自費リハビリを開業したい理学療法士(PT)・作業療法士(OT)必見!失敗しないための15の改善策!
以下はSTROKE LAB代表 金子がこれまで様々な療法士から開業・起業の相談を受けてきた中での回答をまとめました。参考になれば幸いです。
1. 技術や専門知識に集中できると思ったが、実際は経営や集客に追われる
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理想: 「自分の専門技術を活かし、患者一人ひとりに最適なリハビリを提供できる。1日5〜6人の患者と深く関わり、高品質なサービスを提供できるだろう」と考えていた。
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具体的事例: 起業後、予想に反して1日の予約数は平均で2〜3人程度。売上目標(月額売上100万円)を達成するために新規患者を増やす必要がある。結果として、チラシの配布(毎月5,000枚以上)、SNSの投稿(週3回以上)、ウェブサイトのSEO対策など、マーケティング活動に1日あたり3〜4時間を費やすことになる。専門知識の研鑽や患者対応に割ける時間が減少し、技術の向上が停滞。
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改善策:
- マーケティングの効率化: デジタルマーケティングを活用し、ターゲットとなる顧客に効率的にアプローチ。Google広告やSNS広告で地域や興味関心を絞り込み、少ない予算で効果的な集客が可能。
- 専門家へのアウトソーシング: マーケティング業務を専門の業者やフリーランスに委託し、自分は専門業務に集中する。
- 顧客リテンションの強化: 既存顧客へのフォローアップやリピート促進策を実施し、安定した顧客基盤を構築する。
2. 自由な働き方ができると思ったが、逆に労働時間が長くなる
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理想: 「自分のペースで働き、週休2日制でプライベートも充実させられる」と期待していた。
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具体的事例: 開業初年度は顧客獲得のため、営業時間を9:00〜21:00まで設定。予約が入れば休日や夜間にも対応し、週の労働時間は80時間を超えることも。月間の休日は2〜3日程度で、疲労が蓄積し体調を崩すこともある。
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改善策:
- 営業時間の最適化: 顧客の来店時間帯を分析し、効果的な営業時間を設定。無理な対応を避け、労働時間を適正化する。
- 時間管理の徹底: タスクの優先順位を明確にし、業務効率を向上させるツールや方法を導入。
- スタッフの採用や育成: 信頼できるスタッフを雇用し、業務を分担することで負担を軽減。
3. 収入が増えると思ったが、安定した収益を得るのが難しい
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理想: 「自費サービスなので、高収入が期待できる」と思っていた。
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具体的事例: 月間売上は60万円〜80万円にとどまり、家賃や経費を差し引くと手元に残るのは月額10万円〜15万円程度。生活費やローンの返済に苦労する。
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改善策:
- 収益モデルの見直し: サブスクリプション型のプランや回数券の導入で、安定した収入源を確保。
- 付加価値サービスの提供: 商品販売やオンライン講座など、収益源を多角化する。
- 費用削減の検討: 固定費や変動費を見直し、無駄な支出を削減。
4. 自分の理想のサービスを提供できると思ったが、法規制や倫理的制約がある
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理想: 「独自のリハビリプログラムを自由に展開できる」と期待していた。
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具体的事例: ウェブサイトで「〇〇療法で腰痛が完全に治る!」と宣伝したところ、医療広告ガイドライン違反として指摘を受ける。サイトの修正や再制作に追加で数十万円の費用が発生。
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改善策:
- 法規制の理解と遵守: 起業前に医療法や広告規制を十分に学び、適切な情報発信を行う。
- 専門家の助言を活用: 法律や規制に詳しい専門家に相談し、コンプライアンスを徹底。
- エビデンスに基づくサービス提供: 科学的根拠のあるリハビリ方法を採用し、信頼性を高める。
5. 口コミで自然と集客できると思ったが、効果的なマーケティングが必要
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理想: 「質の高いサービスを提供すれば、お客様が自然と増える」と考えていた。
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具体的事例: 開業から3ヶ月経っても新規顧客は月に2〜3人程度。広告代理店に相談し、追加のマーケティング費用が発生。
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改善策:
- デジタルマーケティング戦略の構築: SEO対策やコンテンツマーケティングでオンラインでの露出を高める。
- 口コミ促進策の実施: 紹介プログラムやレビュー投稿のインセンティブを設け、口コミを活性化。
- ターゲット顧客の明確化: 顧客ペルソナを設定し、効果的なマーケティングメッセージを発信。
6. 初期投資は少なくて済むと思ったが、予想以上の資金が必要
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理想: 「初期費用は設備費とテナント費用合わせて200万円程度で済むはず」と思っていた。
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具体的事例: 実際には合計で500万円以上の初期投資が必要に。追加で金融機関からの融資を受けることになる。
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改善策:
- 詳細な資金計画の策定: 初期費用や運転資金を正確に見積もり、資金調達計画を立てる。
- 助成金や補助金の活用: 国や自治体の起業支援制度を活用し、資金負担を軽減。
- 費用の最適化: 中古機器の導入やシェアオフィスの利用などで初期費用を抑える。
7. 信頼できるスタッフと協力できると思ったが、人材確保が困難
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理想: 「同じ志を持つ理学療法士とチームを組める」と期待していた。
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具体的事例: 求人広告を出しても応募が少なく、採用できたスタッフも転職してしまう。
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改善策:
- 魅力的な職場環境の構築: 働きやすい環境やキャリアパスを提供し、人材の定着を図る。
- 人材育成の強化: 研修や教育制度を整備し、スタッフのスキルアップを支援。
- ネットワークの活用: 業界のコミュニティや学校との連携で人材情報を収集。
8. 患者さんと深い信頼関係を築けると思ったが、顧客の入れ替わりが激しい
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理想: 「長期的に通ってもらい、信頼関係を深められる」と思っていた。
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具体的事例: リピート率が30%以下で、顧客定着の難しさを実感。
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改善策:
- 顧客満足度の向上: サービスの質や接客を見直し、顧客のニーズに応える。
- フォローアップ体制の強化: 定期的な連絡やアフターサービスで顧客との関係を維持。
- ロイヤルティプログラムの導入: ポイント制度や特典を提供し、再来店を促進。
9. 行政手続きは簡単だと思ったが、許認可取得に時間と労力がかかる
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理想: 「開業届を出せば、すぐに事業を始められる」と思っていた。
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具体的事例: 手続き完了までに3ヶ月以上かかり、予定していた開業日を2ヶ月遅延。
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改善策:
- 事前準備の徹底: 必要な許認可や手続きをリストアップし、スケジュールを組む。
- 専門家への相談: 行政書士や弁護士に手続き代行を依頼し、効率化を図る。
- 情報収集: 関連機関のセミナーやウェブサイトで最新情報を入手。
10. 競合は少ないと思ったが、実際は多くの競合が存在する
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理想: 「地域で唯一の自費リハビリ施設として独自性を発揮できる」と期待。
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具体的事例: 開業後、近隣に同様の施設が5店舗以上存在することが判明。
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改善策:
- 市場調査の実施: 起業前に競合状況を把握し、差別化ポイントを明確にする。
- 独自の強みの開発: 特定のリハビリ分野に特化するなど、専門性を高める。
- 価格競争からの脱却: サービスの質や顧客体験で勝負し、価格以外の価値を提供。
11. 顧客はサービスの価値を理解してくれると思ったが、価格への抵抗が強い
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理想: 「高品質なサービスには適正な対価を払ってもらえる」と思っていた。
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具体的事例: 値下げ交渉や割引要求が頻発し、1回あたりの単価は6,000円まで下がる。
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改善策:
- 価値の明確化: サービスの効果やメリットを具体的に伝え、価格に見合う価値を理解してもらう。
- 体験セッションの提供: 初回限定でお試し価格を設定し、サービスの良さを実感してもらう。
- 料金プランの多様化: 回数券や月額プランを導入し、顧客のニーズに合わせた価格設定を行う。
12. 継続的な自己研鑽ができると思ったが、時間的余裕がない
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理想: 「経営しながら新しい技術や知識を学び続けられる」と考えていた。
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具体的事例: 業務が多忙でセミナー参加の時間が取れず、技術のアップデートが滞る。
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改善策:
- 時間管理の見直し: スケジュールを整理し、学習時間を確保。
- オンライン学習の活用: オンラインセミナーやウェビナーを利用し、効率的に学ぶ。
- 学習コミュニティへの参加: 同業者との情報共有や勉強会でモチベーションを維持。
13. 家族や友人の支援が得られると思ったが、理解が得られないことも
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理想: 「家族や友人が応援してくれるので、心強い」と思っていた。
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具体的事例: 収入が不安定で家族から「安定した職に戻ってほしい」と言われる。
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改善策:
- コミュニケーションの強化: 起業の状況や将来の計画を家族と共有し、理解を求める。
- 現実的な目標設定: 家族が安心できるよう、具体的な数値目標や達成計画を示す。
- サポート体制の構築: 精神的なサポートを得るために、起業家コミュニティやカウンセリングを活用。
14. 自分のペースで事業を拡大できると思ったが、市場の変化に対応が必要
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理想: 「計画通りに事業を進め、徐々に拡大できる」と期待していた。
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具体的事例: オンラインリハビリサービスの台頭により、新たな設備投資が必要に。
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改善策:
- 市場動向の継続的な把握: 定期的に市場調査を行い、トレンドに敏感になる。
- 柔軟な事業計画の策定: 変化に対応できるよう、複数のシナリオを準備。
- 新サービスの開発: オンライン対応や新たなリハビリ手法の導入で競争力を維持。
15. プレッシャーは少ないと思ったが、経営者としての責任が重い
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理想: 「好きなことを仕事にしているのでストレスは少ない」と思っていた。
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具体的事例: 資金不足や経営難に直面し、プレッシャーから睡眠障害や胃痛に悩まされる。
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改善策:
- ストレス管理の実践: 定期的な休息やリラクゼーションを取り入れ、健康を維持。
- サポートネットワークの活用: メンターや経営者仲間に相談し、悩みを共有。
- 専門家の助言を求める: 経営コンサルタントやメンタルヘルスの専門家に相談し、適切な対応策を見つける。
まとめ
理学療法士・作業療法士が自費リハビリを起業する際には、多くの挑戦が待ち受けています。しかし、事前の準備と適切な改善策を講じることで、これらの課題を乗り越えることが可能です。現実を直視し、柔軟な対応と継続的な努力を重ねることで、理想の実現に近づくことができるでしょう。頑張ってください!
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)