GDS(老年期うつ病評価尺度)とは?15項目の採点・カットオフ【PDF評価付き】
「年齢のせい」で、
気持ちの変化を見逃さない。
老年期うつ病評価尺度 GDS
15の問いから、本人の気持ちと次の支援へ。

01|GDSとは|「年齢のせい」で片づけないために
Geriatric Depression Scale(GDS)は、高齢者の抑うつ症状を拾い上げる質問紙です。30項目版から短縮されたGDS-15が広く使われています。本人が過去1週間の気持ちを振り返り、「はい」「いいえ」で回答します。食欲や睡眠などの身体症状を中心に尋ねる構成ではなく、満足感、興味、気分、希望などを確認する点が特徴です。[1][2]
| 項目 | GDS-15の基本 |
|---|---|
| 項目数・得点 | 15項目、各0または1点、合計0〜15点 |
| 対象期間 | 過去1週間。使用する日本語版の教示も確認 |
| 所要時間 | 回答は約5〜7分が目安。背景の面接と説明は別に確保 |
| 回答方法 | 本人記入、または質問を読み上げて本人が回答 |
| 役割 | 詳しい面接・診察につなぐスクリーニングと経過の整理 |
点数が高いほど抑うつに関連する回答が多くなります。ただし、点数だけでうつ病の診断や治療の要否を決めるものではありません。[5]
02|最初に決めること|15項目版と日本語訳をそろえる
同じ「GDS」という名前でも、30項目版、15項目版、さらに短い版があります。満点やカットオフは共通ではありません。また、日本語の15項目版にも複数の訳があります。「どの版を使ったか」を記録し、再評価でもそろえることが出発点です。[1][3][9]
| 資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 日本老年医学会の公開GDS15 | 日本語の15項目用紙。公開PDFで質問・配点を確認できる。 |
| GDS-15-J(杉下ら) | 日本語で標準化・検証された版。マニュアルと用紙の入手先を掲載。 |
| 今回のSTROKE LAB PDF | 公開英語原版の15項目を独自に日本語参考訳。質問・回答欄・採点・臨床記録を収録。検証済みGDS-15-Jとは別。 |
原版は開発者サイトでパブリックドメインと明記されています。今回はその英語原版から参考訳を作成しました。標準化された日本語版の判定を行うときは、該当版の用紙・教示を使用してください。[1][2][9]
03|実施前の準備|本人が答えやすい条件をつくる

静かな場所に座り、眼鏡・補聴器、文字の大きさ、照明を整えます。疲れが強い時間帯は避け、家族に先回りして答えてもらわないよう説明します。麻痺があり記入できなくても、質問を聞いて本人が答えられれば、その回答を記録できます。
導入は「この1週間の気持ちを教えてください。正解や不正解はありません。近い方を選んでください」と簡潔にします。読み上げる場合も質問を誘導的に変えず、回答を待ちます。分からない項目は一度読み直し、それでも判断できなければ不明として残します。
認知症という診断名だけで一律に除外する必要はありませんが、質問理解と期間の振り返りが可能かを確認します。理解が保てない、せん妄が疑われる、失語症で二択の意味を捉えにくい場合は、無理に合計せず、面接・行動観察・家族情報を組み合わせます。[5]
04|実施と採点|「はい」の数を数える検査ではない
15項目を順に確認したら、まず回答漏れを点検します。原版の順番では、1・5・7・11・13は「いいえ」で1点、それ以外は「はい」で1点です。もう一方は0点とし、15項目を合計します。[2][5]
| 1点となる回答 | 原版の項目番号 |
|---|---|
| いいえ | 1・5・7・11・13 |
| はい | 2・3・4・6・8・9・10・12・14・15 |
例えば、満足感を尋ねる項目への「いいえ」と、退屈さを尋ねる項目への「はい」は、どちらも1点です。全項目「はい」なら10点、全項目「いいえ」なら5点となり、回答の数だけでは採点できません。
日本語版で並び順が違う場合は、その用紙の採点鍵を優先します。不明項目を0点としたり、回答した項目数から15点満点へ比例換算したりせず、不明の理由を記録してください。
PDFでは回答ページに配点を表示せず、次のページに採点鍵を分けています。本人の回答を受け取ってから採点し、質問への受け止め方を確認します。
05|5点・6点・7点|カットオフの出典を確認する
| 出典・版 | 示される境界 | 実務での扱い |
|---|---|---|
| 日本老年医学会の公開GDS15 | 5点以上:うつ傾向、10点以上:うつ状態という目安 | 公開資料の表現。医師による診断を確定する値ではない。 |
| Stanfordの案内 | 5点を超える場合(6点以上)、丁寧な面接を勧める | 「5点以上」と「5点超」を区別する。 |
| 杉下らのGDS-15-J研究 | 6/7の境界=7点以上 | 検証された日本語版と対象集団に基づく値。別訳への自動適用はしない。 |
杉下らの研究は55〜92歳の外来患者128名を対象に、DSM-IV-TRによる評価と比較しています。PubMed抄録では6/7を最適境界と報告しています。訂正文献も登録されているため、ここでは抄録の感度・特異度を独立した確定値として強調せず、実施には版のマニュアルを優先します。[4][10]
6点の人を「正常」として終了しないことが大切です。どの基準でも、本人の苦痛や生活への支障があれば確認を進めます。高低だけでなく、いつから変わったか、何がつらいか、支援が必要かを尋ねます。今回の参考訳について独自の確定カットオフは設けていません。
06|点数から分かること・予測できないこと
高得点は、抑うつの可能性を詳しく確認するきっかけです。「8点だから、何週間で回復する」「7点だから歩行が自立しない」といった個人の予後は読み取れません。同じ総点でも、興味の低下が中心なのか、無価値感や希望の乏しさが中心なのかで、次の面接が変わります。
2024年の個人データ・メタ解析は14研究・3,602名を対象とし、GDS-15の5点以上による陽性割合34.2%に対し、診断面接による大うつ病の割合は14.8%でした。陽性者の割合を、そのまま「うつ病の有病率」として発表できないことを示します。8点以上では集団平均が近づきましたが、研究間差が大きく、新しい汎用カットオフとして推奨されたわけではありません。[7]
再評価では、同じ版・同じ回答方法を用い、得点と生活の変化を並べます。本記事では、日本語の全対象に共通する「何点下がれば改善」という値は設定しません。回答を代筆したか、家族が同席したか、痛みや服薬が変わったかも残します。
07|脳卒中の臨床では|低得点でも見逃さない
2025年に公表された日本のCGAガイドライン2024の英訳では、身体疾患のある高齢者の抑うつ評価とGDS-15を推奨しています。エビデンスの強さはCです。一方、脳卒中患者への適用では、疾患や言語・認知機能を踏まえた選択が必要です。[8]
カナダの脳卒中・TIA外来患者122名を対象とした2016年研究では、GDS-15は最適カットポイントでも感度45.5%、特異度84.8%でした。対象にはTIAも含まれ、日本語版の結果ではありませんが、脳卒中外来でGDSだけに頼ると見逃し得ることを示しています。[6]
| 状況 | 次に行うこと |
|---|---|
| 本人が質問を理解して回答できる | 気分・生活への影響を面接で確認。目的に応じPHQ-9等も検討。 |
| 失語症で自己回答が難しい | 意思確認を支援し、SADQH-10などの観察情報も検討。代理回答GDSとは区別。 |
| 活動が少ないが、つらさの訴えが乏しい | AES・CAS等で発動性や活動機会を整理。抑うつとの併存も確認。 |
| 急に反応が変わった・注意が続かない | 急性疾患・せん妄などの確認を優先し、医療職へ共有。 |
08|得点のあとに聞くこと|臨床場面のストーリー

以下は架空の例です。脳卒中後のAさんが「出かける気がしない」と話しました。使用しているGDS-15の正式用紙では8点。療法士は「気分が落ち込んでいるから外出しない」と結論づけず、何が困るのかを尋ねます。
- 困り事を具体化:「外へ出るとき、いちばん気になることは何ですか」。転倒の不安、トイレ、疲労、楽しさの低下を分けて確認。
- 気分の経過:いつから続くか、以前楽しめたことが今も楽しめるか、睡眠・痛み・生活への支障を尋ねる。
- 安全の確認:強い絶望感や自分を傷つけたい気持ちがないかを直接確認。GDSの総点で省略しない。
- 共有:点数、使用版、本人の言葉、発症時期、支障、対応を主治医等に伝える。
- 次回:診察につながったかと、選んだ活動の負担を確認。点数だけを追わない。
GDSは自殺リスクの専用評価ではありません。切迫した危険が疑われる場合は、一人にせず、施設の緊急対応手順に沿って医師・救急評価につなぎます。低得点でも安全が保証されるわけではありません。[5]
09|支援を具体化する|本人が選べる、小さな活動へ

以下は臨床での支援例です。GDSの得点から特定の訓練を自動的に処方するのではなく、診察・心理的支援と並行して、生活上の障壁を減らします。
| 本人の困り事 | 支援例 | 確認する変化 |
|---|---|---|
| 外出が怖く、避けている | 行き先を本人と選び、休める場所・移動手段を整えて短時間から | 外出回数に加え、不安・疲労・楽しさ |
| 以前の趣味が遠のいた | 花を2本選ぶ、写真を1枚見るなど、本人が望む小さな活動から | 「やらされた」ではなく、自分で選べたか |
| 役に立てないと感じる | 本人が望む役割を相談。家族の予定確認など、負担に合う一つの役割 | 達成感と負担。役割を義務にしない |
| 痛みや眠気が参加を妨げる | 痛み・薬剤・睡眠を医師等と確認し、活動時間を調整 | 覚醒、苦痛、参加のしやすさ |
「もっと頑張りましょう」と促す前に、本人が負担に感じていることを減らします。笑顔が出た一場面だけで抑うつが解消したと判断せず、本人の実感と経過を確認します。
10|PDFと原資料|質問・採点・生活支援を一冊に
PDFはA4・3ページです。1ページ目:15項目の日本語参考訳と回答欄/2ページ目:採点鍵と判定の確認/3ページ目:面接・連携・支援・再評価の記録を収録しました。単なる点数転記用紙ではなく、英語原版の内容を確認しながら使える構成です。
この参考訳は、標準化されたGDS-15-Jとは別です。正式な日本語版で評価するときは、その用紙・マニュアルをご使用ください。
参考文献・資料
- Stanford / Yesavage. Geriatric Depression Scale:原版・公開条件・翻訳資料。
- Stanford / Yesavage. Geriatric Depression Scale Short Form English:15項目と過去1週間の教示。
- 日本老年医学会.老年期うつ病評価尺度(GDS15)公開用紙。出典:松林・小澤,1994。
- Sugishita K, et al. A Validity and Reliability Study of the Japanese Version of the Geriatric Depression Scale 15 (GDS-15-J). Clin Gerontol. 2017;40:233–240.
- Greenberg SA. The Geriatric Depression Scale (GDS). HIGN, Try This, revised 2023.
- Prisnie JC, et al. Validating screening tools for depression in stroke and transient ischemic attack patients. Int J Psychiatry Med. 2016;51:262–277.
- Parsons M, et al. Depression prevalence of the Geriatric Depression Scale-15 was compared to Structured Clinical Interview for DSM using individual participant data meta-analysis. Sci Rep. 2024;14:17430.
- Shibasaki K, et al. Chapter 1: Effectiveness of each element of the comprehensive geriatric assessment (CGA): English translation of the Japanese CGA-based healthcare guidelines 2024. Geriatr Gerontol Int. 2025;25 Suppl 1:9–15.
- 千葉テストセンター.老年期うつの検査-15-日本版(GDS-15-J):標準化版の入手案内。
- Erratum to Sugishita et al. Clin Gerontol. 2018;41:108.
資料確認:2026年11月3日。イラスト・事例は説明用。参考訳の出典は公開英語原版です。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)