パーキンソン病で家事の負担を減らす工夫|原因と対策・自宅でできる工夫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

パーキンソン病で家事の負担を減らす工夫|原因と対策・自宅でできる工夫

HOUSEWORK & DAILY LIFE

つらいのは、気合いのせいではありません。

洗濯物をたたむのに時間がかかる、料理の途中で疲れて座り込んでしまう、玄関で足が動かなくなる——。パーキンソン病で家事がつらくなる背景には、運動症状だけでなく、疲労や段取りの立てにくさなど、いくつもの原因が重なっています。原因を整理し、今日から自宅でできる工夫を紹介します。

UPDATED2026
READ約11分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。家事の負担感には他の体調変化が関わることもあります。急な変化は自己判断せず、神経内科で確認してください。

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
家事のつらさは、複数の原因が重なって起きています
02
動作緩慢・すくみ足・巧緻動作の低下など、運動症状が影響します
03
疲労や段取りの立てにくさなど、目に見えない症状も関わります
04
家事を「小さな工程」に分け、環境を整えると負担は減らせます
05
急な変化があるときは、自己判断せず神経内科へ
01
A Task That Used To Be Easy

「こんなに、大変だったっけ。」

A Family’s Voice
「洗い物の途中で座り込んでしまって、片づけが終わらないんです」

以前は当たり前にできていた掃除・洗濯・料理が、いつのまにか時間がかかるようになり、途中で疲れて中断してしまう。本人はもどかしく、見ている家族も、どこまで手伝えばよいのか分からず戸惑う——。そんな声を、私たちはたくさん聞いてきました。

大切なのは、「なぜ大変になったのか」を分けて考え、原因ごとに工夫を組み合わせることです。

家事は、立つ・歩く・つかむ・運ぶ・考える、といった動作の連続です。パーキンソン病では、この一つひとつに小さな影響が出るため、まとめて行うと「大変さ」が積み重なって感じられます。まずはその原因を整理し、そのうえで具体的な工夫を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
Many Reasons, One Result

家事が大変になる、様々な原因。

「家事がつらい」という一つの結果の裏には、運動症状だけでなく、目に見えにくい非運動症状まで、複数の原因が重なっています。どれか一つではなく、自分にはどの原因が強く出ているかを知ることが、工夫の第一歩になります。

原因 家事にどう影響するか
動作緩慢 拭く・切る・畳むといった一つひとつの動きに時間がかかる
すくみ足 キッチンや玄関など、狭い場所や方向転換で足が動かなくなる
巧緻動作の低下 ボタン留めや洗濯ばさみなど、指先の細かい作業がしづらい
姿勢反射障害 高い場所に手を伸ばす、しゃがむ動作でふらつきやすい
遂行機能の低下 段取りを組んで複数の作業を同時に進めるのが苦手になる
疲労・症状の変動 薬の効き方によって、時間帯でできることが変わる

加えて、意欲の低下や気分の落ち込みが重なると、体は動かせても「やる気が起きない」という形で家事から遠ざかることもあります。原因が複数あるということは、工夫の入り口も複数あるということです。次の章から、具体的な立て直し方を見ていきます。

03
Break It Into Small Steps

STROKE LABの視点:家事を「小さな工程」に分ける。

家事がつらくなる大きな理由の一つは、「一つの家事」を最初から最後まで、まとめて片づけようとしてしまうことです。工程を分け、時間帯を選び、動線に目印をつくる。この3つで、同じ家事でも負担の感じ方は大きく変わります。

Three Steps

ステップ1:工程を分けて、一区切りごとに休む。「洗濯物を干す」なら、かごを運ぶ・干す・取り込むを別の作業として分け、それぞれの後に一度座ります。一気に片づけようとしないことが、続けるコツです。

ステップ2:薬が効いている時間帯に、重い工程を置く。体が動かしやすい時間帯を振り返り、掃除機がけや買い物など体力を使う工程をその時間に配置します。動きにくい時間帯には、座ってできる工程を回します。

ステップ3:つまずきやすい場所に、目印と一呼吸を置く。キッチンの入り口や方向転換する場所に目印のテープを貼り、そこでは一度立ち止まって「いち、に」と声に出してから進みます。焦って通ろうとすると、かえって足が出にくくなることがあります。

狭い場所の通過や方向転換、考えごとをしながらの動作は、足がすくみやすい典型的な場面として知られています。目印や一呼吸を置く工夫は、この性質を踏まえた対処法です。合う工程の分け方や目印の位置は人によって異なるため、作業療法士と一緒に、生活の動線を実際に歩きながら調整するのがおすすめです。

04
Room By Room

家事別・自宅でできる工夫。

ここからは、掃除・洗濯・料理・買い物の場面ごとに、具体的な工夫を紹介します。すべてを一度に取り入れる必要はありません。いちばん困っている場面から、一つずつ試してみてください

掃除

長時間立ち続ける掃除機がけは疲れやすいため、キャスター付きのモップや軽量な掃除機を使い、座れる場所を要所に用意しておきます。高い場所の拭き掃除は、ふらつきの原因になりやすいため、柄の長い道具を使って足元を安定させたまま行いましょう。

洗濯

洗濯かごを運ぶ代わりにキャスター付きのカートを使うと、両手が自由になり転倒のリスクも減らせます。物干しは、腕を高く上げなくてよい高さに調整し、洗濯ばさみは大きめでつまみやすいものに替えると、指先の負担が減ります。畳む作業は椅子に座って行い、時間を区切って進めましょう。

料理

材料を先にすべて出しておく、調理の手順をメモにして目につく場所に貼るなど、段取りを頭の中だけに頼らず外に出しておくと進めやすくなります。包丁の代わりに調理ばさみや固定式のスライサーを使う、冷凍の下ごしらえ食材や電子レンジを活用して火を使う時間を短くする、といった工夫も負担を減らします。

買い物

買うものはあらかじめリスト化し、混雑する時間帯を避けて出かけると、歩行に集中しやすくなります。重い荷物はキャスター付きのバッグにまとめ、必要に応じてオンラインでの注文や宅配サービスも取り入れると、体力の消耗を抑えられます。

Evidence
キッチンや玄関は、すくみ足が起こりやすい場所

すくみ足に関するキューイングのレビューでは、方向転換や、扉のような狭い場所の通過、考えごとをしながら動く二重課題の状況で、すくみ足が誘発されやすいとまとめられています。台所の作業台や玄関は、まさにこれらの条件が重なりやすい場所であり、視覚・聴覚の目印を使ったキューイングが有効な対処法として紹介されています。

限界:キューイングの効果には個人差があり、症状の進行によっても変動します。すくみ足による転倒は生活に大きく影響するため、頻繁に起こる場合は自己対処だけに頼らず、神経内科・理学療法士に相談してください。

出典:Ginis P, et al. Cueing for people with Parkinson’s disease with freezing of gait: a narrative review of the state-of-the-art and novel perspectives. Ann Phys Rehabil Med. 2018;61(6):407-413
一気にやらない。工程を分けて、休みながら進める。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、その先の動作そのものの評価と練習まで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
道具の工夫だけでなく、動作そのものを評価して立て直す。

自宅での工夫が、道具や環境を変えてその場の負担を減らす代償的アプローチだとすれば、専門施設で目指すのは、実際の家事動作を評価し、本人の運動症状と生活の困りごとを結びつけて練習を組み立てる回復的アプローチです。

1. 動作分析にもとづく評価。台所での立ち姿勢、物を運ぶときの歩行、指先の使い方など、実際の家事動作を観察し、どの症状がどの場面に影響しているかを特定します。

2. 生活場面を題材にした練習。台所や洗面所など、実際に困っている場所で、動作そのものを繰り返し練習します。練習が生活にそのまま活きるよう、場面を選んで組み立てます。

3. 家族を含めた役割の調整。本人ができる工程と、家族が手伝う工程を一緒に整理し、負担が偏らない分担のかたちを探ります。

STROKE LABが軸足を置くのは、道具や環境の工夫と、動作そのものの練習を組み合わせ、できることを少しずつ広げていくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。

Watch & Practice
家事の土台になる体力づくりを、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、立つ・歩く・手を伸ばすといった、家事の土台となる体の動きを鍛える体操を配信しています。無理のない範囲で、日課に取り入れてみてください。

家事の土台をつくる体操を見る

05
Rehab & Family Support

専門リハと、ご家族の関わり方。

専門のリハビリでは、実際に困っている家事の場面を一緒に確認し、工程の分け方・道具・動線を、その方の症状に合わせて調整します。「実際に困っている場面」を練習の題材にすることで、練習の効果がそのまま生活に活きやすくなります。

Evidence
在宅での作業療法で、日常生活の実感が改善した研究

パーキンソン病の在宅生活者を対象とした多施設無作為化比較試験(OTiP試験)では、10週間の在宅・個別作業療法を受けた群で、日常生活動作の自己評価による遂行状況が改善したと報告されています。家事を含む生活動作を、実際の場面で個別に調整する介入の意義を示す結果です。

限界:効果には個人差があり、症状の進行によって変動します。作業療法は薬による治療の代わりではなく、主治医の治療と組み合わせて使うものです。介入の頻度や内容は、専門的な評価にもとづいて個別に決まります。

出典:Sturkenboom IH, et al. Efficacy of occupational therapy for patients with Parkinson’s disease: a randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2014;13(6):557-566

ご家族の関わり方も、負担の感じ方を大きく左右します。できることまで先回りして手伝いすぎると、体を動かす機会が減ってしまうことがある一方、無理をさせすぎるのもつらさにつながります。「ここは本人に任せる」「ここは手伝う」を、様子を見ながら一緒に決めていく姿勢が助けになります。

受診の目安は、家事のできる範囲が急に狭くなった、転びやすくなった、体重が減ってきた、といった変化があるときです。こうした変化は薬の効き方や体調の変化が関係していることもあります。自己判断せず、神経内科で確認してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。体を動かす習慣づくりは体操・自主トレ大全もご参照ください。

06
FAQ

よくある質問。

Q. 家事がしんどいのは、気合いや工夫が足りないからですか?

いいえ、そうではありません。パーキンソン病では、動きが小さく遅くなる動作緩慢や、足がすくむすくみ足といった運動症状に加え、疲れやすさや段取りの立てにくさといった目に見えにくい症状も重なって、家事がつらくなります。気持ちの問題ではなく、いくつもの原因が重なった結果です。工程を分け、環境を整えることで、負担は具体的に減らせます。

Q. なぜキッチンや玄関で足がすくみやすいのですか?

すくみ足は、方向転換や、扉のような狭い場所の通過、考えごとをしながら歩く二重課題の状況で出やすいことが知られています。キッチンの作業台や玄関は、まさにこうした条件が重なりやすい場所です。床に目印のテープを貼る、扉の前で一度止まって声に出してから進む、といった工夫が助けになります。

Q. 家事を家族に手伝ってもらうのは、甘えになりますか?

甘えではありません。負担の大きい工程だけを手伝ってもらい、本人ができる工程は本人が担うという役割分担は、続けられる家事のかたちを作るために大切な工夫です。逆に、できることまで先回りして手伝いすぎると、体を動かす機会が減ってしまうこともあります。どこを手伝い、どこを本人に任せるか、家族で話し合ってみてください。

Q. 家事の合間に、どのくらい休憩を入れたらいいですか?

決まった正解はありませんが、疲れを感じてから休むのではなく、疲れる前に短い休憩をはさむ考え方が基本です。一つの家事を最初から最後まで通してやろうとせず、区切りのよいところで一度座る、というやり方が続けやすいでしょう。本人にとって心地よい配分は人によって違うため、作業療法士と一緒に探ることをおすすめします。

Q. 家事の工夫だけで、症状そのものは良くなりますか?

家事の工夫は、症状そのものを治すものではなく、今ある力で家事をこなしやすくするための工夫です。ただし、体を動かす機会を保つことは、生活全体の機能を支えることにつながります。効果には個人差があり、進行に伴って変動もします。薬による治療の代わりにはならず、主治医の治療と組み合わせて使うものです。

Q. 家事が急にできなくなったら、何科に相談すればいいですか?

急に家事のできる範囲が狭くなった、転びやすくなった、体重が減ってきた、といった変化があるときは、自己判断せず神経内科・主治医に相談してください。薬の効き方の変動や、他の体調の変化が関係していることもあります。そのうえで、生活の立て直しは作業療法士など専門リハビリのスタッフに相談すると、具体的な工夫が見つかりやすくなります。
07
STROKE LAB

生活の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。困っている家事の場面を一緒に確認し、動作の評価・道具・動線・家族の役割分担まで、その方の生活に合わせて組み立てます。実際に困っている場面を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、生活動作の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
工程を一つ分けるだけで、
家事は続けやすくなります。
STROKE LAB代表 金子唯史

家事ができなくなっていくことは、単なる不便さ以上に、その人らしさや役割が失われていくような感覚を伴います。「もう自分では家のことができない」と、自信をなくしてしまう方に、たくさん出会ってきました。

お伝えしたいのは、家事を小さな工程に分け、原因に合わせた工夫を重ねれば、できることはまだ広げられるということです。一気に元に戻そうとせず、一つの工程から。それだけで、続けやすさは変わります。

家事でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを題材に、その方に合う暮らし方を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍・文献の枠組みをもとに構成しています。家事の負担感には他の体調変化が関わることもあります。急な変化は、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年9月3日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
  • Sturkenboom IH, et al. Efficacy of occupational therapy for patients with Parkinson’s disease: a randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2014;13(6):557-566.(在宅・個別作業療法により、日常生活動作の自己評価による遂行状況が改善したと報告。第5動線・エビデンスボックスの出典)
  • Ginis P, et al. Cueing for people with Parkinson’s disease with freezing of gait: a narrative review of the state-of-the-art and novel perspectives. Ann Phys Rehabil Med. 2018;61(6):407-413.(方向転換・狭い場所の通過・二重課題ですくみ足が誘発されやすく、キューイングが有効な対処法であるとまとめたレビュー。第4動線・エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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