Fluff Testとは?半側身体無視の評価方法・カットオフ・改訂採点を解説 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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Fluff Testとは?半側身体無視の評価方法・カットオフ・改訂採点を解説

STROKE LAB / CLINICAL GUIDE
Fluff Test
自分の身体を、
どこまで探せるか。

身体に付けた標的から、半側身体無視をみる。
実施手順・原法と改訂法・生活へのつなぎ方。

専門職向け | 情報確認 2026.10.23
遮眼した女性が右手で左袖の標的を探す
実施イメージの独自イラスト。標的の一部を描いた概念図で、全24個の配置図ではありません。
最初に押さえる3点
  • 24個は15個+9個:個数ではなく、左右の回収率を比べる。
  • 原法は反対側12個以下:13個回収を誤って陽性にしない。
  • 左右差が小さくても要確認:両側の低成績を正常と取り違えない。

01 自分の身体を、どこまで探せるか。

Fluff Test(フラッフテスト)は、衣服に付けた標的を、視覚に頼らず自分の手で探して取り除く検査です。半側身体無視(personal neglect)の評価に用いられ、頭部以外の身体に向ける探索を観察します。2001年に原法が報告され、2022年刊行の論文で採点法が改訂されました。 [1] [2]

「机の上の物は見つけるのに、片側の袖の乱れに気づかない」「身体を洗うと片側が残る」。こうした場面では、身体外の探索と、自分の身体への注意を分けて確かめる意味があります。ただし、この検査だけで生活の問題の原因をすべて説明することはできません。

この記事で詳しく扱うこと

標的の左右の内訳、実施条件、原法のカットオフ、改訂法の読み方を詳しく整理します。原著の配置図・採点表そのものは複製せず、独自図と計算例で説明します。正式な実施・境界値の判定には原資料を併用してください。

本記事は医療・リハビリテーション専門職向けの解説です。日本語の説明や付属PDFは独自の補助資料であり、標準化された日本版評価票ではありません。

02 準備|「探さない」と「届かない」を分ける。

確認すること 記録する内容
覚醒・理解 説明が伝わるか、閉眼・遮眼を保てるか、疲労や不安はないか。
運動・感覚 使用手の運動、肩・肘・体幹の可動域、痛み、感覚障害、座位の安定。
病巣と条件 病巣側、使用手、衣服、標的の素材・固定方法、姿勢、支持、追加の声かけ。

身体への探索が少ないとき、無視に加えて感覚・運動面の制約を確認する必要があります。国内解説でも、下肢を探す際の前傾と転倒に注意することが示されています。 [3]

安全を優先する

足元を探す動作が危険なら、検査を中断して理由を残します。転落を防ぐ支持と、探索方向を教える手の誘導は区別してください。安全のために加えた介助も記録し、条件が変わった結果を無条件に標準条件と比較しません。

以下は臨床上の確認案です。あらかじめ片側へ手を導いて「練習」すると、その側の存在を教えることにもなります。機能評価の情報を用い、検査直前の誘導の有無を残してください。両側病変や使用手の変更など、原法の条件をそのまま当てはめにくい例も個別に扱います。

03 標的は24個。左右の分母が違います。

原法は、直径2cmの白い円形標的を面ファスナーで衣服前面に付ける方法です。標的を皮膚へ直接貼る検査ではありません。 [1]

病巣反対側15個、同側9個の標的内訳
部位ごとの個数を整理した独自図。解剖学的な貼付位置の再現図ではありません。

スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

部位 病巣の反対側 C 病巣と同じ側 I
上肢 6個:上腕・前腕に各3個 0個:探索する上肢
体幹 3個 3個
下肢 6個:大腿・下腿に各3個 6個:大腿・下腿に各3個
合計 15個 9個

部位の内訳は国内解説と実施研究を照合しています。右半球病変ならCは本人の左、Iは本人の右です。左半球病変では左右を反転します。C=麻痺側、I=健側と固定せず、病巣との関係で記録してください。 [3] [4]

「同じ数だけ取れた」でも、同じ回収率ではない

Cで9個、Iで9個取れた場合、Cは9/15=60%、Iは9/9=100%です。生の個数だけを引き算すると、この差を見落とします。改訂法では回収率を比較します。

洗濯ばさみなどへ変更すると、つまむ力や触覚刺激が変わります。代用品の使用は記録し、原法と同じ基準が保証されるとは扱いません。正確な位置は著者公開稿の配置図(Fig. 1)を確認してください。

04 実施|見ずに探し、本人の終了まで観察する。

① 遮眼してから標的を付ける

安定した座位で、装着前から終了まで視覚を遮ります。装着中に個数を数えにくくするため会話などを行い、全標的数は伝えません。視覚で位置を覚えた条件と混ぜないことが大切です。 [1]

② 病巣と同じ側の手で取り除く

衣服に付けた標的を探し、取り除いてもらいます。以下は説明の要約例です。「服に付いているものを、手で探して取り除いてください」。正式な日本語版教示ではありません。病巣と同じ側の手を用い、探索する腕には標的を置きません。 [1] [4]

③ 探索の広がりと終了の判断を見る

原法には時間制限がありません。本人が全て取った、または取り終えたと思った時点まで観察します。途中で「左も」「まだ残っています」と教えた条件は、補助なしの結果と分けます。 [1] [4]

遮眼して下肢の標的を探す女性と姿勢を見守る療法士
探索途中の概念図。残った標的の一部を示しており、24個の初期配置を再現していません。
④ 回収数と、残った部位を記録する

左右それぞれの回収数に加え、上肢・体幹・下肢の残り方を記録します。介助や中断があれば、その理由と時点を残します。未完了の検査を、通常終了した検査の「0点」と置き換えません。

この検査はComb & Razor Testのような「30秒で何回」という課題ではありません。観察用に所要時間を残す場合も、独自の制限時間や合否ラインを加えないようにします。

05 採点|原法と改訂法を使い分ける。

原法:病巣の反対側で、何個取り除けたか

15個中12個以下の回収

反対側の取り残しが3個以上で、原法の判定基準に該当します。13個回収は、この基準には該当しません。 [3]

割合に直すと13/15は約86.7%です。丸めた百分率だけで比較すると、13個ちょうどを誤分類するおそれがあります。原法では回収個数をそのまま確認してください。

改訂法:両側の回収率から偏りをみる

回収率の差 D

D = 100 × C/15 − 100 × I/9

C=病巣の反対側の回収数、I=同じ側の回収数。単位はパーセントポイント。負は反対側、正は同じ側の回収率が低いことを示します。 [2]

改訂法では、まずCが13個以上、かつIが8個以上なら著者の正常範囲です。その範囲外では左右差と全体の低下を分けます。明瞭な左右差のない低成績はNSU(non-spatial underperformance)として扱われます。 [2]

±13.3の境界は、原著Table 2で確認

改訂法では13.3パーセントポイントを超える偏りが目安ですが、採点表は小数第1位表示です。計算機の未丸め値に「>13.3」を直接適用すると、表と食い違う境界例があります。正常範囲を先に確認し、最終分類は原著の採点表(Table 2)で照合してください。 [2]

NSUは「正常」と同じ意味ではありません。また、この分類だけで全般性注意障害や理解障害を確定することもできません。検査条件と探索行動を再確認するための情報として扱います。重症度の段階も原著表を参照し、日常生活の介助量へ直接置き換えないでください。

06 計算例|同じ個数でも、違う意味になる。

以下は説明用に作成した架空例です。原著採点表の全体を再掲載したものではありません。

スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

回収数 C/I 回収率の差 D 読み方
9/9 60−100=−40.0 反対側の回収率が低い。
9/6 60−66.7=−6.7 正常範囲外だが偏りが小さい。NSUに該当。
15/6 100−66.7=+33.3 同じ側の回収率が低い。
13/9 86.7−100=−13.3 両側の回収数は著者の正常範囲内。
C9/I6を「左右差が小さいから正常」としない

両側に取り残しがあります。どこを探索し、どこで止まったか、説明を理解していたか、疲労や到達範囲に問題はなかったかを見直します。原因を決めるための追加情報が必要です。

C15/I6を「反対側が満点だから問題なし」としない

原法の反対側だけの判定では拾いにくい結果です。同じ側の体幹・下肢で何が起きたかを確認し、生活場面の観察につなげます。

原法と改訂法で結果の表現が変わることがあるため、申し送りには「どの方式で採点したか」を必ず添えます。点数だけを転記するより、C・Iの回収数を併記した方が後から確かめられます。

07 点数の次に、探索の過程を読む。

以下は採点へ加算しない、実務上の観察・共有案です。

観察する場面 具体的に残す事実
開始 どの部位から手を動かしたか。開始までに説明の追加が必要だったか。
広がり 正中を越えて探索したか。触れた部位と、触れなかった部位はどこか。
取り除く動作 標的に触れた後に外せたか。痛み・把持の難しさ・固定の強さが影響していないか。
反復・停止 同じ部位を繰り返すか。別の部位へ移る前に止まるか。
終了 本人の終了の発言、残った位置、疲労や姿勢の変化。

「左を無視する」という結論だけでなく、「右の体幹と両下肢を探した後、左上肢には触れず終了した」と書くと、次の評価者が確認する点が明確になります。触れたのに取れなかった場合も、探索しなかった場合と区別できます。

支援の効果は、検査終了後に別記する

声かけや身体位置の確認で探索が広がるかを調べる場合は、標準条件の結果を確定した後に行います。「声かけ後に取れた数」を最初の回収数へ足すと、介助なしの状態が分からなくなります。

08 BIT・Comb & Razor・CBSとの整合性。

スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

評価 主に捉える場面 補い合う点
Fluff Test 視覚を遮った身体の探索 頭部以外を含む身体領域の探索。
Comb & Razor Test 頭髪・顔面の整容動作 頭部への行為と体幹・四肢の探索を分ける。
BIT 紙面や日常生活に近い課題 身体外の無視と身体への無視の違いを確かめる。
CBS 日常生活での無視による困難 生活の支障と支援の必要性を把握する。

各検査は対象とする空間や行為が異なります。原法でも、身体外の無視や整容課題の成績と一致しない例が示されています。合否を相互に換算する尺度ではありません。 [1] [3]

食い違いを、次の評価の手がかりにする

BITが良好でもFluff Testで偏りがあれば、身体への探索と感覚・運動条件を詳しく確認します。Fluff Testが良好でも更衣で問題があれば、開眼下の行為の順序や衣服の扱い、姿勢、環境を実際の場面で観察します。検査結果だけで生活の困難を否定しません。

09 研究の位置づけと、臨床での限界。

2001年|開発研究

原法は脳損傷患者38名と対照38名を対象に検討されました。小規模な開発研究であり、その値をすべての病態・実施条件に一般化することはできません。 [1]

2022年刊行|両側を扱う改訂採点

改訂論文は脳損傷患者243名を対象としています。刊行年は2022年、オンライン公開は2020年です。「新しい採点法」を紹介する場合も、2026年に新しいカットオフが検証されたという意味にはしません。 [2]

2024年|身体無視と生活機能の系統的レビュー

11件の観察研究、脳卒中後1,400名を含むレビューでは、身体無視と運動・移動・ADLの不良な転帰との関連が報告されました。一方、研究は限られ、身体無視の下位分類を正確に捉える評価にも課題があります。関連は因果関係を証明せず、Fluff Test単独で退院先や回復を予測できるという意味でもありません。 [5]

2026年|無視評価に関する国際多職種合意

Delphi法の合意では、脳卒中後2週間以内の全例スクリーニングと、陽性例に対する各側面の包括的評価が示されました。2週間待つという意味ではありません。この合意はFluff Test固有の新基準ではなく、評価体制への提案です。参加者の減少など代表性の限界も踏まえます。 [6]

本記事では、未確認の日本人標準値、感度・特異度、最小臨床的重要差は設けません。数個の改善を直ちに意味のある回復とせず、姿勢・素材・教示・使用手・疲労などの条件と生活上の変化を照合します。

10 身体の探索から、更衣・清拭・移動へ。

左袖の状態を確認する女性と、家族・療法士
生活場面のイメージ。検査結果と日常の身体の扱いを照らし合わせます。
  • 更衣:袖のねじれ、腕の位置、片側の裾の乱れを自分で確かめるか。
  • 清拭・入浴:洗う範囲、拭き残し、順序、疲労による変化を確認する。
  • 移乗・移動:腕や足の位置を確認するか。環境への衝突と身体の置き忘れを分けて観察する。
  • 家族との共有:「気をつけて」だけでなく、どの場面で、何を一緒に確かめるかを具体化する。
申し送り例(架空)

「右半球病変、右手で実施。C9/15、I9/9、D=−40.0でした。左上肢の探索が少なく、本人の終了後も標的が残りました。左肩痛と到達範囲を確認し、更衣時に左袖の乱れを自分で確かめるか観察します。検査後の声かけによる変化は別に記録しました。」

支援は本人の同意と実際の動作に合わせて調整します。Fluff Testの反復だけを生活訓練の代わりにせず、「自分で袖を確認できる」「必要な声かけが減る」といった活動上の目標も共有してください。

11 記録用PDF|数値と観察を一緒に残す。

2ページの独自記録補助です。回収数、実施条件、採点方式、生活観察を記録し、計算例と照合できます。公式の原票や検証済み日本版ではありません。

記録補助PDFをダウンロード

原著の刺激図や採点表は複製していません。資料・イラストは独自制作であり、開発者・原著者による監修や承認を意味しません。

参考文献・実施資料

  1. Cocchini G, Beschin N, Jehkonen M. The Fluff Test: A simple task to assess body representation neglect. Neuropsychol Rehabil. 2001;11(1):17–31. doi:10.1080/09602010042000132.
    資料を読む
  2. Cocchini G, Beschin N. The Fluff test: Improved scoring system to account for different degrees of contralesional and ipsilesional personal neglect in brain damaged patients. Neuropsychol Rehabil. 2022;32(1):69–83(オンライン公開2020年). doi:10.1080/09602011.2020.1797828.
    PubMedで読む
  3. 太田久晶.半側空間無視のみかた.神経心理学.2025;41(2):80–87. doi:10.20584/neuropsychology.17248.
    資料を読む
  4. Priftis K, et al. Visual Scanning Training, Limb Activation Treatment, and Prism Adaptation for Rehabilitating Left Neglect: Who is the Winner? Front Hum Neurosci. 2013;7:360. doi:10.3389/fnhum.2013.00360.
    資料を読む
  5. Embrechts E, et al. The Association of Personal Neglect with Motor, Activities of Daily Living, and Participation Outcomes after Stroke: A Systematic Review. Arch Clin Neuropsychol. 2024;39(2):249–264. doi:10.1093/arclin/acad063.
    PubMedで読む
  6. Williams LJ, et al. International multidisciplinary consensus recommendations for the screening and assessment of post-stroke spatial neglect using an online Delphi method. Clin Rehabil. 2026 Aug 3. doi:10.1177/02692155261465653.
    PubMedで読む

改訂論文の著者公開稿:配置図・採点表を確認する

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