【2023年版】MAL評価 メリットデメリット :モーターアクティビティーログの作業療法
目次
Motor Activity Log 【MAL】とは?
モーターアクティビティログ(MAL)は、患者の上肢機能を評価するための自己報告式アセスメントツールです。MALは、特に脳卒中患者の回復過程で上肢機能の改善を評価するのに役立ちます。MALには2つの主要なバージョンがあります。これらは、Amount of Use (AOU)スケールとQuality of Movement (QOM)スケールです。
以下は、MALの実施項目と方法です:
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事前準備:研究者は、MAL評価シートを用意し、患者に説明します。患者が評価の目的と手順を理解できるように、十分な説明が必要です。
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アクティビティリスト:MALでは、日常生活での30項目の活動が評価されます(14項目などもあります)。これらの活動は、食事、着替え、トイレなどの基本的な日常生活動作(ADL)から、買い物、料理、手紙を書くなどのより複雑な活動までさまざまです。必要に応じて、研究者は活動リストに追加項目を含めることができます。
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評価尺度:
- Amount of Use (AOU)スケール:患者は、0(全く使用しない)から 5(以前と同じくらい使用)の範囲で、日常生活での上肢の使用度合いを評価します。
- Quality of Movement (QOM)スケール:患者は、0(全くできない)から 5(以前と同じくらいうまくできる)の範囲で、動作の質を評価します。
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評価の実施:患者は、各活動に対してAOUスケールとQOMスケールを使用して評価を行います。患者がスケールに沿って自分の機能を正確に評価できるように、研究者が適切なガイダンスとサポートを提供することが重要です。
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データの分析:評価が完了したら、研究者はMALのスコアを計算し、患者の上肢機能を評価します。スコアは、患者の進捗を追跡し、リハビリテーション計画を調整するのに役立ちます。MALは、患者の上肢機能を追跡し、リハビリテーション計画を調整するのに役立ちます。繰り返し評価を行うことで、患者の機能改善の過程を把握し、治療法の効果を評価することができます。
- 縦断的モニタリング:MALは、経時的な変化を評価するために定期的に実施できます。これにより、患者の上肢機能の回復過程を詳細に追跡し、治療介入の効果や患者のニーズに適したリハビリテーション計画の変更を判断することが可能になります。
MALは、リハビリテーションの進捗を評価し、患者の上肢機能回復に対する治療介入の効果を把握するのに役立つツールです。しかし、記憶に基づく自己報告の誤りや主観性が結果に影響を与える可能性があるため、他の評価法と組み合わせて使用することで、より正確かつ包括的な評価が可能となります。
MALの実施動画↓↓↓
MALのメリット・デメリット
モーターアクティビティログ(MAL)と他の評価法の利点と欠点
モーターアクティビティログ(MAL)は、脳卒中などの神経疾患からの回復を経験している個人の運動機能を評価するための貴重な評価ツールです。MALの主な利点は、日常生活でのモーター機能を正確に表現できる生態学的妥当性があることです。また、MALはカスタマイズ性が高く、幅広い対象者に適用できます。
さらに、MALは実施が容易で、簡単で非侵襲的な自己報告測定であり、最小限の機器と資源が必要となります。これにより、患者と医療提供者の負担が軽減されます。また、MALは縦断的モニタリングに適しており、患者の進捗を追跡し、治療法を適切に調整することができます。
しかし、MALにはいくつかの欠点もあります。最も顕著な懸念事項は主観性であり、参加者が自分の能力を過大評価または過小評価することで、結果が不正確になる可能性があります。また、MALは範囲が限定的であり、主に上肢モーター機能に焦点を当てているため、モーター機能の他の側面を評価するのに十分ではないかもしれません。評価プロセスは、参加者が日常活動の詳細な記録を提供しなければならないため、時間がかかることもあります。
さらに、MALのバイアスの可能性も懸念されます。参加者は社会的望ましさに影響を受ける可能性があり、結果が偏ることがあります。最後に、患者の記憶に依存してモーター活動を思い出す必要がありますが、これは記憶の誤りや不正確さによって影響を受ける可能性があります。これらの欠点にもかかわらず、MALはモーター機能を評価するための貴重なツールであり、個人のモーター能力を包括的に評価するために他の評価方法と併用することができます。
メリット | デメリット |
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1. 生態学的妥当性: | 1. 主観性: |
日常生活での運動機能を正確に表現。 | 自己評価の誤差が結果に影響を与える。 |
2. カスタマイズ性: | 2. 範囲が限定的: |
幅広い対象者に適用可能。 | 上肢機能に焦点を当てた評価法。 |
3. 実施の容易さ: | 3. 時間がかかる: |
簡単で非侵襲的な自己報告測定。 | 詳細なアクティビティ記録が必要。 |
4. 費用対効果: | 4. バイアスの可能性: |
最小限の機器と資源で実施可能。 | 社会的望ましさが結果に影響を与える。 |
5. 縦断的モニタリング: | 5. 患者の記憶に依存: |
時間をかけて患者の進捗を追跡可能。 | 記憶の誤りや不正確さが結果に影響。 |
MALに類似する評価は何?
モーターアクティビティログ(MAL)に似た評価法がいくつか存在します。以下に、上肢機能や日常生活動作(ADL)の評価に用いられるいくつかの代表的なアセスメントツールを示します。
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Fugl-Meyer Assessment (FMA): FMAは、主に脳卒中患者の運動機能の回復を評価するために使用される定量的評価法です。上肢機能、下肢機能、手指機能、バランス、感覚、関節可動域などのさまざまな機能を評価します。
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Action Research Arm Test (ARAT): ARATは、上肢の運動機能を評価するためのアセスメントツールで、主に脳卒中患者に適用されます。ARATでは、患者が様々な日常生活での物体操作タスクを実施し、そのパフォーマンスを評価します。
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Nine-Hole Peg Test (NHPT): NHPTは、手指の器用さと速度を評価するための簡易的なアセスメントツールです。患者は、9つの穴にピンを挿入し、取り出すタスクをできるだけ速く実行します。このテストは、上肢機能の評価や神経機能障害の診断に用いられます。
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Jebsen-Taylor Hand Function Test (JTHFT): JTHFTは、上肢機能を評価するためのタイムド・アセスメントツールです。患者は、日常生活での手指操作タスクを実施し、その実行時間を測定します。
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Barthel Index (BI): BIは、日常生活動作(ADL)の自立度を評価するためのアセスメントツールです。食事、移動、更衣、トイレなどの基本的なADLに対して、患者の自立度を評価します。
これらの評価法は、上肢機能や日常生活動作の評価において、MALと同様に重要な役割を果たします。各評価法は、特定の目的や機能に焦点を当てており、モーター機能の包括的な評価のために、MALと組み合わせて使用することができます。
【Motor Activity Log:評価用紙 MAL-14を参考】
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カテゴリー
タイトル
●重度上肢麻痺の脳卒中患者に対するMotor Activity Logとは?
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●臨床において生活場面の手の使用状況の評価としてMALを頻用する。しかし、重度麻痺患者ではスコアが付きづらく、その変化を感じづらい。重度麻痺患者に対するMALの論文に興味を持ち読むに至る。
内 容
背景
●Motor Activity Log(MAL)と機能障害が重度の方用のMAL(LF-MAL)は、脳卒中患者の日常生活での麻痺側上肢の使用頻度と動きの質を評価するために使用されます。
●この研究では、Rasch分析を使用して、脳卒中患者のMALおよびLF-MALの心理測定学的特性を調べました。
方法
●MALとLF-MALには、使用頻度(AOU)と動きの質(QOM)の2つのスケールが含まれます。 Rasch分析を使用して、MALおよびLF-MALの一次元性(複数の項目群が、その構成概念をはかるのに適切かどうか)、課題難易度の階層、ターゲティング、信頼性、および課題による求められる機能の差異を調べました。
結果
●軽度~中等度の障害を有する脳卒中患者403名において上肢MALを評価、重度麻痺患者134名に対する低機能患者用MAL(LF-MAL)を評価した。改訂されたMALおよびLF-MALは一次元スケールであり、カテゴリはうまく機能し、優れた評価信頼性で患者の特性によってバイアスは受けないようであった。MALとLF-MALは両方とも床効果はあるようであった。
●さらなる研究により、脳卒中患者の実際の状況での活動のパフォーマンスを評価するための簡単な項目が追加される可能性があると思われます。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中重度麻痺患者の日常生活上の麻痺側の参加を示す指標で、適切な課題でその変化量を十分に示せる世界的指標はほぼない状態であると思う。ADOC-Hなどのアプリを使用して個々に応じた評価が現時点では患者の変化を追えるデバイスとなっているか。重度麻痺患者に適切な日常生活課題、その介入を臨床では突き詰めていきたい。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)