パーキンソン病で日中の強い眠気|原因と対策・自宅でできる工夫
その眠気は、怠けではありません。
夜はちゃんと寝ているはずなのに、日中に急に眠くなる。座るとすぐ眠ってしまう。そのつらさは、意志の弱さではありません。パーキンソン病では、複数の原因が重なって日中の強い眠気が起こることが知られています。原因の整理と、今日から自宅でできる工夫をまとめました。

「怠けている」と、言われて。
テレビを見ていても、会話の途中でも、気づくと目を閉じている。夜はきちんと布団に入っているはずなのに、日中はうとうとが止まらない。ご本人は「起きていようとしているのに、体が言うことを聞かない」ともどかしさを感じ、ご家族は「怠けているのでは」と誤解してしまう——。そんなすれ違いは、珍しくありません。
でも、知ってほしいのです。日中の強い眠気は、パーキンソン病でよくみられる症状の一つで、原因を整理すれば、対処できることも多いということを。
パーキンソン病の症状というと、震えや動きにくさが思い浮かびやすいですが、眠気や睡眠のトラブルも代表的な症状の一つです。実際、睡眠に関する困りごとは多くの患者さんで経験され、日中の眠気もそのうちの一つとして知られています。まずは眠気の背景にある原因を整理し、そのうえで自宅でできる工夫を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
重なり合う、6つの原因。
日中の眠気は、一つの原因だけで起こることは少なく、複数の要因が重なっていることがほとんどです。原因ごとに対処の仕方が変わるため、まずは可能性を整理しておきましょう。
| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| ①病気そのものの影響 | 脳の睡眠・覚醒を調整する部分が影響を受け、日中の眠気そのものが出やすくなる |
| ②夜間睡眠の分断 | 頻尿、寝返りのしにくさ、こわばりなどで夜中に何度も目が覚め、眠りが浅くなる |
| ③薬の作用 | 一部の治療薬は眠気や、前触れのない急な眠り込みと関連するとされる |
| ④レム睡眠行動障害 | 夢に合わせて体が動いてしまい、夜間の睡眠の質が下がる |
| ⑤自律神経の症状 | 食後の血圧低下(起立性低血圧)などが、食後の強い眠気につながることがある |
| ⑥活動量・気分の低下 | 日中の活動が減ると体内時計が乱れやすく、うつや意欲の低下も眠気に重なる |
睡眠時無呼吸のような、パーキンソン病とは別の睡眠の病気が重なっていることもあります。原因が複数あるからこそ、一つの工夫だけで解決しようとせず、生活リズム・夜間環境・薬の3方向から見直すことが近道になります。次の章から、自宅でできる工夫を具体的にお伝えします。

STROKE LABの視点:1日を「光」と「動き」で設計する。
眠気の対策というと「夜どう眠るか」に目が向きがちですが、実は日中の過ごし方こそが、夜の眠りと日中の眠気の両方を整える鍵になります。体内時計は、朝の光と日中の活動によってリセットされるためです。自宅でできる設計を、3つの場面に分けて整理します。
朝:同じ時間に起きて、光を浴びる。起床時間を毎日そろえ、朝食後にカーテンを開けて光を浴びる、あるいは短時間でも屋外に出る時間をつくります。体内時計のスイッチを入れる合図になります。
昼:座りっぱなしを避け、こまめに動く。食後すぐに横にならず、家事や短い散歩など、体を動かす時間を意識的につくります。じっとテレビを見続ける時間が長いほど、眠気は強まりやすくなります。
夕方以降:カフェインと長い昼寝を控える。夕方以降のコーヒーや紅茶は控えめにし、遅い時間の長い昼寝は避けます。夜の睡眠を守ることが、翌日の眠気を減らすことにつながります。
大切なのは、眠気と戦って無理に起きていようとするのではなく、1日全体のリズムを整えることで、眠気が出にくい状態をつくっていくという考え方です。体を動かすこと自体が睡眠の質を底上げすることもわかっているので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。合う生活リズムは人それぞれなので、作業療法士と一緒に無理のない形を探るのがおすすめです。

仮眠・夜間環境・記録のコツ。
1日の設計に加えて、仮眠の取り方・夜の寝室環境・眠気の記録という3つの工夫が、日中の眠気とうまく付き合う助けになります。
仮眠は、午後の早い時間に20分前後にとどめるのがコツです。長く眠りすぎたり、夕方以降に仮眠をとったりすると、夜の睡眠が浅くなり、翌日の眠気が強まる悪循環になりやすいためです。夜間は、寝返りをしやすいよう寝具や照明を見直す、トイレまでの動線を明るく安全にする、痛みやこわばりがあれば就寝前の姿勢を工夫するなど、夜の睡眠が分断されにくい環境を整えます。さらに、いつ・どのくらい眠かったかを簡単なメモやカレンダーに記録しておくと、生活リズムの調整に役立つだけでなく、受診時に医師へ伝える具体的な情報にもなります。無理に手書きにこだわらず、スマートフォンのメモ機能を使うのも良い方法です。

日中の眠気が強いパーキンソン病の方を対象に、明るい光(約1万ルクス)を1日2回・1時間ずつ2週間浴びる介入と、ごく弱い光を浴びる対照群を比較した無作為化比較試験では、明るい光を浴びた群で眠気の指標(エプワース眠気尺度)が介入前より明らかに改善したと報告されています。どちらの群でも日中の活動量が増える傾向もみられました。
限界:参加者は31名と小規模な研究です。その後に行われたより大規模なメタ解析では、光療法とうつ・眠気の改善との間に統計的に明確な関連は見られなかったとも報告されており、効果には研究間でばらつきがあります。光の強さや浴びる時間帯は専門家の指導のもとで調整するのが安全です。効果には個人差があり、薬や専門的な治療の代わりにはなりません。
自宅での工夫が、光や活動のタイミングを調整して生活リズムを整える働きかけだとすれば、専門施設で目指すのは、運動そのものの力で夜間睡眠の質を底上げし、日中の眠気を減らしていくアプローチです。眠気への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 有酸素運動を軸にした運動処方。歩行やエルゴメーターなど、その方の体力に合わせた有酸素運動を、無理のない頻度と強度で継続します。
2. 姿勢・呼吸へのアプローチ。いびきや浅い呼吸につながりやすい姿勢の崩れを整え、夜間の呼吸のしやすさを support します。
3. 生活記録に基づく個別調整。眠気の記録や活動量のデータをもとに、運動の時間帯や強度をその人に合わせて微調整していきます。
STROKE LABが軸足を置くのは、その人の体力や生活リズムに合わせて運動を組み立て、続けながら夜間睡眠と日中の眠気の両方を底上げしていくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割であり、私たちは体の使い方と生活リズムの側から支えます。
パーキンソン病の方を対象とした運動介入の無作為化比較試験62件・参加者3,274名分をまとめたシステマティックレビューでは、運動介入を行った群で、行わなかった群と比べて睡眠の質の指標が統計的に有意に改善していたと報告されています。太極拳のような穏やかな運動から、レジスタンス運動まで、幅広い種類の運動で睡眠に対する良い変化が確認されています。
限界:対象となった研究は運動の種類や量にばらつきがあり、結果は幅を持って解釈する必要があります。この解析は睡眠の質全体を扱ったもので、日中の眠気そのものを主要な指標にしたものではありません。効果には個人差があり、運動療法は薬の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
脳リハ.comのYouTubeでは、体を大きく動かす体操を配信しています。日中に体を動かす習慣づくりとして、無理のない範囲で取り入れてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、その人の1日の過ごし方や眠気の記録を一緒に確認し、光を浴びるタイミング、活動する時間帯、運動の種類と量を、その人の生活に合わせて組み立てます。「実際に眠くなる場面」を手がかりにすると、対策が生活にそのまま活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは生活リズムと体の使い方の側から支えます。

受診の目安は、日中の眠気で日常生活に支障が出てきた、前触れなく急に眠り込んでしまうことがある、いびきや呼吸の乱れを指摘されたことがある、といったときです。眠気の原因は一つとは限らず、睡眠時無呼吸のような別の病気が隠れていることもあります。自己判断で薬を調整せず、神経内科で原因を確かめてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 日中に強い眠気が出るのは、パーキンソン病のせいですか?
Q. 夜はちゃんと寝ているのに、なぜ日中も眠くなるのですか?
Q. 自宅でできる眠気対策はありますか?
Q. 昼寝はしてもよいのでしょうか?
Q. 眠気が強いとき、車の運転はしても大丈夫ですか?
Q. 眠気は薬のせいなのでしょうか?
眠気の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。眠気の記録や1日の過ごし方を一緒に確認し、光・活動・運動のタイミングを、その人に合わせて組み立てます。実際に眠くなる場面を手がかりにするので、対策がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、生活リズムと体の使い方の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
ありません。

日中に眠ってしまうたびに、「またか」と申し訳ない気持ちになる方、「どうしてこんなに眠いんだろう」と不安になるご家族に、たくさん出会ってきました。眠気は目に見えにくく、周囲に伝わりにくい症状だからこそ、誤解されやすいのだと思います。
お伝えしたいのは、日中の強い眠気は病気の症状であり、原因を整理すれば、対処の糸口は必ず見つかるということです。朝の光、日中の動き、夜の環境。小さな積み重ねが、1日を軽くしてくれます。
眠気でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。実際に眠くなる場面そのものを手がかりに、その方に合う1日の過ごし方を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。日中の眠気の裏には、睡眠時無呼吸やうつなど他の原因が隠れていることもあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月27日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Videnovic A, Klerman EB, Wang W, et al. Timed Light Therapy for Sleep and Daytime Sleepiness Associated With Parkinson Disease: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2017;74(4):411-418.(明るい光療法により日中の眠気の指標が改善したと報告。第1エビデンスボックスの出典)
- Li Z, Hu P. Exercise: the key to enhancing sleep quality and physical function in Parkinson’s disease? A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2025;20(11):e0336381.(62件のRCT・3,274名を対象に運動介入が睡眠の質を有意に改善したと報告。第2エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)