【2026年版】進行性核上性麻痺(PSP)とは?リハビリテーション・原因・治療・予後まで
進行性核上性麻痺は、なぜ後ろに倒れ、目が動かなくなるのか。
タウ蛋白の蓄積が中脳・脳幹を侵す進行性核上性麻痺(PSP)。垂直性注視麻痺と後方転倒という2つの特異的所見を軸に、評価・鑑別・多職種リハビリの全体像を新人セラピスト向けに体系的に解説します。パーキンソン病との誤診を防ぎ、MDS-PSP診断基準(2017年)を使いこなす知識を、現場の視点でお伝えします。
— PSPの臨床像・眼球運動障害・パーキンソン病との鑑別ポイントを動画で解説しています。
PSP要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
PSPとの出会いは、しばしば「パーキンソン病と診断されたが改善しない患者」の担当から始まります。「レボドパを飲んでいるのに効かない」「段差もないのに後ろに倒れる」という主訴が典型的なサインです。
PT評価を開始すると、まず後方への転倒傾向が目立ちます。「段差があったわけでもない」という訴えと合わせて脳神経評価を実施。頭を固定した状態で「目だけで下を向いてください」と指示すると、眼球がほとんど動かないことに気づきます。
この所見をすぐに担当医に報告。垂直性核上性注視麻痺が確認され、最終的にPSPの診断に至りました。「眼球運動を見ること」が誤診を防ぐ第一歩です。
PSPの初期診断における最大の課題は、PDや他の非典型的パーキンソン症候群(APS)との鑑別です。動作緩慢・固縮・歩行障害という共通の症状が誤診を招きます。早期発見が重要な理由は、転倒予防・嚥下管理・環境調整を早く開始できるからです。セラピストが眼球運動を評価する習慣を持つことが、PSP早期発見につながります。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
その不安を、まず話してください。
STROKE LABは脳神経疾患に特化した自費リハビリ施設です。PSPをはじめとする神経変性疾患に対応した専門セラピストが、ご本人・ご家族の状況をしっかりお伺いし、一緒に最善のリハビリプランを考えます。まずはお気軽にご相談ください。
PSPの定義・疫学・サブタイプ。
進行性核上性麻痺(PSP:Progressive Supranuclear Palsy)は、1964年にスティール・リチャードソン・オルゼフスキによって初めて記述された神経変性疾患です。脳の特定領域、とくに眼球運動とバランスを制御する部分の神経細胞が徐々に失われることを特徴とします。
有病率は世界的に10万人あたり5〜6人と推定されています。誤診が多いため実際はより多い可能性があります。主に60歳以上で発症し、男性にわずかに多い傾向があります。
特定の遺伝的・環境的原因は確立されていません。ほとんどの症例は明確な原因なく発生する偶発性(スポラディック)です。MAPT遺伝子変異との関連が一部に報告されています。
MDS-PSP診断基準(2017年)が示す主要サブタイプ
Höglinger GUらが2017年にMovement Disorder誌で発表したMDS-PSP基準では、PSPを単一疾患ではなく複数のサブタイプからなる疾患スペクトラムとして定義しています。これを知らないと、典型的でないPSPを見落とします。
垂直性核上性注視麻痺+早期の姿勢不安定性(3年以内の繰り返す転倒)が特徴。最も診断がつきやすい古典型。
振戦・固縮・無動が前景に立ちPDと酷似。初期はレボドパが部分的に効くことがある。眼球運動障害が遅れて出現する。
歩行開始時・狭い場所でのFreezing of Gait(すくみ足)が主症状。転倒リスクが特に高く、PT介入が最優先。
非流暢性失語や発語失行(AOS)が前景に立つ。STとの密な連携が必須。眼球運動障害は後から出現することが多い。
前頭葉症状(無動・脱抑制)や皮質基底核症状(他人の手徴候・失行)が主体。OT・STの認知評価が欠かせない。
タウ蛋白と神経変性のメカニズム。
神経細胞の内部には栄養や情報を運ぶ「レール」のような構造(微小管)があります。タウ蛋白はそのレールを支える「枕木」の役割です。PSPでは、この枕木(タウ蛋白)が変質・凝集して「神経原線維変化」を形成。レールが崩れて細胞が死滅していきます。これが中脳・脳幹・基底核を中心に起こるため、眼球運動・バランス・嚥下の指令が届かなくなります。
PSPはタウオパチー(tauopathy)の一型です。大脳皮質基底核変性症(CBD)と同様に4Rタウが蓄積しますが、蓄積する部位と細胞種類が異なります。PSPでは主に基底核・脳幹・大脳皮質の神経細胞とグリア細胞にタウが蓄積します。
責任病巣と臨床症状の対応
| 責任病巣 | 生じる症状 | 臨床的含意 |
|---|---|---|
| 上丘・中脳被蓋・前眼野 | 垂直性核上性注視麻痺・垂直サッカード遅延 | PSPの最特異的所見。鑑別の中核。 |
| 淡蒼球・視床下核・黒質 | 固縮・無動・姿勢反射障害 | 後方転倒の機序。バランス評価の焦点。 |
| 橋・延髄(球麻痺領域) | 構音障害・嚥下障害・流涎 | 誤嚥性肺炎の主因。STと早期連携。 |
| 前頭葉・帯状回 | 実行機能障害・無気力・脱抑制 | リハビリへの動機低下・指示従いにくさに直結。 |
特徴的な画像所見:ハミングバード徴候とペンギン徴候
MRIの矢状断(横から見た断面)で、中脳萎縮が特徴的な形を呈します。脳幹と大脳の比率変化により「ハミングバード(蜂鳥)」や「ペンギン」に見えることからこの名前がつきました。ただし病初期には所見が不明確なことが多く、臨床所見の方が重要です。
— PSPに特徴的なMRI所見(ハミングバード徴候)。中脳萎縮と大脳の温存を反映。出典:Brain Sciences 2022(MDPI)
— PSPと大脳皮質基底核変性症(CBD)の比較。病理・画像・臨床的違いを整理した図。
MRI矢状断(萎縮所見):中脳萎縮によるハミングバード/ペンギン徴候。第三脳室の拡張も見られる。病初期は所見が不明確なことが多い点に注意。
MRI T2強調画像:上小脳脚・中脳被蓋に高輝度信号を認めることがある。神経変性の進行を反映する。
PET検査:前頭葉皮質・基底核にびまん性の代謝低下(代謝活性の低下)を認める。病態の進行評価に有用。
DTI(拡散テンソル画像):脳幹・前頭葉白質路の微細構造変化を検出できる。臨床応用が広がりつつある。
DATスキャン(SPECT/PET):線条体(特に被殻)でのドーパミントランスポーター取り込み低下。PDとの鑑別補助情報として役立つ。
鑑別診断:PD・CBD・MSAとの違い。
PSPは動作緩慢・固縮・歩行障害という症状を他疾患と共有するため、初期の誤診率が高い疾患です。特にパーキンソン病(PD)・大脳皮質基底核変性症(CBD)との鑑別が重要です。鑑別のカギは「眼球運動」「転倒の方向」「レボドパ反応」の3点です。
| 鑑別項目 | PSP | PD(パーキンソン病) | CBD(大脳皮質基底核変性症) |
|---|---|---|---|
| 典型的発症年齢 | 60歳代初め | 中高年以降(早発例も) | 60歳以降が多い |
| 眼球運動障害 | 垂直注視麻痺・サッカード遅延(最特異的) | 典型的でない(進行期に出現) | 通常は目立たない |
| 転倒方向 | 後方転倒が特徴的 | 前方・後方(混在) | 転倒あり、方向は様々 |
| 振戦 | 軽微(PDより顕著でない) | 安静時振戦が特徴的 | ミオクローヌスを伴うことがある |
| レボドパ反応 | 大抵は反応乏しい(PSP-P型で一時的効果あり) | 初期によく効果を示す | 通常は反応が乏しい |
| 特異的症状 | 頸部後屈・驚愕顔貌・後方突進 | 小刻み歩行・前方突進(進行期) | 他人の手徴候・失行(片側優位) |
| 進行速度 | 通常6〜10年で進行 | CBDやPSPより緩慢 | 6〜8年で進行 |
| 病理(タンパク) | 4Rタウ(脳幹・基底核優位) | αシヌクレイン(レビー小体) | 4Rタウ(皮質・神経節優位) |
眼球運動障害の詳細:なぜ下が見えなくなるのか
PSPでは垂直方向の眼球運動を制御する「核上領域」が侵されます。上丘(中脳)・脳幹の眼球運動中枢・前眼野(大脳皮質)でのタウ蛋白蓄積が、正常な眼球運動を妨げます。とくに「下方視(食事や段差を確認するために下を見る)」が障害されやすいのが特徴です。
代償戦略として「頭部を後方に傾けて下方を見る」自発的視線戦略(voluntary gaze strategy)の指導が有効です。この代償動作を早期から練習することで、食事・段差通過・ADLの安全性が向上します。セラピストはこの代償動作を評価・指導することが求められます。
評価尺度と採点基準。
PSPの評価には多角的なアプローチが必要です。運動機能・認知機能・眼球運動・嚥下機能・ADLを包括的に評価します。包括的な評価の後、治療計画を患者のニーズに合わせて個別化し、定期的な再評価が非常に重要です。
PSPRS(PSP評価尺度):完全採点基準
基本情報:28項目・合計0〜100点(高得点ほど重症)。6つのサブスコアで構成。自然経過での年間進行は約9〜10点が目安。
共通採点基準(各項目0〜4点):0点=正常 / 1点=軽度障害 / 2点=中等度障害 / 3点=重度障害 / 4点=最重度・不能
① 日常生活(Items 1〜6):最高24点——嚥下・食事・着替え・入浴・トイレ・移動(歩行・椅子からの立ち上がり)。
② 行動(Items 7〜10):最高16点——認知機能・感情制御・行動変容(脱抑制・無気力)・衝動性。
③ 球麻痺(Items 11〜14):最高16点——構音(dysarthria)・嚥下(dysphagia)・流涎・咳嗽(誤嚥反射)。
④ 眼球運動(Items 15〜18):最高16点——垂直サッカード速度・水平サッカード速度・垂直視野範囲・視線固視能力。
⑤ 四肢運動(Items 19〜22):最高16点——頸部固縮・体幹固縮・上肢無動(指タッピング)・下肢無動(足踏み)。
⑥ 歩行・体幹(Items 23〜28):最高24点——起立・歩行(速度・歩幅)・すくみ足・姿勢安定性(後方引っ張りテスト)・転倒頻度・車椅子依存度。
評価領域ごとの具体的内容と担当職種
| 評価領域 | 具体的な評価内容 | 主担当 |
|---|---|---|
| 歩行・バランス | 後方引っ張りテスト・TUG・BBS・転倒頻度(週/月)・歩行速度 | PT |
| 眼球運動 | 頭部固定条件での垂直/水平追視・垂直サッカード速度・視野範囲 | PT・OT・医師 |
| 認知・行動 | MMSE・MoCA・前頭葉機能検査(FAB)・実行機能・無気力スケール | OT・ST・心理士 |
| 言語・嚥下 | 構音検査・RSST・VF/VE・DOSS・嚥下機能精密評価 | ST |
| ADL | FIM・Barthel Index・IADL・眼球運動制約下でのADL観察 | OT |
| 画像・薬物反応 | MRI(中脳萎縮)・DATスキャン・レボドパ試験結果の確認 | 医師・全職種(情報収集) |
| 介護者評価 | Zarit介護負担尺度・介護方法の適切性・安全管理能力・社会資源利用状況 | 全職種・MSW |

諦める必要はありません。
「治療法がない」と言われても、リハビリテーションで症状を管理し生活の質を維持することは可能です。転倒の予防、嚥下機能の維持、コミュニケーション手段の確保——STROKE LABでは各病期に応じた個別プランでご支援します。まずは無料でご相談ください。
リハビリテーションの段階とエビデンス。
PSPのリハビリテーションは「治すため」ではなく「今の機能を維持し次のステージに備える」ことを目的とします。病期に応じた4フェーズ構成で計画を立てることが重要です。治療が症状を管理し機能を改善するのに役立つ一方、病気の進行を遅らせたり元に戻したりすることはできません。
目標:転倒ゼロ・歩行能力の維持。
PT(週3〜5回・1セッション45〜60分):バランス訓練(開眼・閉眼・不安定面)、筋力強化(股関節伸展・体幹)。後方引っ張りテストで定期再評価。眼球運動代償戦略(自発的視線戦略)の練習。
OT:下方視障害を考慮した自宅環境整備・拡大鏡・大文字読書資料などの視覚補助器具導入。
ST:早期嚥下評価(RSST)。構音変化のモニタリング開始。
目標:安全な移動の確保・ADLの自立維持。
補助具選定(PT):後輪を重くしたウォーカー型歩行器(後方重心を補正)・四輪歩行器(ロールウォーカー)が有効。ポールは後ろ重心になるため不適切なケースがある。
OT:眼球運動制約に配慮した食事・更衣・トイレ動作の代償戦略指導。食事中の頸部前屈姿勢管理。
ST(VF/VE実施):食形態変更(きざみ・とろみ)の開始。姿勢管理指導。
目標:安全な車椅子生活・誤嚥性肺炎予防・介護者の負担軽減。
OT・PT:車椅子の選定(ヘッドレスト・ティルトリクライニング)・トランスファー技術の介護者指導。
ST:嚥下障害が重度化した場合の代替栄養(胃ろう)の検討時期について医師・家族と情報共有。AAC(音声産生機器・文字盤)の検討開始。
MSW:在宅サービスの強化・施設入所の検討開始。
目標:褥瘡予防・拘縮予防・QOL維持・家族支援。
全職種:ポジショニング・関節可動域維持(週2〜3回・30〜45分)・痛み管理・皮膚観察を継続。
MSW:在宅サービスの強化・施設入所の検討・家族の精神的サポート(介護者相談窓口の紹介)。
理学療法(PT):バランス訓練・歩行訓練は症状管理と転倒予防に有効とされるが、大規模RCTは限られている。個別化された運動プログラムが推奨される(Lamb R et al., BMJ Open, 2019)。
作業療法(OT):環境調整と代償戦略の指導は、ADL維持と転倒リスク低減に寄与することが示されている。視覚補助器具・生活環境改修との組み合わせが効果的。
言語聴覚療法(ST):嚥下評価・食形態調整・姿勢管理の早期介入が誤嚥性肺炎予防に寄与する。構音障害にはAAC(代替コミュニケーション)導入が生活の質維持に有効。
最新の薬物・細胞研究(エビデンスレベル:研究段階):タウ蛋白を標的とした抗体治療や幹細胞研究が前臨床試験・初期臨床試験で進行中。現時点で承認された疾患修飾療法はなく、今後の進展が期待される。
「PSPのリハビリは『できることを少しでも長く維持すること』が本質です。野心的な目標は逆効果になります。今のフェーズを正確に評価し、現実的な目標を患者さん・ご家族と共有することから始めてください。」
「眼球運動の代償訓練は、指示を理解できる早い段階から始めると習得がはるかに容易です。認知・行動症状が進行してから始めると定着しにくくなります。早期介入が鍵です。」
「介護者へのトランスファー指導は患者さんがまだ歩ける段階から始めておくと安心です。必要になった時点では介護者がすでに疲弊していることが多い。先手を打つことが大切です。」
多職種連携と環境調整。
PSPの成功したリハビリテーションは、多職種チームアプローチなしには成立しません。理学療法士・作業療法士・言語療法士・神経心理学者・ソーシャルワーカーなどの統合的アプローチが不可欠です。各職種の役割を明確に理解し、情報を共有することが質の高いケアにつながります。
各職種の役割分担:PSP特有のポイント
| 職種 | PSP特有の主な役割 | 他職種への情報提供ポイント |
|---|---|---|
| PT | 後方転倒予防・バランス・歩行訓練・補助具選定・眼球運動代償戦略指導 | 転倒リスクの変化・PSPRSスコアの推移 |
| OT | ADL代償戦略・認知評価・眼球運動を考慮した自宅改修・視覚補助器具・IADLマネジメント | 認知機能変化・ADL介助量の変化・環境整備状況 |
| ST | 構音訓練・嚥下評価・食形態調整・AAC導入・誤嚥性肺炎予防 | 嚥下機能の段階・食形態の変更時期・声の変化 |
| 看護師 | 服薬管理・皮膚ケア・転倒時対応・夜間の安全管理・排泄ケア | 夜間の転倒・誤嚥・皮膚状態の変化 |
| 医師(神経内科) | 診断確定・薬物療法調整・臨床試験情報の提供・胃ろう検討の意思決定支援 | 診断・薬物療法の変更・画像所見の共有 |
| MSW | 在宅支援体制の構築・介護保険申請・難病支援制度の活用・家族の心理・経済的支援 | 社会資源の活用状況・家族介護力の変化 |
眼球運動障害を前提とした自宅環境調整のチェックポイント
Pitfallsと臨床判断のコツ。
PSPは複雑な神経変性疾患であり、経験の浅いセラピストが陥りやすい罠があります。事前に知っておくことで、より包括的なケアを提供できます。これらの潜在的な落とし穴を認識しておくことで、PSP患者に対してより良い、より包括的なケアを提供することができます。
臨床判断の分岐点
「PSP患者が来たら、まず最初に『今どのフェーズか』を確認してください。フェーズが違えば介入の優先順位がまったく変わります。歩ける段階でやるべきこと、車椅子移行後にやるべきことを混同しないこと。」
「疾患が進行したら、前回の評価結果と比較して『何が変わったか』を必ず確認してください。PSPは進行する疾患なので、3ヶ月前に有効だった介入が今も有効とは限りません。定期的な再評価と計画の修正が必須です。」
「多職種カンファレンスでは、あなたが見た運動機能の変化を具体的な数値と一緒に報告してください。『少し悪くなった』ではなく『PSPRSの歩行スコアが先月比2点上昇した』と言える準備をするとチームの信頼度が変わります。」
予後とゴール設定。
PSPは進行性の障害であり、症状と機能制限は時間とともに増加します。歩行・バランス・運動能力・視力・言語・嚥下・認知のすべてに問題が生じ、ADLを実行する能力に大きな影響を与えます。PSPの後期には、ほとんどの人がすべてのADLと移動に助けが必要となります。
PSPのゴール設定は「現在のフェーズ」と「患者・家族の価値観」を軸にする必要があります。「歩けるようにする」という漠然としたゴールではなく、「今後3ヶ月間、補助具を使った屋内歩行を維持し週1回の外出を継続する」という具体的・現実的な目標が重要です。病気が進行するにつれて治療計画を継続的に再評価し、調整することが非常に重要です。
よくある質問(新人臨床家の疑問)。
PSPの最も特徴的な違いは「垂直性核上性注視麻痺(特に下方視困難)」と「後方への転倒傾向」です。パーキンソン病では安静時振戦が目立ちますが、PSPでは振戦は軽微で、発症早期から眼球を上下に動かすことが困難になります。
レボドパへの反応がPDと異なり、PSPでは反応が乏しいことが鑑別の手がかりになります。眼球運動を評価する習慣を持つことが早期発見の鍵です。
患者に頭部を固定した状態で「目だけで上下を追ってください」と指示し、垂直方向の随意的眼球運動を評価します。垂直サッカードの遅延や垂直視麻痺が認められればPSPを強く疑います。
ベッドサイドで特別な器具なく実施でき、PT・OT・STすべてが行えます。ADL場面での観察(食事中に食器を見誤る、下の段差を踏み外す)も重要な手がかりです。
PSPの多くの症例ではレボドパへの反応は乏しいとされています。PDは初期にレボドパがよく効きますが、PSPではこの反応が見られないケースがほとんどです。
ただし一部の患者(特にPSP-P型:パーキンソン症候群型)では一時的に効果を示すことがあります。レボドパへの反応が不十分なことはPDとPSPを鑑別する重要な手がかりです(Levin J et al., 2016)。
症状発症からの平均生存期間はおよそ6〜9年とされています。個人差が大きく、発症から3〜5年で重度の障害(車椅子・全介助)が生じることが多いです。
進行はパーキンソン病よりも速く、適切な転倒予防と誤嚥性肺炎対策が生命予後に大きく関わります。セラピストの関わりが生活の質と生命予後に直接影響することを意識してください。
最優先事項は転倒予防です。PSP患者は後方への突進性の転倒が特徴的で、骨折などの合併症が生命予後を左右します。週3〜5回・1セッション45〜60分のバランス訓練と歩行訓練が推奨されます。
補助具の選定(後輪が重いウォーカーなど)、自宅環境調整、介護者への安全管理指導を多職種で連携して実施します。眼球運動障害への代償戦略(頭部の補正運動)も早期から指導します。
確定診断には神経病理学的検査が必要ですが、MRIによる中脳萎縮(ハミングバード徴候・ペンギン徴候)はPSP診断に有用な補助情報です。画像所見は病初期には不明確なことが多く、常に存在するわけではありません。
臨床所見(垂直注視麻痺・後方転倒・レボドパ反応不良)が診断の主軸です。MDS-PSP基準(Höglinger GU et al., Mov Disord. 2017)を参照して総合的に判断します。セラピストはMRIレポートに目を通し、中脳萎縮の有無を把握しておくと評価の精度が上がります。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳科学・徒手技術に特化した脳神経疾患専門の自費リハビリ施設です。進行性核上性麻痺(PSP)をはじめとする神経変性疾患に対し、経験豊富なセラピストが一人ひとりの状態に合わせた個別リハビリプランを提供しています。「治療できない」と言われた疾患であっても、毎日の生活をより安全に、より豊かにすることは可能です。神経内科医、療法士、研究者、その他の医療専門家との学際的な協力を大切にしています。
— STROKE LABでの神経疾患リハビリの実際の様子です。
「PSPの患者さんは、最初の面接でよく『段差がないのに後ろに倒れる』『下が見えにくい』と訴えます。その一言を聞いた瞬間、私の頭の中ではPSPのフラグが立ちます。まずは垂直方向の眼球運動を確認することが鑑別の第一歩です。医師と早期に情報共有できた症例ほど、その後の環境調整と転倒予防が早く進みます。」— 理学療法士・経験15年・神経疾患専門
「PSPは進行が速いので、『今できること』に焦点を当てながら、次のステージに備えた準備を同時に進めることが大切です。車椅子の選定や介護者教育は、歩行が可能な段階から始めておくべきです。そうすることで、実際に必要になったときに介護者がパニックにならずに済みます。」— 作業療法士・経験12年・在宅リハビリ専門
あわせて読みたい:STROKE LABの脳卒中リハビリテーションを徹底解説
諦めないでください。

「進行性核上性麻痺(PSP)と診断されたご本人、そしてご家族へ。この病気は確かに難しい病気です。しかし、適切なリハビリテーションと環境調整、そして多職種チームのサポートによって、毎日の生活の質を維持し、安全に過ごすことは必ず可能です。
STROKE LABでは、脳神経疾患のリハビリに特化したセラピストが、ご本人の状態とご家族の想いに向き合い、病期ごとに最適なプランを提案します。転倒が怖い。嚥下が心配。介護が続けられるか不安——そんな気持ちを一人で抱えないでください。
まずは無料相談で、現状とお悩みをお聞かせください。一緒に考えます。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)