運動錯覚は脳卒中リハビリに有効?振動刺激・皮膚伸張の方法とエビデンス – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
  1. HOME
  2. ブログ
  3. バイメカ
  4. 運動錯覚は脳卒中リハビリに有効?振動刺激・皮膚伸張の方法とエビデンス
バイメカ

運動錯覚は脳卒中リハビリに有効?振動刺激・皮膚伸張の方法とエビデンス

Kinesthetic Illusion in Stroke Rehabilitation
“

運動錯覚は、脳卒中リハビリでどこまで使えるのか。

振動と皮膚伸張で「動いた」という感覚を作る介入は、新人にも試しやすい手技です。一方で、根拠の厚さは領域ごとにまちまちです。機序・評価・手順・つまずきどころを、確かな出典と「まだ言えないこと」に分けて整理しました。

UPDATED2026
READ約28分
FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB

Skin + Vibration
8倍
指の近位IP関節で、振動のみと比べ、強い皮膚伸張を加えると屈曲の知覚が増加(Collins 2005・健常者n=8)
Skin Stretch Alone
6/8名
強い皮膚伸張のみで指の屈曲錯覚が生じた人数。肘は5/10名、膝は3/10名(健常者)
Mirror Therapy
62試験
ミラーセラピーのCochraneレビューが統合した試験数(1,982名・Thieme 2018)
Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
錯覚の向きは「振動した筋が伸ばされる方向」です。伸筋腱に振動を当てると、屈曲の錯覚が生じます。
02
皮膚伸張だけで錯覚が出る割合は関節で違います(指6/8、肘5/10、膝3/10)。全員には起きません。
03
振動に皮膚伸張を足すと、錯覚は増強しました(指8倍・肘1.5倍、いずれも健常者)。
04
脳卒中での運動錯覚介入は、標準治療として確立していません。錯覚は入口、課題指向型訓練が本体です。
05
実施前に皮膚・感覚・痛みを確認します。刺激の直後に、必ず随意運動へつなげます。
01
Clinical Encounter

臨床で、この「動いた感じ」にどう出会うのか。

Case Vignette
生活期の右片麻痺。手は動くのに、巧緻動作だけが戻らない。

55歳・女性。脳出血後遺症で、発症から5年(生活期)です。右片麻痺はBrunnstrom Stage IV(BRS:分離運動が出始める段階)です。主訴は上肢機能の低下、とくに巧緻運動障害です。

初回評価所見はBRS IVと、指の巧緻動作の低下です。ただし原症例には、感覚検査の記載がありません。感覚の初期値を先に測る。これが最初の学びどころです。

運動錯覚(kinesthetic illusion:動いていないのに「動いている」と知覚する現象)。この言葉は、臨床で一度は耳にするはずです。上の症例では、次の介入が組まれました。

手掌側への皮膚伸張。橈側手根伸筋への振動(90Hz・15分)。視覚フィードバック下の運動イメージ。コップを持ち上げる課題指向型訓練(実際の課題を反復して練習する方法)です。

4週間後、指の屈曲・伸展の制御が向上しました。ADL(日常生活活動)での手の使用頻度も増え、皮膚刺激への感受性が高まったと記されています。[専門家合意]

ただし、これは対照群のない1例の報告です。「効いた」話より「何を測って、何を変えたか」を読むクセをつけてください。この記事は、その読み方の練習台になります。

02
Definition & Epidemiology

運動錯覚とは何か。定義と、臨床での位置づけ。

運動錯覚とは、外からの感覚入力だけで「関節が動いた」と知覚する現象です。代表的な入力は、筋や腱への振動、皮膚の伸張、動きの映像です。

土台になるのは固有感覚(proprioception:関節の位置や動きを感じる感覚)です。主役の一つが筋紡錘(筋の長さと変化の速さを検出する感覚器)です。

脳卒中後の体性感覚障害は、決して珍しくありません。頻度は、研究によって幅があります。(Kessner et al., Top Stroke Rehabil 2016・スコーピングレビュー)[観察研究] 運動錯覚介入の対象者数や有病率のデータは、本稿では示せません。

Clinical Insight
運動錯覚と運動イメージは、何が違うのか。

運動イメージは、自分で動きを思い浮かべる内的な作業です。運動錯覚は、外からの入力で知覚が「起こされる」現象です。臨床では組み合わせて使われますが、上乗せ効果を確立したデータは、本稿では確認できていません[専門家合意]。

運動錯覚を起こす3つの入口

01
筋紡錘への振動Ia入力

振動を腱や筋腹に当てます。原記事の周波数は80〜100Hzです。筋紡錘のIa求心性線維(筋の伸びを運ぶ太い感覚神経)が興奮します。脳は「筋が伸びた」と解釈します。(Goodwin 1972、Roll and Vedel 1982)

02
皮膚の伸張皮膚入力

関節まわりの皮膚を一方向に伸ばします。関節が動く時の皮膚のひずみを、皮膚の受容器が検出します。Collins 2005では、皮膚伸張だけでも一部の人に錯覚が生じました(健常者・指n=8、肘n=10、膝n=10)。

03
視覚(鏡・映像)視覚入力

鏡や映像で、動く手足を見せます。指の動きの映像だけで、運動錯覚が生じます。運動野の興奮性に影響した報告があります。(Kaneko et al., Neuroscience 2007)

STROKE LABでの無料相談の様子

— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします

Free Consultation
退院後のリハビリ、まずはお悩みを共有してみませんか。

STROKE LABは、神経疾患に精通した理学療法士・作業療法士が支える自費リハビリ施設です。1回ごとのご予約で、初回20分の無料体験があります。

無料相談を予約する→

03
Neural Mechanism

脳の中で、何が起きているのか。

Mechanism
振動から「動いた」という知覚までの経路

振動(80〜100Hz)が筋紡錘に加わると、Ia求心性線維が興奮します。情報は一次運動野(M1)と体性感覚野(S1)へ伝わります。上頭頂小葉(SPL)や補足運動野(SMA)も関与し、運動知覚が生じます。

つまり脳は、実際には動いていなくても「動いている」と誤認します。この誤認を、運動イメージや随意運動の再学習の入口に使う。それが、介入の発想です。

皮膚の入力は、筋紡錘の入力に足し算されるのか

Collins et al.(J Neurophysiol 2005)は、健常者の指・肘・膝で実験しました。皮膚は伸張、筋紡錘は振動で刺激し、別々にも同時にも与えています。刺激は、関節屈曲中に活動する受容体を再現する設定でした。

皮膚側の受容器も整理します。メルケル細胞は持続的な圧に、ルフィニ終末は皮膚の伸張方向に、パチニ小体は振動に反応します。振動は皮膚の受容器も同時に刺激します。錯覚は「筋紡錘だけ」の入力ではありません[専門家合意]。

EVIDENCE — 機序
Collins 2005 と 古典的知見

指(n=8)[観察研究]:示指の伸筋腱へ振動し、MCP関節(中手指節関節)の屈曲錯覚を誘発。IP関節(指節間関節)周囲の皮膚も伸張。強い皮膚伸張のみで、6/8名が近位IP関節の屈曲錯覚を報告。振動中に強い皮膚伸張を加えると、近位IPの知覚屈曲は振動のみの8倍に増え、MCPの知覚屈曲は減少。

肘(n=10)[観察研究]:上腕三頭筋の遠位腱へ振動し、背側前腕の皮膚を伸張。強い皮膚伸張のみで5/10名に肘屈曲の錯覚。皮膚伸張と振動の併用は、振動のみの1.5倍。

膝(n=10)[観察研究]:膝蓋腱へ振動し、大腿部の皮膚を伸張。皮膚伸張のみで3/10名(8±4度)に膝屈曲の錯覚。併用時は振動のみの1.4倍(原記事の記載。指標は原著で要確認)。

古典的知見[観察研究]:腱振動が運動錯覚を生むことは、古典的に知られています。錯覚は、振動した筋が伸ばされる方向に生じます。(Goodwin et al., Brain 1972;Roll and Vedel, Exp Brain Res 1982)

脳機能画像[観察研究]:Naito et al.(Neuron 2002)は、腱振動による運動錯覚で一次運動野が関与することを報告。運動野は指令だけでなく、運動の知覚にも関わる。

限界[専門家合意]:いずれも健常者・実験室での知見です。脳卒中患者で同じ強さの錯覚が得られる保証はありません。

責任病巣の考え方:入力の通り道は保たれているか

錯覚は、感覚が脳に届いて初めて成立します。末梢から後索-内側毛帯系、体性感覚野までの経路が傷んでいれば、錯覚は出にくいと考えるのが自然です[専門家合意]。

だから臨床では、錯覚を試す前に位置覚を確認します。母指探し試験は、後索-内側毛帯系の病変検出に使える簡便な検査です。(Hirayama et al., J Neurol Sci 1999)

04
Differential

錯覚が得られない時、何を疑うのか。

錯覚が出ないのは「効かない」ではなく、理由があることが多いです。Collins 2005でも、皮膚伸張のみで錯覚が出たのは指6/8名・肘5/10名・膝3/10名でした[観察研究]。まず、次の5つを鑑別します。

鑑別疾患 共通点 鑑別ポイント 参考検査
深部感覚(位置覚・運動覚)の重度障害 錯覚が生じない。「動いたか分からない」と答える 閉眼で他動的に動かした関節の位置・方向を答えられない 位置覚検査、母指探し試験、Nottingham Sensory Assessment
皮膚感覚の脱失・過敏(アロディニア含む) 皮膚伸張への反応が乏しい、または不快 触圧・痛覚の閾値が変化。刺激で痛みが増える 表在感覚検査(触圧・二点識別・痛覚)
半側空間無視・身体失認 麻痺側の変化を報告しない。反応が不安定 入力は届くが、注意が向かない。視覚探索が偏る BIT(行動性無視検査)の線分抹消試験など
痙縮・拘縮による関節可動域制限 「動いた感じ」が出ない、動かない 他動運動で抵抗が強い。可動域が狭い ROM測定、MAS(Modified Ashworth Scale:痙縮の評価尺度)
注意・指示理解の低下(高次脳機能) 質問に一貫して答えられない 課題を理解できない。保続や全般的な注意低下がある MMSE、MoCA-J、TMTなど
錯覚が出ない=無効、と決める前に、入力・注意・関節の3点を疑う。
05
Assessment & Scoring

評価尺度と採点基準。何を、どう測るのか。

効果を語るには、測る物差しが要ります。運動はBRSとFMA-UEで、感覚は感覚検査で押さえます。FMA-UEは、Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目で、上肢運動機能を詳しく測ります。原記事の症例が使ったBRSは、下の表で全ステージを網羅しました。

Motor
運動を測る
— 介入前後で必ず同じ条件で
→BRS:上肢・手指・下肢を別々に記録
→FMA-UE:満点66点で変化量を捉える
→課題の遂行:コップ把持などの成否と所要時間
→ADL:手の使用頻度を生活場面で確認
Sensation
感覚と錯覚を測る
— 入力の入口を見逃さない
→表在感覚:触圧・二点識別
→深部感覚:位置覚、母指探し試験
→Nottingham Sensory Assessment:感覚の総合評価
→錯覚の有無・向き・大きさを0〜10で毎回記録(筆者提案・専門家合意)
項目(ステージ) 採点基準(上肢・手指・下肢) カットオフ値 解釈
Stage I
弛緩期
上肢:随意運動なし。手指:随意運動なし。下肢:随意運動なし(弛緩性麻痺) 随意運動の有無が最初の区切り 運動は出せません。感覚入力の確認と、受動的な入力の適応を検討します。
Stage II
共同運動の出現
上肢:共同運動がわずかに出現、痙縮が出現。手指:自動屈曲がわずか、または不可。下肢:随意運動がわずか(股・膝・足関節の軽度屈曲) 共同運動の要素が出るか 痙縮の出現期です。誤った代償を固めない刺激量を選びます。
Stage III
共同運動の随意発揮
上肢:共同運動を随意的に起こせる、痙縮が最強。手指:集団屈曲・鉤握りは可、随意伸展は不可。下肢:座位・立位で股・膝・足関節の共同運動的屈曲 共同運動を随意に出せるか 共同運動から分離運動へ移る手前です。原記事の症例1(68歳男性)はこの段階です。
Stage IV
分離運動の開始
上肢:手を腰の後ろへ回す、肘伸展位で肩屈曲90°、肘90°屈曲位で前腕回内外。手指:横つまみ、少しの指伸展。下肢:座位で膝屈曲90°以上、踵を床につけたまま足背屈 共同運動から逸脱した動きが出るか 最重要の分岐です。症例2(55歳女性)はこの段階です。分離運動の質を高める課題設計が鍵です。
Stage V
分離運動の進展
上肢:肘伸展位で肩外転90°、前方から頭上まで挙上、肘伸展位で前腕回内外。手指:対向つまみ、筒握り・球握り、随意的な指伸展。下肢:立位で股伸展位のまま膝屈曲、膝伸展位で足背屈 肘伸展位での分離運動が可能か 巧緻性と速度が課題です。錯覚は運動の質の調整に使います。
Stage VI
協調運動ほぼ正常
上肢:各関節の分離運動が可能で、協調運動がほぼ正常。手指:全種類の握り、全可動域の伸展、ばらばらな指運動。下肢:立位で骨盤挙上を超える股外転、座位で下腿の内・外旋 健側に近い協調性があるか 速度と巧緻性の低下が残ることがあります。ADLでの使用場面で評価します。
MEASUREMENT PROPERTIES — 測定特性
BRSとFMA-UEの測定特性(信頼性・妥当性・MCID)

BRS[専門家合意]:6段階の順序尺度です。段階間の間隔は等しくありません。統一されたカットオフ値とMCID(臨床的最小変化量)は確立していません。上表の「カットオフ値」は、臨床上の区切りの目安です。

FMA-UE[観察研究]:Fugl-Meyer et al.(Scand J Rehabil Med 1975)が原型。満点66点(肩・肘・前腕36、手関節10、手14、協調性・速度6)。MCID(臨床的最小変化量)は、4.25〜7.25点(慢性期・軽〜中等度麻痺)と報告されています。(Page et al., Phys Ther 2012)

FMAの信頼性・妥当性[観察研究]:FMAの測定特性は、レビューされています。(Gladstone et al., Neurorehabil Neural Repair 2002・測定特性研究のレビュー)

感覚検査[専門家合意]:Nottingham Sensory Assessmentは、感覚の総合評価に使われます。(Lincoln et al., Physiotherapy 1998)錯覚の記録は筆者提案で、標準化された尺度ではありません。

06
Intervention Evidence

介入は、どこまで根拠があり、どう実施するのか。

4つのステップで組み立てる

01
振動刺激を入れる80〜100Hz・10〜15分

対象筋は、上肢が橈側手根伸筋・尺側手根伸筋、下肢が前脛骨筋・腓腹筋です。10〜15分/回、1日2〜3回が原記事の目安です。強度は、心地よく過剰にならない程度です[専門家合意]。

02
皮膚伸張を入れる1日2回・各5分

部位は、手首・足首まわり、体幹の側腹部・背部です。方法は、キネシオテープ、セラピストの手による持続的な牽引、機械的な装置です。持続的かつ穏やかに、運動の方向へ伸ばします[専門家合意]。

03
順序を守って併用する皮膚→振動→随意運動

まず皮膚伸張で入力を増やします。次に振動で錯覚を促します。最後に随意運動を行います。皮膚と振動の併用が錯覚を増強した知見(Collins 2005)が根拠です。

04
随意運動と課題につなぐ刺激の直後

鏡療法や運動イメージを併用し、直後に課題指向型訓練へ進みます。課題例は、リーチ、コップ把持、歩行練習です。刺激だけで終わらせないことが、最大のポイントです。

Direction Rule
錯覚の向きは、振動した筋が伸ばされる方向

伸筋腱に振動を当てると、屈曲の錯覚が生じます(Goodwin 1972)。背屈の錯覚を狙うなら、屈筋・底屈筋側の腱が候補です。原記事は、伸筋への振動を「背屈の促進」と記載しています。筋活動を促す目的なら成り立ちますが、錯覚の向きは屈曲になります。目的によって、狙う筋が逆になりえます。鏡や映像の動きの向きも、錯覚の向きに揃えてください[専門家合意]。

EVIDENCE — 介入
根拠の層と、実施パラメータ

ミラーセラピー[SR/MA]:62試験・1,982名を統合したCochraneレビューです。上肢の運動機能・運動障害の改善に有益で、確実性は中等度でした。(Thieme et al., Cochrane 2018)実施量は試験間で異なります。

課題指向型訓練[SR/MA]:33試験・1,853名を統合したCochraneレビューです。反復的な課題訓練が、機能的な能力の改善に有益な可能性を示しました。(French et al., Cochrane 2016)

振動療法[SR/MA]:神経疾患への振動療法は、アンブレラレビューで整理されています。(Moggio et al., Disabil Rehabil 2022)焦点筋振動はSRで検討されています。(Fattorini et al., J Funct Morphol Kinesiol 2021)プロトコルの標準は確立していません。

局所筋振動のRCT[単独RCT]:慢性期脳卒中患者で、局所筋振動と偽刺激の短期効果を比べたRCTです。(Costantino et al., Eur J Phys Rehabil Med 2017)サンプル数と効果量は、原著で確認してください。

用量の記録[専門家合意]:介入の時間・回数・強度を明確に報告する重要性が提言されています。(Hayward et al., Stroke 2021)本稿の周波数・時間・頻度は原記事の記載で、出典がありません。

Case A — 介入の実例
症例A:68歳男性・左片麻痺(右中大脳動脈梗塞)・BRS III

歩行に補助具が必要でした(発症からの期間は原記事に記載なし)。手背側と足背側にキネシオテープを貼り、前脛骨筋と上腕三頭筋へ振動(80Hz・10分)を加えました。振動中はミラーセラピーで健側の運動を模倣し、施術後に歩行練習とリーチ動作を行いました。3週間後、足関節背屈の随意運動と荷重シフトが改善しました。1例報告で、[専門家合意]の位置づけです。

STROKE LAB代表 金子唯史
Message from CEO
介入は、一人ひとりの状態に合わせて選びます。

同じ介入でも、感覚の状態や注意、生活の目標によって最適な使い方は変わります。STROKE LABでは、評価から課題設計まで個別に組み立て、変化を動画で見える化しています。

無料相談を予約する→

07
Team Approach

多職種でどう分担し、環境をどう整えるのか。

脳卒中リハビリは、多職種チームで行うことが標準的な枠組みです。(Winstein et al., Stroke 2016;脳卒中治療ガイドライン2021)[専門家合意] 錯覚を使う介入でも、役割分担は同じです。

環境調整の5つの確認

→皮膚の状態は、実施前に看護師へ確認する
→座位を安定させ、注意が散らない静かな環境を選ぶ
→鏡や映像の位置を、錯覚の向きに合わせて置く
→機器のコードを整理し、転倒や接触を防ぐ
→貼付したテープの剥がし方と観察点を、本人と家族へ伝える
Mentor’s Voice

「振動の機器を出す前に、看護師さんへ皮膚の状態を一言聞くだけで、テープかぶれは減らせます。」

「STは、言葉での報告が難しい人の返答手段を作ってくれます。はい・いいえや指差しを、先に決めておきましょう。」

職種 この症状における評価項目 主な介入内容 他職種との連携ポイント
PT 位置覚、ROM、痙縮(MAS)、歩行・荷重 下肢への振動・皮膚伸張、課題指向型の歩行・荷重練習 皮膚状態と疼痛は看護と共有。手の使用場面はOTへ引き継ぐ
OT BRS・FMA-UE、巧緻性、ADLでの手の使用 錯覚の直後に行う上肢課題(コップ把持など)、ADL場面での練習 自宅での使用場面をPT・MSWと共有する
ST 注意・指示理解、言語理解、報告手段 教示の簡略化、はい・いいえ・指差しなどの返答手段の設定 理解度と教示のコツを、PT・OTへ共有する
看護師 皮膚状態(褥瘡・発赤・浮腫)、疼痛、テープ反応 病棟での皮膚観察、テープ管理、疼痛の記録 異常があれば、実施前後にPT・OTへ即時連絡する
医師 禁忌の有無、合併症、痙縮の治療方針、画像・病巣 リハビリ指示、痙縮治療の判断 実施前に禁忌と皮膚疾患の有無を確認する
MSW 退院後の生活環境、継続手段、家族の状況 継続リハの選択肢の提示(保険リハの日数上限、自費リハなど) 本人・家族の希望を、多職種の目標へ反映する
08
Pitfalls & Clinical Reasoning

つまずきポイントと、臨床判断のコツ。

新人がつまずくのは、手技そのものより、その前後です。感覚障害の評価と再訓練の重要性は、SR/MAでも検討されています。(Serrada et al., Front Neurosci 2019)[SR/MA]

Pitfalls — よくある失敗パターン
新人臨床家が陥りやすい3つのつまずきポイント
!
皮膚を見ずに始める:皮膚の脆弱性(褥瘡リスク・皮膚炎・浮腫・瘢痕)を事前に確認します。過剰な伸張や刺激は避けます。
!
感覚過敏を見落とす:感覚低下や異常感覚(アロディニアなど)があれば、患者さんの言葉を優先し、刺激量を調整します。
!
伸張の向きを誤る:向きを誤ると逆効果です。関節可動域と運動方向を考え、適切な方向に伸ばします。

残る7つの確認事項

04
周波数と時間を合わせる:80〜100Hzが一般的です。慢性期は低周波から始める案もありますが、根拠は示されていません[専門家合意]。
05
単独で終えない:課題指向型訓練や運動イメージと組み合わせて、効果を最大化します。
06
表情と反応を観察する:痛みや違和感があれば、すぐ強度を調整し、受け入れ具合を確認します。
07
長時間の刺激を避ける:感覚適応で効果が減弱する可能性があるため、10〜15分を目安にします[専門家合意]。
08
刺激の直後に動かす:直後の随意運動で、錯覚を実際の動作に結びつけます。
09
変化を記録する:ROM、筋活動、歩行能力、ADLの変化を記録し、効果を客観的に把握します。
10
意欲を保つ:「すぐ動ける」と誤解させず、成功体験を積ませて意欲を高めます。
Model Talk

後輩:「動いていないのに、動いたと感じさせて、意味があるんですか?」

先輩:「意味は入口にあります。錯覚で動きの感覚を引き出し、直後の随意運動で使える動きに変える。錯覚だけで終わらせないでください。」

刺激で終わらせない。刺激は、動きの前置きにすぎません。
09
Prognosis & Goal Setting

回復をどこまで見込み、ゴールをどう置くのか。

急性期脳卒中102名の研究です。麻痺の重症度と発症からの時間が、上肢の巧緻性を取り戻す確率に関わることが示されました。(Kwakkel et al., Stroke 2003)[観察研究] 初期の麻痺の重さは、必ず記録してください。

一方、発症6か月以降でも、リハビリで上肢機能が改善した報告が整理されています。指標はFMAやARAT(Action Research Arm Test:上肢機能検査)です。(Hatem et al., Front Hum Neurosci 2016)[SR/MA] 「もう遅い」と決めつけない根拠になります。

発症後の時期と回復の可能性を整理した図解

Case B — 生活期の実例
症例B:発症5年でも、4週間で「手の使用頻度」が動いた

冒頭の55歳女性(BRS IV)は、4週間で指の制御とADLでの手の使用頻度が向上しました。ただし1例報告で、対照はありません。生活期の目標は、機能の点数だけでなく、生活での使用場面に置くと評価しやすくなります[専門家合意]。

ゴールを3つの層で置く

参加レベルは、ADLでの手の使用頻度です。機能レベルは、BRSやFMA-UEの変化です。期間は、原記事の症例に倣い3〜4週間ごとに見直します。

「すぐ動ける」とは言わない。「動かす練習の質を上げる」と伝える。
10
FAQ

よくある質問。

Q. 運動錯覚と運動イメージは、何が違いますか?
A.

運動イメージは、自分で動きを頭の中に思い浮かべる内的な作業です。運動錯覚は、振動・皮膚伸張・映像などの外からの入力で、動いていないのに動いたと知覚する現象です。臨床では併用されますが、併用の上乗せ効果を確立したデータは本稿では確認できていません(専門家合意)。

Q. 振動刺激は、何Hzで何分行えばよいですか?
A.

運動錯覚の誘発では、腱への振動を80〜100Hz前後で用いる考え方が一般的です。原記事の目安は10〜15分/回、1日2〜3回で、強度は心地よく過剰にならない程度です。ただしこの頻度と時間には出典がなく、専門家合意の位置づけです。焦点筋振動の研究でもプロトコルは大きく異なります。

Q. 錯覚を起こすには、どの筋に振動を当てればよいですか?
A.

錯覚の向きは、振動した筋が伸ばされる方向に生じます。たとえば手関節の伸筋腱に振動すると、屈曲の錯覚が生じます。背屈の錯覚を狙うなら、屈筋側の腱が候補です。筋活動を促したい目的と錯覚の向きを作りたい目的では、狙う筋が変わりうる点に注意してください。

Q. 皮膚伸張だけでも、運動錯覚は起きますか?
A.

起きる人と起きない人がいます。Collins et al.(2005)の健常者データです。強い皮膚伸張のみで屈曲の錯覚が生じたのは、指6/8名、肘5/10名、膝3/10名でした。振動と併用すると錯覚は増強しました。全員に生じる前提で計画しないことが大切です。

Q. どんな場合は、振動や皮膚伸張を避けるべきですか?
A.

次の場合は、刺激量を下げるか、中止を検討します。皮膚の脆弱性(褥瘡リスク・皮膚炎・浮腫・瘢痕)、感覚過敏やアロディニア、強い痛みや不快感です。機器の添付文書に記載された禁忌の確認も必要です。実施前に医師・看護師へ皮膚状態と禁忌を確認してください(専門家合意)。

Q. 発症から半年以上たった慢性期でも、意味はありますか?
A.

Hatem et al.(2016)のレビューです。発症6か月以降でも、リハビリでFMAやARATが改善した報告が整理されています。ただし、運動錯覚介入そのものを慢性期で検証した質の高い研究は限られます。錯覚は入口と位置づけ、課題指向型訓練など根拠のある介入と組み合わせて評価してください。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

STROKE LABは、脳神経疾患・整形外科疾患を専門とする自費リハビリ施設です。神経疾患に精通した理学療法士・作業療法士が、お一人おひとりの状態を評価し、目標に合わせた内容を組み立てます。

決まったメニューを当てはめるのではなく、評価から課題設計まで個別に行い、変化を動画で見える化しています。

STROKE LAB施設紹介バナー

— STROKE LABの施設紹介。脳神経疾患・整形外科疾患のスペシャリストが在籍。

STROKE LABの強み
専門職による個別対応
— 評価から課題設計まで一貫
→神経疾患に精通したPT・OTが担当
→評価にもとづき、内容を個別に組み立てる
→変化を動画で見える化する
取り組める内容
目標に合わせた個別プログラム
— 時間・内容・頻度を設計
→麻痺や動作の集中的な改善
→転倒・再発の予防
→旅行や趣味のための体力づくり

初回から見直しまでの流れ

01
無料体験・ご相談初回20分

ご本人・ご家族のお悩み、これまでの経過、生活での困りごとを伺います。1回ごとのご予約で、続けるかどうかはご自身で決められます。

02
評価とプラン設計個別に設計

身体の状態と生活の目標を評価し、練習の内容・時間・頻度を決めます。

03
練習と記録動画で見える化

設計したプランにそって練習します。変化は動画で記録し、その場で一緒に確認します。

04
目標と内容の見直し定期的に

変化を確認しながら、生活での動きやすさも含めて、目標と内容を見直します。

For You
こんなお悩みは、ご相談ください。
→週2回の通院リハだけでは、回復が頭打ちに感じる
→退院したのに、手足が思うように動かない
→痛みが慢性化し、趣味や仕事に集中できない
→今の担当以外の、専門的なリハビリも受けてみたい
→通うのが大変で、訪問やオンラインも検討したい

公的保険のリハビリには、日数や時間の上限があります。「期間が終わったから仕方ない」とあきらめる前に、自費リハビリ(保険外リハビリ)という選択肢があります。時間・内容・頻度を、あなたに合わせて設計できるリハビリです。保険リハビリとの併用もできます。

※効果には個人差があります。評価にもとづき、無理のない範囲で進めます。

Message from CEO
「もう遅い」と決める前に、
諦めないでください。
STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

公的保険のリハビリには、日数や時間の上限があります。「期間が終わったから仕方ない」と、あきらめていませんか。

脳卒中後、半年を過ぎてから回復した報告は、研究で整理されています。「まだ間に合うかもしれない」その直感は、変化のはじまりです。

時間・内容・頻度を、あなたに合わせて設計できるのが自費リハビリです。エビデンスに基づく個別のプランで、私たちが伴走します。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する→

References

参考文献。

01 Collins DF, Refshauge KM, Todd G, Gandevia SC. Cutaneous receptors contribute to kinesthesia at the index finger, elbow, and knee. J Neurophysiol. 2005;94(3):1699-1706.
02 Goodwin GM, McCloskey DI, Matthews PBC. The contribution of muscle afferents to kinaesthesia shown by vibration induced illusions of movement and by the effects of paralysing joint afferents. Brain. 1972;95(4):705-748.
03 Roll JP, Vedel JP. Kinaesthetic role of muscle afferents in man, studied by tendon vibration and microneurography. Exp Brain Res. 1982;47(2):177-190.
04 Naito E, Roland PE, Ehrsson HH. I feel my hand moving: a new role of the primary motor cortex in somatic perception of limb movement. Neuron. 2002;36(5):979-988.
05 Kaneko F, Yasojima T, Kizuka T. Kinesthetic illusory feeling induced by a finger movement movie effects on corticomotor excitability. Neuroscience. 2007;149(4):976-984.
06 Kessner SS, Bingel U, Thomalla G. Somatosensory deficits after stroke: a scoping review. Top Stroke Rehabil. 2016;23(2):136-146.
07 Hirayama K, Fukutake T, Kawamura M. “Thumb localizing test” for detecting a lesion in the posterior column-medial lemniscal system. J Neurol Sci. 1999;167(1):45-49.
08 Fugl-Meyer AR, Jaasko L, Leyman I, Olsson S, Steglind S. The post-stroke hemiplegic patient. 1. A method for evaluation of physical performance. Scand J Rehabil Med. 1975;7(1):13-31.
09 Gladstone DJ, Danells CJ, Black SE. The Fugl-Meyer assessment of motor recovery after stroke: a critical review of its measurement properties. Neurorehabil Neural Repair. 2002;16(3):232-240.
10 Page SJ, Fulk GD, Boyne P. Clinically important differences for the upper-extremity Fugl-Meyer Scale in people with minimal to moderate impairment due to chronic stroke. Phys Ther. 2012;92(6):791-798.
11 Lincoln NB, Jackson JM, Adams SA. Reliability and revision of the Nottingham Sensory Assessment for stroke patients. Physiotherapy. 1998;84(8):358-365.
12 Thieme H, Morkisch N, Mehrholz J, et al. Mirror therapy for improving motor function after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2018;7:CD008449.
13 French B, Thomas LH, Coupe J, et al. Repetitive task training for improving functional ability after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2016;11:CD006073.
14 Moggio L, de Sire A, Marotta N, Demeco A, Ammendolia A. Vibration therapy role in neurological diseases rehabilitation: an umbrella review of systematic reviews. Disabil Rehabil. 2022;44(20):5741-5749.
15 Fattorini L, Rodio A, Pettorossi VE, Filippi GM. Is the focal muscle vibration an effective motor conditioning intervention? A systematic review. J Funct Morphol Kinesiol. 2021;6(2):39.
16 Costantino C, Galuppo L, Romiti D. Short-term effect of local muscle vibration treatment versus sham therapy on upper limb in chronic post-stroke patients: a randomized controlled trial. Eur J Phys Rehabil Med. 2017;53(1):32-40.
17 Hayward KS, Churilov L, Dalton EJ, et al. Advancing stroke recovery through improved articulation of nonpharmacological intervention dose. Stroke. 2021;52(2):761-769.
18 Winstein CJ, Stein J, Arena R, et al. Guidelines for adult stroke rehabilitation and recovery. Stroke. 2016;47(6):e98-e169.
19 Serrada I, Hordacre B, Hillier SL. Does sensory retraining improve sensation and sensorimotor function following stroke: a systematic review and meta-analysis. Front Neurosci. 2019;13:402.
20 Kwakkel G, Kollen BJ, van der Grond J, Prevo AJH. Probability of regaining dexterity in the flaccid upper limb: impact of severity of paresis and time since onset in acute stroke. Stroke. 2003;34(9):2181-2186.
21 Hatem SM, Saussez G, Della Faille M, et al. Rehabilitation of motor function after stroke: a multiple systematic review focused on techniques to stimulate upper extremity recovery. Front Hum Neurosci. 2016;10:442.
22 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 編. 脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023). 協和企画. 2023.
23 金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.

CATEGORY

 

FOLLOW US

STROKE LABの記事は各種ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしてください。

FOLLOW US

STROKE LABの記事は各種ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしてください。

CATEGORY

関連記事

誠心誠意の機能向上に向けたリハビリ支援
脳卒中・パーキンソン病に特化した個別リハビリ支援。
病院で培った機能をつなぎ、可能性を広げる施設です。
〒113-0033 東京都文京区本郷2-8-1 寿山堂ビル3階・5階
03-6887-5263
〒158-0082 東京都世田谷区等々力7-2-31 The Room 等々力West 201号 2026.3 OPEN
03-6887-5263
〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満6-3-16 梅田ステートビル202号
06-7220-4733
ACCESS
会社案内
事業案内
その他