脳疲労・異常に疲れやすい|高次脳機能障害の易疲労性と省エネ生活術 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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高次脳機能障害

脳疲労・異常に疲れやすい|高次脳機能障害の易疲労性と省エネ生活術

POST-STROKE FATIGUE

異常に疲れやすい。脳のバッテリーが、小さくなっている。

少し動いただけで、すぐ横になる。午後には動けなくなる。リハビリのあとはぐったり。見た目は元気そうなのに、なぜ。脳卒中や頭のけがのあとのその疲れやすさは、脳疲労、易疲労性かもしれません。これは怠けでも、気力の問題でもありません。損傷後の脳は、同じことをするのに以前より多くの力を使うのです。そのしくみと、エネルギーを配分する省エネ生活術を整理します。

UPDATED2026
READ約13分
FORご家族・ご本人へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『脳の機能解剖とリハビリテーション』(2024年・408頁)の著者が執筆しています。異常な疲れやすさは、怠けでも本人のせいでもありません。強い疲れやうつ・睡眠の乱れが続くときは、自己判断せず、必ず主治医・専門機関にご相談ください。

脳卒中後の疲労の写真

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
脳卒中のあとの疲れやすさは、およそ半数にみられるよくある症状です
02
損傷後の脳は同じことに多くの力を使う。バッテリーが小さくなった状態です
03
怠けでも気力の問題でもなく、見た目で分かりにくい見えない障害です
04
疲れてから休むより、疲れる前に、先取りで休むのがこつです
05
うつ・睡眠・痛みが重なると悪化します。あわせて整えることが大切です
01
Looks Fine, Yet Can’t Move

見た目は元気なのに、動けない。

A Family’s Voice
「午前中に出かけると、午後は寝込んでしまう」

少し出かけただけで、帰ってくると寝込んでしまう。人と話すと、そのあとぐったり。リハビリを頑張った翌日は、一日中動けない。手足はよくなってきたのに、疲れやすさだけが取れない。周りからは元気そうに見えるので、怠けていると誤解される。本人も、こんなはずではと自分を責めてしまう——。もどかしさと、後ろめたさが積もっていきます。

でも、これははっきりした脳の症状です。脳のバッテリーが小さくなり、すぐ切れてしまうだけ。名前は、易疲労性、脳疲労といいます。

易疲労性は、脳卒中や頭のけがのあとにみられる、とてもよくある症状です。脳卒中のあとに強い疲れやすさを感じる人は、およそ半数にのぼるとされます。原因は一つではなく、脳の使い方、注意や覚醒のはたらき、気分や睡眠、体の状態など、さまざまな要因が重なって起こると考えられています。大切なので先にお伝えします。これは怠けでも、気力の問題でも、家族の関わり方のせいでもありません。全体像は高次脳機能障害の完全ガイドをご覧ください。

02
A Smaller Battery

STROKE LABの視点:脳のバッテリーが、小さい。

脳疲労を理解する鍵は、この一言です。損傷後の脳は、同じことをするのに、以前より多くの力を使うということです。考える、話す、人と会う、音や光の中にいる。何気ないことにも、脳は多くのエネルギーを使います。損傷を受けた脳は、注意を保つことや情報を処理することに、以前の何倍もの力を必要とします。これは筋肉の疲れとは別の、中枢性疲労と呼ばれるものです。

これを、脳のバッテリーにたとえると分かりやすくなります。脳疲労では、このバッテリーに3つの変化が起きています。

バッテリーの変化 生活では、どう感じるか
容量が小さい 一日にできることが減る。午後や夕方には、もう動けなくなる
減りが速い 少しの外出や会話でも、一気に消耗する。休んでもすっきりしにくい
残量表示が当てにならない 疲れに気づきにくく、頑張りすぎて、あとからどっと疲れが出る

とくに大切なのが、残量表示が当てにならないという点です。疲れの感覚そのものがつかみにくくなり、限界まで頑張ってしまい、翌日にどっと疲れが出ることがあります。なお、脳疲労はうつや睡眠の乱れ、痛みとも重なりやすいのですが、それらとは異なる独立した症状と考えられています。だからこそ、疲労だけでなく、気分や睡眠もあわせて整えることが大切になります。

脳卒中後の疲労のメカニズム

03
First Track — At Home

自宅でできること:エネルギーを、配分する。

まずは、ご家族とご本人が今日から実践できる工夫からお伝えします。いちばん大切な発想がこれです。小さくなったバッテリーを、無理に使いきるのではなく、一日の中で配分することです。これを省エネ生活術、エネルギー配分といいます。そして、疲れてから休むのではなく、疲れる前に、先取りで休むのがこつです。

難しく考える必要はありません。次の考え方を、その方の一日に当てはめてみてください。

配分のこつ 具体的には
大事なことを、先に決める その日いちばん大事なことにバッテリーを回す。元気な午前中に回すのも有効
先取りで、休む 疲れきる前に、活動と活動の間に短い休みをはさむ。静かな場所で目を閉じる数分でも回復に役立つ
詰め込まない 予定を一日に詰め込まず、行事の前後はとくにゆとりをもたせる。一度に一つ
環境で、消耗を減らす 人混みや騒がしい場所、強い光を避ける。静かな環境は、それだけでバッテリーの節約になる
Evidence
教育とエネルギー配分が、管理の柱として推奨されている

脳卒中後の疲労について、米国心臓協会がまとめた専門家向けの声明では、症状の教育、エネルギー配分、運動、睡眠を整えることが、疲労を管理するうえでの現実的な柱として位置づけられています。海外の調査でも、実際に生活で使える形で示せる方法として、エネルギー配分が挙げられています。

限界:脳疲労には、これといった決め手になる治療がまだ確立していません。ここで挙げた管理も、多くは合意にもとづくもので、効果には個人差があります。強い疲労が続くときは、専門職や主治医に相談してください。

出典:Hinkle JL, Becker KJ, Kim JS, et al. Poststroke Fatigue: Emerging Evidence and Approaches to Management: A Scientific Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association. Stroke. 2017;48(7):e159-e170. 教育・エネルギー配分・運動・睡眠を中心とした管理の考え方が整理されている。
使いきってから休むのではなく、減る前に、配分する。

1日でできるエネルギー配分

同じ活動量でも、詰め込むか、配分するかで、一日のもち方は大きく変わります。次のBefore/Afterは、その違いです。この配分表を、曜日ごとの具体的な時間割に落とし込む方法は、疲労管理の時間割の記事でくわしく解説します。

詰め込みとそうでない日

ここまでは、家庭でできるエネルギー配分でした。では、専門施設ではさらに何ができるのか。疲労そのものへの働きかけと、背景の見極めを、次にお伝えします。
04
Second Track — At STROKE LAB

専門施設で、さらに期待できること。

ここからは、少し専門的な話になります。リハビリに関わる方や、もっと深く知りたい方に向けて、全体像をお伝えします。脳疲労は、損傷後の脳が同じ作業に多くの努力を要する中枢性疲労を中心に、覚醒や注意のはたらき、気分や睡眠、体の炎症など、多くの要因が関わって起こると考えられています。単一の原因ではないため、専門的な関わりも、原因の見極めと、いくつかの方向からの働きかけを組み合わせます。代表的な介入を整理します。

介入 中身と、そのねらい
エネルギー配分の指導 先取りの休息や優先順位づけを、その方の生活に合わせて具体的な時間割に落とし込む。疲労の記録をとり、自分のバッテリーの傾向をつかむ
段階的な活動・運動 無理のない範囲から、少しずつ活動量や運動量を上げていく。動かなさすぎる悪循環を防ぎ、体力と耐久性を底上げする
認知行動的なアプローチ 疲労への考え方や、頑張りすぎ・休めなさといった行動のくせを整える。休むことへの後ろめたさを手放す手助けも含む
睡眠・気分・痛みへの対応 疲労を悪化させる、眠りの乱れ・気分の落ち込み・痛みを、主治医と連携して整える。背景を見極めることが出発点

海外の無作為化比較試験では、疲労への考え方を整える認知療法と、少しずつ活動を増やす段階的活動訓練を組み合わせる方法が、脳卒中後に長く続く疲労をやわらげたと報告されています。一方で、脳疲労には万能の治療がまだなく、どの方法が合うかは人によって違い、一部の人に効くにとどまるという慎重な見方もあります。だからこそ、まず背景を見極め、その方に合う組み合わせを一緒に探すことが大切です。薬や、脳への電気刺激、マインドフルネスといった方法は、研究段階のものや、医療機関で慎重に判断すべきものです。

専門施設でできること

+

Our Approach — At STROKE LAB
この見取り図の中で、私たちが軸足を置くところ。
がんばりを増やすより、暮らしを配分する。

STROKE LABが重視するのは、エネルギー配分を、その方の実際の一日に落とし込むことです。疲労の記録をとり、いつ、何で、どれくらい消耗するのかという、その方だけのバッテリーの傾向をつかみます。そのうえで、大事なことを元気な時間に置き、先取りの休息をはさむ時間割を、一緒に作ります。段階的な活動で耐久性も少しずつ底上げします。

そして、休むことへの後ろめたさを手放し、疲労を悪化させる睡眠や気分の問題は主治医と連携して整えることを大切にします。疲労は、背景を見極めることが出発点です。どの方向をどう組み合わせるかは一人ひとり違うため、評価にもとづいて個別に設計します。より専門的な評価と治療の詳細は、医療者向けの解説記事で扱います。

Evidence
認知療法と段階的活動訓練で、続く疲労がやわらいだRCT

脳卒中後に長く続く疲労のある人を対象にした無作為化比較試験では、疲労への考え方を整える認知療法に、少しずつ活動を増やす段階的活動訓練を組み合わせると、疲労がよりやわらいだと報告されています。考え方と体の両面から働きかけることの意味を示す結果です。

限界:脳疲労には確立した治療がまだなく、効くのは一部の人にとどまるとの見方もあります。効果には個人差が大きく、進め方は専門職の設計と、背景の見極めが前提です。

出典:Zedlitz AMEE, Rietveld TCM, Geurts AC, Fasotti L. Cognitive and graded activity training can alleviate persistent fatigue after stroke: a randomized, controlled trial. Stroke. 2012;43(4):1046-1051. 認知療法と段階的活動訓練の組み合わせによる疲労の軽減が示されている。
がんばりを増やすのではなく、暮らしを、その方のバッテリーに合わせる。
05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

前の項でお伝えした配分や働きかけは、疲労の背景を見極めたうえで組み立てます。疲れの感覚をはじめ、体の内部の状態を感じ取る島のはたらきを解説した動画も、背景を理解する手がかりの一つになります。ただし、疲労は多くの要因が関わるもので、一つの場所だけで決まるわけではありません。

体の内部の状態や疲れの感覚を感じ取る島のはたらきを解説(脳リハ.com)。効果には個人差があります。

受診の目安は、脳卒中や頭のけがのあとで、強い疲れやすさが続き、生活や社会復帰に支障が出ているときです。とくに、気分の強い落ち込み、眠れない状態、痛みが続くときは、我慢せず主治医に相談してください。疲れやすさの背景に、甲状腺や貧血などの体の病気、薬の影響が隠れていることもあります。自己判断で「怠け」と片づけず、まずは背景を確かめることが大切です。より専門的な評価を知りたい医療者の方は、医療者向けの解説記事もご覧ください。

06
FAQ

よくある質問。

Q. すぐ疲れて横になってしまいます。怠けているのですか?

怠けではありません。脳卒中や頭のけがのあとには、異常に疲れやすくなる易疲労性、いわゆる脳疲労がよくみられます。脳卒中のあとに疲れやすさを感じる人は、およそ半数にのぼるとされます。損傷を受けた脳は、同じことをするのにも、以前より多くの力を使います。いわば、脳のバッテリーが小さくなり、減りが速くなった状態です。見た目は元気そうでも、脳は疲れきっています。気力や心がけの問題ではありません。強い疲れが続くときは、神経内科やリハビリテーション科に相談してください。

Q. 脳の疲れは、体の疲れとどう違うのですか?

筋肉の疲れとは別のものです。体をあまり動かしていなくても、考える、話す、人と会う、音や光の中にいる、といったことだけで脳は消耗します。損傷後の脳は、注意を保つことや情報を処理することに、以前の何倍もの力を使うためです。これは中枢性疲労と呼ばれ、休んでもすっきりしにくく、午後や夕方に強くなりやすいのが特徴です。見た目では分かりにくいため、周りに理解されにくい、見えない障害でもあります。だからこそ、頑張りで乗り切ろうとせず、使い方を配分することが大切です。

Q. どう休めばいいですか?

疲れきってから休むのではなく、疲れる前に、先取りで休むのがこつです。脳のバッテリーには限りがあると考えて、一日のうちで大事なことを先に決め、そこにエネルギーを配分します。予定を詰め込まず、活動と活動の間に短い休みをはさむ。静かな場所で目を閉じる数分の休憩でも回復に役立ちます。午前中など元気な時間に大事なことを回すのも有効です。がんばった翌日にどっと疲れが出ることもあるので、行事の前後は特にゆとりをもたせてください。詳しい時間割の作り方は、別の記事で解説します。

Q. うつや睡眠不足とは、違うのですか?

脳疲労は、うつや睡眠障害とは異なる独立した症状と考えられていますが、これらが重なることはよくあります。気分の落ち込みや眠りの浅さは、疲れやすさをいっそう強めます。逆に、疲れが続くことで気分が沈むこともあります。だからこそ、疲労だけを見るのではなく、気分や睡眠、痛みもあわせて整えることが大切です。強い気分の落ち込みや、眠れない状態が続く場合は、我慢せず主治医に相談してください。背景を見極めることで、対処の方向も見えてきます。

Q. 脳疲労は、リハビリで良くなりますか?

今のところ、これといった決め手になる治療は確立していません。ただし、エネルギーの配分を学ぶこと、少しずつ活動量を上げる段階的な運動、疲労への考え方や行動を整える認知行動的なアプローチを組み合わせると、持続する疲労がやわらいだという報告があります。睡眠や気分を整えることも助けになります。効果には個人差が大きく、どれが合うかは人によって違います。無理に頑張るより、自分のバッテリーに合わせた暮らし方を、専門職と一緒に見つけるのが現実的です。進め方は作業療法士などに相談してください。

Q. 「見た目は元気なのに」と言われるのがつらいです。

脳疲労は、見た目では分かりにくい、見えない障害です。だからこそ、周りに理解されず、怠けていると誤解され、本人も家族も傷つきやすい症状です。まずは、これが脳の症状であって、気力の問題ではないと知ることが第一歩です。家族や職場に、疲れやすさは脳の状態によるものだと伝え、休むことへの後ろめたさを手放せると、暮らしはずっと楽になります。同じ経験をした人との交流も支えになります。理解を得る工夫については、専門職や家族会にも相談してみてください。
07
STROKE LAB

脳疲労の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。異常な疲れやすさは、その多くが脳卒中を背景に起こります。いつ、何で、どれくらい消耗するのかという、その方だけのバッテリーの傾向を評価し、大事なことを元気な時間に置き、先取りの休息をはさむ時間割を、一緒に作ります。段階的な活動で耐久性を底上げし、休むことへの後ろめたさも手放せるよう支えます。困っている生活の場面そのものを題材にするので、練習がそのまま暮らしに活きます。診断や、うつ・睡眠の評価は主治医を尊重し、私たちは生活と関わりの側から支えます。保険リハとの併用もできます。

書籍『脳の機能解剖とリハビリテーション』(医学書院)の表紙
Book
脳の機能解剖とリハビリテーション
医学書院/2024年/408ページ

覚醒や注意にかかわる脳幹や島をはじめ、脳の部位ごとの働きと症状のつながりを、豊富なイラストで解説。本文と連動するYouTube講義動画で、脳のしくみを目と耳から学べます。

Amazonで書籍を見る

Message from CEO
頑張りきるより、
配分して、長くもたせる。
STROKE LAB代表 金子唯史

見た目は元気そうなのに、すぐ疲れて動けなくなる。怠けていると誤解され、本人も自分を責めてしまう。脳疲労のご本人とご家族が抱えるこのつらさを、私は現場で何度も見てきました。

お伝えしたいのは、小さくなったバッテリーを、頑張って使いきろうとするより、一日の中で配分するほうが、結果的にできることが増えるということです。休むのは、怠けではありません。先取りで休むことは、前に進むための戦略です。

疲れやすさでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。その方だけのバッテリーの傾向を一緒につかみ、暮らしに合う配分のしかたを見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の公的情報・診療ガイドラインと、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。症状の現れ方や回復には個人差があります。診断・鑑別や関わり方の判断は、必ず主治医・専門機関にご相談ください(最終確認日:2026年7月7日)。

  • 国立障害者リハビリテーションセンター:高次脳機能障害情報・支援センター
  • Hinkle JL, Becker KJ, Kim JS, Choi-Kwon S, Saban KL, McNair N, Mead GE: Poststroke Fatigue: Emerging Evidence and Approaches to Management: A Scientific Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association. Stroke. 2017;48(7):e159-e170.(教育・エネルギー配分・運動・睡眠の管理。第1エビデンスボックスの出典)
  • Zedlitz AMEE, Rietveld TCM, Geurts AC, Fasotti L: Cognitive and graded activity training can alleviate persistent fatigue after stroke: a randomized, controlled trial. Stroke. 2012;43(4):1046-1051.(認知療法+段階的活動訓練COGRAT。第2エビデンスボックスの出典)
  • Wu S, Kutlubaev MA, Chun HY, Cowey E, Pollock A, Macleod MR, Dennis M, Keane E, Sharpe M, Mead GE: Interventions for post-stroke fatigue. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015;(7):CD007030.(確立した治療がまだないことの根拠)
  • 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院.2024.
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