砂場でしゃがめない子|足首だけではない姿勢とバランスの見方
深く腰を下ろすには、踵を保ったまま重心を前後へ調整する力が求められます
「家ではしゃがめるのに、砂場だとすぐ座り込む」「かかとが浮いて、スコップを使うと崩れてしまう」。この困りごとは、足首の硬さだけで説明できるとは限りません。砂場でのしゃがみは、足首・股関節・膝の協調、足裏で支える力、重心移動、手を使う二重課題、柔らかい地面への適応が合わさって成り立ちます。この記事では、原因を決めつけず、家庭で見たいポイントと相談の目安、専門施設でできる支援まで整理します。

砂場でしゃがみにくいのは、すぐ異常と決まるわけではありません
砂場で深くしゃがんで遊ぶことは、見た目以上に複雑な動作です。単に膝を曲げるだけでなく、足首を前へ動かし、股関節と膝を協調させ、足裏で体重を支えながら、前へ手を伸ばし、道具を使い、また立ち上がる必要があります。幼児期には、この組み合わせがまだ不安定なことも珍しくありません。
一方で、痛みがある、片側だけ極端に苦手、転びやすさが増えている、以前できていたのに急にできなくなった、といった場合は別です。発達の幅として見てよい場合と、医療的な確認が必要な場合を分けることが大切です。
この相談は少なくありません。硬い床では安定していても、砂場では足が少し沈み、足裏から得られる情報が変わります。そこへスコップ操作や前方への手伸ばしが加わると、急に難しくなる子がいます。
つまり、砂場でのしゃがみは「関節の柔らかさ」だけでなく「環境に合わせて姿勢を保つ力」も問われる動きなのです。
砂場のしゃがみで必要なのは、「しゃがむ力」だけではありません
砂場でのしゃがみを分解すると、主に次の要素が関わります。
- 足関節が前へ動くこと
- 股関節・膝関節・足部が一緒に働くこと
- 足裏で地面を感じながら支えること
- 重心を前後に細かく調整すること
- しゃがんだまま手を使えること
- 柔らかく不安定な砂面に適応すること
そのため、同じ「しゃがめない」でも、かかとが浮く子、後ろへ倒れやすい子、しゃがめるけれど保てない子、スコップを持つと崩れる子では、見立てが変わります。保護者がまず知っておきたいのは、結果ではなくどの局面で困っているかを見ることです。

STROKE LABの視点|しゃがみを4つの局面に分けて見ます
1. 下降する
膝だけ先に曲がっていないか、かかとが途中で浮かないか、お尻を強く後ろへ引いていないかを見ます。ここで崩れる場合は、足関節背屈や重心の前方移動の難しさが関わることがあります。
2. 一番低い位置で保つ
深くしゃがんだ位置で、数秒保てるかを見ます。すぐ尻餅をつく場合は、可動域だけでなく、低い姿勢で支え続ける持久性や細かなバランス調整が課題のことがあります。
3. しゃがんだまま手を使う
手ぶらでは保てても、スコップや型抜きを使うと崩れることがあります。これは「道具を使う」「前へ手を伸ばす」「視線を砂へ向ける」という二重課題で姿勢制御が難しくなるためです。
4. 立ち上がる
しゃがむことより、立ち上がりで困る子もいます。前へ体重を移せない、手をつかないと戻れない、左右どちらかの脚ばかり使う、数回繰り返すと崩れる、という点を見ます。
「しゃがめない=足首が硬い」と単純化すると、見落としが増えます。私たちは、どの局面で、どの条件で、どう崩れるかを見ます。
特に大切なのは、硬い床と砂場で違いが出るか、手ぶらとスコップ使用で変わるか、数回繰り返した後に左右差が強まるかです。これらは、可動域の問題だけではないことを教えてくれる観察点です。
家庭では、無理に深くしゃがませるより、遊びの条件を調整して成功経験を増やすことが役立ちます。診断や医学的評価は医療機関が担い、私たちは生活場面の動きを分解して支援します。
研究でわかっていること
米国小児科学会系の発達チェックでは、15か月頃の項目に「物を拾うためにしゃがめるか」が含まれます。つまり、しゃがみは日常動作の重要な発達課題の一つです。
小学生の横断研究では、かかとをつけたしゃがみ込みが苦手な子が一定数おり、足関節背屈との関連が示されています。ただし、幼児の砂場遊びを直接調べた研究ではなく、足首だけで決まるとも言えません。
小児の運動支援では、実際に困っている課題そのものを使い、目標に合わせて練習する考え方が支持されています。つまり、単にストレッチだけをするより、しゃがむ・保つ・手を使う・立つという場面に近い練習が大切です。
家庭でできること|「深くしゃがませる」より「遊びやすくする」
家庭でまず大切なのは、矯正よりも成功しやすい条件づくりです。砂場でしゃがめない子に対して、何度も深くしゃがませたり、かかとを無理に押さえたりする必要はありません。遊びとして繰り返せることが、発達には大切です。
| 家庭で見てよいこと | 試しやすい工夫 |
|---|---|
| かかとが浮くか | 砂場の縁や低い台に軽く手を置けるようにする |
| 数秒保てるか | 短い時間だけしゃがんで、すぐ立つ遊びを繰り返す |
| 手を使うと崩れるか | 道具を身体の近く・やや高めに置く |
| 硬い床との差があるか | 床・芝・砂場でどう違うか比べる |
| 立ち上がりにくいか | 砂を入れた容器を持って立つなど、目的のある立ち上がりにする |
- 痛がっているのに続ける
- かかとを無理に押しつける
- 深くしゃがめるまで何度もやり直しさせる
- 「ちゃんとしゃがんで」と注意中心にする
- できない理由を足首だけに決めつける
- 裸足や砂の感触を強く嫌がる子に無理をさせる
相談の目安|様子を見てよい場合と、受診を優先したい場合
| まず様子を見ながら観察しやすい場合 | 小児科・整形外科などへ相談したい場合 |
|---|---|
| 砂場だけで少し不安定だが、痛みはない | 足・膝・股関節に痛みがある |
| 家や公園で少しずつ経験が増えると良くなる | 片側だけ極端に苦手、左右差が強い |
| 手を添えると遊べる | 以前できていたのに急にできなくなった |
| 疲れると少し崩れるが、強い転倒や痛みはない | 足を引きずる、荷重したがらない、転倒が増えた、腫れや熱感、発熱がある |
- いつ頃から気になったか
- 家の床、砂場、芝生など、どの場面で目立つか
- 下降・保持・手を使う・立ち上がりのどこで崩れるか
- 痛みや転びやすさがあるか
- 左右差があるか
- 疲れると悪化するか
- スマートフォンで短い動画を撮れているか
専門施設では、困りごとの仕組みを分け、生活場面へ戻す設計まで行います。
医学的な診断、画像、投薬、手術、装具処方の最終判断は主治医など医療機関の領域です。リハビリでは、しゃがみという課題を分解し、評価にもとづいて支援を組み立てます。
専門施設で、さらに期待できること
専門施設では、「砂場でしゃがめない」を足首の硬さだけで終わらせません。大切なのは、どの機能が足りないかではなく、どの場面で、何が、どう生活を止めているかを分けることです。しゃがむことそのものが目標なのではなく、砂遊びや園庭遊びに参加しやすくなることが目標です。
- 身体・運動:足関節背屈、股関節・膝の協調、足部支持、立ち上がりの動き
- 感覚・知覚:足裏や砂の感触への反応、不安定面での姿勢調整
- 疲労・持久性:数回反復した後の崩れ方、遊び時間との関係
- 課題・環境:硬い床と砂場の差、道具の位置、遊びのルール、園での場面
- 参加:砂場でどのくらい遊べるか、途中でやめるか、保護者や先生の支えがどれだけ必要か
| 観察される困りごと | 考えられるボトルネック | 選択しやすい介入系統 |
|---|---|---|
| 途中でかかとが浮く | 荷重位の足関節背屈、前方重心移動 | 手支持を使った浅いしゃがみ、前方リーチを伴う課題練習 |
| 低い位置で保てない | 姿勢保持、持久性、微細なバランス調整 | 短時間保持の反復、支持条件の調整、成功率を保つ設定 |
| スコップ使用で崩れる | 二重課題、前方リーチ、視線変化への対応 | 道具位置の調整、片手支持から両手操作への段階づけ |
| 砂場だけ難しい | 不安定面への適応、感覚面、環境差 | 床→マット→芝→砂のような環境の段階づけ、遊びの再設計 |
よくある単純化は、「足首が硬いからしゃがめない」「筋力が弱いから立てない」という見方です。しかし実際には、しゃがみは局面ごとに必要な条件が違います。下降できても保てない、保てても手を使うと崩れる、しゃがめても立てない、という違いが介入選択を変えます。
私たちは、まず硬い床と砂場での差、手ぶらと道具使用時の差、数回繰り返した後の変化を見ます。そこで、足関節背屈、股関節・膝・足部の協調、足裏支持、疲労、環境差のどこが強く関わるかという仮説を立てます。
介入では、浅いしゃがみから始めるか、前方へのリーチを先に入れるか、保持時間を先に伸ばすか、環境を先に変えるかを決めます。そして、その場で「かかとが残るか」「座り込まずに3秒保てるか」「スコップを持っても崩れないか」を確認しながら次の段階へ進めます。
最後は必ず、訓練室でできたことを砂場や園庭の遊びに戻します。再評価では、関節可動域の変化だけでなく、砂場で遊べる時間、立ち上がる回数、支えの必要量が変わったかを見ます。できる力を、使える力へつなぐことが専門施設の役割です。
砂場でのしゃがみに限定した強い介入研究は多くありません。そのため、幼児のしゃがみ動作では、学童のしゃがみ研究や発達評価の知見を参考にしながら、個別評価にもとづいて支援を組み立てます。
小児の運動支援では、子どもと家族が選んだ目標に向かい、目標動作そのものを、適切な難易度と量で練習することが大切だとされています。つまり、しゃがみを改善したいなら、しゃがみのどの局面をどう変えるかを明確にした課題練習が基本になります。
訓練室での改善と、砂場や園庭で使えることは同じではありません。家庭や園で続けやすい形へ落とし込み、遊びの時間や支えの量といった参加レベルの変化を確認することが重要です。

よくある質問
専門施設では、評価にもとづいて、できる力を生活で使える力へつなぎます。
砂場でのしゃがみは、小さな困りごとに見えて、外遊びや園での参加に影響することがあります。STROKE LABでは、課題を分けて見立て、家庭や園でも再現しやすい形で支援を組み立てます。

「できない動き」だけで終わらせないために
発達の途中にある子どもの動きは、年齢と環境で見え方が変わります。だからこそ、一度の印象で決めつけず、今どの動きが育ちかけているかを見ながら支援を組み立てることが大切です。

運動を一つの筋肉や関節だけで見ず、機能解剖と動作分析をつなげて理解するための一冊です。本記事の視点も、この考え方を土台にしています。
- 小児リハビリテーションについて
- 動きがぎこちない・運動が苦手|運動制御の視点で「なぜ」を分析する
- 外でよく転ぶ子|足元だけでなく視線・体幹・注意から見る
- 扁平足が気になる子|足裏・靴・姿勢の発達を専門家が解説
- 公園遊びが苦手な子|遊具・感覚・姿勢のどこでつまずくか
- HealthyChildren.org. Your Checkup Checklist: 15 Months Old.
- Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine. 2021;70(3):193-201.
- Jackman M, et al. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549.
- Novak I, et al. Occup Ther Int. 2019;2019:7057084.
- 医学書院. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)