 退職したあとでも傷病手当金はもらえますか?
Q. 難病の医療費助成と障害年金は別の制度ですか?
Q. 制度の手続きは、どこに相談すればよいですか?
体の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。制度の手続きそのものは行っておりませんが、仕事を続けるための体力・動作面を専門的に支えることはできます。書字や細かい作業のしにくさ、歩行や姿勢の不安定さなど、働くうえで支障になりやすい動作を分析し、その方に合った練習を組み立てます。両立支援コーディネーターや産業医、社会保険労務士など専門の窓口とあわせてご活用いただくのが、いちばん実用的な使い方です。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
続ける方法を探してほしい。

診断を受けた直後、多くの方が「この先どうなるのか」という不安の中で、仕事を辞める決断をしてしまいそうになります。ですが、そのタイミングでこそ、使える制度を一つひとつ確認してほしいと思っています。
傷病手当金で今の生活をつなぎ、障害年金で先を支え、両立支援で働き方そのものを見直す。選択肢を知っているだけで、決断の質は大きく変わります。
私たちは制度の専門家ではありませんが、仕事を続けるための体をつくることには専門性があります。制度の相談と並行して、体の相談もどうぞお寄せください。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、下記の公的機関の情報およびSTROKE LABの臨床経験をもとに構成しています。金額・要件は年度により改定されます。実際の申請にあたっては、必ず各窓口で最新情報をご確認ください(最終確認日:2026年8月9日)。
- 全国健康保険協会(協会けんぽ):傷病手当金|給付と手続き
- 日本年金機構:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)