【2026年版】脳腫瘍のリハビリ|症状・後遺症・評価・治療まで専門家が解説
脳腫瘍のリハビリは、いつから・何を始めればいいのか。
手術が終わって、放射線も化学療法も乗り越えて。それなのに、以前のように動けない。眠っても疲れが取れない。言葉が出てこない――。治療の終わりは、リハビリの始まりです。脳の回復力を引き出す、その道筋をご家族と共に整理します。
— 脳腫瘍のリハビリ全体像を、専門セラピストがやさしく解説します。
続きをお読みください。
こんなお悩みはありませんか。
脳腫瘍(のうしゅよう:頭の中にできる腫瘍)の手術や治療を終えたあと、ご本人もご家族も、想像していなかった「ちぐはぐさ」に戸惑うことがあります。検査の数字は良くなっているのに、生活がうまく回らない。それは決して珍しいことではありません。
手術後の片麻痺(へんまひ:体の片側が動かしにくいこと)。眠っても抜けない疲れ。出てこない言葉。集中力の低下。ふらつきへの恐怖。これらはすべて、専門的なリハビリで 「管理・改善が可能な問題」 です。原因を理解し、適切な手立てを知ることから、回復への道は開けます。
脳腫瘍とは何か。
脳腫瘍とは、頭の中(脳・脳を包む膜・頭蓋骨など)にできる腫瘍の総称です。大きく2種類に分かれます。脳そのものから発生する 「原発性脳腫瘍」 と、肺・乳房・大腸など他の場所のがんが脳に飛び火した 「転移性脳腫瘍」 です。日本では原発性脳腫瘍だけで年間およそ1.5〜2万件が登録されています。
脳は、固い頭蓋骨という閉じた箱の中にあります。そのため、たとえ良性の腫瘍であっても、大きくなれば脳を圧迫し、深刻な症状を起こすことがあります。
大切なのは「良性か悪性か」だけでなく、どこにできているか。腫瘍の場所によって、出てくる症状もリハビリの中身もまったく変わります。
脳腫瘍の主な3つのタイプ。
脳を包む膜(髄膜)から発生する、原発性脳腫瘍の中で最も多いタイプです。多くは良性ですが、場所によっては手術後にリハビリが必要になります。
脳の細胞そのものから発生する腫瘍です。WHO分類でグレードⅠ〜Ⅳまであり、最も悪性度の高いものをグリオブラストーマ(GBM、グレードⅣ)と呼びます。リハビリの内容は悪性度や予後に応じて設計します。
肺がん・乳がん・大腸がんなど、他の臓器のがんが脳に転移したものです。原発巣の治療と並行して、生活機能を守るリハビリを組み立てていきます。
IDH変異:2021年WHO分類でIDH変異・1p/19q共欠失・TERT・ATRX・H3変異などの分子マーカーが診断の根幹に組み込まれました。IDH変異型グリオーマは長期生存が見込まれるため、リハビリでは社会復帰を見据えた長期目標設定が重要です。
MGMT promoterメチル化:テモゾロミド(TMZ)の効果予測因子です。メチル化陽性例では奏効率が高く、長期生存者の認知機能・疲労への長期フォローが課題となります。
覚醒下手術との連携:言語野・運動野近傍腫瘍では覚醒下手術が選択されます。術前の詳細評価(WAB・FAB・WAIS-IV等)→術中マッピングへの情報提供→術後の経過比較という三者連携がリハビリ専門職に求められます。
脳の「どこ」にできたかで、症状は変わります。
— ご本人・ご家族の状況を、丁寧にお伺いします
脳腫瘍のリハビリは、腫瘍の場所・治療段階・体力・ご家族の状況によって最適解が変わります。STROKE LABでは脳神経専門のセラピストが、無料相談(15分)で今のお悩みを整理し、必要な手立てを一緒に考えます。
なぜ機能障害が起こるのか。
脳は、頭蓋骨という固い箱の中に収まった、非常に精密な臓器です。そこに余分な塊(腫瘍)が入り込むと、脳は逃げ場がなく圧迫されます。これが症状の出発点です。
そして治療そのもの――手術で開頭し、放射線をあて、化学療法を加えるという過程――もまた、脳に大きな負担をかけます。リハビリで向き合う相手は、腫瘍だけではなく、治療の影響もあわせた「いまの脳の状態」全体なのです。
機能障害は、4つの要素が重なって生じます。
脳腫瘍に伴う症状は、単一の原因ではなく、いくつかの要素が複雑に絡み合って現れます。原因を見極めることが、適切なリハビリを組み立てる第一歩です。
① 腫瘍そのものによる圧迫。腫瘍が周囲の脳を押すことで、神経の働きが妨げられます。これは治療で腫瘍が縮小すると改善することがあります。② 脳浮腫(のうふしゅ:脳のむくみ)。腫瘍の周囲に水分がたまり、症状を悪化させます。ステロイド薬で改善することが多いです。③ 手術操作による影響。腫瘍を取り除く際に避けられない神経への侵襲です。④ 放射線・化学療法の影響。治療効果と引き換えに、疲労や認知機能の変化を起こすことがあります。
遅発性影響:全脳照射後の海馬保護照射の登場で認知機能への影響軽減が図られていますが、照射後数か月〜数年で出現する白質障害・放射線壊死には、長期的な認知リハビリのフォローが必要です。
薬物的神経保護との併用:N-acetyl cysteine・memantine等を用いた神経保護とリハビリの組み合わせも研究が進んでいます。化学療法ではテモゾロミドの認知影響、ベバシズマブの白質変化への配慮が臨床上重要です。
脳卒中との違い。
脳腫瘍と脳卒中は、症状が似ているため混同されることがあります。しかしリハビリの組み立て方には、いくつかの大切な違いがあります。
| 比較項目 | 脳腫瘍 | 脳卒中 |
|---|---|---|
| 発症の仕方 | 数週〜数か月かけて症状が進行 | 突然発症 |
| 症状の変動 | 治療によって変動する(浮腫減で改善も) | 発症直後が最も重く、徐々に改善 |
| 疲労 | がん関連疲労(CRF)が中心課題 | 疲労はあるが治療由来は少ない |
| 治療と並行 | 放射線・化学療法と並走することが多い | 急性期治療後はリハビリが主軸 |
| てんかん | 合併率が高い(特に低悪性度グリオーマ) | 合併することがあるが頻度は低い |
| 予後の見通し | 病理・悪性度によって幅が大きい | 病型・治療開始時間で概ね予測可能 |
評価の方法。
リハビリは、いまの脳と体の状態を正しく知ることから始まります。脳腫瘍では、医師の診断・画像検査に加え、リハビリ専門職による多面的な機能評価を組み合わせて、その方に合ったプログラムを設計します。
脳腫瘍のリハビリでは、腫瘍の状態・治療の進行・薬の影響が日々変化します。同じ評価を定期的に行い「治療の変化」と「機能の変化」を重ね合わせて見ることで、プログラムの精度が高まります。
放射線療法中に一時的に機能が落ちることもありますが、それは「リハビリの失敗」ではなく「治療の一過性の影響」です。文脈を理解した判断が、専門家には求められます。
FACT-Br:身体・社会・感情・機能ウェルビーイングに加え、脳腫瘍特有の認知・神経症状を含むQOL評価です。治療効果の患者視点での評価に有用です。
BFI / VAS疲労:Brief Fatigue Inventoryや視覚アナログスケールでCRFの重症度を数値化し、疲労管理プログラムの効果判定の根拠とします。
術前ベースライン:覚醒下手術が予定される症例では、WAB・FAB・WAIS-IV等の神経心理検査を術前に実施し、術中マッピングと術後比較の基準を確立しておくことが重要です。
回復への道のり。
脳腫瘍のリハビリは、治療の段階によってやることが変わります。診断直後から維持期までの4つのフェーズを、順を追って見ていきましょう。
診断がついた直後の段階です。腫瘍の圧迫や脳のむくみで症状が出ていることが多く、術前のベースライン評価(手術前の機能チェック)を取っておくことで、術後の変化を比較できるようになります。覚醒下手術が予定される場合は、この時期の言語・運動・認知の詳細評価が特に重要です。
手術直後で、脳のむくみや手術の影響が最も強く出る時期です。早期離床(できるだけ早くベッドから起きる)・廃用予防(動かないことによる筋力低下を防ぐ)・嚥下確認(飲み込みの安全チェック)が最優先になります。「動いて大丈夫か」と不安になる時期ですが、医師の許可のもとで早く動き始めるほうが、回復はスムーズです。
治療の本番です。疲労・吐き気・認知機能の低下と並行してリハビリを続ける、最も難しい時期。「治療中だから安静に」ではなく、体調と相談しながら適度な運動を続けることが、治療の完遂率や生活機能の維持に役立ちます。
治療が一段落し、生活の再構築を目指す時期です。日常生活動作(ADL)・家事や仕事などの応用動作(IADL)・社会参加へと、目標が具体的になっていきます。長期的な認知・疲労管理と、再発への向き合い方も大切なテーマです。

脳腫瘍のリハビリは、ご本人の体調・腫瘍の状況・ご家族の生活が、日々変わるのが当たり前です。そのなかで「いま何をすべきか」を一緒に考え、安心して動ける環境を整えるのが私たちの仕事です。まずは現状を聞かせてください。
ご家族ができるサポート。
日々の関わりで、確認したい7つのこと。
回復の大きな手がかりになります。
こんな声かけが、励みになります。
「今日は疲れてるみたいだから、無理しないでね。続きはまた明日でいいよ」
「言葉が出てこなくても、ゆっくりで大丈夫。待つから、思い出してから話して」
「先週より、立ち上がりがしっかりしてきた気がするよ。少しずつだけど、進んでるね」
「やったほうがいいこと」と「避けたいこと」。
| 場面 | やったほうがいいこと | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 疲労の訴え | 「治療の影響だね、休もう」と認める | 「気合いで何とかなる」と励ます |
| 物忘れ | メモ・スマホ・写真で外部補助を活用 | 「さっき言ったでしょ」と責める |
| 言葉が出ない時 | 急かさず、ジェスチャーや絵も活用 | 先回りして言葉を埋めてしまう |
| 気分の落ち込み | 「つらいね」と受け止める。専門家相談も | 「みんな大変なんだから」と一蹴する |
| 介助の量 | できることは見守り、危険時のみ手を出す | 心配のあまり、すべて代わりにやってしまう |
在宅復帰と公的支援制度。
退院や治療の節目を迎えると、ご家族はたくさんの判断を求められます。「家に戻って大丈夫だろうか」「どんな制度が使えるのだろうか」――。あらかじめチェックリストと支援制度の地図を持っておくと、慌てずに準備が進められます。
在宅復帰チェックリスト。
7つのポイント。
主な公的支援制度の一覧。
脳腫瘍では、状態と治療段階に応じて使える制度が変わります。早めに病院の医療相談員(メディカルソーシャルワーカー、MSW)や市町村の窓口に相談しましょう。
| 制度名 | 使えるとできること | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 医療費助成・税控除・各種割引・福祉サービス利用 | 市町村の障害福祉課 |
| 介護保険 | 訪問・通所リハビリ・福祉用具・住宅改修・デイサービス | 地域包括支援センター |
| 障害福祉サービス | 就労移行支援・自立訓練・居宅介護・短期入所など(65歳未満中心) | 市町村の障害福祉課 |
| 自立支援医療 | 通院医療費の自己負担を1割に軽減(精神通院・更生医療) | 市町村の障害福祉課 |
| 高額療養費制度 | 月の医療費自己負担に上限(手術・化学放射線療法に有用) | 加入している健康保険組合 |
| 障害年金 | 就労困難・日常生活制限がある場合の所得保障 | 年金事務所・社労士 |
| 傷病手当金 | 病気休業中の所得保障(最長1年6か月、健保加入者) | 勤務先・健康保険組合 |
回復までの期間と予後。
「いつになったら良くなりますか」――最も多いご質問のひとつです。脳腫瘍の回復期間は、腫瘍の種類・悪性度・治療内容・年齢・元の体力によって、本当に幅があります。
術後1〜3か月: 急性期の機能回復が最も大きい時期。脳のむくみが引き、運動・言語の回復が見えやすくなります。3〜6か月: 集中的なリハビリで生活機能が安定してくる時期。化学放射線療法が並走することも多く、疲労管理が課題になります。
6か月〜1年: 仕事や社会活動への復帰を視野に入れる時期。認知機能の細かい変化が表に出てくることもあります。1年以降: 維持期。再発のチェックを続けながら、生活の質を守るリハビリを長く継続します。
よくあるご質問。
早ければ早いほど効果的です。国際的なガイドラインでは、術後24〜72時間以内の早期離床・早期リハビリ開始が推奨されています。
「体調が落ち着いてから」と待ちすぎると廃用が進み、回復のタイミングを逃すことがあります。主治医に開始時期を早めに確認してください。
可能です。むしろ治療中に適度な運動を続けることで、疲労・気分の落ち込み・体力低下を緩和できることが研究で示されています。
ただし白血球や血小板が下がる時期は感染・出血への配慮が必要です。主治医と連携した強度調整のもとで実施するのが原則です。
発作がコントロールされていれば、安全管理のもとで受けられます。最終発作日・抗てんかん薬の服薬状況・発作の前ぶれ・発作のタイプを施設が把握し、緊急対応の仕組みを持っていることが前提です。
プールや高所での動作は制限が必要なことがあります。初回相談時に必ずてんかんのことをお伝えください。
あります。高悪性度の脳腫瘍であっても、リハビリにより機能・日常生活動作・生活の質が改善することが、複数の研究で示されています(Huangら 2001、Khanら Cochrane 2021ほか)。
最期まで食事を自分でする、家族と会話する、外出するといった目標は、限られた時間の中でこそ大切なものです。
認知リハビリテーション・有酸素運動・認知行動療法の組み合わせが、最も効果的なアプローチとして研究されています。完全に元通りになる方もいれば、代償戦略(スマートフォン活用・ルーティン化など)で生活に上手に適応する方もいらっしゃいます。
まず客観的な評価で現状を把握することが、出発点です。
条件次第で再開できる場合があります。日本では道路交通法上、てんかん・一定の認知機能低下・視野欠損がある場合は運転が制限されます。
主治医による医学的判断と、運転能力評価(シミュレーター・路上)を経た段階的な再開が原則です。必ず主治医・リハビリ専門職にご相談ください。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは脳卒中をはじめとする脳神経疾患リハビリの専門施設です。脳卒中と脳腫瘍は病態は違いますが、「神経可塑性(脳が自ら回路を作り直す力)を引き出す」という核心は共通しています。そこに、脳腫瘍に特有の「がん関連疲労」「治療と並走する設計」「てんかん管理」を重ねたプログラムを提供しています。
— STROKE LABでのリハビリの実際の様子です(脳卒中事例ですが、評価→介入→再評価の流れは脳腫瘍にも応用しています)。
「グリオーマの手術後、右手が思うように動かなくなりました。仕事に戻れるだろうかという不安が一番つらかったです。今の脳が何を代償に使えるかという視点で訓練を設計してもらえ、半年後には職場復帰できました。」— 40代男性・左前頭葉グリオーマ術後 / 通所6か月
「放射線と化学療法が終わった後、疲れが全然取れず以前の半分も動けない日が続きました。『がん関連疲労は実在する医学的な問題で、安静より適度な運動が効く』と教えてもらった時、初めてすっきりしました。自分を責めなくて良かったんだと。」— 50代女性・転移性脳腫瘍化学放射線療法後 / 通所4か月
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どうか、諦めないでください。

脳腫瘍と診断された日から、ご本人もご家族も、これまでとは違う時間を歩み始められています。手術、放射線、化学療法――それぞれの段階で、命と機能を守るために、たくさんの選択をしてこられたはずです。
そして治療が一段落したいま、「これからをどう生きるか」というもうひとつの問いが立ち上がります。私たちが大切にしているのは、その問いに 脳科学に基づいた具体的な手立てで応える ことです。
疲労があっても、認知の変化があっても、できることは必ずあります。まずはお話を聞かせてください。15分の無料相談から、ご一緒に出発できます。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)