5か月で寝返りしない赤ちゃん|焦らず見るポイントと遊び方
完成した動作の有無より、横を向く、手を伸ばす、足を持ち上げる準備過程に注目します
同じ月齢の赤ちゃんが寝返りを始めると、「何か練習させた方がよいのかな」と不安になるかもしれません。けれど寝返りは、脚を動かせば完成する単純な動作ではありません。視線を向け、手を伸ばし、足を持ち上げ、胸と骨盤を少しずつ回す準備の積み重ねです。5か月という一つの月齢だけで判断せず、今育っている動き、家庭でできる遊び、相談の目安を整理します。

5か月で寝返りしないのは、遅いのでしょうか。
令和5年乳幼児身体発育調査では、寝返りができると回答した割合は、4〜5か月未満で56.9%、5〜6か月未満で89.7%、6〜7か月未満で97.6%でした。つまり、5か月頃は寝返りを始める赤ちゃんが増える時期ですが、5〜6か月未満でも約10%はまだ寝返りをしていません。
この数字は「何か月までに必ずできる」という締め切りではありません。寝返りの方向、床で過ごす経験、体格、早産の有無、視線や手足の使い方などによって経過は異なります。5か月という一点だけでなく、数週間の中で動きの種類が増えているかを見ます。
| 月齢帯 | 寝返りができる割合 | 家庭で見る視点 |
|---|---|---|
| 4〜5か月未満 | 56.9% | 顔を左右へ向ける、手を胸の前へ集める、足を持ち上げる |
| 5〜6か月未満 | 89.7% | 横向きになる、上側の手を伸ばす、胸と骨盤が少しずれて回る |
| 6〜7か月未満 | 97.6% | 未獲得だけでなく、準備動作、左右差、ほかの発達所見を合わせて相談 |
月齢は集団の目安です。早産で生まれた赤ちゃんは修正月齢を考慮します。寝返りの月齢だけで、発達の状態や診断を判断することはできません。
寝返りは、ある日突然始まる一つの動作ではありません。
赤ちゃんは、興味のあるものへ視線を向け、片手を伸ばし、足を持ち上げ、骨盤を片側へ傾けます。その動きに胸郭の回旋が続き、横向きを通り、最後に下側の腕を抜いてうつ伏せへ移ります。どこから始め、どの順番で回るかには個人差があります。

「できた・できない」ではなく、途中のどこまで進むかを見る。
寝返りは、成功回数だけを数えると大切な変化を見落とします。昨日までは頭だけが向いていた赤ちゃんが、今日は上側の手を伸ばした。先週までは仰向けへ戻っていた赤ちゃんが、横向きで数秒遊べた。このような途中の変化こそ、次の発達へ向かう情報です。
特に、骨盤は回るのに肩が後ろへ残る、横向きにはなるが上側の手が床を越えない、回った直後に下側の腕が体の下へ残る、といった停止位置を見ると、単純な筋力以外の条件が見えてきます。
家庭では、寝返りを「完成させる」より、動き始めやすい遊びを。

横向き遊びやうつ伏せ遊びのために、睡眠姿勢を横向き・うつ伏せへ変える必要はありません。寝床には枕、クッション、寝返り防止用品、ぬいぐるみなどの柔らかい物を置かず、硬く平らな面へ仰向けで寝かせます。
避けたい関わりと、その理由
| 避けたい関わり | 理由と修正案 |
|---|---|
| 脚を強く引いて何度も回す | 本人の視線やリーチが伴いにくいため、動き始めた時だけ骨盤へ小さく補助します。 |
| 腕を引っ張って起こす・回す | 肩や肘に負担がかかるため、玩具へのリーチを使います。 |
| 泣き続けても長く練習する | 疲労や不快感が強まり、遊びにくくなります。短く終え、回数を分散します。 |
| ソファや柔らかいベッドで行う | 体重移動が難しく、転落の危険があります。床の安定したマットを使います。 |
| 寝床へクッションや枕を置く | 睡眠の安全を優先し、寝床には柔らかい物を置きません。 |

研究でわかっていること。
限界:集団統計や研究結果は、一人ひとりの診断や将来を決めるものではありません。対象、月齢、寝返りの定義、うつ伏せ時間の測定方法に違いがあります。早産、既往、筋緊張、左右差、視線、哺乳などを含めて個別に判断し、医学的評価の代わりには用いません。
様子を見るポイントと、相談したいサイン。
- 首が安定し、左右へ顔を向ける
- 両手が胸の前へ集まり、玩具へ手を伸ばす
- 足を持ち上げたり、骨盤を左右へ傾けたりする
- 短時間でも横向きやうつ伏せで遊べる
- 2〜4週間の中で動きの種類が少しずつ増えている
- 以前できていた動きを失った
- 首の保持が不安定、うつ伏せで頭をほとんど上げられない
- 片側の手足だけ明らかに動きが少ない
- 手が強く握られたまま、体が極端に硬い・柔らかい
- 視線が合いにくい、玩具を追わない
- 哺乳、呼吸、顔色、けいれん様の動きに心配がある
6か月を過ぎても寝返りへ向かう動きがほとんど増えない場合や、寝返り以外の動きにも心配がある場合は、小児科、乳幼児健診、地域の保健師・発達相談へ相談すると安心です。保護者の「何となく気になる」も大切な相談理由です。
医療・健診での確認を大切にしながら、視線、手足、体幹、支持面、左右差を動画と実際の動きから整理します。
専門家の評価で、「寝返りしない」を分けて考える。
モードAの記事である本稿では、寝返りを獲得させる治療を訴求するのではなく、保護者の不安を観察できる言葉へ変えることを重視します。同じ「寝返りしない」でも、視線が始まりにくい、手が後ろへ残る、横向きで安定しない、うつ伏せ後の支持が難しいなど、止まる場所は異なります。
専門家は、条件を少し変えた時の反応を比較します。玩具を近づける、目線を低くする、骨盤後方へ小さな支持を置く、胸の下へ薄いタオルを入れる。その場で動きが変わるなら、本人が使える力を引き出す環境が見えてきます。変化が乏しい、左右差やほかの所見が重なる場合は、医療・健診へつなぐ情報になります。
| 見えている動き | 確認する条件 | 整理できること |
|---|---|---|
| 玩具を見ても頭だけが動く | 玩具の高さ・距離・方向を変える | 視線から手のリーチ、胸郭回旋へつながる条件 |
| 横向きになるがすぐ戻る | 骨盤後方へ薄い支持を置く | 横向きでの支持、呼吸、手を使える安定性 |
| 骨盤は回るが肩が残る | 上側の手が床を越える位置へ目標物を置く | 上肢リーチと胸郭回旋のつながり |
| うつ伏せになった後に崩れる | 胸の下の支持、肘の位置、遊ぶ時間を変える | 前腕支持、肩すくみ、疲労、呼吸の影響 |
早期診断・早期介入に関する研究は、主に脳性麻痺またはハイリスク児を対象としています。寝返りが遅いすべての赤ちゃんへ直接当てはめることはできませんが、複数の気になる所見がある時に、月齢だけを待たず適切な評価へつなぐ重要性を支えています。

よくある質問。
5か月で寝返りをしないのは遅いですか?
5か月で寝返りをしていないことだけで、発達が遅れているとは判断できません。
令和5年乳幼児身体発育調査では、5〜6か月未満で寝返りができる割合は89.7%で、約10%はまだできていません。
寝返りの有無だけでなく、左右へ顔を向ける、手を伸ばす、足を持ち上げる、横向きになろうとするなど、準備となる動きが増えているかを見ます。
寝返りの練習は毎日した方がよいですか?
完成した寝返りを、何度も受動的に反復させる必要はありません。
起きていて大人が見守れる時間に、仰向けで足へ手を伸ばす、横向きで玩具を見る、短いうつ伏せで遊ぶなど、本人が動き始めやすい経験を日常へ少しずつ取り入れます。
泣き続けるほど行わず、楽しめる時間で終えることが大切です。
体重が重いと寝返りが遅くなりますか?
体格は動きやすさに影響する要因の一つですが、体重だけで寝返りの時期は決まりません。
視線、手のリーチ、足の持ち上げ、胸郭と骨盤の回旋、床で遊ぶ経験などが組み合わさって寝返りにつながります。
体重だけを原因と決めず、動きの多様性と経過を見ます。
うつ伏せが嫌いでも寝返りはできるようになりますか?
うつ伏せを嫌がる赤ちゃんもいます。
床で長く続けることだけが方法ではなく、保護者の胸の上、膝の上、横向き遊びなどから始められます。
睡眠時は仰向けを守り、うつ伏せは起きていて見守れる時間だけ行います。
片側にしか体をひねらない場合は相談した方がよいですか?
寝返りを始めた時期に、得意な方向があることは珍しくありません。
ただし、いつも同じ方向だけを向く、反対側の手足が明らかに動きにくい、体の片側だけが硬い、数週間たっても反対方向への動きが全く増えない場合は、健診や小児科で相談すると安心です。
寝返りの左右差だけで診断はできないため、全身の動きと経過を一緒に確認します。
何か月まで寝返りをしなければ専門家へ相談すべきですか?
一つの月齢だけで区切ることはできません。
国内調査では、6〜7か月未満で90%以上の赤ちゃんが寝返りをしています。
6か月を過ぎても寝返りへ向かう動きがほとんど増えない場合や、首の保持、手の開き、視線、左右差、筋緊張、哺乳などにも心配がある場合は、月齢を待たずに小児科、乳幼児健診、地域の発達相談へ相談してください。
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。乳児の発達相談では、寝返りの回数を増やすことだけを目的にせず、保護者が感じている「何となく気になる」を、視線、手足、体幹、支持面、左右差、生活場面へ分けて整理します。
診断、画像検査、医学的管理は小児科・主治医を尊重し、医療・健診が先です。そのうえで、家庭で安全に続けられる遊びと観察方法を一緒に組み立てます。小児リハビリの考え方はこちらからご確認いただけます。
わが子の動きを見る時間へ。

周囲の赤ちゃんと比べるほど、「早く寝返らせなければ」と感じるかもしれません。しかし、赤ちゃんの発達は完成した動作だけで進んでいるわけではありません。
視線が広がった、手が伸びた、足が上がった、横向きで顔を合わせられた。小さな変化を見つけることが、次の動きを育てる関わりの出発点です。
医療・健診での確認を大切にしながら、家庭で何を見て、どう遊ぶかを整理したい時はご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

動作を「できる・できない」で終わらせず、姿勢、感覚、運動の連鎖として見る視点をまとめた専門書です。本記事でも、寝返りの完成だけでなく、視線から支持までの過程を読み解く土台として用いています。
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る
- 寝返りが片方向だけの赤ちゃん|左右差と体の使い方をどう見るか
- うつ伏せで頭を上げにくい赤ちゃん|首・肩・背中の発達を促す関わり
- うつ伏せで腕が前に出ない赤ちゃん|肘支持と肩甲帯の育て方
本記事は、公的な発達統計、安全な睡眠・うつ伏せ遊びの情報、乳児の運動発達に関する研究と、STROKE LABの臨床的な動作観察をもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、小児科医、主治医、乳幼児健診へご相談ください(最終確認日:2026年7月27日)。
- こども家庭庁.令和5年乳幼児身体発育調査.調査結果の概要,表9 一般調査による乳幼児の運動機能通過率.2024.
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 6 Months. Learn the Signs. Act Early.
- American Academy of Pediatrics. Back to Sleep, Tummy to Play.
- American Academy of Pediatrics. 3 Tummy Time Activities to Try With Your Baby.
- Hewitt L, et al. Tummy Time and Infant Health Outcomes: A Systematic Review. Pediatrics. 2020;145(6):e20192168.
- Novak I, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy: Advances in Diagnosis and Treatment. JAMA Pediatr. 2017;171(9):897-907.
- 金子唯史.脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院;2024.408頁.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)