乳児健診で「様子見」と言われたら|家庭で記録したい運動発達
不安を抱えたまま待つのではなく、変化・左右差・起こりやすい条件を具体的に残しましょう
「次の健診まで待ってよいのでしょうか」「家では何を見ればよいですか」。乳児健診で“様子を見ましょう”と言われても、何を、いつまで見ればよいのか分からなければ不安は残ります。様子見とは、何もしないことではなく、観察する動き・期間・再相談の条件を決めて経過を見ることです。家庭で残したい姿勢と動きの記録を整理します。

「様子見」は、何もしない期間ではありません。
乳児健診では、問診、身体計測、全身状態、姿勢や運動、視線、哺乳、保護者からの相談などを組み合わせて確認します。その時点で明らかな紹介所見がなく、月齢や発達の幅を踏まえて経過を確認することが適切と判断されると、「少し様子を見ましょう」と説明されることがあります。
ただし、その言葉だけでは保護者は動けません。大切なのは、何を観察するのか、いつ再確認するのか、どの変化で予定を前倒しするのかを具体的にすることです。説明がなかった場合や、帰宅後に心配が強くなった場合は、健診担当者やかかりつけの小児科へ確認して構いません。

健診の一場面と、家庭での普段の動きをつなげます。
赤ちゃんの動きは、眠気、空腹、授乳直後、場所、人、服装、床面、音、照明などによって変わります。健診会場で寝返りや首の保持が出なかったとしても、家庭では自然に行うことがあります。反対に、健診では一度できても、家庭ではほとんど再現しないこともあります。
大切なのは、「健診が間違っていた」「家でできたから問題ない」と二者択一にしないことです。健診は専門職が全身状態を確認する場、家庭動画は普段の再現性や時間経過を伝える情報です。両方を合わせると、次に確認したい点が見えやすくなります。
| 条件 | 記録したいこと | 相談時の伝え方 |
|---|---|---|
| 状態 | 起床後、授乳前後、眠い時間、機嫌 | 「起床後は動くが、夕方は少ない」 |
| 環境 | 床の硬さ、服装、おもちゃ、保護者との距離 | 「薄着で硬いマットだと横向きになる」 |
| 支え | 支えなし、骨盤へ少し触れる、手をつく位置 | 「骨盤を少し支えると手を伸ばす」 |
| 再現性 | 一度だけか、複数日に見られるか | 「1週間で3回、同じ条件で見られた」 |
CDCは、発達マイルストーンのチェックリストを、継続的な会話や追加評価の必要性に気づくためのコミュニケーションツールと位置づけています。診断や標準化された発達スクリーニングの代わりにはなりません。
出典:Centers for Disease Control and Prevention. Key Points about CDC’s Developmental Milestone Checklists. 2026/Noritz GH, Murphy NA. Pediatrics. 2013;131(6):e2016-e2027.
家庭では、7つの項目を同じ条件で記録します。
記録は長い日記でなくて構いません。短い動画に、月齢、日時、状態、姿勢などを一言添えるだけでも、前回からの変化が見えやすくなります。毎日試験のように確認するのではなく、週に数回、自然に動きが出る遊びの中で残します。
動画は、完成した動作より「始まりから終わりまで」。
寝返りを例にすると、うつ伏せになった瞬間だけではなく、おもちゃへ視線を向ける、手を伸ばす、足を持ち上げる、骨盤を傾ける、横向きになる、下側の腕を抜く、という流れが分かるように撮ります。途中で止まった場合も、どこまで自分で行ったかが重要な情報です。
全身が入る横向きまたは斜め前から撮り、手足や頭が画面から切れないようにします。何度もやり直させず、普段の一回を残してください。けいれん様の動きや呼吸の変化を疑う場合は、撮影のために待たず医療相談を優先します。

月齢の締め切りより、前回から増えた動きを見ます。
首すわり、寝返り、ひとり座り、はいはい、つかまり立ちには幅があります。こども家庭庁の乳幼児身体発育調査は、集団としてどの月齢に動作が見られるかを示しますが、個々の赤ちゃんを一つの期限で診断するための表ではありません。
様子を見る期間には、完成した動作が出たかだけでなく、動きの準備が増えたかを比べます。数週間前の動画と同じ条件で撮ると、視線、支持、重心移動、姿勢変換、手足の使い分けの変化が見えやすくなります。
| 月齢の目安 | 記録したい途中の変化 | 再相談で伝えること |
|---|---|---|
| 1〜3か月頃 | 顔を左右へ向ける、手足をそれぞれ動かす、視線や声への反応 | 動きの少なさ、反り、向きの固定、哺乳 |
| 3〜5か月頃 | 両手を中央へ運ぶ、頭と体幹のまとまり、うつ伏せで肘を支えにする | 首の保持だけでなく左右差と手の使い方 |
| 5〜7か月頃 | 手を伸ばす、足を持ち上げる、横向きになる、寝返りの途中 | 毎回同じ方向か、途中の動きが増えたか |
| 7〜10か月頃 | 座位で手を使う、床で方向を変える、姿勢間を移行する | 座らせれば座れるか、自分で姿勢を変えられるか |
| 9〜12か月頃 | 床移動、膝立ち、足裏の支持、つかまり立ちへ向かう試み | 移動方法、左右差、足の交差や踵の浮き |
| 早産の場合 | 暦月齢と修正月齢を併記し、出生歴とフォロー状況も記録 | 主治医の見解と修正月齢での変化を共有 |
次の健診を待たず、再相談したい変化があります。
「まだ完成していない」という一点だけでは、相談の緊急度は決まりません。動きの種類が増えているか、複数の姿勢で左右差が続くか、哺乳や全身状態に心配が重なっていないかを合わせて見ます。
| 記録しながら経過を見やすい変化 | 早めに再相談したい変化 |
|---|---|
| 数週間で動きの種類が少しずつ増えている | 観察期間が過ぎても新しい動きがほとんど増えない |
| 姿勢や環境を変えると動きやすくなる | どの姿勢でも同じ形に固定され、動きの選択肢が少ない |
| 左右どちらも使うが、得意な側がある | 片手・片足をほとんど使わない、複数場面で左右差が続く |
| 途中の試みや重心移動が見られる | 自分から動こうとする様子が極端に少ない |
| 哺乳、呼吸、体重増加が安定している | 哺乳不良、強いむせ、呼吸、体重増加にも心配がある |
| 以前できていた動きは保たれている | できていた動きが減った、できなくなった |
次の変化は、予定された健診を待たず医療を優先します。
反復するけいれん様の動き、意識や目線の変化、呼吸や顔色の異常、哺乳できない、強いむせ、急に片側の手足を動かさなくなった、できていた動きを失った場合は、速やかに医療機関へ相談してください。呼吸が苦しそう、反応が乏しいなど緊急性が高い場合は救急要請を検討します。
家庭では、自然な遊びと短い記録を続けます。
保護者が療法士のように毎日訓練する必要はありません。赤ちゃんが起きていて機嫌のよい時間に、仰向け、抱っこ、床遊び、見守り下のうつ伏せなど、日常の姿勢を経験できるようにします。うつ伏せ遊びは、睡眠の姿勢とは分けて考えてください。
- 機嫌のよい時間に短く床遊びをする
- 全身が映る自然な動画を残す
- 前回と同じ姿勢・条件で変化を比べる
- できた動きだけでなく、試みを言葉にする
- 疑問点を母子健康手帳やメモにまとめる
- 何度も動作をやり直させる
- 首・腕・脚を引っ張って反応を試す
- 泣いている状態で練習を続ける
- SNSの同月齢児と毎日比較する
- 睡眠中にうつ伏せで練習させる
AAPの保護者向け情報では、健康な乳児は昼寝・夜間とも仰向けで寝かせ、うつ伏せ遊びは覚醒していて大人が見守れる時間に行うことが示されています。個別の医学的指示がある場合は、主治医の説明を優先してください。
専門的な評価は、「なんとなく心配」を観察できる情報へ変えます。
モードAの記事で専門施設が担うのは、家庭動画から病名を決めたり、健診の判断を置き換えたりすることではありません。健診の一場面と家庭での普段の動きを比べ、「できたか」ではなく「どう行ったか」を分けて整理します。
| 評価する視点 | 分けて確認すること | 次の判断にどうつながるか |
|---|---|---|
| 健診と家庭の差 | 会場だけで出にくいのか、普段も難しいのか | 家庭動画と健診所見を補完して共有する |
| 達成と過程 | 視線、リーチ、支持、重心移動、姿勢間の移行 | 次に育とうとしている動きを確認する |
| 姿勢による変化 | 仰向け、うつ伏せ、横向き、座位で動きが変わるか | 動きが出やすい条件と難しい条件を整理する |
| 自発運動の多様性 | 同じ動きの反復か、別の動きへ切り替えられるか | 経過観察か、追加評価を相談するかの材料にする |
| 左右差 | 一時的な得意側か、複数姿勢で続く差か | 医療相談の優先度を整理する |
| 生活と経時変化 | 哺乳・抱っこへの影響と、数週間単位の変化 | 同じ目標動作と生活場面で再評価する |
寝返りに至るまでには、視線を向ける、手を伸ばす、足を持ち上げる、骨盤を傾ける、横向きになる、下側の腕を抜くという複数の要素があります。どこまで自分で行い、どの条件で次の動きが出るかを見れば、同じ「未達成」でも経過の意味が変わります。
さらに、一度の成功より、別の日・別のおもちゃ・少し異なる姿勢でも再現するかを確認します。評価所見を家庭の短い記録へ戻し、一定期間後に同じ動作の始まり方と生活場面を再評価します。

STROKE LABでは、家庭動画と実際の姿勢・自発運動を確認し、健診で気になった点を、姿勢、左右差、動きの過程、生活への影響へ分けます。診断や医学的検査は小児科・医療機関が担い、私たちは相談しやすい情報へ整理して併走します。
よくある質問。
乳児健診で「様子見」と言われたのは、問題がないという意味ですか?
次の健診まで、どのくらいの期間を見ればよいですか?
家庭では何を記録すればよいですか?
健診ではできなかったのに、家ではできる場合はどう伝えますか?
動画はどの姿勢・場面で撮ればよいですか?
どのような変化があれば、次の健診を待たずに相談すべきですか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。乳児健診後の運動発達が気になる場合には、家庭動画と実際の姿勢・自発運動を確認し、健診での心配を、動きの過程、左右差、生活への影響、経時変化へ分けて整理します。診断・検査・投薬などの医学的判断は主治医を尊重し、私たちは姿勢と動きの側から併走します。
変化が見える時間へ。

健診で「様子を見ましょう」と言われると、安心する一方で、「次まで待っていて大丈夫なのか」と心配になるものです。一度の健診だけでも、家庭の一場面だけでも、赤ちゃんの発達の全体は決まりません。
私たちは、完成した動作の有無より、どの準備が増え、どの条件で動きが変わるのかを見ます。健診と家庭の差を整理し、専門職へ相談しやすい言葉と動画へ変換します。
医療・健診が先、私たちは併走です。退行、けいれん様の動き、呼吸、哺乳、意識などに心配がある場合は、予定された再診を待たず医療機関へご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

脳と身体の働きを、姿勢・感覚・運動の連鎖として理解するための専門書です。完成した動作だけでなく、その動きが生まれる過程を分けて考える臨床の土台にもつながります。
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る
- 寝返り・お座りなど、健診で気になった動作を詳しく見る
- 早産児の運動発達|修正月齢で見るポイントと家庭での関わり
- 低出生体重児の発達フォロー|運動・姿勢・遊びで見たいポイント
- 手足を突っ張る・体が硬い赤ちゃん|筋緊張の高さが気になる場合
- こども家庭庁. 改訂2版 乳幼児健康診査 身体診察マニュアル. 2025.
- こども家庭庁. 令和5年乳幼児身体発育調査 調査結果の概要. 2024.
- こども家庭庁 母子健康手帳情報支援サイト. 乳幼児健診について.
- Noritz GH, Murphy NA; Neuromotor Screening Expert Panel. Motor Delays: Early Identification and Evaluation. Pediatrics. 2013;131(6):e2016-e2027.
- Centers for Disease Control and Prevention. Key Points about CDC’s Developmental Milestone Checklists. Updated 2026.
- Centers for Disease Control and Prevention. Developmental Milestones and Milestone Tracker.
- American Academy of Pediatrics. HealthyChildren.org. Back to Sleep, Tummy to Play.
- American Academy for Cerebral Palsy and Developmental Medicine. Early Detection of Cerebral Palsy Care Pathway.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院; 2024. 408頁.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)