子どもの手足の力が急に抜ける|見逃せない脱力発作ともやもや病のサイン
急な脱力を見逃さないために、場面と脳血流の変化から考える
「急に物を落とした」「片脚が抜けて座り込んだ」——すぐ元に戻っても、脳の血流が一時的に低下したサインのことがあります。急な片側の脱力は、回復したかどうかではなく、起きた事実を医療へつなぐことが大切です。

数分で戻っても、見過ごさない。
脱力とは、急に物を落とす、腕が上がらない、脚が支えられない、座り込むなど、普段できる動きが突然できなくなる状態です。疲れや痛みでも起こりますが、片側だけに突然起きる変化は、脳の血流低下を含めて確認が必要です。
一過性脳虚血発作では、症状が消えることがあります。回復したことを安心材料だけにせず、発症時刻と症状を医療へ伝えます。
この変化は、すぐ医療へ。
| 今すぐ対応 | 早めに専門受診 |
|---|---|
| 片側の手足が突然動かない 顔がゆがむ・言葉が出ない 意識がぼんやりする けいれん・呼吸異常 強い頭痛や繰り返す嘔吐 |
症状が数分で戻った 同じ発作を繰り返す 発作のたびに左右が変わる 泣く・吹く・走る後に起きる 発作後に小さな左右差が残る |
今まさに急な神経症状がある場合は、119番通報を含めた緊急対応を優先します。「小児だから脳卒中ではない」とは判断できません。

泣く・吹く・走る後の脱力。
小児のもやもや病では、泣く、笛や吹奏楽器を吹く、熱い食べ物を冷ます、息が切れる運動などの後に、一時的な脱力や言葉の変化が起こることがあります。
呼吸が速くなると血液中の二酸化炭素が減り、脳の血管が収縮します。もともと脳へ届く血流が少ない場合、さらに血流が不足して症状が現れることがあります。ただし、誘因が似ていても、もやもや病とは限りません。診断には医療機関での画像検査などが必要です。
国内の公的情報では、小児のもやもや病は脱力発作、感覚の変化、言葉、意識、けいれん、頭痛などで現れ、泣くなどの過呼吸で誘発されることがあるとされています。
限界:これらの症状は他の病気でも起こります。誘因や症状だけで病名を判断することはできず、医療評価の代わりにはなりません。

もやもや病の診断、手術、学校生活の注意点は、No.68「子どものもやもや病」で詳しく解説します。
受診時に伝えたい7項目。
動画は診療の助けになりますが、撮影より安全確保と救急要請が先です。症状を確認するために歩かせる、泣かせる、笛を吹かせることは避けます。
医療確認後、専門評価でわかること。
専門施設の役割は、発作を再現して病名を探すことではありません。主治医が緊急性を確認した後に、発作の情報と、生活に残る小さな変化を整理して医療・家庭・学校へ返すことです。
手指、腕、脚、体幹、顔、発話のどこから変化したかを時系列で整理します。
腕振り、手の開き、片脚支持、速さ、二重課題、疲労後に左右差が出ないか確認します。
体育、音楽、給食、登下校のどこで変化が起きるかを整理し、主治医の指示に沿って配慮へつなげます。

避けたい3つの対応。
| 避けたいこと | 代わりに行うこと |
|---|---|
| 戻ったから様子を見る | 発症時刻を記録し、医療へ相談する |
| 泣かせる・走らせるなどして再現する | 直前の状況をメモし、再現は医療判断に任せる |
| 脱力を筋力不足だけで考える | 顔・言葉・意識・誘因を含めて全体で伝える |
よくある質問。
その後の生活機能を、私たちが一緒に整理します。
STROKE LABは診断や急性期治療の代わりではありません。主治医の判断を尊重し、手足の使い方、歩行、疲労、学校での再現性を動作分析から確認します。
次の安全な一歩へ。

子どもの一時的な脱力は、受診時には消えていることも少なくありません。だからこそ、ご家族が見た変化を、時刻・左右・動作・誘因に分けて医療へ伝えることが大切です。
医療機関で緊急性が確認された後も、歩行や手の使い方、疲れた場面だけに残る左右差が気になることがあります。私たちは、機能解剖と動作分析を使い、生活の中で何が変わったのかを整理します。
急な症状は医療を最優先に。その後の家庭・学校での困りごとは、どうぞご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

症状を「筋力」だけで見ず、脳の機能解剖と動作のつながりから考えるための臨床的な土台をまとめています。
- 子どものもやもや病|手足の脱力発作とリハビリで大切なこと
- 子どもの脳梗塞・脳出血|小児の脳卒中とその後のリハビリ
- 子どもの脳の可塑性|発達と回復をどう考えるか
本記事は、公的情報、診療ガイドライン、小児脳卒中の科学的ステートメントをもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。最終確認日:2026年7月13日。
- 難病情報センター.もやもや病(指定難病22).小児の一過性脳虚血症状と誘因。
- Fujimura M, et al. 2021 Japanese Guidelines for the Management of Moyamoya Disease. Neurol Med Chir (Tokyo). 2022;62(4):165-170.
- Ferriero DM, et al. Management of Stroke in Neonates and Children. Stroke. 2019;50(3):e51-e96.
- Tagawa T, et al. Regional cerebral blood flow, clinical manifestations, and age in children with moyamoya disease. Stroke. 1987;18(5):906-910.
- 金子唯史.脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院;2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)