【2026年版】ワレンベルグ症候群とは?リハビリテーションと予後予測について –
ワレンベルグ症候群は、回復できるのか。
めまい、体が傾く、声がかすれる、飲み込みにくい——。ワレンベルグ症候群は脳幹に起こる脳卒中の中でも、特に多彩な症状を引き起こします。しかし、適切なリハビリを行うことで、85%以上の患者さんが1年以内に歩行自立を達成しています。正確な理解が、回復への第一歩です。
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こんなお悩みはありませんか?
突然、ワレンベルグ症候群と診断された——。そのお知らせを受けたご家族は、今どんなお気持ちでしょうか。
「なぜ体が傾くのか」「なぜ飲み込めないのか」「これからどう回復するのか」。症状が複雑なため、何から手をつければよいかわからない方も多いです。
ワレンベルグ症候群は、脳幹に起こる脳卒中です。多彩な症状が同時に現れるため、ご家族もとまどわれることが少なくありません。
しかし、正確な知識と継続的なリハビリが、回復への道を開きます。この記事では、ご家族が知っておくべきことを丁寧に解説します。
ワレンベルグ症候群とは。
ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群・後下小脳動脈症候群)は、延髄(えんずい)の外側が梗塞する病気です。
延髄とは脳幹の一部です。呼吸・循環・嚥下など、生命維持に深く関わる部位です。椎骨動脈(ついこつどうみゃく)または後下小脳動脈(PICA)の閉塞が原因で発症します。
この病気は1808年、ガスパール・ヴィユソーによって初めて報告されました。1895年にアドルフ・ワレンベルグが詳細を記述し、現在の名称で広く知られるようになりました。

— 延髄外側梗塞のMRI画像。障害を受けた領域が確認できます。
ワレンベルグ症候群の急性期では、通常の脳卒中に比べ嚥下障害が特に重篤になることがあります。経鼻胃管などの補助栄養が必要なケースもあります。
ただし片側梗塞の場合は影響を受けていない側の延髄が補う働きをするため、多くの場合は回復が期待できます。
主な症状(頻度順)
感覚障害は最大96%に認められ、最も頻度が高い症状です。50%以上では嚥下障害・嗄声・めまい・眼振・四肢失調・吐き気なども見られます。

外側延髄の主要構造物:下小脳脚(運動失調)、前庭核(めまい・ラテロパルジョン)、三叉神経核(同側顔面感覚障害)、脊髄視床路(対側体幹感覚障害)、下行交感神経線維(ホルネル徴候)、孤束核(嚥下・発声障害)。
交差性感覚障害:同側顔面(三叉神経核障害)と対側体幹(脊髄視床路障害)に異なる感覚障害が生じる。ワレンベルグ症候群の特徴的所見。
小脳症状:PICAは小脳への主要な血液供給を担うため、古典的な定義には含まれないが、ある程度の小脳機能障害(失調など)を伴うことも多い。しゃっくりと嗄声・嚥下障害の発現は、疑核(ぎかく)への梗塞が原因と考えられる。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。ワレンベルグ症候群のような複雑な脳幹障害にも、豊富な臨床経験を持つ療法士が対応します。無料相談では現在のお悩みを丁寧にお聞きし、回復に向けた道筋を一緒に考えます。
なぜ起こるのか。
ワレンベルグ症候群の主な原因は、椎骨動脈または後下小脳動脈における虚血性脳卒中(脳梗塞)です。血栓(血のかたまり)や塞栓症(血のかたまりが流れてきて詰まること)の結果として多く発症します。
現在、最大の危険因子は大動脈の動脈硬化と考えられています。高血圧・糖尿病・喫煙歴との関連も指摘されています。
椎骨動脈の動脈硬化(血管が硬く狭くなること)が進むと、血流が途絶えやすくなります。
最終的に延髄外側の梗塞(細胞の壊死)へとつながり、多彩な神経症状が現れます。
若い方に多い原因:椎骨動脈解離
頭部外傷後の椎骨動脈解離(かいり:血管の内壁が裂けること)は、第2位の危険因子です。若い患者さんに多く見られます。
その他にも転移性がん・血腫・動脈瘤・動静脈奇形・多発性硬化症なども原因となることがあります。
血管解剖:左右の椎骨動脈は脳幹外側に沿って走り、正中線で合流して脳底動脈を形成します。その前に左右のPICAが分岐します。外側延髄は腹側(前外側溝)・背側(後外側溝)・吻側(脳梁)・尾側(脊髄)で囲まれた領域です。
梗塞部位と症状:前庭核障害の程度によってラテロパルジョンの重症度が変わります。疑核(ぎかく)障害の程度によって嚥下・発声障害の重症度が決まります。梗塞の範囲により症状のパターンは大きく異なります。
他の症状との違い。
ワレンベルグ症候群でよく見られる「体が傾く」症状は、ラテロパルジョンと呼ばれます。
プッシャー症候群(視床・大脳皮質の損傷で生じる傾き)と混同されやすいですが、原因・メカニズム・リハビリのアプローチが全く異なります。
| 比較項目 | ラテロパルジョン(ワレンベルグ) | プッシャー症候群 |
|---|---|---|
| 発生部位 | 脳幹(延髄外側) | 視床・大脳皮質 |
| 傾き方向 | 障害側(病変側) | 障害側(病変側) |
| 重力方向の認識 | 保たれる | 障害される |
| 押す行動 | ない | ある(健側に体を押しつける) |
| リハビリの方針 | 前庭系・固有感覚への介入 | 重力知覚・垂直認識の再教育 |
評価方法。
ワレンベルグ症候群専用の評価指標は現時点では存在しません。通常の脳卒中評価ツールを組み合わせ、機能を客観的に評価します。
ワレンベルグ症候群患者の静止立位バランスを客観的に測定できます。圧力中心(CoP:Center of Pressure)の動揺量が評価の中心となります。
CoPの内外側方向への動揺は、最も重要な転倒予測指標です。開眼・閉眼の比較により前庭障害の程度を評価できます。
対象と方法:発症後1ヶ月のワレンベルグ症候群患者6名を対象に、posturographyを用いて治療後3ヶ月・9ヶ月時点での静止立位バランスを評価・比較。
結果:初期評価では内外側・前後方向CoP動揺がすべて高値(バランス障害を示す)。リハビリ後、開眼時の前後方向速度・範囲、内外側方向速度・範囲が有意に減少(p<0.05)。閉眼時も減少傾向だったが、統計的有意差には至らなかった。
結論:ラテロパルジョン(障害側への側方突進)はCoP内外側動揺と密接に関連します。障害側への転倒リスクが高く、CoPの内外側への動揺が最も重要な転倒予測指標です。
臨床的考察(金子):ワレンベルグ症候群は下小脳脚の障害による失調・前庭障害による平衡障害・網様体障害による体幹低緊張が重複します。どの症状が主体かを評価し、「バランスが取れる位置を探させる訓練」「動揺を戻す訓練」「低緊張の改善」を使い分けることが重要です。
回復への道のり。
ワレンベルグ症候群のリハビリは、患者さんが示す特定の障害に応じて設計します。冗長な機械的アプローチではなく、個人にとって目的と意味のある活動に段階的に取り組むことが大切です。
リハビリの主な目標は3つです。①合併症の予防、②機能障害の最小化、③自立と機能の最大化。この順番で段階的に進めます。
転倒・誤嚥(ごえん:食べ物が気管に入ること)の予防が最優先です。補助栄養の管理と安全な姿勢の確立から開始します。電気刺激療法の早期導入も、運動機能回復の促進に有効とされています。
課題指向型トレーニング・環境適応・運動の再訓練に焦点を当てます。ラテロパルジョンに対しては、視覚・固有感覚(体の位置感覚)・筋力を活用した代償的アプローチが重要です。
三半規管(さんはんきかん:内耳にある平衡感覚の器官)を積極的に使う訓練が効果的です。前庭系を鍛える視点と、固有感覚系の促通によって内部モデルとのエラーを減らす視点の、両方が重要です。前庭障害が残存する場合、閉眼時のバランス不安定さが残ることがあります。
言語聴覚士(ST)による嚥下機能評価と訓練が有益です。神経筋電気刺激(NMES)による嚥下訓練も咽頭嚥下障害に有効とされています。止まらないしゃっくりがある場合は、嗄声や嚥下障害との関連が高く、疑核への梗塞が原因と考えられます。

ワレンベルグ症候群のリハビリは、入院期間だけでは終わりません。退院後も継続的なアプローチが回復を左右します。STROKE LABでは脳神経系に特化した療法士が、お一人おひとりの状態に合わせたプログラムを設計します。
ご家族ができるサポート。
ご家族の理解とサポートが、患者さんの回復を大きく後押しします。心理的な安定はリハビリの質にも影響します。
安全な住環境を整える
ラテロパルジョンにより転倒リスクが高いため、住環境の整備が重要です。
声かけのコツ
「今日は少し体が傾いていますね。右手でここを持ちましょうか。」
「ゆっくりでいいですよ。焦らなくて大丈夫です。」
「今日は昨日より安定して歩けていましたよ。」
食事・栄養管理
嚥下障害がある場合、食事形態の調整が重要です。とろみ剤の使用や、食材の刻み方・食べる姿勢(頸部の角度など)を言語聴覚士に相談することをお勧めします。
在宅復帰と公的支援制度。
退院後の生活を安心して続けるには、事前の準備が大切です。公的支援制度を適切に活用することで、経済的・身体的な負担を軽減できます。
在宅復帰チェックリスト(7項目)
主な公的支援制度
| 制度名 | 主な対象 | 活用のポイント |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 後遺障害が残る方 | 各種割引・サービス利用に必要 |
| 介護保険 | 40歳以上・要介護認定 | 訪問リハビリ・デイケア費用に活用 |
| 障害福祉サービス | 障害支援区分認定を受けた方 | 生活介護・就労支援・移動支援など |
| 自立支援医療 | 継続的な医療が必要な方 | 医療費の自己負担を原則1割に軽減 |
| 高額療養費制度 | 医療費が高額になった方 | 月ごとの自己負担額に上限を設定 |
| 障害年金 | 発症時に年金加入があった方 | 月々の生活費の補助に活用できる |
回復までの期間と予後。
ワレンベルグ症候群の長期予後は、個人差があります。発症後数週間で症状が軽減する方もいれば、何年も症状が続く方もいます。
しかし、適切な治療・臨床モニタリング・リハビリケアを行えば、予後は良好です。大半の患者さんは6ヶ月後に障害が最小限になります。
25例のワレンベルグ症候群を調査した報告によれば、6ヶ月後には障害が最小限になる患者さんが多数いました。
Eun Hye Naらの研究(Ann Rehabil Med. 2011)では、リハビリによって開眼時の重心動揺(前後・内外側方向)が有意に改善しました。
バランス障害の表れ方は「軽度の不安定性」から「座位保持が困難」まで幅広く異なります。症例ごとに丁寧なアプローチが必要です。
よくあるご質問。
延髄(脳幹の一部)の外側が梗塞する脳卒中です。椎骨動脈または後下小脳動脈の閉塞によって起こります。
めまい・バランス障害・嚥下障害・交差性感覚障害など多彩な症状が現れるのが特徴です。
適切な治療とリハビリを行うと、予後は比較的良好です。報告によれば85%以上の患者さんが1年以内に歩行可能な機能的自立を達成しています。
ただし個人差があり、症状が数年続く方もいれば、数週間で改善する方もいます。
ワレンベルグ症候群で起こる、障害側(梗塞した側)に体が傾いてしまう症状です。脳幹の障害による姿勢制御の乱れが原因です。
プッシャー症候群とは異なります。転倒リスクが高く、リハビリでの優先課題となります。
ワレンベルグ症候群の嚥下障害は通常の脳卒中より重篤なことがありますが、片側梗塞の場合は影響を受けていない側の延髄が補う働きをします。
多くの場合は回復が期待できます。言語聴覚士によるリハビリと定期的な嚥下機能評価が重要です。
バランス練習、嚥下訓練、前庭リハビリテーション(めまい・平衡感覚の訓練)を継続することが大切です。
自費リハビリ施設では、入院リハビリで届かなかった部分への集中的なアプローチが可能です。
患者さんの状態をよく理解し、転倒リスクに備えた住環境の整備、声かけによる心理的サポート、嚥下障害への食事管理などが有効です。
一人で抱え込まず、専門家やリハビリ施設に早めに相談することをお勧めします。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳神経系(脳・脊髄・神経)に特化した自費リハビリ施設です。脳卒中後のリハビリに特化した療法士が、お一人おひとりの状態に向き合います。ワレンベルグ症候群のような複雑な脳幹障害にも、豊富な経験をもって対応しています。
— STROKE LABでのリハビリの実際の様子です。

「夫がワレンベルグ症候群になり、最初は飲み込めず食事もできませんでした。3ヶ月のリハビリで少しずつ飲み込めるようになり、今は普通食を食べています。諦めなくてよかったです。」— 60代男性のご家族・脳卒中発症7ヶ月後
「体が右に傾いて、歩くたびに転びそうで怖かったです。バランスのリハビリを続けた結果、今では一人で外出できるようになりました。」— 50代男性・ワレンベルグ症候群・発症1年後
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諦めないでください。

脳幹の脳卒中は、症状が複雑で、回復の見通しが立てにくいです。それでも、85%以上の患者さんが1年以内に歩行自立を達成しています。
STROKE LABでは、脳卒中後の複雑な症状に長年向き合ってきた療法士が、ご本人の状態とご家族のご不安を丁寧にお聞きします。
一人で抱え込まず、まず無料相談にお越しください。ご一緒に、回復への道を考えていきましょう。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)