ICIQ-UI SF日本語版とは?尿失禁の採点・重症度と生活支援への活用
漏れの「回数・量」と、
あきらめている日常を聞く。
ICIQ-UI SF 日本語版
尿失禁の症状から、生活への影響と支援へ。

01|ICIQ-UI SFとは|漏れの量だけでは分からない困りごと
国際失禁会議質問票尿失禁短縮版(ICIQ-UI SF)は、尿失禁の頻度・量・生活への影響と、漏れる場面を本人に尋ねる質問票です。正式な英語名はInternational Consultation on Incontinence Questionnaire–Urinary Incontinence Short Form。国内の論文ではICIQ-SFとも表記されます。男性・女性の尿失禁に用いられ、日本語版の信頼性・妥当性・反応性も検証されています。[1][3][4]
少量の漏れでも、においが心配で外出を控えていれば影響は大きくなります。一方、漏れの量が多くても本人の訴えが少ないことがあります。この質問票では、症状の大きさと本人の困り感を並べて見ることが大切です。
02|準備と手順|質問票の回答を支える
公式サイトから利用目的に応じた手続きで日本語原版を入手します。用意するものは原版、筆記具、必要に応じて排尿日誌です。日本語版の質問文を独自に言い換えて別の質問票にせず、本人が答えやすい環境を整えます。[1][8]
- プライバシーを確保。家族同席の希望を確認し、漏れの話をしやすい席で説明します。
- 期間を確認。直近4週間の平均的な状態を振り返ります。入院・服薬・介助方法の変更は別記します。
- 原版の3つの採点項目に回答。頻度、本人が感じる漏れの量、生活への影響を尋ねます。必要ならそのまま読み上げます。
- 漏れる場面を確認。原版で当てはまる場面を複数選びます。この項目は合計に加えません。
- 合計と内訳を記録。未回答を0点で埋めず、確認してから採点します。本人の生活目標も一緒に残します。
失語症などでは文字を大きくする、指さしで選んでもらう方法を検討します。家族が観察した漏れと、本人の主観的な困り感は分けて記録します。本人の回答が得られない項目を推測して埋めず、回答方法を再評価時にも引き継ぎます。
03|採点|頻度+量+生活への影響=0〜21点
| 採点領域 | 配点 | 臨床で確認すること |
|---|---|---|
| 尿漏れの頻度 | 0〜5点 | どのくらい繰り返すか。パッド交換回数と同一ではない。 |
| 尿漏れの量 | 0・2・4・6点 | 本人が見積もる量。mLやパッド重量への換算はしない。 |
| 生活への影響 | 0〜10点 | 本人が感じる支障。医療者が見た重さで置き換えない。 |
| 漏れる場面 | 合計に加えない | 当てはまる場面を複数確認し、詳しい問診へつなぐ。 |
配点と合計方法は原版に従います。頻度0〜5点、量0〜6点、影響0〜10点の合計です。量は0・1・2・3点ではなく、0・2・4・6点であることが、よくある採点ミスのポイントです。[2]
用紙によって生年月日などにも番号が付くため、番号だけで覚えないことも大切です。公式英語見本では設問3・4・5を足し、設問6の漏れる場面は足しません。日本語用紙でも、使っている原版の項目名と番号を確認します。
04|重症度とカットオフ|診断の線引きとは分ける
Klovningらが提案した合計点の重症度区分は下表です。失禁の程度を整理する目安であり、失禁の原因や治療の適応を決める診断カットオフではありません。[5]
| 合計点 | 区分 |
|---|---|
| 0点 | 症状・影響の合計が0 |
| 1〜5点 | 軽度(slight) |
| 6〜12点 | 中等度(moderate) |
| 13〜18点 | 重度(severe) |
| 19〜21点 | 最重度(very severe) |
「12点だから手術」「5点だから治療不要」とは判断しません。合計が同じでも、頻度が高いのか、量が多いのか、生活への支障が大きいのかで支援は変わります。また、点数だけで残尿量、腎障害や将来の排泄自立度を予測できる尺度ではありません。
05|漏れる場面を読む|原因を考える入口

| 聞き取った場面 | 追加して確認すること |
|---|---|
| 咳・くしゃみ・運動の時 | 腹圧性尿失禁を考える手がかり。尿意切迫感もあるか。 |
| 急な尿意の後、トイレ前で漏れる | 切迫性尿失禁の可能性と、移動・更衣の遅れを分ける。 |
| 排尿を終えた後に漏れる | 排尿後の症状として経過や排出状態を確認する。 |
| 睡眠中、理由が分からない、持続する漏れ | 症状の経過、薬、神経疾患、排出障害などを含めて医師に共有。 |
場面の選択だけで病型を確定せず、問診・診察・必要な検査に結び付けます。特に脳卒中後は、膀胱の機能に加えて歩行、更衣、注意、トイレの認識、援助を求める力を観察します。
06|OABSS・排尿日誌・残尿測定との違い
| 評価 | 主な焦点 | 評価期間・単位 |
|---|---|---|
| ICIQ-UI SF | 尿失禁と生活への影響 | 直近4週間/0〜21点 |
| OABSS | 切迫感を中心とした蓄尿症状 | 直近1週間/0〜15点 |
| 排尿日誌 | 排尿・飲水・漏れの時間と量 | 設定した記録期間/時刻・mL等 |
| 残尿測定(PVR) | 尿を出し切れているか | 排尿後の残尿量/mL |
尿漏れがなくても切迫感で困る人にはOABSSが役立ちます。一方、咳で漏れる、漏れが心配で外出できないという問題はICIQ-UI SFで整理しやすくなります。両者は評価期間も点数の意味も違い、相互換算しません。残尿増加の有無は質問票では確認できないため、排出困難などがあれば測定を検討します。
07|改善量の読み方|一律の「何点改善」を置かない
2024年のアプリによる尿失禁セルフマネジメント研究では、3か月後の最小重要差(MID)は全体で1.46点の低下、中等度群で1.33点、重度・最重度群で3.58点の低下と推定されました。軽度群では明確なMIDを決められませんでした。これらはその対象・介入における集団レベルの値です。[6]
したがって、小数値を丸めて「誰でも2点下がれば成功」としません。手術後、骨盤底筋訓練、神経疾患のリハビリでは対象と介入が異なります。変化量を示したうえで、本人の改善実感、漏れた回数、外出や睡眠の変化を確認します。
日本語版の検証では総得点の再検査信頼性ICCは0.91、内的一貫性はα=0.78で、治療による変化への反応性も示されています。ただし、この研究結果は、すべての神経疾患で同じ誤差や改善閾値を保証するものではありません。[4]
08|臨床ストーリー|漏れが減ることと、出かけられること

説明用の架空事例:Aさんは友人との外出が目標
初回は頻度3点、量2点、生活への影響7点で合計12点。量は少なくても「漏れたら困る」という心配で外出を控えていました。漏れる場面を聞くと、切迫感の後にトイレへ急ぎ、ズボンを下ろす間に漏れることが分かりました。
尿検査や排出症状を医療チームで確認し、適応に応じた治療と並行して、服の留め具、トイレまでの動線、介助を頼むタイミングを調整します。日誌には漏れと切迫感、実際に外出した日を記録します。
再評価は頻度2点、量2点、影響4点で合計8点、変化は−4点でした。中等度の範囲内でも、週1回の外出を再開できていれば大切な成果です。量が変わらなくても頻度や生活への影響が変わったことを、内訳で共有します。
09|介入と再評価|症状・動作・環境をつなぐ
NICEは、女性の腹圧性・混合性尿失禁に対して少なくとも3か月の専門職による骨盤底筋訓練を、切迫性・混合性尿失禁に対して少なくとも6週間の膀胱訓練を勧めています。実施前に収縮が適切にできるかを確認し、症状や身体状況に合わせます。これは女性の診療指針で、神経疾患や男性にそのまま適用する処方ではありません。[7]
リハビリ場面では、更衣に時間がかかるなら服装と手順を調整し、移動が不安定なら手すり・照明・援助のタイミングを整えます。排尿を極端に我慢させたり、漏れを避けるために一律に飲水を減らしたりせず、医学的な評価と生活支援を並行します。

再評価でも原版どおり直近4週間を振り返ります。介入1週間後では介入前の3週間も含まれるため、早期の変化は日誌などで別に確認します。入院や薬の変更が期間内にあれば記録し、同じ回答方法で比較します。
血尿、発熱や排尿痛、強い下腹部痛、尿が出ない状態、新たな神経症状などがあれば、質問票の点数にかかわらず医師へ共有します。
10|記録PDFと公式原版
PDFは原版の得点を転記する2ページの臨床記録シートです。内訳・合計・前後比較、漏れる状況、目標と支援計画を整理できます。
質問票はICIQ公式の利用条件に従って入手・使用してください。本PDFは原版を置き換える質問票ではなく、結果を整理する臨床記録です。
参考文献・公式資料
- ICIQ公式.ICIQ-UI Short Form:概要・入手先.
- ICIQ公式.英語見本:評価期間・配点・合計方法.
- Avery K, et al. ICIQ: a brief and robust measure for evaluating the symptoms and impact of urinary incontinence. Neurourol Urodyn. 2004;23:322–330.
- Gotoh M, et al. Psychometric validation of the Japanese version of the International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form. Int J Urol. 2009;16:303–306.
- Klovning A, et al. Comparison of two questionnaires for assessing the severity of urinary incontinence: The ICIQ-UI SF versus the incontinence severity index. Neurourol Urodyn. 2009;28:411–415.
- Minimum important difference of the ICIQ-UI SF score after self-management of urinary incontinence. BMC Womens Health. 2024. DOI:10.1186/s12905-024-02947-x.
- NICE NG123.Urinary incontinence and pelvic organ prolapse in women: management.
- ICIQ公式.User Agreement.
文献確認:2026年11月1日。事例・イラストは説明用です。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)