W座りが多い子|股関節・体幹・姿勢発達の見方
W座りが多い子|ほかの姿勢へ動けるかを見てみよう
「またW座りしている。直した方がいいのかな?」——そんなふうに心配になる保護者の方は少なくありません。 ただ、現在の研究では、W座りそのものを一律に禁止すべき科学的根拠は確認されていません。 大切なのは座り方だけを切り取るのではなく、 なぜその姿勢を選びやすいのか、そこから左右へ動き、別の姿勢へ移り、立つ・歩く・遊ぶへつながっているか を見ることです。股関節・体幹・内股との関係から、家庭での対応、相談の目安まで整理します。

W座りを見つけても、まず「悪い姿勢」と決めない。
あぐらに直しても、気づくと両足を外側へ開いたW座りに戻っている。 「股関節に悪い」「内股になる」「体幹が育たない」と聞くと、放っておいてよいのか心配になります。
でも最初に確認したいのは、 その姿勢があることではなく、その姿勢しか選べないのか という違いです。
W座りは、子どもがお尻を床につけ、膝を曲げ、両足を身体の外側へ置く座り方です。 上から見ると脚が「W」のように見えるため、この名前で呼ばれます。 幼児期にはみられることのある座位の一つです。
2024年に発表された系統的レビューでは、W座りに関する研究を検討した結果、 W座りを一律に禁止すべき科学的根拠は確認されていません。 ただし、研究数そのものが少なく、長期的な影響を十分に検証した質の高い研究が多いわけでもありません。 「絶対に悪い」「絶対に何も問題ない」と両極端に考えるのではなく、その子の動き全体を見ることが大切です。
W座りでは、股関節がどうなっている?
W座りでは、膝が曲がり、股関節は大きく内向きに回った状態になります。 子どもの股関節は、大人を小さくしただけの構造ではありません。 成長途中では大腿骨の向きや関節の柔らかさが変化しており、内向きに回しやすい時期があります。
特に「大腿骨前捻」と呼ばれる、大腿骨の上部が前方へ向く特徴が強い子では、股関節の内旋が大きくなりやすく、 W座りの方が身体にとって楽な場合 があります。 つまり、「W座りをしたから骨が内向きになった」と考えるだけではなく、「もともと内向きへ動きやすいためW座りを選んでいる」という方向も考える必要があります。
「W座りだから内股になった」と決めるのではなく、股関節の回旋特性や大腿骨前捻によって「内股もW座りも起こりやすい」という共通背景を考えることが重要です。

なぜ子どもは、W座りを選びやすいのか。
W座りは、左右に脚が広がるため、床との接触範囲を大きく取りやすい姿勢です。 そのため、床で玩具を操作したいときなどに、この姿勢を選ぶ子もいます。 ただし、「安定するからW座りをする=体幹が弱い」と短絡的には判断できません。
STROKE LABでは、W座りを見たときに「直すべき姿勢」と考える前に、 どんな課題のときにW座りを選ぶのか を観察します。 何もしていないときなのか、両手で細かな玩具を扱い始めたときなのか、疲れてきたときなのか。 条件によって座り方が変わるなら、それ自体が身体の使い方を考える手がかりになります。
| 観察する場面 | 考えるヒント |
|---|---|
| 両手で遊び始めるとW座りになる | 手を自由に使うとき、下半身にどのくらい安定を求めているかを見る |
| いつも同じ向きの横座りしかできない | 股関節回旋や骨盤・体幹回旋の左右差を確認する |
| W座りから直接動き出しにくい | 左右への重心移動や、四つ這い・膝立ちへの姿勢変換を見る |
| 立位・歩行でも強い内向きがある | W座り単独ではなく、股関節・下腿・足部まで回旋プロフィールを確認する |
内股・股関節・体幹との関係を、研究から整理する。
2024年の系統的レビューでは、W座りについて7研究を検討しました。 その結果、W座りを避けるよう推奨する科学的根拠は確認されず、発育性股関節形成不全との関連も認められませんでした。
限界:W座りを直接扱った研究数は少なく、観察研究が中心です。長期的な因果関係を十分に検証した研究が豊富という意味ではありません。 また、筋活動を比較した研究は成人を対象としており、小児へそのまま当てはめることはできません。
104人の子どもを対象に、骨盤X線と座り方を比較した研究では、W座りをする子としない子で、股関節形成不全の頻度に差は認められませんでした。 「W座りをすることが股関節形成不全を作る」とする考えを支持する結果ではありませんでした。
限界:単一施設の研究であり、すべての年齢・背景の子どもに完全に一般化できるわけではありません。 股関節痛や既知の整形外科疾患がある場合は、座り方の情報だけで判断しないことが重要です。
| よくある説明 | 現在の考え方 |
|---|---|
| W座りをすると股関節が変形する | 股関節形成不全との関連を支持する研究結果は確認されていません |
| W座りをすると内股になる | 因果関係は確立していません。大腿骨前捻などがW座りと内股の共通背景になり得ます |
| W座りは体幹が弱い証拠 | W座りだけで体幹機能を判断する根拠は不足しています。動作中の姿勢制御を評価します |
STROKE LABの視点|座り方より、「そこから動けるか」を見る。
私たちがW座りのお子さんを見るとき、最も重視するのは「何分W座りをしているか」だけではありません。 その姿勢から、どの方向へ、どのように動き出せるか を観察します。
たとえば、身体の斜め後ろに玩具を置いたとき。 腕だけを伸ばして取るのか、胸郭や骨盤を回しながら体重を片側へ移せるのか。 そこから横座りになり、四つ這い、膝立ち、立位へつながるのか。 「座っている写真」では分からない部分に、運動発達を考える情報があります。
積み木やパズルなど、両手を使う課題になった瞬間にW座りへ変わるなら、上肢を自由にするために下半身で安定を作っている可能性を臨床仮説として考えます。 その場合は「W座り禁止」ではなく、別の姿勢でも手を使いやすくなる条件を探します。
毎回同じ側へ脚を組み替える、必ず両手を床につく、片側からしか膝立ちになれないなど、姿勢変換の左右差を見ます。 一つの姿勢を「正す」より、姿勢と姿勢の間にある動作を見る方が、その子の重心移動や回旋の特徴を捉えやすくなります。

家庭では、禁止より「選べる座り方」を増やす。
家庭でできることは、W座りを見つけるたびに直すことではありません。 子どもが遊びながら自然に、あぐら、横座り、長座位、四つ這い、膝立ちなど さまざまな姿勢を選ぶ機会 をつくります。
| 家庭で試したいこと | ねらい |
|---|---|
| 玩具を真正面だけでなく左右へ置く | 左右への重心移動・体幹回旋を自然に引き出す |
| 低い台で遊ぶ | 膝立ちや片膝立ちなど床座位以外の姿勢を経験する |
| 少し離れた場所に次の玩具を置く | 座り続けるだけでなく、四つ這いや立位への移動を作る |
| 左右両方向から声をかける | いつも同じ方向だけへ動いていないか観察する |
「またその座り方」「足を直して」と何度も注意されると、遊びへの集中が途切れることがあります。 親が療法士になる必要はありません。 遊びの環境を少し変えて、結果としていろいろな姿勢が生まれるくらいを目指します。

W座りだけでなく、こんな様子があれば相談を。
W座りをしているという一点だけで、受診やリハビリが必要とは判断できません。 一方で、W座りと一緒に別の困りごとがみられる場合には、その背景を整理する価値があります。
| 比較的見守りやすい様子 | 相談を考えたい様子 |
|---|---|
| W座り以外の座位も自分で選べる | ほかの座位へほとんど移れない |
| 左右どちらへも動ける | 座り方や立ち上がりに強い左右差がある |
| 立つ・歩く・走る・遊ぶことに困っていない | 歩行や遊びへの支障、頻回なつまずきが気になる |
| 痛みなく自然に座っている | 股関節・膝の痛み、腫れ、跛行がある |
内股そのものは成長過程でみられることがありますが、痛み、腫れ、跛行を伴う場合は、小児科や小児整形外科など医療機関で評価を受けてください。 リハビリで診断を代替することはできません。
□ W座り以外にどんな座り方をするか
□ 左右どちらにも横座りできるか
□ W座りからどうやって立つか
□ 歩く・走るときに足が内側へ向くか
□ 痛み、腫れ、跛行、転びやすさがあるか
□ 普段の床遊び・立ち上がり・歩行を動画で撮っておく
専門施設では、W座りを「直す」前に何を見るのか。
専門施設の目的は、W座りをゼロにすることではありません。 W座りがあることで生活上の問題が起きているのか、それとも発達過程の座位の一つなのかを分けます。 さらに困りごとがある場合には、その背景を 関節の回旋・重心移動・姿勢変換・歩行・課題環境 へ分けて考えます。
1|股関節だけでなく、下肢全体の「回旋プロフィール」を見る
内股が気になる場合、股関節だけを見ても十分ではありません。 小児整形外科領域では、股関節の内旋・外旋に加えて、歩行時の足の向き、下腿のねじれ、足部の形などを組み合わせた「回旋プロフィール」で考えます。 STROKE LABでも、W座りと歩行を別々の問題にせず、座位から立位・歩行まで一続きで観察します。
2|静止姿勢ではなく、重心を動かしたときの反応を見る
真正面にある玩具だけでなく、左右・斜め後方へ手を伸ばす課題を使います。 骨盤を残したまま腕だけ伸ばすのか、骨盤・胸郭を一緒に回せるのか。 支える手が必要なのか。 この変化によって、単純な筋力では説明できない姿勢制御の特徴を整理します。
3|W座りから「次の姿勢」へ移る過程を見る
W座りから横座り、四つ這い、膝立ち、片膝立ち、立位へどう移るかを確認します。 左右どちらからでも動けるか、手の支持量はどのくらいか、速度を上げると左右差が増えるか。 「座れる・座れない」という結果ではなく、姿勢変換の途中を分析します。
4|条件を変え、その場で仮説を確かめる
玩具の高さ、方向、床の硬さ、支持面、遊びの速度などを変えます。 条件を少し変えただけで自然に横座りへ移れるなら、「できない」のではなく、普段の環境ではW座りが選ばれやすかった可能性があります。 反対に、どの条件でも同じ方向にしか動けない場合は、左右差をさらに評価します。
| 困りごと | 仮説 | 評価 | 条件変更 | 再評価 | 生活で見る変化 |
|---|---|---|---|---|---|
| 両手遊びですぐW座り | 手を使うとき下肢の安定を増やしている可能性 | 左右リーチ、骨盤回旋、手支持 | 玩具の高さ・方向・支持面を変更 | 別座位でも両手遊びが続くか | 声かけなしで姿勢を選べるか |
| 片側からしか立てない | 股関節回旋・重心移動の左右差 | 横座り、四つ這い、膝立ちへの移行 | 玩具方向・台の位置を左右で変更 | 反対側からも移行できるか | 床遊びから自分で立つ経路が増えるか |
| W座り+強い内股 | 大腿骨・下腿・足部を含む回旋特性 | 股関節回旋、足部進行角、歩行、左右差 | 歩行速度や方向転換など課題条件を変更 | 条件で内向きやつまずきが変わるか | 走る・公園遊び・階段への支障を確認 |
W座りを見ると、「体幹が弱い」「股関節が硬い」と一つの原因へまとめたくなります。 しかし同じW座りでも、股関節が内向きへ回りやすい子、両手課題のときだけ安定を広げる子、姿勢変換に左右差がある子では、見るべきポイントが違います。
そこで、まず実際の遊びを観察し、股関節回旋、骨盤・体幹の回旋、重心移動、姿勢変換、歩行を分けます。 次に玩具の位置や高さなどを変え、その場で動きが変化するかを確認します。 条件を変えれば別の姿勢を選べるなら、強制的な姿勢矯正より、環境の設計を優先できます。
そして施設内で姿勢が変わっただけでは終わりません。 家庭で遊んでいる動画など、同じ生活場面で再確認し、 「注意されなくても姿勢を変えられる」「左右どちらからも動き出せる」「遊びや歩行に困らない」 という変化につながっているかを見ます。
AAOSやPOSNAでは、大腿骨前捻による内股の多くは成長とともに自然に変化し、特殊な靴・装具・運動によって大腿骨前捻そのものを矯正する効果は支持されていません。 そのため、W座りや内股だけを見て「骨の向きを運動で直す」ことを目標にはしません。
一方で、立ち上がり、走行、方向転換、遊びなどに実際の困りごとがあれば、その課題に必要な重心移動、姿勢変換、筋力、バランス、環境条件を評価し、課題そのものを練習することは別の話です。 解剖学的な形を「治す」ことと、生活動作を「使いやすくする」ことを分けて考えます。
限界:W座りそのものを対象にした介入研究は非常に限られています。 ここで示した動作分析や条件変更は、W座りを矯正すると証明された治療法ではなく、困りごとの背景を整理するための臨床評価・運動学習上の考え方です。 医学的診断や整形外科的治療の代替ではありません。

専門施設では、なぜその姿勢を選ぶのかを評価し、生活で自由に動ける力へつなげます。
W座り以外にも、内股、立ち上がり、転びやすさ、左右差などが気になる場合は、実際の動きを確認しながら整理できます。 医療機関での評価が先と考えられる場合には、その役割も含めてご案内します。
よくある質問。
Q. W座りは、見つけたらすぐやめさせた方がよいですか?
Q. W座りをすると、股関節が悪くなりますか?
Q. W座りをしていると、内股になりますか?
Q. W座りは、体幹が弱いサインですか?
Q. 家庭では、どんな声かけをすればよいですか?
Q. W座りで、どんなときに専門家へ相談した方がよいですか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LABでは、W座りという一つの姿勢だけから発達を判断しません。 股関節や下肢の回旋、骨盤・体幹の使い方、左右への重心移動、姿勢変換、立ち上がり、歩行、遊びとのつながりを確認します。
「W座りをやめさせた方がよいのか分からない」「内股や転びやすさも気になる」「家庭でどこまで見ればよいか知りたい」といった場合も、まず困りごとを整理します。 診断や医学的判断は医療機関が担い、私たちは生活と動きの側から併走します。
その子の動き方を見つめる。

子どもの姿勢を見ていると、「この座り方で大丈夫だろうか」と心配になることがあります。 しかし、姿勢の形だけを正そうとすると、その子がなぜその姿勢を選んでいるのかが見えにくくなります。
私たちは、 座っている姿勢ではなく、そこからどのように動き、次の活動へつながるのか を大切にしています。 一つの「正しい姿勢」を教えるのではなく、その子が身体をいろいろな方法で使えるようになることを目指します。
W座りだけでなく、立ち上がり、歩き方、転びやすさなども含めて気になる場合は、実際の動きから一緒に整理していきましょう。
代表取締役 金子 唯史

動作を一つの筋力や関節だけで説明せず、姿勢・感覚・運動の連鎖として捉える視点をまとめた専門書です。 子どものW座りも、座り方だけでなく、その前後の姿勢変換や活動とのつながりから考えることが大切です。
本記事は、W座りに関する系統的レビュー、小児整形外科領域の研究・専門学会情報、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。 W座りだけで診断を行うことはできません。 研究結果は個々のお子さんにそのまま当てはまるものではなく、痛み・腫れ・跛行などがある場合は医療機関での評価を優先してください。
- Nordon DG, Passone CGB, Silva CAA, Grangeiro PM. W-Sitting In Childhood: A Systematic Review. Acta Ortop Bras. 2024;32(6):e279277. doi:10.1590/1413-785220243206e279277.
- Rethlefsen SA, Mueske NM, Nazareth A, et al. Hip Dysplasia Is Not More Common in W-Sitters. Clin Pediatr (Phila). 2020;59(12):1074-1079. doi:10.1177/0009922820940810.
- American Academy of Orthopaedic Surgeons. Intoeing. OrthoInfo.
- Pediatric Orthopaedic Society of North America. Torsional Problems. POSNA Study Guide.
- Mooney JF 3rd. Lower extremity rotational and angular issues in children. Pediatr Clin North Am. 2014;61(6):1175-1183.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)