CAT-Rとは?注意機能の検査内容・結果の読み方と生活への応用
注意機能の検査から、
生活の困りごとを
検査内容・結果の読み方・生活場面へのつなげ方。
「注意が悪い」で止めず、次に確かめることまで。

CAT-Rは、注意機能を複数の課題から調べる標準化された検査です。本記事では課題の概要と臨床での読み方を解説します。正式な教示・実施・採点には、現行の公式マニュアルと専用教材を使用してください。図中の用紙は説明用で、実際の検査刺激ではありません。
01 CAT-Rは、何を知るための検査か。
正式名称は改訂版 標準注意検査法(Clinical Assessment for Attention-Revised)。日本高次脳機能障害学会が編集した検査で、2022年に改訂版が刊行されました。注意機能の評価に使うCAT-Rと、意欲・自発性を評価するCASは、目的の異なる評価法です。[1]
注意機能を調べる
情報を捉え、保ち、必要な情報に反応する課題の成績を整理します。
意欲・自発性を調べる
面接や質問紙、日常行動の観察などを通して評価します。
例えば「話しかけると食事が止まる」「説明の途中から手順が抜ける」という困りごとがあれば、まずその場面を具体的に聞き取ります。そのうえで、注意機能を詳しく調べることが支援の選択に役立つかを考えます。検査を選ぶ前に、評価で答えたい問いを一つ置くと、結果を生活へ戻しやすくなります。
CAT-Rでは、SDMTとPosition Stroopは下位検査から除かれています。旧版の解説を読むときは、検査名だけでなく使用版を確認してください。[2]
02 CAT-Rの5つの課題群。
現行の構成は以下の5群です。ここでは課題の考え方を短く整理します。この説明だけで検査を実施するための手順ではありません。[1] [3]
以下の図は、公開資料の課題概要をもとに作成した独自の説明例です。数字・図形・配置・条件は説明用であり、正式な検査や練習用紙としては使えません。旧版CATの開発論文は背景資料として参照し、CAT-Rの現行構成は学会の公式案内で確認しています。
情報を短く保つSpan
数唱や視覚性スパンなど、提示された系列の保持・再現を求める課題群です。

目標を見つけ、反応するCancellation and Detection Test
視覚性の抹消と聴覚性の検出を通して、標的に反応する様子を調べます。

新しい情報に更新するMemory Updating Test
提示が続く情報の中で、必要な情報を保持し直す課題です。

聞く・保つ・計算するPASAT
続けて聞く数字を用いて加算を行います。聴覚情報の処理や保持に加え、計算も必要です。

反応を持続するCPT2
画面上の刺激に、定められた条件で反応するコンピュータ課題です。

一つの課題には、理解、感覚入力、記憶、反応の出し方などが重なります。「低かった課題」から、どの負荷で難しくなったのかを検討することが、臨床での次の一歩です。
03 実施前と実施中に、条件をそろえる。
認知検査の成績は、言語理解や視聴覚、運動機能、覚醒、気分、薬剤などの影響も受けます。検査への参加条件を確認し、結果と一緒に記録します。[4]
- 見える・聞こえる:眼鏡・補聴器の使用、視野や聴力の問題を確認する。
- 教示が伝わる:失語症などがある場合、理解の難しさを注意の問題と混同しない。
- 反応を出せる:筆記・指さし・発話・機器操作など、必要な反応が可能か確認する。
- 今の状態で取り組める:眠気、疲労、痛み、不安、時間帯、周囲の刺激を記録する。

「手が止まった」の先を記録する
止まった時点、視線、姿勢、誤りへの気づきなどを、事実として短く残します。「後半に3回手が止まった」は観察記録ですが、「疲れたから止まった」は解釈です。両者を分けると、次の評価者にも情報が伝わります。
教示の追加、提示速度の変更、答えへの誘導は、公式手順で認められる範囲を確認します。独自に条件を変えた試行を、標準条件と同じ基準で判定しないことが原則です。変更・中断・未実施は理由を記録します。
04 結果は、成績・反応・生活の順に読む。
現行マニュアルの対象条件・基準と照合する。
誤り方、停止、反応の変動と実施条件を照合する。
本人の困りごとに合う場面を選び、観察する。
旧版CATの開発報告でも、加齢と成績の関係が検討されています。結果を読むときは使用版と比較条件を確認し、ネット上の一つの数値を全員に当てはめないことが大切です。[3]
本記事では、独自の総合点や一律のカットオフ値は設けません。各指標の意味と判定は公式マニュアルで確認し、どの結果が、どの生活上の問いに関係しそうかを文章にします。
「注意低下あり」だけで終えず、「課題後半に反応の停止が目立った。食事でも時間の経過に伴って停止が増えるかを観察する」と書く。これは検査から立てた仮説で、生活障害の原因を確定する表現ではありません。
05 検査結果を、生活で確かめる。
ここからは、STROKE LABの本記事で提案する臨床的な整理例です。CAT-Rの採点法ではありません。生活上の負荷を調整する考え方は、注意の問題に対して妨害刺激や課題要求を減らすことを推奨する脳卒中ガイドラインとも整合します。[5]

| 困りごとの例 | まず確かめること | 記録する変化 |
|---|---|---|
| 話しかけると食事が止まる | 会話を食事の前後に分けた場合はどうか | 手が止まる回数、必要だった声かけ |
| 説明の途中から手順が抜ける | 一度に伝える工程を一つにした場合はどうか | 抜ける工程、確認を求める場面 |
| 時間がたつと作業が止まる | 止まりやすい時点の前に休憩を置いた場合はどうか | 停止時点、再開のしやすさ、本人の疲労感 |
「静かならできる」は支援を選ぶ手がかりになります。ただし、それだけで注意機能が回復したと結論づけません。体調や課題への慣れも考えながら、同じ条件で再確認します。
本人の目標を、観察する場面にする
「買い物に戻りたい」なら、まず一つの商品を選ぶ場面で、何に迷い、どんな情報があると進めるかを確かめます。検査得点の改善だけでなく、本人が望む活動にどの支援が役立ったかを共有します。

06 解釈で迷いやすいところ。
「できない=注意障害」?
入力・理解・反応のどこで難しかったのかを確認します。未実施や中断を、独自の判断で最低得点に置き換えません。
「検査良好=生活も安全」?
静かな一対一の評価と、複数の刺激がある生活場面は条件が異なります。実生活の確認を加えます。
「点数上昇=回復」?
練習効果や体調、検査条件も比較します。検査で使う問題そのものを繰り返す訓練は、結果の解釈を難しくします。
「CAT-Rだけで復職・運転判断」?
必要な活動に即した機能・安全性の評価を組み合わせます。CAT-Rは判断材料の一つです。
標準化された認知評価と生活機能の評価を組み合わせ、反復評価による練習効果や疲労も考慮することが推奨されています。[4]
07 補助PDFと公式教材。
無料PDFは、検査後の情報整理に使う「注意機能の評価結果と生活場面をつなぐ臨床メモ」です。1頁目が記入用、2頁目が架空の記入例です。公式の検査用紙・基準値・問題は収載していません。
検査で分かったことを、
次の生活場面へ。
評価時の条件、観察した事実、仮説、試す支援を一枚に整理できます。
臨床メモをダウンロード(PDF)STROKE LAB独自の補助資料。標準化された評価尺度・CAT-Rの代替用紙ではありません。
正式な検査には、CAT-Rの現行マニュアルと指定の教材・用紙を使用してください。公式サイトには、集計済みの結果を入力するプロフィール自動作成ソフトウェアの案内もあります。利用条件を確認して使用します。[1]
08 よくある質問。
CAT-Rの評価表は無料でダウンロードできますか?
本記事で配布するのは独自の臨床メモです。正式な評価用紙ではありません。公式教材・用紙の入手方法は学会の案内を確認してください。
全部の検査を同じ日に行う必要がありますか?
実施順序・条件・中断時の扱いは現行マニュアルを確認します。患者の状態を踏まえて実施計画を立て、分割や中断を行った場合は記録します。本記事では一律の実施時間や分割手順を指定していません。
失語症があっても実施できますか?
教示理解や言語反応の困難が成績に影響し得ます。言語面を確認し、その人に適した評価を専門職が選択します。教示を変えた結果を、標準条件での結果として扱うことは避けます。
家族が自宅でCAT-Rを行えますか?
本記事の説明だけで正式検査を行うことは想定していません。家族には、困る時間帯、場面、声かけへの反応などを具体的に伝えてもらうと、評価に役立ちます。
数値のカットオフを掲載しないのはなぜですか?
検査の版、指標、対象条件をそろえて読む必要があるためです。判定値の一部だけを切り出すと誤解につながります。正式な解釈は現行マニュアルに沿って行ってください。
検査結果と、日常の困りごとを一緒に整理する。
食事・更衣・会話・外出など、どの場面で何に困っているかを具体的にすることが、支援の出発点になります。
Ref. 参考資料・出典。
現行構成は公式案内を確認。旧版の開発報告は検査の背景として参照しています。生活場面の例・臨床メモは、本記事独自の整理です。
- 日本高次脳機能学会.改訂版 標準注意検査法・標準意欲評価法(CAT-R・CAS).公式構成・教材・プロフィール作成ソフトの案内。
出典を開く - 新興医学出版社.改訂版 標準注意検査法・標準意欲評価法(CAT-R・CAS).改訂内容の案内。
出典を開く - 加藤元一郎,注意・意欲評価法作製小委員会.標準注意検査法(CAT)と標準意欲評価法(CAS)の開発とその経過.高次脳機能研究.2006;26(3):310–319.doi:10.2496/hbfr.26.310.※旧版CATの開発報告。
出典を開く - Heart & Stroke.Canadian Stroke Best Practices: Vascular Cognitive Impairment. 1. Screening, Assessment and Diagnosis.認知評価の条件・生活機能との統合。
出典を開く - Intercollegiate Stroke Working Party.National Clinical Guideline for Stroke, 2023. Rehabilitation and recovery: psychological effects of stroke.特に4.30・4.32節。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)