多系統萎縮症(MSA)とパーキンソン病の違い|自律神経症状から見分けるサイン – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

多系統萎縮症(MSA)とパーキンソン病の違い|自律神経症状から見分けるサイン

MULTIPLE SYSTEM ATROPHY

同じ薬が、同じようには効かない。

パーキンソン病と診断されたのに、立ちくらみやトイレの悩みが先に目立ってきた。薬の効きが、思っていたのと違う。それは多系統萎縮症(MSA)という、よく似た別の病気のサインかもしれません。何が同じで、何が違うのか、自律神経症状を軸に整理します。

UPDATED2026
READ約11分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。MSAとパーキンソン病の鑑別は専門的な診察と検査が必要です。この記事だけで診断を判断せず、気になる変化は神経内科で確認してください。
Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
MSAとパーキンソン病は、どちらも脳にαシヌクレインという物質がたまる仲間の病気です
02
MSAは、立ちくらみや排尿のトラブルなど自律神経症状が早くから目立ちやすいのが特徴です
03
症状が現れる「順番」が、見分ける手がかりのひとつになります
04
起立の仕方や動作の工夫で、自律神経症状による困りごとは軽くできます
05
鑑別は専門的な診察と検査が必要です。自己判断せず神経内科へ
01
Something Felt Different

「思っていたのと、違う。」

A Family’s Voice
「パーキンソン病だと聞いていたのに、立ちくらみとトイレの失敗が先に増えてきて」

診断された当初は、手のこわばりや歩きにくさが中心でした。ところが半年、一年と経つうちに、急に立ち上がるとふらついて座り込んでしまう、トイレに間に合わないことが増える、といった変化が先に目立つようになった——そんな経過をたどるご本人・ご家族が、実は少なくありません。

それは多系統萎縮症(MSA)という、パーキンソン病とよく似た、しかし別の病気の経過であることがあります。まずは、両者の共通点と違いを整理してみましょう。

多系統萎縮症は、パーキンソン病に比べて頻度は少ないものの、パーキンソン症状を示す方の一部にみられる病気です。見た目の動きが似ているために、初期にはパーキンソン病と区別がつきにくいことがあります。ここでは、自律神経症状という切り口から、両者の違いを見ていきます。パーキンソン病のリハビリ全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
Same Family, Different Path

共通点と、違い。

MSAとパーキンソン病は、どちらもαシヌクレインという物質が脳にたまることで起こる、同じ仲間の病気(シヌクレイノパチー)です。見た目の動作緩慢やこわばりが似るのは、このためです。一方で、たまる場所と広がり方が違います。パーキンソン病は主に中脳の黒質という一か所を中心に進みますが、MSAは小脳・大脳基底核・自律神経系という複数の系統に、同時に近い形で変化が及びます。これが「多系統」という名前の由来であり、症状の現れ方の違いにもつながります。

MSAは、どの系統の症状が目立つかによって、パーキンソン症状が中心のMSA-Pと、小脳性のふらつきや呂律の回りにくさが中心のMSA-Cに分けられます。日本ではMSA-Cで発症する方が多いとされますが、MSA-Pとして経過し、パーキンソン病と診断されていた方が、後にMSAへと診断が見直されることもあります。頻度としては、パーキンソン症状を示す方のうち一定の割合がMSAであるとする報告もあり、決して珍しい取り違えではありません。

03
The Order Of Symptoms

STROKE LABの視点:自律神経症状という見分けるサイン。

両者を見分ける大きな手がかりのひとつが、自律神経症状が現れる「順番」と「強さ」です。パーキンソン病でも自律神経症状(便秘や立ちくらみなど)は起こりますが、多くは病気が進んでから、あるいはゆるやかに現れます。一方MSAでは、運動症状とほぼ同時か、それより先に、自律神経症状が強く現れやすいという特徴があります。

代表的な自律神経症状は次の通りです。頻度が最も高いのは排尿のトラブルで、頻尿や尿失禁から始まり、進行すると尿が出にくくなることもあります。次いで、急に立ち上がったときのふらつきや失神につながる起立性低血圧、発汗の低下、男性では勃起機能の低下がみられます。さらにMSAでは、眠っているときの吸気性の喘鳴(息を吸うときにゼーゼーという音がする)が特徴的な症状として知られており、これは注意すべきサインのひとつです。

見るポイント パーキンソン病で多い傾向 MSAで多い傾向
自律神経症状の出方 病気が進んでから、ゆるやかに現れることが多い 運動症状と同時か、それより早く、強く現れやすい
安静時の震え 片側から始まる、いわゆる丸薬まるめ様の震えが目立ちやすい 震えよりも、こわばりや動作の乏しさが中心のことが多い
レボドパの効き方 よく効き、効果が長く続くことが多い 初期にある程度効いても、乏しい・長続きしないことが多い
小脳症状(ふらつき・呂律) 通常は目立たない タイプにより、体幹のふらつきや呂律の回りにくさが目立つ
進行の速さ 比較的ゆるやかなことが多い パーキンソン病より速い傾向があるとされる

これらはあくまで「傾向」であり、この表だけで診断を決めることはできません。実際の鑑別には、MRIでの脳の萎縮パターンの確認や、心臓の自律神経のはたらきをみるMIBG心筋シンチグラフィー、起立時の血圧変化を調べる検査などが必要です。気になる変化があるときは、この表を参考にしつつ、必ず神経内科で相談してください。

04
Living With It

自律神経症状との、付き合い方。

自律神経症状そのものを薬なしで治すことはできませんが、動作の工夫で、日常の困りごとを軽くすることはできます。今日から試せる工夫を、場面別に整理します。

Three Situations

立ち上がるとき。ベッドや椅子から急に立たず、いったん座位で数十秒待ってから、手すりや机につかまってゆっくり立ち上がります。脚を交差させる、脚に力を込める、その場で軽くしゃがむといった動作は、立ちくらみの軽減に役立つことがあります。

入浴・食後。熱いお湯や食後は血圧が下がりやすいタイミングです。湯温をぬるめにする、食後すぐに立ち上がらず少し休んでから動く、といった工夫で、ふらつきによる転倒を防ぎやすくなります。

トイレの場面。時間を決めてトイレに行く(時間排尿)、夜間はポータブルトイレや手すりで動線を短くする、といった工夫が、急な尿意への不安を減らします。弾性ストッキングや腹帯の使用は、立ちくらみの軽減に役立つことがあり、主治医と相談しながら取り入れられます。

水分や塩分のとり方、薬の調整は主治医の領域です。自己判断で極端に増減させず、体調の変化は次の診察で必ず伝えてください。私たちリハビリの立場では、「症状が出やすい場面」を洗い出し、動作の順番や環境を整えることで、転倒や失敗を防ぐ設計をお手伝いします。体を動かす基本的な運動は体操・自主トレ大全もあわせてご覧ください。

Evidence
脚を交差させ力を込める動作が、起立時の血圧低下を和らげたという報告

健常者を対象とした研究では、脚を交差させて筋肉に力を込める、しゃがむといった「身体的カウンターマヌーバー」が、起立時や立位保持中の血圧低下を和らげる方向にはたらいたと報告されています。器具を使わずその場でできる工夫として、自律神経障害による立ちくらみの対策にも応用されています。

限界:この研究は主に健常者や血管迷走神経性の症状を対象にしたもので、MSAの方を対象に大規模に検証したものではありません。効果には個人差があり、体調やそのときの血圧によっても変わります。立ちくらみが強い方は、動作を試す前に主治医・療法士と安全な方法を確認してください。

出典:Krediet CT, van Dijk N, Linzer M, van Lieshout JJ, Wieling W. Management of vasovagal syncope: controlling or aborting faints by leg crossing and muscle tensing. Circulation. 2002;106(13):1684-1689
急に立たない。順番を整えるだけで、転ぶ理由は減らせます。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、進行のスピードを見据えた安全管理と生活の質の維持まで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに大切にしていること
MSAは進行性の病気だからこそ、無理をさせない設計が要になります。

MSAはパーキンソン病より進行が速い傾向があるとされ、自律神経症状に加えて、小脳症状やパーキンソン症状が重なっていきます。そのため専門施設でのリハビリは、「今できることを大きく伸ばす」よりも、「安全に、できることを長く保つ」ことを軸に組み立てます。大きく3つの視点から関わります。

1. 転倒予防の設計。起立性低血圧によるふらつきと、姿勢保持の乏しさが重なりやすいため、動作の順番・環境(手すり・段差)・見守りのタイミングを具体的に組み立てます。

2. 排尿・排便リズムの整え方。時間排尿や体位の工夫など、生活動線に無理なく組み込める方法を、ご本人・ご家族と一緒に探ります。

3. 変化に早く気づく体制。呂律の変化、夜間の喘鳴、飲み込みにくさなど、進行に伴って出てくることのあるサインを見逃さず、主治医への相談タイミングを一緒に考えます。

STROKE LABが大切にしているのは、「治す」ではなく「安全に、その人らしい生活を長く保つ」という視点で、症状の変化に合わせて関わり方を調整し続けることです。効果や進行の見通しには個人差があります。薬の調整・診断の見直しは主治医の役割であり、私たちは生活動作と安全の側から支えます。

Watch & Practice
安全に体を動かす体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、無理なく続けられる体操を配信しています。立ちくらみが気になる方は、座ったままできるものから始めてみてください。

体操を見る

05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

専門のリハビリでは、日常のどの場面で困りごとが起きているかを一緒に確認し、動作の工夫・環境の調整・見守り方を、その人の生活に合わせて組み立てます。薬の調整や診断の確定は主治医の役割であり、私たちは生活動作と安全の側から支えます。

受診・相談の目安は、パーキンソン病の薬の効きが乏しい、または効果が長続きしないと感じるとき、立ちくらみや失神を繰り返すとき、排尿のトラブルが強まってきたとき、夜間の呼吸音(喘鳴)に気づいたときです。これらはMSAに限らず様々な原因で起こり得るため、この記事だけで診断を判断せず、神経内科で相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. パーキンソン病と診断されていますが、実はMSAということもありますか?

あります。MSAのうちパーキンソン症状が中心のタイプ(MSA-P)は、初期にはパーキンソン病ととてもよく似ています。薬の効きが乏しい、進み方がやや速いといった経過から、途中で診断が見直されることもあります。診断の見直しは自己判断せず、必ず神経内科で相談してください。

Q. 立ちくらみが多いのは、MSAのサインですか?

立ちくらみ(起立性低血圧)は、MSAで比較的早い時期から目立ちやすい症状のひとつです。ただし、パーキンソン病でも進行に伴って、あるいは薬の影響で起こることがあります。立ちくらみだけでMSAと決めることはできず、他の症状とあわせて神経内科で確認する必要があります。

Q. MSAとパーキンソン病は、薬の効き方が違いますか?

傾向として、パーキンソン病はレボドパなどの薬がよく効き、その効果が長く続きやすいとされます。一方MSAでは、初期にある程度効くことがあっても、効果が乏しい、または長続きしないことが多いといわれます。ただし個人差が大きいため、薬の効き方の判断は必ず主治医に相談してください。

Q. 自律神経症状はリハビリで良くなりますか?

リハビリで自律神経のはたらきそのものを治すことはできませんが、動作の工夫で症状による困りごとを減らすことは期待できます。たとえば起立の仕方をゆっくりにする、脚に力を込める動作を使う、弾性ストッキングを併用するといった工夫です。薬による治療とあわせて行うことが基本です。

Q. MSAはパーキンソン病より進行が速いのですか?

一般的にMSAはパーキンソン病より進行が速い傾向があるとされています。ただし進み方には個人差があり、すべての方に当てはまるわけではありません。進行の見通しは、経過をみている神経内科の主治医が最もよく把握しています。気になる変化があれば、遠慮せず相談してください。

Q. 家族はどんなことに気をつけて見守ればいいですか?

立ち上がったときのふらつきによる転倒、トイレが間に合わないことへの不安、入浴後や食後の急な体調変化などに気を配ると安心です。本人が症状を伝えにくく感じていることもあるため、責めずに困りごとを聞く姿勢が助けになります。生活での気づきは、次の診察で主治医に伝える情報としてとても役立ちます。
07
STROKE LAB

生活の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。MSAのように自律神経症状と運動症状が重なる病気でも、困っている生活場面を一緒に確認し、動作の工夫・環境の調整・見守り方を、その人に合わせて組み立てます。薬の調整・診断は主治医を尊重し、私たちは生活動作と安全の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
見分けることより、
今日をどう過ごすかを一緒に。
STROKE LAB代表 金子唯史

「パーキンソン病だと思っていたのに、思っていた経過と違う」。そう感じたご家族から、これまで何度もご相談をいただいてきました。診断名が変わることへの不安、薬が効きにくいことへの戸惑い、立ちくらみやトイレの悩みで外出がおっくうになる日常——どれも、とても重いものだと感じています。

私たちにできるのは、診断を下すことではありません。今、目の前にある困りごとを、動作の工夫と環境の整え方で、少しでも軽くすることです。進行のスピードにかかわらず、その人らしい生活をできるだけ長く保てるよう、一緒に考えていきたいと思っています。

診断名や経過に不安があるとき、生活の工夫でお困りのとき、どうぞ一度ご相談ください。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。MSAとパーキンソン病の鑑別は専門的な診察・検査が必要です。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月11日)。

  • 難病情報センター:多系統萎縮症(指定難病17)
  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 東京逓信病院:多系統萎縮症(疾患解説ページ)
  • 独立行政法人国立病院機構 宇多野病院:多系統萎縮症(疾患解説ページ)
  • Krediet CT, van Dijk N, Linzer M, van Lieshout JJ, Wieling W. Management of vasovagal syncope: controlling or aborting faints by leg crossing and muscle tensing. Circulation. 2002;106(13):1684-1689.(身体的カウンターマヌーバーによる起立時血圧低下の軽減に関する報告。第4章エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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