【2026年版】鵞足(薄筋・縫工筋・半腱様筋)の触診と作用とは?脳卒中片麻痺歩行との関係を徹底解説
鵞足構成筋の触診から、片麻痺歩行の改善戦略を立てる。
縫工筋・薄筋・半腱様筋の3筋が合流する「鵞足」は、脳卒中後の片麻痺歩行において見落とされがちな重要構造です。アキレス腱短縮との連鎖、麻痺側における筋萎縮パターンの非対称性、そして低緊張とロッキング歩行の関係まで、触診技術と臨床推論を結びつけて解説します。
— 縫工筋・薄筋・半腱様筋の触診手順と、脳卒中後の片麻痺歩行との関係を動画で解説しています。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
歩行訓練を積極的に進めているにもかかわらず、立脚中期から後期にかけて膝内側に疼痛を訴えます。スパスティシティ(痙縮:筋の速度依存性の抵抗増加)が主因と判断されがちですが、鵞足部の過活動・停止部ストレスが関与していることがあります。
このようなケースでアキレス腱~下腿~鵞足の連鎖を評価しないまま歩行訓練を続けると、疼痛が慢性化するリスクがあります。触診から始め、機能連鎖を丁寧に読み解くことが第一歩です。
新人セラピストが脳卒中後の歩行障害を評価する際、膝関節まわりの筋群は後回しになりやすい部位です。しかし鵞足を構成する3筋は、下腿の緊張状態と直接連動しており、アキレス腱短縮や腓腹筋の偏位が生じると真っ先に影響を受けます。
臨床では「なんとなく膝が痛い」という訴えに対して、まず鵞足部の触診と下腿評価を組み合わせる習慣をつけましょう。それだけで治療の糸口が大きく変わります。

鵞足の定義と解剖学的特徴。
鵞足(pes anserinus:ガチョウの足の意)とは、縫工筋・薄筋・半腱様筋の3筋が脛骨内側面の共通部位に付着する構造を指します。その形がガチョウの足に似ていることから命名されました。

3筋の起始・走行・作用の整理
| 筋名 | 起始・停止 | 主な作用 | 神経支配 |
|---|---|---|---|
| 縫工筋 Sartorius |
上前腸骨棘(ASIS)→脛骨内側面(鵞足) | 股関節:屈曲・外転・外旋 膝関節:屈曲・内旋 |
大腿神経(L2, L3) |
| 薄筋 Gracilis |
恥骨→脛骨内側面(鵞足) | 股関節:内転 膝関節:屈曲・内旋 |
閉鎖神経(L2, L3) |
| 半腱様筋 Semitendinosus |
坐骨結節→脛骨内側面(鵞足) | 股関節:伸展・内旋 膝関節:屈曲・内旋 |
坐骨神経(L5, S1, S2) |
縫工筋(大腿神経)・薄筋(閉鎖神経)・半腱様筋(坐骨神経)は、それぞれ異なる神経支配を受けます。そのため脳卒中後の筋緊張変化も筋ごとに異なり、一括評価では見落としが生じます。
共通点として3筋はいずれも「膝屈曲・内旋」に作用します。この共通機能が、片麻痺歩行における膝の安定性と下腿回旋コントロールに深く関与しています。


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その悩み、一緒に整理しましょう。
STROKE LABでは、脳卒中後の歩行障害に特化した評価と個別プログラムを提供しています。鵞足部の疼痛や膝周囲の問題も、丁寧な機能分析から対応いたします。まずは無料相談でお気軽にご相談ください。
片麻痺歩行との神経機序。
脳卒中後の片麻痺では、アキレス腱が短縮しやすく、腓腹筋の内側頭・外側頭が下方偏位することが知られています。この変化が鵞足構成筋に連鎖的に影響を及ぼします。
①アキレス腱の短縮・硬化 → ②腓腹筋内側頭・外側頭の下方偏位 → ③下腿筋膜の緊張変化 → ④鵞足構成筋が下腿筋膜への張力を補うために過活動 → ⑤鵞足停止部に過剰なストレス集中 → ⑥疼痛発生。
この連鎖を理解することで、「鵞足の疼痛にはまずアキレス腱・下腿評価から」という治療の優先順位が明確になります。
麻痺側の筋体積非対称性とその意味
既存研究では、麻痺側と非麻痺側の下肢筋における筋体積を比較しています。その結果が臨床判断に直結する重要な示唆を与えています。

主要所見:薄筋のみが麻痺側で筋体積が大きい傾向を示した。縫工筋と半腱様筋は非麻痺側と比較して麻痺側で萎縮傾向にあった。
臨床的意義:薄筋の代償過活動により、鵞足部の内側方向への過剰な張力が生じやすい可能性がある。縫工筋・半腱様筋の萎縮は推進力低下に直結する。
エビデンスレベル:観察研究(比較研究)。個別の筋別評価の必要性を支持する知見。

鑑別:下肢疼痛・筋緊張の原因分類。
片麻痺患者の膝内側痛・下肢機能低下には複数の原因が絡み合います。鵞足由来の問題だけでなく、以下の鑑別を念頭に置いてアプローチします。
触診の手順と評価の視点。
触診は「止まっている筋を感じる」だけでなく、「動かしながら変化を確認する」動的触診が重要です。麻痺側と健側を比較しながら進めましょう。
Step 1:停止部の確認から始める
脛骨粗面の内側やや遠位に3筋の共同腱停止部を探します。圧痛の有無と組織の硬さを健側と比較します。
恥骨から大腿内側を縦走する薄いひも状の筋を追います。内転を軽く抵抗しながら収縮を確認すると触知しやすいです。麻痺側では収縮が不明瞭になりやすいため、代償として過活動していないか確認します。
上前腸骨棘(ASIS:骨盤前面の骨の出っ張り)から大腿前面を斜めに走行します。股関節屈曲・外旋を軽く誘導すると収縮が確認できます。麻痺側では走行の確認が困難なことが多いです。
坐骨結節から大腿後内側を走行し、膝裏の内側で腱が明確に触知できます。膝屈曲抵抗時に半腱様筋の腱を内側ハムストリングとして確認します。麻痺側での萎縮が最も顕著に出やすい筋です。


介入の段階的アプローチ。
介入は評価結果(過活動なのか、低緊張なのか)によって方向性が大きく変わります。まず下腿の問題を解決し、そのうえで鵞足構成筋へ直接アプローチします。
アキレス腱・腓腹筋の柔軟性評価(背屈ROMの計測:膝伸展位と屈曲位で比較)。短縮が認められれば、腓腹筋・ヒラメ筋のストレッチングや徒手療法を先行します。1セッション15〜20分を目安。
鵞足構成筋が過活動・短縮している場合は、各筋の伸張(ストレッチング)と徒手によるリリースを行います。特に薄筋(内転位のまま膝伸展)と半腱様筋(股関節屈曲位での膝伸展)に焦点を当てます。1筋あたり30秒×3セットを目安とします。
縫工筋・半腱様筋が低緊張・萎縮傾向の場合は、選択的な筋活性化訓練を行います。内転+膝屈曲の複合運動を座位・臥位で行い、筋収縮の感覚入力を優先します。10回×3セット、週3〜5回が目安。
個別筋への介入後、実際の歩行訓練へ統合します。立脚後期の膝伸展確保と推進力の改善を目標に、歩行速度・歩幅・歩行距離を段階的に増加させます。歩行訓練は20〜30分/セッションを目安とします(課題指向型訓練の原則)。
課題指向型歩行訓練(Task-Oriented Training):Mehrholz et al.(Cochrane Review, 2017)は、脳卒中後の歩行訓練においてトレッドミルを含む課題指向型訓練が歩行速度・歩行距離の改善に有効であることを示した(エビデンスレベル:強く推奨)。
下肢筋力訓練:Ada et al.(Stroke, 2006)は、脳卒中後の下肢筋力訓練が歩行能力に有意な改善をもたらすことを報告(エビデンスレベル:RCT複数)。鵞足筋群を含む内転・屈曲筋群への選択的アプローチが重要とされる。
ストレッチング効果:Harvey et al.(Cochrane Review, 2017)は、長期的な筋短縮予防にはポジショニングと持続的伸張の組み合わせが有効とした(エビデンスレベル:弱く推奨、さらなるRCTが必要)。

あきらめる前に、ご相談ください。
STROKE LABは脳卒中・脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。歩行改善を目標に、個別の機能評価から丁寧な徒手アプローチと歩行訓練を組み合わせたプログラムを提供しています。
多職種連携と環境調整。
鵞足部の問題は歩行機能に直結するため、PT単独の介入だけでなく多職種での情報共有が重要です。日常生活場面での足底接地パターンや疼痛出現時間帯の情報は、他職種から得られることが多いです。
多職種の役割分担
| 職種 | 鵞足関連での主な役割 | 連携のポイント |
|---|---|---|
| PT | 触診・ROM評価・歩行分析・介入 | 評価結果と介入プログラムを全職種へ共有 |
| OT | ADL場面での歩行・移動状況の観察 | 病棟での歩行時の疼痛出現場面をPTへ報告 |
| 看護師 | ポジショニング・夜間の痛みの聴取 | 就寝時の下肢ポジション・安静時疼痛の有無を確認 |
| 医師 | 画像診断・薬物療法の判断 | 鑑別診断(半月板・MCL)が必要な場合に報告 |
「病棟での歩行の様子を看護師さんに聞くだけで、膝の痛みがいつ・どこで出ているかが分かることがあります。セラピーの中だけ見ていると見落とします。」
「履物の選定もOTと相談してください。底の薄い院内スリッパが下腿・鵞足へのストレスを増やしていることがあります。」
Pitfallsと臨床判断のコツ。
鵞足の評価・介入で新人が陥りやすい罠があります。事前に知っておくことで防げるミスです。
臨床判断の分岐点
「鵞足を触るとき、まず健側と比べて『硬いか・柔らかいか』だけ判断する。それだけで介入の方向が決まる。」
「ロッキング歩行(膝が過伸展するやつ)が出たら、まず鵞足筋群の低緊張と大腿四頭筋の機能を疑う。セットで評価する。」
「『鵞足炎かもしれない』と思ったら、整形外科的な問題との鑑別を先生に確認する勇気を持って。脳卒中だからといって整形疾患を見逃さないようにしてほしい。」
予後とゴール設定。
鵞足構成筋へのアプローチの予後は、根本にあるアキレス腱短縮の程度・麻痺の重症度・廃用の進行具合によって異なります。短縮タイプは比較的早期(2〜4週)に改善を示すことがありますが、低緊張・萎縮タイプは長期的な継続が必要です。
短期ゴール(2〜4週):鵞足部の圧痛が軽減し、歩行中の疼痛VASが5/10以下になる。アキレス腱背屈ROMが5°以上改善する。
中期ゴール(1〜2か月):ロッキング歩行が消失または軽減する。10m歩行テストのタイムが改善する。立脚後期の膝伸展が増加する。
長期ゴール:疼痛なく病棟内(または自宅内)を安全に歩行できる。FIM歩行項目のスコアを維持・向上する。
よくある質問。
鵞足は縫工筋・薄筋・半腱様筋の3つが脛骨内側面に共同腱として付着した構造です。英語のpes anserinus(ガチョウの足)に由来し、下腿筋膜にも停止を持ちます。
3筋はそれぞれ大腿神経・閉鎖神経・坐骨神経と異なる神経支配を受けるため、脳卒中後の変化も筋ごとに異なります。
脳卒中後はアキレス腱が短縮し腓腹筋内側頭・外側頭が下方偏位することで、代償として鵞足構成筋が過活動を呈し停止部に過剰なストレスが集中します。加えて縫工筋・半腱様筋は麻痺側で萎縮傾向にあるため、少ない力で大きな負荷を受けることになります。
①脛骨粗面内側の共同腱停止部を確認、②薄筋は内転筋群を大腿内側でたどり脛骨内側へ、③縫工筋はASISから大腿前面斜走で追跡、④半腱様筋は坐骨結節から大腿後内側をたどります。麻痺側では筋緊張が低下していることが多いため、健側と比較しながら確認します。
鵞足構成筋が短縮すると膝関節の完全伸展が阻害され、立脚後期の推進力が低下します。股関節外転・外旋・膝屈曲を複合的に生み出すこれらの筋が機能不全を起こすと、歩行効率の著しい低下につながります。
研究によると縫工筋と半腱様筋は麻痺側で有意に萎縮する傾向があります。一方、薄筋は麻痺側で筋体積が大きい傾向があり、代償的過活動の可能性が示唆されています。
鵞足構成筋の低緊張に対しては、下腿筋(特に腓腹筋)の緊張正常化を先に行うことが重要です。その上でアキレス腱短縮の改善と鵞足構成筋の選択的活性化訓練(内転・膝屈曲を組み合わせた課題)を組み合わせます。低緊張状態でのロッキング歩行(膝過伸展歩行)の予防も重要な視点です。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳卒中・脳神経疾患に特化した自費リハビリ施設です。歩行機能の改善・疼痛のない日常生活の実現を目標に、個別の機能評価から始まるオーダーメイドのプログラムを提供しています。鵞足部の疼痛や片麻痺歩行の課題にも、丁寧に向き合います。

— STROKE LABでの片麻痺歩行リハビリの実際の様子です。
「鵞足を触診で評価できるようになると、歩行分析の解像度が一段上がります。『なぜロッキングが出ているか』『なぜ推進力が出ないか』が、筋レベルで説明できるようになる。触診はセラピストの最初の武器です。」— 理学療法士・経験14年・神経系リハビリテーション専門
「片麻痺患者さんの膝内側の痛みを『仕方ない』と流してしまっているケースを時々見かけます。でもそこには必ず原因があり、改善できることが多い。まずアキレス腱・下腿から評価する癖をつけてほしいです。」— 理学療法士・経験9年・脳卒中リハビリ担当
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諦めないでください。

「また歩けるようになりたい」「膝の痛みなく歩きたい」という思いを持つ患者さんやご家族に、私たちは全力で向き合います。脳卒中後のリハビリには、正確な評価と根拠に基づいた介入が欠かせません。
STROKE LABでは、鵞足部の疼痛や片麻痺歩行の課題に対しても、下腿・アキレス腱からの全体評価を経て、個別のプログラムを作成します。まずはお気軽に無料相談にお越しください。
皆さんの「もう一歩」を、一緒に作っていきたいと思っています。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)