パーキンソン病を職場に伝えるべきか|開示の判断と配慮の求め方
開示は、全か無かではありません。
パーキンソン病だと診断されて、次に頭をよぎるのが「職場にどう伝えるか」という悩みです。誰に・何を・どこまで伝えるかは、分けて決めることができます。判断の考え方と、配慮を求めるための具体的な伝え方を整理します。

「言うべきか」、ずっと考えている。
診断されてから、会議中に手が震えないか、動きが遅いことに気づかれないかと、仕事中ずっと気を張っている——。そんな声をよく聞きます。伝えれば楽になるかもしれない。でも、評価が下がったり、腫れ物扱いされたりしたら、という不安もある。どちらの気持ちも、自然なものです。
大切なのは、「話す・話さない」の二択で考えず、誰に・何を・どこまで伝えるかを、自分のペースで組み立てていくという視点です。
パーキンソン病は、震え・動作緩慢・こわばりなど症状の出方が人によって大きく異なり、進行の速さも一人ひとり違います。だからこそ「診断されたら、すぐ全員に伝えるべき」という一律の正解はありません。まずは、開示することで何が変わり、何がリスクになりうるのかを整理してから、自分に合ったタイミングと範囲を考えていきましょう。
開示の、メリットとリスク。
開示するかどうかを考えるとき、得られるものと、心配なことの両方を並べて見ると整理しやすくなります。どちらが正しいということではなく、自分の状況にとってどちらの比重が大きいかを考える材料にしてください。
| 伝えた場合に期待できること | 伝えないことで避けられること |
|---|---|
| 業務内容や勤務時間の配慮を相談できる | 周囲の見方が変わることへの不安 |
| 通院や体調不良時に理由を説明しやすい | 昇進・異動などへの影響を心配せずにすむ |
| 気を張り続ける負担が減る | 今のポジションや役割を維持しやすい |
| 障害者雇用や難病関連の制度を利用しやすくなる | 噂として広まることへの不安を避けられる |
なお、病気を理由にした一方的な解雇や不利益な扱いは法律で制限されており、業種や会社の規模によっては合理的配慮が求められる場合もあります。ただし実際の運用は職場ごとに差があるのも現実です。不安が大きいときほど、いきなり全体に公表するのではなく、信頼できる一人から段階的に始める方法が現実的です。制度の全体像はリハビリ完全ガイドでも触れています。

STROKE LABの視点:判断の3つの軸。
開示を「する・しない」の二択でなく、誰に・何を・どこまで伝えるかを分けて考えると、気持ちが少し軽くなります。判断のために見るとよい3つの軸を紹介します。
軸1:症状は、業務や安全にどこまで影響しているか。運転・高所作業・機械操作など、安全に直結する業務では、早めの相談が本人と周囲を守ります。デスクワーク中心で今のところ支障が小さい場合は、急いで伝える必要は薄いかもしれません。
軸2:黙っていることの負担は、どれくらい大きいか。症状を隠すための気疲れが大きいなら、伝えることで負担が減る可能性があります。逆に、今はまだ大きな負担でないなら、様子を見るという選択も間違いではありません。
軸3:利用したい制度や配慮は何か。時差出勤、業務内容の調整、障害者雇用や難病医療費助成などの制度を使いたい場合、制度の利用には一定の情報開示が伴うことがあります。使いたい制度から逆算して、必要な範囲を考えます。
この3つの軸で考えると、「今は上司にだけ、業務に関わる範囲で伝える」「まずは産業医に相談してから決める」といった、自分に合った落としどころが見えてきます。一度決めた範囲も、症状の変化に合わせて後から広げることができます。

誰に、どう伝えるか。
伝える相手は、一般的に産業医や保健師(いる場合)→直属の上司→人事の順で進めると、業務上の配慮につながりやすくなります。産業医には守秘義務があり、本人の同意なく上司や人事に詳細を伝えることは基本的にありません。まず産業医面談で状況を整理し、そこから「上司にはどこまで伝えるか」を一緒に考える進め方は、多くの人にとって心理的なハードルが低い方法です。
上司や人事に話すときは、病名だけでなく「困りごと」と「欲しい配慮」をセットで伝えるのがコツです。病名だけでは、相手はどう対応すればよいかわかりません。次のような伝え方が参考になります。

| 困りごと | 伝え方の例 |
|---|---|
| 長時間の立ち仕事でこわばりが出る | 「1時間に一度、座って休める時間をいただけますか」 |
| 通院で月1〜2回の外出が必要 | 「通院日を固定させてもらえると、業務調整がしやすいです」 |
| 細かい書類作業に時間がかかる | 「締め切りに少し余裕をいただけると助かります」 |
話す前に、困りごとと希望する配慮を簡単なメモにしておくと、当日緊張していても要点を伝えやすくなります。同僚には、必要最小限の範囲(「体調管理で通院がある」程度)にとどめる、という選択も十分に成り立ちます。
パーキンソン病は国の指定難病で、一定の条件を満たすと難病医療費助成制度の対象になります。また、症状の程度によっては障害者手帳の取得や、障害者雇用における合理的配慮の対象となる場合もあります。事業主には、募集・採用や職場において、障害のある人が働きやすいよう配慮する努力が求められる枠組みがあります。
限界:制度の対象条件や運用は年度や自治体・会社によって異なり、本記事の情報だけで自分が対象になるかは判断できません。最新の内容は、お住まいの自治体窓口、難病相談支援センター、ハローロークの専門窓口、または社会保険労務士に確認してください。
職場に何を伝えればよいか迷う理由の一つは、自分の症状が、業務のどの場面にどう影響するかが本人にもはっきりしていないことです。作業療法士による評価では、次のような視点で「なんとなく困る」を具体化していきます。
1. 動作の評価。立位保持、歩行、手指の巧緻動作、書字など、実際の業務に近い動きを評価し、どの場面で時間がかかりやすいか、疲れやすいかを整理します。
2. 一日の変動の把握。薬の効き方によって症状が変動する方も多いため、一日のうちで動きやすい時間帯・そうでない時間帯を一緒に把握します。
3. 配慮案への翻訳。評価した内容を、「1時間に一度休憩」「重い荷物の運搬は避ける」など、職場に伝えやすい具体的な言葉に整理する手伝いをします。
STROKE LABがお手伝いできるのは、症状を機能面から評価し、職場に伝えやすい言葉に整理するところまでです。開示するかどうかの最終判断や、法律・制度の解釈そのものは、産業医や社会保険労務士など専門家の領域になります。私たちは、その判断を後押しする材料づくりを、身体機能の専門家として支えます。
脳リハ.comのYouTubeでは、座ったままできる体操や、こわばりをやわらげる動きを配信しています。休憩時間に取り入れてみてください。
専門リハと、相談窓口。
開示の悩みは、身体面・制度面・気持ちの面が絡み合っています。それぞれに合った相談先を持っておくと、一人で抱え込まずにすみます。身体機能や配慮内容の整理は作業療法士、制度や手続きは難病相談支援センターやハローロークの専門窓口、労務上のトラブルは労働局の総合労働相談コーナーや社会保険労務士が頼りになります。一人で完璧な答えを出そうとせず、専門家を組み合わせて使うという考え方で十分です。
また、開示の前後で症状そのものへの不安が強い場合は、体操やリハビリで身体機能を整えておくことも、気持ちの余裕につながります。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方、自宅でできる体操は体操・自主トレ大全にまとめています。

よくある質問。
Q. パーキンソン病は、必ず職場に伝えないといけませんか?
Q. 伝えると、解雇や配置転換をされてしまいませんか?
Q. 誰に、どこまで伝えればいいですか?
Q. 配慮してほしいことを、うまく言葉にできません

Q. 障害者手帳や制度は、開示の判断に関係しますか?
困りごとの整理は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。「職場に何を伝えればいいかわからない」というご相談にも、身体機能の評価を通じてお応えします。動作の評価をもとに、業務のどの場面にどう影響するかを具体的な言葉に整理し、産業医や職場との話し合いに使える材料づくりをお手伝いします。開示の最終判断や法律・制度に関わる部分は、専門の相談窓口と連携しながら進めます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
職場にも一つ。

「症状を隠さなきゃ」と気を張り続けている方に、たくさん出会ってきました。職場での一言が、その緊張をほどく大きな一歩になることがあります。
お伝えしたいのは、開示は全か無かではなく、自分のペースで組み立てられるということです。そして「困りごとを言葉にする」作業は、身体機能の専門家である私たちが力になれる部分です。
職場との関わり方でお悩みなら、どうぞ一度ご相談ください。ご本人のペースを大切に、一緒に考えます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、公的機関の一般情報とSTROKE LABの臨床経験、下記書籍の枠組みをもとに構成しています。法律・制度・労務に関する個別の判断は、必ず産業医・社会保険労務士・ハローロークなど専門窓口にご確認ください(最終確認日:2026年8月9日)。
- 厚生労働省:合理的配慮指針・障害者雇用に関する情報
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- 各都道府県:難病相談支援センター(療養・就労相談窓口)
- 各都道府県労働局:総合労働相談コーナー
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)