片手を使わない赤ちゃん|左右差に気づいたときの相談目安
乳児期の早い段階で明確な使用差が続く場合は、全身の動きと併せた確認が重要です
「最近、いつも同じ手ばかり使っている気がする」「反対の手は持たせれば持てるけれど、自分からは出ない」──そんな気づきは、保護者だからこそ見つけられる大切なサインです。大切なのは、片手を使うかどうかだけでなく、どの姿勢・どの遊び・どの場面で、反対の手が参加しにくいのかを見ることです。この記事では、様子を見てよい左右差と、相談した方がよい左右差の目安を整理します。

片手を使わないとは、どういう状態でしょうか。
保護者が「片手を使わない」と感じる背景はさまざまです。本当に動かないのか、動くけれど遊びに参加しないのか、姿勢を変えると参加できるのかで、見え方は大きく変わります。
例えば、正面では両手が出るのに、左右へ玩具を動かすといつも同じ手だけが伸びる。持たせれば握れるのに、自分からは取りに行かない。うつ伏せだと片手だけで支えてしまい、反対の手が遊びに参加しない。こうした違いは、単純に「片手が弱い」とは限りません。
赤ちゃんの左右差を考えるときは、次のように分けてみると整理しやすくなります。
| 見えていること | 実際には何を確認したいか |
|---|---|
| 片手ばかりで玩具を取る | 視線、頭の向き、肩の出しやすさ、体幹の向きが影響していないか |
| 反対の手は持たせれば持てる | 自分から見つけて伸ばすところで止まっていないか |
| 片手がグーになりやすい | 安静時もそうなのか、頑張る場面でだけ強くなるのか |
| うつ伏せだと片手を使わない | 手そのものより、前腕支持や体重移動の左右差がないか |
| いつも同じ向きばかり見る | 向き癖や全身の左右差とつながっていないか |

STROKE LABの視点|手だけでなく、遊びに参加するまでの流れを見ます。
STROKE LABでは、「片手を使わない」を視線・頭、肩と肘、手首と親指、体幹、うつ伏せ支持、両手協調に分けて考えます。回数の多い少ないだけではなく、遊びに参加するまでの流れのどこで左右差が始まるのかを見ます。
よくあるのは、持たせれば握れるのに、自分からは反対の手を出さないケースです。これは握力だけではなく、視線を向ける、頭を回す、肩を前に出す、手を開く、という前段階のどこかに左右差があるかもしれません。
もう一つ大切なのは、仰向けだけで判断しないことです。うつ伏せでの前腕支持、横向きでの上側の手、支えた座位での両手遊びなど、姿勢が変わると見え方も変わります。手だけの問題に見えていたものが、実は姿勢条件や支持面の左右差として見えてくることがあります。
この段階では診断をつけることが目的ではありません。不安を、観察できる現象へ翻訳し、医療機関や健診で伝えやすくすることが目的です。

研究でわかっていること
脳性麻痺の早期診断に関する国際的なまとめでは、異常に早い手の優位性は、正式な評価につなげる手がかりの一つとされています。ただし、それだけで病名を決めることはできず、病歴、神経学的所見、運動評価、画像など複数の情報を組み合わせます。
また、乳児の左右それぞれの手の使い方と両手協調を見る評価では、片手の参加の少なさや両手遊びの偏りが、早期の左右差を捉える助けになると報告されています。研究の多くはハイリスク児を対象にしており、一般の赤ちゃん全員にそのまま当てはめるものではありません。
様子見と相談の目安
「少し気になるけれど、すぐ相談した方がいいのかな」と迷うことは自然です。次の表は、家庭で経過を記録しながら見られる状態と、健診を待たず相談したい状態を分けた目安です。
| 経過を記録しながら見られること | 健診を待たず相談してよいこと |
|---|---|
| 玩具の位置を変えると左右どちらの手も使う | 数週間にわたり、いつも同じ手しか使わない |
| 両手が自然に開き、胸の前や口へ出る | 反対の手が握られたまま開きにくい、親指が入り込む |
| 姿勢を変えると反対の手も遊びに参加する | 仰向け、うつ伏せ、座位など、どの姿勢でも反対の手が参加しない |
| 左右差が少しずつ小さくなっている | 左右差に加えて、足の蹴り、寝返り、頭の向きにも偏りがある |
| 痛みや急な変化はない | 急に使わなくなった、痛がる、腫れ・変形・けいれん・顔色の変化がある |
左右差の相談であっても、外傷、骨折、関節の問題、腕神経叢の障害、感染、神経学的な急性変化など、医療的に先に確認したいことがあります。STROKE LABは医療と対立するのではなく、その後の見方を整理し、家庭での観察や相談内容を整える立場です。
相談前に残したい7つの場面
相談先で役立つのは、赤ちゃんの“良いところも含めた”動画です。片手を使わない瞬間だけでなく、どの条件だと反対の手が出やすいかもわかると、相談が具体的になります。
- 仰向けで、正面から玩具を見せたとき
- 仰向けで、右と左から順に玩具を見せたとき
- 胸の前で両手を合わせる、手を口へ持っていく場面
- 横向きで、上側の手が玩具へ伸びる場面
- うつ伏せで、左右どちらへ体重が乗りやすいかを見る場面
- 持った玩具を反対の手へ渡す、両手で触る場面
- 普段のご機嫌な時間帯と、疲れている時間帯の両方
小児科や健診での相談に加え、専門施設では、動画や実際の遊びの場面から左右差の中身を整理できます。来院前のご不安がある方は、まず無料相談をご利用ください。
相談先でわかること|専門家と整理すると、「使わない」の中身が見えてきます。
モードAの記事で大切なのは、治療法を前に出すことではなく、どんな視点で見てもらえるのかを知って安心することです。専門家は、右手か左手かという結果だけではなく、その過程を見ます。
| 保護者の気づき | 専門家が比べること | 相談で持ち帰れること |
|---|---|---|
| いつも同じ手で玩具を取る | 視線、頭の向き、体幹の回りやすさ、肩の前方化 | どの向き・高さなら反対の手が参加しやすいか |
| 持たせれば持てるが自分から出ない | 到達、手の開き、触った後の把持、離すタイミング | 家庭で何を観察すると変化がわかるか |
| うつ伏せで片手しか使わない | 前腕支持、体重移動、胸郭と骨盤の左右差 | 手だけではなく全身で見たときの左右差 |
| 相談してよいのか迷う | 急ぎの受診所見と、経過を見ながら相談できる所見の整理 | 次にどこへ、何を伝えて相談するか |
STROKE LABは、診断や画像検査を行う場ではありません。その代わり、医療機関や健診で伝えるべき観察点を整理し、家庭での見方とつなげることに強みがあります。医療機関でのリハビリと併用しながら、生活の中での見え方を支えることも可能です。

月齢の目安|片手だけでなく、両手の参加を見ます。
月齢はあくまで目安です。早産のお子さんは修正月齢で考えます。「まだできない」よりも、「少しずつ両手が参加してきているか」を見てください。
| 月齢 | 見られやすいこと | 相談を考える目安 |
|---|---|---|
| 3〜4か月ごろ | 両手が胸の前に集まりやすくなる、左右へ視線を向ける | 片手がほとんど胸の前に出ない、常に握られている |
| 4〜6か月ごろ | 玩具へ手を伸ばす、左右どちらの手も使って触れる | 玩具の位置を変えても、いつも同じ手しか出ない |
| 6〜8か月ごろ | 持つ、持ち替える、両手で遊ぶ場面が増える | 片手だけで持ち続け、反対の手が補助にも参加しにくい |
| 8〜10か月ごろ | つまむ、たたく、両手で扱いを分ける遊びが増える | 左右差が固定し、全身の偏りも目立つ |
避けたい関わり
| 避けたいこと | 理由と代わりにできること |
|---|---|
| よく使う手を押さえて、反対の手だけを使わせる | 診断前の段階では負担や嫌がりを強めることがあります。まずは姿勢や玩具の位置を変え、自然に参加しやすい条件を探します |
| 無理に何度も持たせる | 握れたかどうかだけでは十分ではありません。見つける、伸ばす、触る過程も一緒に観察します |
| 「まだ赤ちゃんだから」と長く先延ばしにする | 一時的な左右差もありますが、持続する不安は相談して構いません。保護者の気づきそのものに価値があります |
| 片手だけを見て、全身の左右差を見ない | 頭の向き、寝返り、足の蹴り、うつ伏せ支持まで含めて見ることで、手の左右差の背景が見えやすくなります |
よくある質問
STROKE LABの小児リハ
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。小児領域では、発達の気がかりを「手の左右差」「姿勢」「遊びへの参加」など、保護者の言葉から観察できる所見へ整理し、生活に落とし込む支援を行っています。診断・投薬・画像評価などの医学的判断は主治医を尊重し、私たちは動きと生活の側から併走します。
片手を使わないという不安は、白黒の答えがすぐ出るものではありません。だからこそ、家庭では生活を守る工夫を、専門施設では評価にもとづく見方の整理を。対立ではなく、連続した支援としてお手伝いします。
見える観察へ。

赤ちゃんの左右差は、保護者にしか気づけない繊細な変化です。私たちはその気づきを大切にし、手だけでなく姿勢や遊びへの参加まで含めて、一緒に整理します。
お伝えしたいのは、「相談してよいのかな」という段階で相談してよいということです。医療機関での評価を尊重しながら、ご家庭で何を見ればよいか、生活の中でどう見守るとよいかを一緒に組み立てていきます。
片手の左右差に加えて、寝返りやうつ伏せ、両手遊びなども気になる方は、どうぞ一度ご相談ください。ご家族の不安を、次の一歩につながる言葉へ変えていきます。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。「動かない」「使わない」を一言で終わらせず、姿勢・感覚・運動の連鎖で見る視点は、小児の発達を考えるときにも土台になります。
- 仰向けで両手が真ん中にこない赤ちゃん|正中位と手の発達
- おもちゃに手を伸ばさない赤ちゃん|リーチ動作と姿勢の発達
- 赤ちゃんが片方の手ばかり使う・左右差がある|片麻痺の入口として知っておきたいこと
- 向き癖が強い赤ちゃん|頭の向き・手足の左右差をどう見るか
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestone Moments Checklist. 4 months / 6 months.
- Novak I, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy. JAMA Pediatr. 2017;171(9):897-907.
- Krumlinde-Sundholm L, et al. Hand Assessment for Infants: evidence and clinical utility. Phys Occup Ther Pediatr. 2021;41(2):154-167.
- American Academy of Pediatrics. Back to Sleep, Tummy to Play.
- World Health Organization. WHO Motor Development Study. Acta Paediatr Suppl. 2006;450:86-95.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院. 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)