側頭葉の機能・MRI画像・症状・てんかん・萎縮・垂直知覚のリハビリ論文サマリーまで – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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側頭葉の機能・MRI画像・症状・てんかん・萎縮・垂直知覚のリハビリ論文サマリーまで

Neuroanatomy & Clinical Rehabilitation — Temporal Lobe / Temporo-Parietal Junction
“

側頭葉損傷は、なぜ姿勢と認知の両方を狂わせるのか。

側頭葉は聴覚・言語・記憶・感情を束ねる大脳の中枢です。しかし新人臨床家が見落としがちなのが、側頭頭頂接合部(TPJ)が垂直知覚を統合しているという事実です。この論点から、プッシャー症候群・失語・記憶障害を一つの脳領域として体系的に理解しましょう。

UPDATED2025
READ約15分
FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB

— 側頭頭頂接合部(TPJ)の損傷により生じるプッシャー症候群の機序と臨床的特徴を解説しています。

NEOCORTEX SHARE
22%
側頭葉が新皮質全体に占める割合。前頭葉に次ぐ第2の大きさ。
PUSHER INCIDENCE
5〜10%
急性脳卒中患者におけるプッシャー症候群の発生率。TPJ病変と強く関連。
SVV ABNORMALITY
42%
Perrenouらの研究(n=80)でSVV異常を示した脳卒中患者の割合(44/80名)。

Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
側頭葉は外側溝(シルヴィウス溝)の下に位置し、新皮質の22%を占める。聴覚野・ウェルニッケ野・大脳辺縁系(海馬・扁桃体)を含む多機能領域。
02
主要機能は①聴覚・言語理解(ウェルニッケ野)②視覚記憶③感情処理④垂直知覚の多感覚統合(TPJ)。複合症状として臨床評価に臨む。
03
TPJ(側頭頭頂接合部)は垂直知覚・空間認識の多感覚統合の中枢。損傷でSVV/SPV/SHV偏位、プッシャー症候群、半側空間無視が合併する。
04
SVV評価の正常範囲は±2.5°以内。プッシャー症候群の定量評価にはSCP(Scale for Contraversive Pushing:0〜6点)を用い、スコア>0でプッシャー行動ありと判定。
05
プッシャー症候群は自然回復傾向があり、約3〜6か月で多くが改善。言語機能は最初の3か月で最大の回復を示し、その後数年間継続する。

01
Clinical Encounter

臨床現場でこう出会う。

Case Vignette
72歳男性、右MCA梗塞3日目。「体を支えようとするほど押し返してくる」。

ベッド上の座位評価中、セラピストが右側へ体幹を修正しようとすると強く抵抗する。口から言葉は出るが意味が通じない状態。家族は「何を言っているのか分からない」と困惑。担当PTはSCP(Scale for Contraversive Pushing)スコア3.5/6と記録した。

この患者に起きていること:右後島〜上部側頭葉後部のTPJ領域が梗塞し、垂直知覚(SPV)が障害側(左)へ偏位。患者は「傾いた自分の姿勢が正しい」と感じているため、修正への抵抗が生まれます。失語症はウェルニッケ野損傷による感覚性失語です。

側頭葉損傷の患者は、一見「体が硬い」「言葉が出ない」と見えますが、その背景には複数の神経メカニズムが絡んでいます。本章では側頭葉の基本解剖から始め、臨床で使える知識に落とし込んでいきます。

02
Definition & Anatomy

側頭葉の定義と解剖。

側頭葉(Temporal Lobe)は大脳皮質4葉のひとつです。前頭葉に次いで2番目に大きく、新皮質全体の約22%を占めます。各大脳半球に1つずつ存在します。

側頭葉損傷の主な症状とTPJによる垂直知覚の仕組みを解説した図

側頭葉は外側溝(シルヴィウス溝)の下に位置します。上方では側頭葉と頭頂葉の下頭葉を、後方では後頭葉を分離します。前方および下方の境界は中頭蓋窩が形成します。大脳皮質の外側は新皮質と呼ばれます。古い大脳皮質(辺縁系)は側頭葉の内面にあり、海馬回・海馬・扁桃体が含まれます。

側頭葉の主要な3つの構成領域。

01
ウェルニッケ野(Wernicke’s area)上側頭回後部

音声の理解・処理に特化した領域です。ここが損傷されると「流暢に話せるが意味が通じない」ウェルニッケ失語(感覚性失語)を呈します。ウェルニッケ野はブローカ野とともにコミュニケーション全体をサポートします。損傷後、近隣領域が補償的な役割を担うエビデンスもあります。

02
大脳辺縁系(Limbic system)側頭葉内側面

新皮質より進化的に古い「古い大脳皮質」です。海馬回(記憶の形成)・海馬(陳述記憶)・扁桃体(感情処理・恐怖学習)が含まれます。損傷すると記憶障害・感情コントロール困難・人格変化が生じます。自伝的記憶の崩壊は人格変化や自己認識の変化をもたらすことがあります。

03
ブローカ野との連携(Broca’s area)前頭葉との言語ネットワーク

解剖学的には前頭葉下前頭回に位置しますが、言語ネットワークとして側頭葉と密接に連携します。損傷すると「意味は分かるが言葉が出ない」ブローカ失語(運動性失語)を呈します。ブローカ野が損傷されると、近傍領域が補償することを示唆するエビデンスがあります。

MRI画像でみる側頭葉。

MRIでは各断面で側頭葉を確認します。「外側溝(Sylvius溝)の下がすべて側頭葉」と覚えておきましょう。以下の3断面を確認してください。

側頭葉 MRI 横断像(アキシャル) 側頭葉 MRI 前額断像(コロナル) 側頭葉 MRI 矢状断像(サジタル)

— 側頭葉のMRI各断面。外側溝を境界として確認する。引用:画像診断Cafe

Clinical Insight
MRI読影で「どこからが側頭葉か」を判断する3つのポイント

①外側溝(Sylvius溝)を境界線として確認する。溝の下がすべて側頭葉です。②アキシャル像では側頭極→上・中・下側頭回の順に確認します。③コロナル像では海馬・扁桃体が内側面に位置することを確認します。

「側頭葉のどの部分か」よりも「ウェルニッケ野(後部)か、前部か、内側(辺縁系)か」という3区分で整理すると、臨床症状との対応がしやすくなります。

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STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。側頭葉損傷による言語障害・姿勢障害・記憶障害に対して、神経科学に基づいたプログラムをご提供しています。まずは無料相談でご状況をお聞かせください。

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03
Neural Mechanism

神経メカニズムと責任病巣。

側頭葉は主に聴覚と選択的聴取(Selective Auditory Attention)に関わる機能を持ちます。耳からの感覚情報を受け取り、意味のある言葉として理解するために不可欠な部位です。側頭葉はほぼすべての脳領域からの入力・感覚情報と相互作用します。

側頭葉の解剖と聴覚・言語理解・記憶・感情・TPJの機能を示した図

Functional Overview
側頭葉がつかさどる5つの機能

① 聴覚処理・選択的聴取:耳から伝達される音・ピッチ・音量の統合。側頭葉なしでは言語理解は不可能です。

② 言語理解:話し言葉・書き言葉の意味処理(ウェルニッケ野)。痛みや感覚入力の処理にも関与します。

③ 視覚記憶の保持:顔・物体の記憶・再認。

④ 感情処理:扁桃体による恐怖・報酬・情動反応。空腹感・喉の渇き・性欲などの自律的行動にも関与。

⑤ 多感覚統合・垂直知覚(TPJ):視覚・前庭・体性感覚の統合による空間定位。

TPJ(側頭頭頂接合部)と垂直知覚の機序。

TPJ(Temporo-Parietal Junction:側頭頭頂接合部)は、複数の感覚の皮質の中枢であり、空間的オリエンテーションの様々な側面に関与しています(Kheradmand et al., 2017)。垂直知覚は視覚・前庭・体性感覚を統合して成立します。TPJはその多感覚統合の中枢として機能します。

TPJが視覚・前庭感覚・体性感覚を統合して垂直知覚を作る仕組みとプッシャー症候群の図

EVIDENCE — エビデンスレベル中〜高
Perennou DA et al.:80名の脳卒中患者における垂直知覚の3モダリティ評価

対象・方法:80名の脳卒中患者を対象に、SVV・SPV・SHVの3モダリティを評価した。

主要結果:34名(42.5%)が異常な障害反対側へのSPV偏位を示し、44名(55%)が反対側へのSVV傾斜を有し、26名(32.5%)が反対側へのSHV偏位を示した。同側への偏位は観察されなかった。

臨床的含意:脳卒中患者の姿勢偏位は、直立知覚エラーよりもSPVエラーとより密接に関連します。垂直知覚障害は視覚・姿勢・触覚の各モダリティを独立して評価する必要があります。

プッシャー症候群 TPJ 病変 lateropulsion 脳画像

— プッシャー症候群とTPJ病変の関係を示す図。引用:Kheradmand et al. (2017) より

EVIDENCE — システマティックレビュー・エビデンスレベル高
Kheradmand A et al.:TPJと垂直知覚の多感覚統合(PMC, 2017)

主要知見①:TPJは複数の感覚の皮質の中枢で空間的オリエンテーションの様々な側面に関与。下頭頂小葉・島皮質後部に収束する病変が垂直知覚障害の主な責任病巣です。

主要知見②:プッシャー症候群(pusher behavior)は半側空間無視と高い相関があり、右後島・上部側頭葉後部・下頭頂小葉・中心後回を伴う病変と関連します。急性脳卒中者の約5〜10%に発生します。

主要知見③:白質領域では上縦束(SLF)・下縦束(ILF)・上下後頭前頭束(IFOF)の病変がSVV偏位と関連しています。

主要知見④:TMSで右TPJを阻害すると健常者においても垂直知覚エラーが生じます。なお、約10%の患者は同側へのSVV偏位を呈することがあります。

TPJ 側頭頭頂接合部 垂直知覚 多感覚統合 概念図

— TPJにおける多感覚統合の概念図。引用:Kheradmand et al. (2017) より

身体の向きの知覚・視空間認識・直立姿勢の認識は、同じ皮質ネットワーク(TPJ)を共有している。(Kheradmand et al., 2017)

04
Differential Diagnosis

鑑別診断と類似症状の違い。

失語症タイプの比較:臨床でまず確認すべき「流暢か・非流暢か」。

失語症(Aphasia:言語機能が後天的に障害された状態)は、病巣の部位によってタイプが大きく異なります。臨床評価で最初に確認すべきは「流暢か・非流暢か」です。

ウェルニッケ失語とブローカ失語の病巣・話し方・理解・支援方法の違いを比較した図

項目 ウェルニッケ失語(感覚性) ブローカ失語(運動性) 全失語
責任病巣 上側頭回後部(ウェルニッケ野) 下前頭回(ブローカ野) 広範な前頭・側頭・頭頂葉
発話の流暢性 流暢(語量は多い) 非流暢(努力性・少ない) 非流暢〜無言
言語理解 著明に障害 比較的保たれる 著明に障害
患者の自覚 乏しいことが多い 自覚あり・フラストレーション高 様々
STアプローチの核 理解促進・AAC活用 産生訓練・反復練習 AAC全面活用・家族指導

プッシャー症候群 vs 半側空間無視(USN)の違い。

PUSHER SYNDROME
プッシャー症候群
— 垂直知覚(SPV)の障害
→主観的に「傾いた姿勢が直立」と感じている
→非麻痺側への修正に積極的に抵抗する
→主に右半球病変(後島・TPJ)
→視覚的垂直基準の提示が有効
UNILATERAL SPATIAL NEGLECT
半側空間無視(USN)
— 注意・探索の障害
→障害側空間への注意・探索が障害される
→姿勢修正への積極的抵抗はない
→主に右半球(下頭頂小葉・中前頭回)
→プッシャー症候群と高頻度で合併する
プッシャー症候群とUSNの合併は予後不良因子のひとつ。両者を同一視せず、それぞれの評価を別個に実施することが重要です。

05
Assessment & Scoring

評価尺度と採点基準。

側頭葉損傷の評価では「垂直知覚の3モダリティ」と「プッシャー行動の定量化」が軸になります。それぞれの評価方法と基準値を押さえておきましょう。

SVV・SPV・SHVとSCPによる評価から側頭葉損傷の段階的リハビリまでを示した図

垂直知覚の3モダリティ評価(SVV・SPV・SHV)。

SVV
自覚的視性垂直位
Subjective Visual Vertical
→測定法:暗室で発光棒(または画面上のバー)を使い、患者が「垂直」と感じる角度を測定
→正常範囲:±2.5°以内
→異常:2.5°を超える場合、垂直知覚障害を示唆(反対側への偏位が典型)
→注意:約10%の患者は同側へのSVV偏位を呈する
SPV & SHV
自覚的姿勢的垂直位 / 触覚的垂直位
Subjective Postural/Haptic Vertical
→SPV測定法:座位・立位で体幹傾斜を計測。患者が「まっすぐ」と感じる姿勢の実際の角度を確認
→SHV測定法:視覚を遮断した状態で、手に持った棒を「垂直」に合わせる課題
→臨床的意義:脳卒中患者の姿勢偏位はSPVエラーと最も密接に関連。3モダリティの組み合わせ評価が推奨

SCORING CRITERIA — 完全網羅
SCP(Scale for Contraversive Pushing):プッシャー症候群の採点基準(0〜6点)

概要:SCPは座位・立位・歩行の3場面でプッシャー行動を定量評価します。各場面で0〜2点を配点し、最大スコアは6点です。スコア0がプッシャー行動なし、スコア>0でプッシャー行動ありと判定します。(Karnath HO et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry, 2002)

【座位での評価】 0〜2点:
0点:傾斜なし、または自発的な修正あり
1点:軽度の麻痺側への傾斜あり、介助なしで座位保持可能
2点:明確な麻痺側への傾斜あり、修正への抵抗あり

【立位での評価】 0〜2点:
0点:傾斜なし
1点:麻痺側への体重移動あり、介助なしで立位保持可能
2点:明確な傾斜あり、修正の試みに積極的に抵抗

【歩行での評価】 0〜2点:
0点:プッシャー行動なし
1点:歩行中に麻痺側へ傾く傾向あり
2点:適切な介助をしても歩行困難で積極的抵抗を示す

合計スコア解釈:0点=プッシャーなし、1〜3点=軽〜中等度、4〜6点=重度プッシャー症候群

06
Intervention Phases

介入の段階とエビデンス。

側頭葉損傷へのリハビリテーションは、損傷部位と呈する症状によって介入の優先順位が異なります。以下の4フェーズを参考に、個々の患者に合わせて組み立ててください。

01
Phase 1 急性期(発症〜1週間)廃用予防・環境調整

廃用症候群の予防が最優先です。ポジショニングでは非麻痺側への過度な負荷を避けます。STによる失語症評価は第1週以内に開始(推奨:週3〜5回)。環境調整:声かけやテレビの位置を非麻痺側から行うと、プッシャー症候群の悪化を抑制できることがあります。

02
Phase 2 亜急性期(1〜4週間)評価・目標設定

SCP・SVV・WAB(Western Aphasia Battery)などで障害像を定量化します。垂直知覚評価3モダリティ(SVV・SPV・SHV)を実施し、どのモダリティで偏位が大きいかを確認します。ICFを用いて機能障害→活動制限→参加制約の優先順位を多職種で共有します。

03
Phase 3 回復期(1〜3か月)直接介入・集中訓練

【垂直知覚訓練】視覚的垂直基準(縦線・ドアの縁)を提示しながら座位バランス訓練を実施。1セッション40〜60分・週3〜5回が目安です。体性感覚フィードバックとして非麻痺側への荷重意識を高める訓練も有効です。【言語リハ】STによる反復練習・代償戦略指導を並行実施。1日1〜2回・1セッション30〜45分が推奨です。

04
Phase 4 生活期(3か月〜)ADL統合・社会復帰

家庭・地域でのADLに垂直知覚訓練と言語訓練を統合します。記憶障害への代償戦略(メモ帳・スマートフォン活用)の定着を図ります。家族指導:「姿勢修正を強制しない」「垂直基準を視覚的に示す」「ゆっくり・短く・明確に話す」の3点を共有します。

EVIDENCE — 弱く推奨・エビデンス限定的
Baccini M et al.:プッシャー症候群の予後予測(Arch Phys Med Rehabil, 2014)

概要:システマティックレビューで、プッシャー症候群の予後因子を解析。発症時のSCPスコアが低いほど早期回復が見込まれることを報告。

臨床的含意:視覚的な垂直フィードバック(縦方向の目印を環境に設置)を用いた介入が、プッシャー症候群の早期改善に有効とされています。自然回復を待つだけでなく、積極的な視覚環境の整備が重要です。

STROKE LAB代表 金子唯史

Message from CEO
「退院後も、回復の可能性は続いています。」

STROKE LABでは、脳神経系に特化したセラピストが、退院後の「もっと回復したい」というご要望にお応えします。側頭葉損傷による言語障害・バランス障害・記憶障害に対して、最新のエビデンスに基づく自費リハビリをご提供しています。

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07
Interdisciplinary Approach

多職種連携と環境調整。

側頭葉損傷は言語・認知・姿勢・感情の複数の機能に及ぶため、チームアプローチが不可欠です。各職種の強みを活かした役割分担を確認しましょう。

職種 主な役割 具体的な介入例
PT(理学療法士) 姿勢制御・垂直知覚訓練・歩行再建 SCP評価、視覚的垂直フィードバック訓練、プッシャー症候群への段階的姿勢制御訓練(週3〜5回・40〜60分)
OT(作業療法士) 高次脳機能評価・ADL訓練・代償戦略 記憶障害への代償手段指導、SHV評価、USN評価(線分二等分・消去課題)、上肢機能訓練とADL統合
ST(言語聴覚士) 失語症評価・言語訓練・AAC導入 WABによる失語症タイプ分類、言語訓練(週3〜5回・30〜45分)、コミュニケーションボード・絵カード導入
看護師(Ns) 24時間リハビリ継続・転倒予防 ポジショニング実施、夜間転倒リスク管理、PTと連携した声かけ方法の統一
医師(Dr) 病巣の同定・薬物療法・二次予防 MRI/CTでのTPJ責任病巣確認、側頭葉てんかん合併時の抗てんかん薬管理、抗凝固・抗血小板療法
MSW(社会福祉士) 退院調整・社会資源の活用 自宅改修相談・介護保険申請サポート・家族への心理的サポートと情報提供
Clinical Insight

「プッシャー症候群の患者さんには、ベッドサイドに縦方向の基準線(テープや壁の縁)を設置するだけで姿勢の自己修正が出やすくなることがあります。環境がそのまま訓練になります。」

「ウェルニッケ失語の患者さんには、スタッフ全員で同じコミュニケーション方法(絵カード・ジェスチャー・短い文)を統一することが最大の環境調整です。バラバラな方法では患者さんが混乱します。」

「聴覚フィードバックが姿勢の安定に影響することが報告されています。TV音量・位置・向きも環境調整の対象として検討してみてください。」

08
Pitfalls & Clinical Reasoning

Pitfallsと臨床判断のコツ。

側頭葉損傷は症状の多様性から、新人臨床家がつまずきやすい場面が多くあります。先輩たちが経験した「やりがちな失敗」を事前に把握しておきましょう。

Pitfalls — Don’t make these mistakes
新人臨床家が陥りやすい3つの罠
!
「プッシャーは力で修正できる」という誤解:患者は主観的に「傾いた状態が正しい」と感じています。力任せの修正は信頼関係を損ない、プッシャー行動を強化します。対策:視覚的な垂直基準を環境に設置し、患者自身が気づけるようにアプローチします。
!
失語症を「言葉だけの問題」と捉えて認知評価を見落とす:ウェルニッケ失語を呈する患者は、記憶障害・注意障害・人格変化も合併していることが多い。言語評価だけで認知機能を「正常」と判断するのは危険です。対策:STと連携してWABや認知評価も実施し、失語と認知障害を切り分けます。
!
TPJ病変でUSNとプッシャーが合併する複合症状を見落とす:プッシャー症候群はUSNと高頻度で合併します。片方だけを評価・介入すると、もう一方が残存し回復を阻害します。対策:SCPと半側空間無視スクリーニング(線分二等分・消去課題など)を同時に実施することを習慣にします。

臨床判断の分岐点:SVVとSPVの偏位方向が一致しないとき。

SVV(視覚性)とSPV(姿勢性)の偏位方向が一致しない場合は、処理モダリティによって障害部位が異なることを示します。前庭系の関与(視床・脳幹病変)を疑い、より詳細な神経学的評価が必要です。

Mentor’s Voice

「SVVは正常なのにSPVが著明に偏位している患者さんがいました。最初は評価ミスかと思いましたが、視床の梗塞が後から判明しました。3つのモダリティをセットで評価することで、こういうケースも見つかります。」

「プッシャー症候群への介入で大切なのは『患者さんは間違った感覚を信じている』という理解です。責めずに、視覚的な手がかりを丁寧に提示する関わり方が、最終的に信頼関係も訓練効果も高めます。」

Lateropulsionを呈した患者は、SPV・SHV・SVVすべてで逆方向への傾きを有していた。(Kheradmand et al., 2017)

09
Prognosis & Goal Setting

予後とゴール設定。

側頭葉損傷の予後は障害の部位・範囲・合併症によって大きく異なります。予後予測とゴール設定はご本人・ご家族・多職種チームで共有することが重要です。

Prognosis Overview
各症状の予後の目安

プッシャー症候群:比較的良好な自然回復が見込まれます。多くのケースで発症後3〜6か月での改善が報告されています。USNや大きな梗塞との合併例では予後が不良になる傾向があります。視覚的垂直フィードバックを用いた積極的介入が回復を促進します。

失語症(ウェルニッケ失語):言語機能の回復は最初の3か月で最大の改善を示します。その後も数年にわたって緩やかな回復が続きます。早期からの集中的な言語聴覚療法が回復を促進します(Pedersen PM et al., Ann Neurol, 1995)。

記憶障害:海馬・海馬傍回の損傷範囲に依存します。代償戦略の指導により日常生活への影響を最小化することが目標となります。自伝的記憶の喪失は人格変化につながるため、心理的サポートも重要です。

側頭葉損傷の予後は「部位 × 範囲 × 発症後の介入量」で決まる。退院後の継続的リハビリが回復の天井を引き上げるという視点を、ご家族とともに共有しましょう。

10
FAQ

よくある質問。

Q.側頭葉はどこに位置し、どんな構造を持っていますか?
A.

側頭葉は外側溝(シルヴィウス溝)の下に位置し、大脳皮質4葉のうち2番目に大きく、新皮質全体の約22%を占めます。各大脳半球に1つずつ存在します。

主要な構成領域はウェルニッケ野(言語理解・上側頭回後部)、ブローカ野との言語ネットワーク、大脳辺縁系(海馬・扁桃体:記憶と感情処理)です。

Q.側頭葉が損傷されると、どのような症状が現れますか?
A.

主な症状として、①様々な形態の失語症②記憶力の低下③人格の変化・感情コントロール困難④自己認識の変化⑤食欲・性欲などの自律的行動の変化⑥実行機能の変化⑦空間移動・空間推理の変化が挙げられます。

また、側頭頭頂接合部(TPJ)が損傷されると垂直知覚障害やプッシャー症候群を呈することがあります。側頭葉はほぼすべての脳領域と相互作用するため、損傷の影響は広範囲に及びます。

Q.ウェルニッケ野とブローカ野の違いを教えてください。
A.

ウェルニッケ野(上側頭回後部)は音声の理解と処理に関わります。ここが損傷されると「流暢に話せるが意味が通じない」ウェルニッケ失語(感覚性失語)を呈します。患者は自覚が乏しいことが多く、コミュニケーションがかみ合わない状態になります。

ブローカ野(前頭葉下前頭回)は発話産生に関わり、損傷すると「意味は分かるが言葉が出ない」ブローカ失語(運動性失語)となります。ブローカ野損傷後に近傍領域が補償する可能性も報告されています。両野はコミュニケーション全体をサポートするために連携しています。

Q.プッシャー症候群と側頭葉・TPJ損傷の関係は何ですか?
A.

プッシャー症候群は急性脳卒中患者の約5〜10%に発生します。右後島・上部側頭葉後部・下頭頂小葉・中心後回の病変と強く関連します。

TPJ(側頭頭頂接合部)が垂直知覚の多感覚統合を担うため、この領域の損傷で自覚的姿勢的垂直位(SPV)が障害側へ偏位し、患者は傾いた自分の姿勢を「正しい」と感じます。これがプッシャー行動の本質です。プッシャー症候群は半側空間無視と高頻度で合併します。

Q.SVV(自覚的視性垂直位)の評価はどのように行いますか?
A.

SVV(Subjective Visual Vertical:自覚的視性垂直位)は、暗室で発光棒などを使い患者が「まっすぐ」と感じる角度を測定する評価です。正常範囲は±2.5°以内で、これを超える偏位が垂直知覚障害を示します。

SPV(自覚的姿勢的垂直位)は座位・立位での体幹傾斜認識を評価し、SHV(触覚的垂直位)は手で棒を直立に合わせる課題です。3つのモダリティを組み合わせることで、障害のある感覚チャネルを特定できます。約10%の患者は同側へのSVV偏位を呈することに注意します。

Q.側頭葉損傷のリハビリテーションはどのように進めますか?
A.

急性期は廃用予防・ポジショニング・環境調整が中心です。回復期は言語障害にはSTによる言語聴覚療法(週3〜5回・1回30〜45分)、垂直知覚障害にはPTによる視覚・体性感覚フィードバック訓練(週3〜5回・1回40〜60分)、記憶障害にはOTによる代償戦略指導が柱となります。

プッシャー症候群には視覚的な垂直基準を提示しながらの姿勢訓練が有効です。多職種チームによる集中的介入が推奨されます。退院後も継続的なリハビリを行うことで、回復の天井を高めることができます。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

STROKE LABは脳神経系・神経科学に特化した自費リハビリ施設です。側頭葉損傷によるプッシャー症候群・失語症・記憶障害・バランス障害に対して、神経可塑性に基づいた集中的プログラムを提供しています。厳しい採用基準を通過した専門セラピストが、「退院後も回復できる」を実現するためにサポートします。

STRENGTHS
STROKE LABの強み
— 脳神経系に特化した専門施設
→脳科学〜徒手技術に特化した神経系専門セラピスト
→最新のエビデンスに基づくプログラム設計
→1対1の集中的な個別プログラム
→退院後・生活期の継続リハビリに対応
PROGRAM
取り組める内容
— 側頭葉損傷への専門的アプローチ
→垂直知覚訓練(プッシャー症候群・姿勢改善)
→言語・コミュニケーション機能の向上支援
→記憶障害への代償戦略と認知リハビリ
→日常生活・社会復帰に向けた包括的支援

— STROKE LABでの脳卒中リハビリの実際の様子です。

Voice from Mentors

「側頭葉損傷の患者さんに失語症とプッシャー症候群が合わさっていたとき、最初は言語評価と姿勢評価をまったく別々に考えていました。でもTPJという同じ脳領域が両方に関係していると分かってから、評価の見方がガラリと変わりました。症状を個別にではなく、『脳のどこが担っているか』という視点で全体像を捉えることが大切です。」— 理学療法士・臨床経験12年・脳神経リハビリテーション専門

「プッシャー症候群の患者さんに対して最初は『もっとこちらへ来て』と声かけしていましたが、SVV偏位があると患者さんには自分の姿勢が正しく感じられているんです。その理解ができてから、視覚的な目印を使ったアプローチに切り替えたところ、信頼関係も訓練の効果も格段に改善しました。」— 作業療法士・臨床経験8年・高次脳機能障害担当

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Message from CEO
「言葉が出ない」「体が傾く」、
諦めないでください。

STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

脳卒中後の言語障害・姿勢障害・記憶障害は、退院後も回復を続けることができます。側頭葉損傷に関わる神経可塑性の研究が示す通り、適切な量と質の介入を継続することが、回復の可能性を高めます。

STROKE LABでは、「もっと良くなりたい」というご本人・ご家族の思いに寄り添い、脳神経系リハビリの専門家チームが個別の集中プログラムを提供します。

プッシャー症候群で歩けなかった方が歩けるようになった実例、失語症で諦めていたコミュニケーションが回復した実例があります。まずは無料相談でご状況をお聞かせください。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

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References

参考文献。

01Kheradmand A, et al. Perception of Upright: Multisensory Convergence and the Role of Temporo-Parietal Cortex. Int J Neurosci. 2017;127(7):549-559. PMC5660972.
02Perennou DA, et al. Lemniscal paths to perceptual verticality in stroke: a lesion-symptom mapping study of 80 cases. Neuroreport. 2008;19(4):481-485.
03Baccini M, et al. Predicting rehabilitation outcome for pusher syndrome in stroke: a systematic review and meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2014;95(6):1024-1031.
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09金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.

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